2011-12-26 16:48

生産技術史の話

前回日本のテレビは難しいと言うエントリーに皆さんから色々有益なコメントを戴いた。

そのコメントに返事を書いていて若い頃の事を思い出した。

 

 

20代の駆け出しの頃、私は今で言う生産技術部門に所属していた。

そこではプレス金型などを作っていたのだが、そこで大変面白い資料が廻ってきた。

誰か先輩が松下電器グループの社内研修用のガリ版刷りの小冊子を手に入れてきた。

その小冊子曰く、「日本が戦争でアメリカに負けた原因を生産技術面で考察」、こんなものだった。

 

 

 

そこには例えば戦闘機の場合、日本の戦闘機もキチンと整備すれば、そして良質のガソリンを入れれば素晴らしい性能を発揮する。

それはアメリカも認めている。

 

しかし日本の戦闘機の致命的な欠点は修理や整備が極めて難しい、優秀な整備兵がいるところで無いとマトモに動かない。

例えば戦闘機のエンジンは1回飛ぶ毎に点火プラグを清掃する、このプラグひとつ外すのにアッチの部品を外し、こっちの部品を外ししないとプラグが外れない。

軽量・コンパクトで高出力なこのエンジンを積んだ飛行機は、しかし1回飛んだら3日整備にかかるし、優秀な整備員が居ないとダメ。

 

一方アメリカの戦闘機は同じ出力だが大きく重い。

しかし整備は簡単、部品も共通化されており、未熟練整備員でも整備できる。

こんな内容だった。

 

 

こんな資料を手に入れたのでそれを皆で読み返し、では自分たちが作る金型はどうなんだ、ボルトの締め方や方向は良いか、材質は一般材か、特殊材かなど毎日議論した。

 

当時はこんな事を書いた文献は無く、現在当たり前のVA(バリュー・アナリシス)、VE(バリュー・エンジニアリング)等と言う言葉も無く、DR(デザイン・レビュー=設計審査)など、こんな概念も無かった時代。

日本が戦争に負けた、その原因をしっかり考えよう。

合言葉は追いつき追い越せだった。

 

そんな時何時も言っていたのが、アメリカの作業者は文字の読めない人が幾らでも居るぞ、それでも間違いないものが作れるし整備できる。

何処が違うんだろう、考えよう。

 

 

今日本の物作りが問い直されている。

国内だけでなく世界を相手にしたとき、こんな原点に返った活動が必要だと考えた次第。

 

参考になる車が有る。

トヨタ・エティオスである。

 

日本では走っていないので知らない方が多いと思う。

インド専用車で昨年暮生産を開始したクルマ。

1500ccと1200ccで価格は日本円で100万円くらい。

クーラーは有ってもヒーターが無いので日本では売れないが、こんなクルマが有ってもいい。

今世界はそういう時代に入ってきたわけだ。

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コメント

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いつもどこかで聞いたような話で恐縮ですが、零戦などは同じ機種でも違う機体の部品等がきっちりはまらなかったとか。家内制手工業から脱却し切れていなかった当時は、大量生産部品からして職人技で作っていたんですね。
  1. 2011-12-26 17:02
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  3. koguma #79D/WHSg
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No title

>クーラーは有ってもヒーターが無いので日本では売れないが、こんなクルマが有ってもいい。

 インドだけじゃなくタイやインドネシアや南米諸国でも売れるかも?

 沖縄やハワイだってヒーターなんていらないでしょう? 

 考えてみれば世界にはヒーターの要らない所は随分多いのでは?
  1. 2011-12-26 17:13
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  3. よもぎねこ♪ #79D/WHSg
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No title

こんばんは。

米国の科学史で偉業があるとすれば、IEが学問に
なったことです。
米国には、IE(industrial engineering)学位
もあり、当然学会もあります。
日本国には、トヨタ生産方式は有名ですが、これを
標準化する学問的な追求はされない。
なんでも、米国がよいというつもりはないのです、
体系化が優れているということです。
ジャスト・イン・タイムもすぐれていますが、
サプライチェーンからすれば、体系的ではありません。
在庫ゼロというのは、最終組み立て企業のエゴでしか
ないと思います。
目指すというのがただしくて、ボトムネック研究を
したほうが経営は利益がでます。
  1. 2011-12-26 17:48
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  3. the-prayer #79D/WHSg
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To kogumaさん
>いつもどこかで聞いたような話で恐縮ですが、零戦などは同じ機種でも違う機体の部品等がきっちりはまらなかったとか。家内制手工業から脱却し切れていなかった当時は、大量生産部品からして職人技で作っていたんですね。


