2009-07-22 16:29

タイの中の外来文明と言葉

タイに住んでいる日本人の間では有名な人にレヌカーさんという女性の方がいる。

勿論れっきとした日本人で日本の名前も持っているのだが、タイ人外交官の方と結婚したのでレヌカーさんと名乗っており、今はレヌカーの旅という旅行会社を経営されている。

 所でレヌカーさん元々歴史や美術に造詣が深く、5年ほど前に「フィリップ・ローソン著 東南アジアの美術」なる本を翻訳した。 

私もフィリップ・ローソンなる人物も全く知らなかったが、レヌカーさんが実に15年がかりで翻訳したこの著書は美術の専門書ではあるが実に面白い内容、その一端を紹介したい。

 

   (株)めこん刊

 

 

この本の中で著者のローソンが最初に言っていること、

 

「東南アジアの美術 P3 はじめに」より抜粋

 

  はじめに

 

文明はその光で周縁を照らし、その圏内に取り込もうとする。こうした文明の力を開化力と呼ぶが、その強さで言えば世界に数ある文明の中でもインド文明はその最たるものの1つであろう。

インド伝来の思想は中国朝鮮、日本、チベットモンゴル等、極東に位置する国々にまで及び、素晴らしい文化を生み出した。

西欧文明もまたその少なからぬ部分をインド文明の影響に負っている。ビルマ以東、シャム湾沿岸からジャワ海に散在する文明圏においては、文明の存在そのものが創造性豊かなインド文明の影響の結果であったと言えよう。まだ部族的な生活を送っていた東南アジアの先住民の中にインド伝来の思想は根を下ろし、やがて美しい花を咲かせた。

そこには征服も侵略も力による改宗もなかった人々はインド文明を良いものとし、望ましいものと思い、利用したいと考え、その風に倣ったのだった。

<以下略>

 

 

私はこれを読んではっと気づくものがあった。

確かにインド文明は征服も侵略も改宗もしていない、しかしタイ語の中に無数にあるインド由来の言葉を見ても、その影響の大きさが分かる。

(例えばタイ語という言葉 パーサータイと言うのだが、このパーサーと言うのはインド由来の言葉)

 

 

タイでは多数の日系企業が進出、数万人の日本人が働いている。私もその1人だったのだが、

タイの人が日本の文明(生産技術や工場管理・品質管理だけでなく食事のマナーやゴミの捨て方、或いは教育や音楽など全て)を良いものとし、望ましいものと思い、利用したいと考え、その風に倣ってくれるだろうか?

 

 

レヌカーさんはそこの所を「訳者あとがき」の中で次のように語っておられる。

「1980年代から何度もの波を重ねて東南アジアに広がった日本の経済攻勢はどんな美術書を残すだろうか?本書は私たちに大きな疑問を投げかけている。」

 

レヌカーさんのあとがきは「日本人が東南アジアに来て仕事をしているが、現地にどんな文化を残すのか?それが問われている。」 多分こう言い換えられると思う。

 

私は現地の人にとって日本の文化や技術が良いものであり、望ましいものであり、利用したいと考え、その風に倣いたいと思えば、彼らは必ず日本語を覚え、日本人からその文化や技術を吸収しようとする。

そのような技術や文化を持ち、それを発信し続けることが出来ること、ここに日本の未来が有ると思っている。

 

実はこのブログを書こうと思った理由は、同じIZAブログで活躍している方で私が尊敬している「お絵かき爺さん」と言う方が最近水森美苗の「日本語が亡びるとき」という本について色々意見を述べている、

・・内容はこれを参照ください・・

私もコメントを述べたいと思ったのだが長すぎるので私のブログで考えを述べてみたいと思った次第。

 

水森氏は小説家なので小説こそ文明文化の中心と考えているようだ、そして小説を英語で書いた方が世界中に受け入れられ、そうなれば日本語の価値がなくなるといったところが言いたいことなのだと思う。

しかし英語が世界で唯一の共通語であることは否定しないが、日本がその文化や技術を世界に発信している限り日本語の価値が世界の中で埋没することは無い。

私はそう信じている。

そのために日本人に課せられた使命は大変重い、そして世界の多くの人が日本人に期待していることを忘れてはならないと思う。

 

尚この「東南アジアの美術」と言う本、原著は1967年刊と古いが内容は実に素晴らしい、タイやインドネシアなどに行って仏像など美術品を見たいと思っている方には是非一読をお勧めする。

 

尚自国語がどのようにして亡びていくか、その実例を次回紹介したい。

 

  1. タイiza10年以前
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コメント

No title

TBに乗って参りました。
>水森氏は小説家なので小説こそ文明文化の中心と考えているようだ、そして小説を英語で書いた方が世界中に受け入れられ、そうなれば日本語の価値がなくなるといったところが言いたいことなのだと思う。
そうです、まさにその通りですね。文学こそ総ての上にあると考えているようですね。
>しかし英語が世界で唯一の共通語であることは否定しないが、日本がその文化や技術を世界に発信している限り日本語の価値が世界の中で埋没することは無い。
このエントリーで書いておられる生産管理、・・・ゴミの始末etc.はすでに影響を与えているでしょうか。タイの現場でのご感触を知りたいものです。
日本語の場合、書き言葉での漢字、仮名交じり文が大きい障害ではないでしょうか。朝鮮半島、ベトナムの嘗てのシナの属国も漢字圏からはずれました。このような國で何が起こっているか。東南アジアから日本への留学生で本当にそれを乗り越えたのはどの程度居るか。
  1. 2009-07-25 14:01
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  3. お絵かき爺 #79D/WHSg
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No title

