2014-03-15 16:19

最近の鉄鋼事情

 ポスコ・インドネシアの高炉事故の続報を書こうとしたのだが、その背景の鉄鋼事情を調べてみてビックリ。
私の認識は時代遅れだったのだ。(涙)
そこで世界の鉄鋼事情についてちょっと書いてみたい。多分日本では殆ど報道されない話なのでびっくりされる方も多いのではないか。

最初にこれが世界の粗鋼生産量の推移

2014-3-15世界の粗鋼生産推移
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5500.html

このグラフ、実にいろいろ面白い所が有る。
まず最初に目に付くところ。何と中国だけが超うなぎのぼり。
まともには枠からはみ出すので2004年分からはスケールが変えてあります。
中国の粗鋼生産が年間1億トンを超えたのが1996年頃。それが今では年間8億㌧です。
僅か17年で生産量が8倍! 小さなモノではない、鉄である。それがこんな風。
それがどんなにすごい事か、日本の粗鋼生産量を見てください、1億㌧強です。新日鉄住金・JFEなど日本の巨大な製鉄会社、これと同じものが1年半くらいの間に1セットずつ出来ている
千葉県の君津に新日鉄住金の巨大な製鉄所が有ります。1年半たったら同じものがもう一つ出来る。また1年半たったらまた一つ出来るんです。信じられますか?

次に興味深いのが日本とアメリカの比較。
1970年頃まではアメリカが世界一、それを日本が追い越した。
しかしその頃もっとすごかったのがソ連。しかしソ連の世界一は15年ほど。
その後は正に奈落の底に沈んでしまった。ロシアになっても昔の栄光には程遠い。


そんな中で、では原材料の鉄鉱石の生産はと言うとこんなモノ

2014-3-15世界の鉄鉱石生産量推移
http://www.nocs.cc/study/ind/iron_ore.htm

このグラフが2010年までだが物凄い伸びであることが分かると思います。
棒グラフの中の数字はその年度の中での比率ですので横並び比較がしにくい。
それで下の数字を見てください。(赤のアンダーライン)
オーストラリアの場合2000年の1億6千8百万㌧が2010年には4億2千万㌧と2.5倍

だが驚くのはまだ早い。
これが鉄鉱石の価格推移、最近どうなっているかと言うと・・・

2014-3-15鉄鉱石価格推移

http://ecodb.net/pcp/imf_usd_piorecr.html

鉄鉱石の価格は2004年までは永年安定していた。しかし2005年から上昇を始め、ピークは2011年。
ピークの価格は2004年の価格の10倍、何と7年で10倍になったという事だ。

これが有るためにオーストラリアの景気は正に鉄鉱石景気。しかもほとんどが中国への輸出なので最近のオーストラリアの親中国ぶり、これなら納得できる。貴重な金づるなのだ。


所でこんな金が何処から出てきているのか。

こんな金の出所が最近問題になっている中国の大借金。シャドウバンキングなどと騒がれてるやつだ。
その元は地方の農地をタダ同然で買い上げ、そこに大アパート群などを作る。住民など入らなくても良い。
要するに作ればいいわけだ。
しかしとは言うもののそんな金が何処から湧いてくるか? アメリカである。
アメリカが金融緩和で無茶苦茶カネを刷っている。そのカネが回ってきているのだ。
鉄鉱石の価格暴騰の時期をよく見てほしい。
アメリカが金融緩和を始めたのは(QE1)2008年11月ですが、ヘリコプター・ベンと言われ、「ヘリコプターでカネをばら蒔けばいい」が持論のベン・バーナンキがFRBの親分になったのが2006年2月。
丁度鉄鉱石バブルの時期とピッタリではないか。
オーストラリアの鉄鉱石の黄金時代は終わったとの話が有るそうだが、なるほどと言う話しだと思う。
アメリカが金融緩和を止めようとしたら中国が大反対したそうだが、こんな裏事情が有ったのだと思う。

さてそんな粗鋼の大増産バブルの渦中にインドネシアのポスコ・インドネシアが立ち上がろうとしている。
そんな所の今分かっている事(実は殆ど何もわかっていない)を次回書いてみます。

しかし調べてみてこのバブル、恐ろしいなんてモノじゃないですね。クワバラ、クワバラ。
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コメント

粗鋼生産量の拡大幅を見て中国の凄さというか,豊かになりたいという中国人民の執念を感じました.
流石13億は伊達じゃない.