有名な話ですね。
でも公差等と言う考え方も無かった時代の話です。
そしてこんな話を諸先輩方は「だから日本は負けたんだ」、
そう言って必死に歯を食いしばって戦後の混乱期をがんばってきた。
今あの時代の諸先輩方の苦労を考えるときではないか、
私にはそう思えるのですがどうでしょうか。
  1. 2011-12-26 22:12
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  3. 短足おじさん #79D/WHSg
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To よもぎねこ♪さん
>>クーラーは有ってもヒーターが無いので日本では売れないが、こんなクルマが有ってもいい。
>
> インドだけじゃなくタイやインドネシアや南米諸国でも売れるかも?
>
> 沖縄やハワイだってヒーターなんていらないでしょう? 
>
> 考えてみれば世界にはヒーターの要らない所は随分多いのでは?


そうなんです。
そしてタイで売っているカローラの廉価版は矢張りヒーターがついていません。
日本国内にしか暮らしたことの無い人には想像すら出来ない世界。
でもそれが世界なんでしょうね。
  1. 2011-12-26 22:16
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  3. 短足おじさん #79D/WHSg
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To the-prayerさん
>こんばんは。
>
>米国の科学史で偉業があるとすれば、IEが学問に
>なったことです。
>米国には、IE(industrial engineering)学位
>もあり、当然学会もあります。
>日本国には、トヨタ生産方式は有名ですが、これを
>標準化する学問的な追求はされない。
>なんでも、米国がよいというつもりはないのです、
>体系化が優れているということです。
>ジャスト・イン・タイムもすぐれていますが、
>サプライチェーンからすれば、体系的ではありません。
>在庫ゼロというのは、最終組み立て企業のエゴでしか
>ないと思います。
>目指すというのがただしくて、ボトムネック研究を
>したほうが経営は利益がでます。


はじめまして、コメント有難うございます。
私のようにジャスト・イン・タイムにどっぷり使ってきた人間には耳の痛い話。
確かに日本のシステムは体系化が下手です。
これからの課題として日本人皆が考えるべきと思っています。
  1. 2011-12-26 22:23
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  3. 短足おじさん #79D/WHSg
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 システムの体系化が下手と言うよりはシステムという思考が殆どできないのではないでしょうか。なにが良い悪いではなく、システムという思考そのものがないということです。物事をシステム化するということは、物事のあり方自体を単純に表現することができます。
 先日のマニュアルではありませんが物事を複雑にすることには長けても、単純化し整理するという発想がありません。複雑な内容でも何とかこなしてしまえるということ仇になってるのでしょうがこれが出来なければ未熟練者を戦力には出来ません。

日本の戦時の飛行機生産や整備では悲惨な話の連続です。何でこんな馬鹿なことが、と思うことばかりが続きます。
その破綻を最後の一線で現場の人間が救っていたということは有名な話でしょう。かつてラバウルでは補給が途絶えた中で廃物の部品を利用して複座のゼロ戦を再生し、偵察を行った記録があります。第一線の整備兵にこのような技術があるなどということはおそらく他国では考えられないところでしょう。

そのくせ、同じ形式のエンジンを陸軍と海軍で別個に生産し互換性を持たせないとか、同じ飛行機でも部品の精度が甘く流用できないとかとんでもない話が伝わります。
完全にシステム工学というものが存在してない証拠でしょう。