To お絵かき爺様

>このエントリーで書いておられる生産管理、・・・ゴミの始末etc.はすでに影響を与えているでしょうか。タイの現場でのご感触を知りたいものです。

色々有りますが例えばゴミ問題、これはタイでもきわめて深刻です。
タイではゴミは焼却せずそのまま埋め立て、悪臭なども困りますがもう場所が無い。その為行政当局が日本に指導を依頼し何とかしようとしています。
しかし日本でもこれは長く苦しい戦いで、今でも苦労しています。
この日本の経験はタイでも大変役に立っていると聞いています。
また日系企業は何処でもこの問題は従業員教育の重点です。


>日本語の場合、書き言葉での漢字、仮名交じり文が大きい障害ではないでしょうか。朝鮮半島、ベトナムの嘗てのシナの属国も漢字圏からはずれました。このような國で何が起こっているか。東南アジアから日本への留学生で本当にそれを乗り越えたのはどの程度居るか。

漢字仮名交じり文は確かに難しい、でも外国人に言わせると日本語は読み書きは難しいが話す・聞くはそれほどでも無い、だからあまり心配する必要は無いと思います。
必要なときは英語で書いて有れば誰でも読める、それでいいと思います。

漢字を廃止した朝鮮半島についてはもはや言うまでも無いでしょう、文化の死です。

それより問題なのは日本人がチャランポランな日本語でしゃべること、テレビで出てくる芸人のしゃべり方です。(私はしゃべくり言葉と言ってます)
だからそのチャランポランな日本語を通訳の子が分かる正しい日本語に通訳する・・・これで今でも苦労しています。

  1. 2009-07-25 23:17
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  3. 短足おじさん #79D/WHSg
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短足おじさん様、お返事有り難うございます。
>漢字仮名交じり文は確かに難しい、でも外国人に言わせると日本語は読み書きは難しいが話す・聞くはそれほどでも無い、だからあまり心配する必要は無いと思います。
必要なときは英語で書いて有れば誰でも読める、それでいいと思います。
日常のレベルならそれでいいでしょうが、技術、学問の分野になるとやはり問題だと思っております。古い話ですが、留学生を修士レベルにどっと呼び込んだ時代、ほとんどの東南アジアの留学生が全くものにならなかったようすね。大抵のものは日本での生活を楽しむだけで帰ったようです。なんかいくつかの大学では英語の授業をやり出したようですね。
日本の海外進出企業の各社では、契約書、仕様書、その他文書はどうしておられるのでしょうか。これは日本側の問題ですけれど。
  1. 2009-07-27 11:01
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  3. お絵かき爺 #79D/WHSg
  4. 編集

No title

To お絵かき爺様

>日常のレベルならそれでいいでしょうが、技術、学問の分野になるとやはり問題だと思っております。古い話ですが、留学生を修士レベルにどっと呼び込んだ時代、ほとんどの東南アジアの留学生が全くものにならなかったようすね。大抵のものは日本での生活を楽しむだけで帰ったようです。

現在でもほとんどの日系企業で困っていることです。
研修生を日本に送り込んでも簡単にはものになりません、
原因は共通の言葉が無いことです。日本人は日本語の資料を持ち出し日本語(それも日本語の教科書にも無いしゃべくり言葉で)で話します。
しかし日本人でさえこの様な言葉を自由に使えるようになるのに、小・中・高12年くらい勉強して初めて難しい言葉の読み書き理解が出来る、だから留学生や研修生に難しいのは当然です。

こういうときは英語の資料を使い英語で話すのが一番な様に見えます、
しかしではアメリカ人を連れてきてペラペラ喋らせればいいかと言うと必ずしもうまくは行きません。
研修生や留学生にとっても英語はやはり外国語なのです。
うまく行くのは資料は英語に訳しておいて、説明するのは日本語と英語を混ぜてとつとつと話するのが案外うまく行くのです。
分からないことは彼らも辞書を引く、その上で日本の技術や文化はやはり日本語で考え話さないといけないことが有る、そう思っています。


>日本の海外進出企業の各社では、契約書、仕様書、その他文書はどうしておられるのでしょうか。これは日本側の問題ですけれど。

各社各様ですが一般的には
・官公庁向けの書類は現地語(英訳を添付することも有る)
・自社内の契約書とか標準書などは英文または現地語
 (どちらを正本にするかを指定する)
・現場の作業者用は現地語
大体これが一般的です

それから私は明日から急遽タイに出張します、帰国は1週間後くらいの予定、もう私も現役ではないのですがアドバイスを求められているので行ってきます。
  1. 2009-07-27 15:27
  2. URL
  3. 短足おじさん #79D/WHSg
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