インドネシア・ポスコの顛末はインドネシア人の本音というサイトで詳しくまとめられていました.生産が開始しているということはやはり大したことが無かったのだと思います.ますます,鉄鋼の価格が下落してしまうのではと危惧しています.
  1. 2014-03-16 12:29
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  3. 名無し #FeS4YCMY
  4. 編集

私の時代遅れはもっとひどいですが

世界の現状など、興味深く拝見しました。
ああいう国が何かを始めると、止めどもないですね。

インドネシアのポスコについては、ちょっと怪しい人のブログがありまして

<人工衛星は見た「POSCO−クラカタウインドネシア」:真っ黒クロスケ!?>http://quasimoto.exblog.jp/21768680/

正否を確かめるべくグーグルの航空写真を、暇に任せて日本国内の製鉄所と比較してみました。
撮影時期が不明という難点がありますが、かといって建設中の様子でもありません、意外に最新のものかもです。で、確かに高炉の東側は真っ黒け過ぎみたいな気がしますが、それ以外にも石炭の在庫がほとんどなく集積場所もあれれ?、港湾設備が数Kmも離れてるとか、、、まだまだですね。全部が整備されたころには構造不況の真只中かも。

コークス炉については初心に帰って(冷や汗)これまたあちこち検索したら
炉の概念~私向けばっちり解説~がありました。
http://www.coke-museum.jp/kids/game.html
生産現場で調整に失敗(ゲームなら単に終了)したら、派手にドカーんというのがわかるような気がします。
  1. 2014-03-16 14:19
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  3. 横浜在住 #-
  4. 編集

訂正

早とちりですいません。

昨年末はともかく、先月下旬の話がGoogleの航空写真に反映されるというのは出来過ぎなので、一つ目の話は製鉄所を空から見たら(雲爺もどき)結構面白いという程度のとしてください。

二つ目のURLは関西熱化学のコークス資料館
http://www.coke-museum.jp/index.html
の一部でしかも”キッズコーナー”、技術分野に卓越された短足おじさんには
失礼だったかもしれません。お詫びします。
  1. 2014-03-16 17:40
  2. URL
  3. 横浜在住 #-
  4. 編集

Re: タイトルなし

> 粗鋼生産量の拡大幅を見て中国の凄さというか,豊かになりたいという中国人民の執念を感じました.
> 流石13億は伊達じゃない.
>
> インドネシア・ポスコの顛末はインドネシア人の本音というサイトで詳しくまとめられていました.生産が開始しているということはやはり大したことが無かったのだと思います.ますます,鉄鋼の価格が下落してしまうのではと危惧しています.


中国の話は別としてインドネシアについて。
高炉と言うモノは恐ろしいものです。一度火を入れてしまうともう止められません。10年でも20年でも動かさないといけないのです。
その為に出銑量を見るとまともに動かしているようには見えません。
大したことが無いと言うのは全くの嘘と見た方がいいでしょう。
今日のエントリーでその辺を纏めてあります。
  1. 2014-03-16 18:00
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
  4. 編集