よく戦時中に軍需工場に徴用されて悲惨だったなどという話を聞きますが、もっと悲惨なのは作った部品が物の役にも立たなかったということでしょう。

工場の熟練労働者を徴兵し、未熟練労働者を徴用して飛べない飛行機を作る、この馬鹿さ加減がわからぬ連中が監督をしてるという世界。漫画以前です。

国民性なんて50年や100年で変るもんじゃありません。我々が心せねばならぬことでありましょう。

  1. 2011-12-27 00:33
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  3. kazk #79D/WHSg
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To kazkさん
> システムの体系化が下手と言うよりはシステムという思考が殆どできないのではないでしょうか。なにが良い悪いではなく、システムという思考そのものがないということです。物事をシステム化するということは、物事のあり方自体を単純に表現することができます。
> 先日のマニュアルではありませんが物事を複雑にすることには長けても、単純化し整理するという発想がありません。複雑な内容でも何とかこなしてしまえるということ仇になってるのでしょうがこれが出来なければ未熟練者を戦力には出来ません。
>日本の戦時の飛行機生産や整備では悲惨な話の連続です。何でこんな馬鹿なことが、と思うことばかりが続きます。
>その破綻を最後の一線で現場の人間が救っていたということは有名な話でしょう。かつてラバウルでは補給が途絶えた中で廃物の部品を利用して複座のゼロ戦を再生し、偵察を行った記録があります。第一線の整備兵にこのような技術があるなどということはおそらく他国では考えられないところでしょう。
>そのくせ、同じ形式のエンジンを陸軍と海軍で別個に生産し互換性を持たせないとか、同じ飛行機でも部品の精度が甘く流用できないとかとんでもない話が伝わります。
>完全にシステム工学というものが存在してない証拠でしょう。
>よく戦時中に軍需工場に徴用されて悲惨だったなどという話を聞きますが、もっと悲惨なのは作った部品が物の役にも立たなかったということでしょう。
>工場の熟練労働者を徴兵し、未熟練労働者を徴用して飛べない飛行機を作る、この馬鹿さ加減がわからぬ連中が監督をしてるという世界。漫画以前です。
>国民性なんて50年や100年で変るもんじゃありません。我々が心せねばならぬことでありましょう。


確かにその通りです。そして私がやってきたことも、今から見れば未熟では有りますがその問題を各論に展開する仕事。
例えば部品の互換性の話、
各論では図面の書き方から測定方法や測定具の精度などやる事は幾らでも有ります。
それを今日・今、目の前の物にまで反映させる、
タイに行ったらそれをまた最初からやり直しでした。
  1. 2011-12-27 06:29
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  3. 短足おじさん #79D/WHSg
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はじめまして。今回のエントリ面白く読ませていただきました。僕には皆様のような気の利いたコメントはできませんが、勉強になりました。
  1. 2011-12-27 12:40
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  3. tom-h #79D/WHSg
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To tom-hさん
>はじめまして。今回のエントリ面白く読ませていただきました。僕には皆様のような気の利いたコメントはできませんが、勉強になりました。


はじめまして、コメント有難うございます。
tom-hさんのブログ、コメントはしていませんが時々訪問させていただいています。
これからも宜しくお願いします。
  1. 2011-12-27 18:13
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  3. 短足おじさん #79D/WHSg
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戦時中の英国の軍需品生産について調べたことがあります。
実は案外知られていないのですが、1944年における航空機生産は日本は英国を上回ってます。大型機が少ないとか品質の問題だとかは別にしてこれは事実です。不思議だったのですが調べてわかりました。

例えばロールスロイスのエンジン工場の例ですが、英国は結局米国のようなオートメーションによる機会化ではなく、熟練工を大動員することでエンジン生産を図るのですが、これでは部品の精度に問題が出ます。

そこで、素人でも使える検査器具を開発し素人を検査工に動員したといいます。某工場では熟練工一人に検査工をつけたとか言います。これをやると生産量は一面落ちますが、品質は保持されます。これが1944年の数字の原因だと言われます。言うなれば一番原始的な方法で乗り切ったのですね。戦時中だからできる非常手段でしょうがこのような発送ができる連中が敵だったということです。

本当に手強い連中とはこのような連中なのでありましょう。
  1. 2011-12-27 23:15
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  3. kazk #79D/WHSg
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To kazkさん
>戦時中の英国の軍需品生産について調べたことがあります。
>実は案外知られていないのですが、1944年における航空機生産は日本は英国を上回ってます。大型機が少ないとか品質の問題だとかは別にしてこれは事実です。不思議だったのですが調べてわかりました。
>
>例えばロールスロイスのエンジン工場の例ですが、英国は結局米国のようなオートメーションによる機会化ではなく、熟練工を大動員することでエンジン生産を図るのですが、これでは部品の精度に問題が出ます。
>
>そこで、素人でも使える検査器具を開発し素人を検査工に動員したといいます。某工場では熟練工一人に検査工をつけたとか言います。これをやると生産量は一面落ちますが、品質は保持されます。これが1944年の数字の原因だと言われます。言うなれば一番原始的な方法で乗り切ったのですね。戦時中だからできる非常手段でしょうがこのような発送ができる連中が敵だったということです。
>
>本当に手強い連中とはこのような連中なのでありましょう。



なるほどねえ、大変興味深い話です。
資材も無い、熟練工も居ない、そんな中で品質を確保する・・・
そんな方法しかないのでしょうね。
タイの会社でもこの話と同じことをやっていましたので良く分かります。