Re: 私の時代遅れはもっとひどいですが

> 世界の現状など、興味深く拝見しました。
> ああいう国が何かを始めると、止めどもないですね。
>
> インドネシアのポスコについては、ちょっと怪しい人のブログがありまして
>
> <人工衛星は見た「POSCO−クラカタウインドネシア」:真っ黒クロスケ!?>http://quasimoto.exblog.jp/21768680/
>
> 正否を確かめるべくグーグルの航空写真を、暇に任せて日本国内の製鉄所と比較してみました。
> 撮影時期が不明という難点がありますが、かといって建設中の様子でもありません、意外に最新のものかもです。で、確かに高炉の東側は真っ黒け過ぎみたいな気がしますが、それ以外にも石炭の在庫がほとんどなく集積場所もあれれ?、港湾設備が数Kmも離れてるとか、、、まだまだですね。全部が整備されたころには構造不況の真只中かも。
>
> コークス炉については初心に帰って(冷や汗)これまたあちこち検索したら
> 炉の概念~私向けばっちり解説~がありました。
> http://www.coke-museum.jp/kids/game.html
> 生産現場で調整に失敗(ゲームなら単に終了)したら、派手にドカーんというのがわかるような気がします。


面白い話ですね。コメントは次の方にいたします。
  1. 2014-03-16 18:14
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  3. 短足おじさん二世 #-
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Re: 訂正

> 早とちりですいません。
>
> 昨年末はともかく、先月下旬の話がGoogleの航空写真に反映されるというのは出来過ぎなので、一つ目の話は製鉄所を空から見たら(雲爺もどき)結構面白いという程度のとしてください。
>
> 二つ目のURLは関西熱化学のコークス資料館
> http://www.coke-museum.jp/index.html
> の一部でしかも”キッズコーナー”、技術分野に卓越された短足おじさんには
> 失礼だったかもしれません。お詫びします。


了解しました。
グーグルアースの件は他の方からもグーグルアースで分かるだろ、こう言われておりましたのでその辺りを少し。
グーグルアースは遠くから見る時は衛星写真ですが、拡大していくと地上すれすれを飛んだ飛行機からの航空写真に変わります。そこがうまく繋いであるのがグーグルアースのいい所ですが、その地図には写真と普通の地形図が裏にくっついています。
例えばポスコ・インドネシアのあるCILEGONで言えば撮影月日は2011年11月7日です。撮影高度は281メートル。これは画像の下に出ていますから拡大してみてください。

これを撮影したのは普通のセスナ位の小型機です。時々日本でも飛んでますよね。
そんな小型機がこんな映像をとってるんです。
尚日本だけですが、この小型機の写真が住宅地図に反映させてあります。
面白いものです。
  1. 2014-03-16 18:26
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
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直接このエントリに関係の無いことですが、米国でドローンの民間使用が認められそうだと言うことです。
つまり、Googleのロゴ着けた無人機がそのうち自動的に空撮を始めるかも知れないと言うことですね。勿論、安全保障上の問題もあるので、全ての所を見られるというわけでは無いですが、被災地なんかの空撮による状況提供がもっと早くなるかも知れません。
  1. 2014-03-16 18:29
  2. URL
  3. その蜩 #mQop/nM.
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To:その蜩さん

> 直接このエントリに関係の無いことですが、米国でドローンの民間使用が認められそうだと言うことです。
> つまり、Googleのロゴ着けた無人機がそのうち自動的に空撮を始めるかも知れないと言うことですね。勿論、安全保障上の問題もあるので、全ての所を見られるというわけでは無いですが、被災地なんかの空撮による状況提供がもっと早くなるかも知れません。


そうですか。良い事だと思います。
特に深刻な災害など是非ともそんな便利な道具が使えるといいですね。
ドローンもですが無人ヘリなどは大いに使えると思います。
例えば水害などでも現地に入ることもできない、そんな所が多いんですね。
今回の山梨県の大雪なんかでも孤立した所は大変だった、そんな所にはとてもいいんでしょう。
技術の進歩は基本的には人間の為になる。そう思っています。
  1. 2014-03-16 20:26
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
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訂正のそのまた追加です

あちこちの製鉄所の航空写真を眺めた結果、相当な違和感が生じたので(汗)、調べ直しました。で、たどり着いたのが
http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Books/Sousho/571.html
第五章に佐藤百合さんという方がインドネシアの鉄鋼業について詳細(2008年段階)を書かれてまして、斜め読みですがその結果です。高炉と間違えたのは還元炉で、原料は屑鉄と鉄鉱石ペレット、熱源と還元剤は天然ガスですからコークス炉も石炭置場もあるはずがなく、今回の事故とは全く関係ない古い写真でした。建設工事の気もありませんのでposcoが入り込む以前のものと思われます。
以上ですが、すでにご存じかもしれませんが上記のサイト、総説代わりになりますね。
  1. 2014-03-18 00:01
  2. URL
  3. 横浜在住 #-
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Re: 訂正のそのまた追加です

> あちこちの製鉄所の航空写真を眺めた結果、相当な違和感が生じたので(汗)、調べ直しました。で、たどり着いたのが
> http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Books/Sousho/571.html
> 第五章に佐藤百合さんという方がインドネシアの鉄鋼業について詳細(2008年段階)を書かれてまして、斜め読みですがその結果です。高炉と間違えたのは還元炉で、原料は屑鉄と鉄鉱石ペレット、熱源と還元剤は天然ガスですからコークス炉も石炭置場もあるはずがなく、今回の事故とは全く関係ない古い写真でした。建設工事の気もありませんのでposcoが入り込む以前のものと思われます。
> 以上ですが、すでにご存じかもしれませんが上記のサイト、総説代わりになりますね。


インドネシアの製鉄業に関してはこの資料位しかないですね。
気が付かれたかもしれませんがクラカタウ・スチール社の工場立地は1950年代にソ連が調べたものがベースになってます。
佐藤百合も指摘していますがその立地が港湾から4キロも奥に入っている。
そもそもこの辺りから狂っている訳です。
おまけにこの製鉄所が面しているのがスンダ海峡ですが、これが水深が浅く超大型船は通れません。
そんな事で製鉄会社を作るにはもともと不向き、だから日本の新日鉄などが手を出さない訳です。
しかも中国で高炉ラッシュが終わってから新設する、時代遅れも甚だしい所です。
更にインドネシア産の鉄鉱石を使うためにはそれなりの設備で無ければいけませんが、ポスコにはそんな技術も無い。
そんな事でこのプロジェクト、踏み出した第一歩から間違っていた訳です。

十数年前ですがインドネシアでの事業の可能性調査を色々やったんですが良い鋼材が無かったです。
そんな歴史が今も続いていますね。
  1. 2014-03-18 11:53
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
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鉄鋼は規模だけではない。提案力だ。

 JFEや新日鉄住金は巨大すぎて近くで働く人は、数キロ先ともいわれており、巨大化とコスト削減で
相互チェック機能は低下し、事故は多発し続けている。日本高周波鋼業のような小さな工場でも、なにも新材料が開発できない自由度の低さがあり日立金属のように規模感のある特殊鋼メーカーになりたいと願っている。就職する鉄鋼のベストポジションは、鉄鋼業界の中では日立金属だと思う。
  1. 2016-10-29 19:32
  2. URL
  3. 自動車業界人 #-
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Re: 鉄鋼は規模だけではない。提案力だ。

>  JFEや新日鉄住金は巨大すぎて近くで働く人は、数キロ先ともいわれており、巨大化とコスト削減で
> 相互チェック機能は低下し、事故は多発し続けている。日本高周波鋼業のような小さな工場でも、なにも新材料が開発できない自由度の低さがあり日立金属のように規模感のある特殊鋼メーカーになりたいと願っている。就職する鉄鋼のベストポジションは、鉄鋼業界の中では日立金属だと思う。



初めまして。
鉄鋼業界との話ですが、鉄と言っても分野は広い。日立金属などは世界の超一級品ヤスキハガネを作っていますが、同社は電線のメーカーでもある。
まあ何処を目指すにしても一生勉強に変わりはありませんね。
  1. 2016-10-31 08:51
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
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