実は私の住まいは愛知県ですが、昔の中島飛行機の工場のすぐ近くです。
その工場では天山と彩雲を作っていました。
戦後この工場は富士重工の子会社になりまして、私の友人も何人かは此処に勤めていました。
なので中島飛行機時代の話も地元では色んなエピソードが伝わっています。
そんな事を丸山光三さんのブログにコメントしています。
http://marco-germany.iza.ne.jp/blog/entry/2398700/

人工地震の件は別として、この頃の日本のものづくりが分かる点で興味深いです。
尚NHKのこの報道、地元で事情を知る人間には不愉快極まりないもの。
今の従軍慰安婦騒動に相通じるものですので、そのつもりでご覧ください。
  1. 2011-12-28 07:05
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  3. 短足おじさん #79D/WHSg
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No title

こんばんわ

アメリカの本質は力業関連だと思います。
まずは 有象無象を 力業で 形を持たせ、その中から見込みのありそうな物に
小金を与えて競争させ、勝った物で力業を行う。

そのさい 目的を定めたら細かいことは言いません。あとは問題の各個撃破のみ
作業者や使用者の質も設計余裕と機能の割り切りで 中央突破・・

90点以上は無理ですが60点ならクリアできる。あとは数で押せ押せ!

まとめますと
 力業での非常識の集結、冷静な見極め、力業での問題潰し、力業での数の暴力。
システム工学もこの力技他実行においての結果をまとめたら そうなっただけなのでは・・
 さすがは 車、パソコン、インターネットを実用レベルに至らしめた国です。

対して日本ですが 匍匐前進至上主義で 残敵掃討による 完成度の極限化
 これも 別の意味ですごいですが・・

あとは日本の教範に従って安い人件費でまじめにつくるだけ。
教範は文化ですから いかにその文化を植え付けるかが大問題。
(それでも物価・人件費は伝染しますのでよりやすい所へ工場は流れますが・・)


ヨーロッパが理論を作り アメリカが実用化し 日本が大衆化させ、中韓がまき散らし、残りが後を追う。(ドイツは・・・???日米韓合体?)

これが現状ではないでしょうか


追伸 昔アメリカなら カンバン式はリスク過多で発案即廃案だったのでしょう。
   今アメリカは製造業への回帰とか言ってますが、
   あのざっぱな性格と一度覚えた楽な味で 回帰はかなり無理があると思います。
  1. 2011-12-28 20:59
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  3. 謎のいねむり(見た目はインド人) #79D/WHSg
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To 謎のいねむり(見た目はインド人)さん
>こんばんわ
>
>アメリカの本質は力業関連だと思います。
>まずは 有象無象を 力業で 形を持たせ、その中から見込みのありそうな物に
>小金を与えて競争させ、勝った物で力業を行う。
>そのさい 目的を定めたら細かいことは言いません。あとは問題の各個撃破のみ
>作業者や使用者の質も設計余裕と機能の割り切りで 中央突破・・
>90点以上は無理ですが60点ならクリアできる。あとは数で押せ押せ!
>まとめますと
> 力業での非常識の集結、冷静な見極め、力業での問題潰し、力業での数の暴力。
>システム工学もこの力技他実行においての結果をまとめたら そうなっただけなのでは・・
> さすがは 車、パソコン、インターネットを実用レベルに至らしめた国です。
>対して日本ですが 匍匐前進至上主義で 残敵掃討による 完成度の極限化
> これも 別の意味ですごいですが・・
>あとは日本の教範に従って安い人件費でまじめにつくるだけ。
>教範は文化ですから いかにその文化を植え付けるかが大問題。
>(それでも物価・人件費は伝染しますのでよりやすい所へ工場は流れますが・・)
>ヨーロッパが理論を作り アメリカが実用化し 日本が大衆化させ、中韓がまき散らし、残りが後を追う。(ドイツは・・・???日米韓合体?)
>これが現状ではないでしょうか
>
>追伸 昔アメリカなら カンバン式はリスク過多で発案即廃案だったのでしょう。
>   今アメリカは製造業への回帰とか言ってますが、
>   あのざっぱな性格と一度覚えた楽な味で 回帰はかなり無理があると思います。


力業、なるほど面白い考え方ですね。

>あのざっぱな性格と一度覚えた楽な味で 回帰はかなり無理があると思います。

私はアメリカは楽をすることを覚えてしまった、
だから立ち直るのにはとても時間がかかると見ています。
でもそこがアメリカのすごい所、きっと立て直してくるでしょう、
その日に備えて今から準備せねば。
  1. 2011-12-28 21:22
  2. URL
  3. 短足おじさん #79D/WHSg
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