2009-04-18 18:57

タイ混乱の元凶タクシンとは?

タイのタクシン派赤シャツ集団のよる暴動はアセアン会議をぶっ壊す、一般市民2人を射殺するなど大きな傷跡を残し14日その第1幕は終結した。
所でこの首謀者タクシンとはいかなる人物か、その真の狙いは何か、この点を私なりの見方で述べてみたい。
独断と偏見による見方なので、読者諸兄の忌憚の無いご意見をいただけたら幸いです。

まずは簡単にタクシンの経歴を

タクシン・チナワット  
・ 1949年生まれ  中国名:丘達新
  チナワット家はタイ北部チェンマイ在住、中国広東省出身の華僑、1860年来タイの通称「客家」
  同家はビルマとのシルク・アヘン取引で財を成したといわれている
・ タクシンは警察士官学校を出た警察官、アメリカの大学に2度国費留学
  警察時代から事業を始め、はじめは失敗するも携帯電話事業が成功(タイ最大手AIS
・ 1987年 警察を辞職
・ 1994年 政治活動開始
・ 1998年 タイ愛国党設立
・ 2001年 総選挙に勝利し首相に就任
・ 2006年 クーデターで失脚
・ 2008年 2007年末の総選挙でタクシン派が勝利 
        同派の首相就任
       2008,1-2008,11,9 サマック氏(タクシン子飼い)
        2008,11,9-2008,12,2 ソムチャイ氏(タクシンの妹婿)
        PAD(黄シャツ集団)による空港占拠などの混乱で辞任
・ 2008年12月15日 反タクシン派アピシット首相就任により反政府運動開始(赤シャツ集団)

この経歴の中で注目することは2つ
1) 警察時代から事業を始めたとはいえ、2001年首相就任頃迄の
僅か20年くらいでタイ一番の富豪といわれる財を成したこと
2) 政治活動を始めて7年、与党タイ愛国党結成して3年で過半数を占める多数派となり首相就任

この様に非常に短期間で巨万の富と政権トップの地位を手に入れた事を注意して欲しい

尚米経済誌フォーブス2008年度版等によれば,タクシンの推定資産は約24億USドル(約2,400億円)、
この内20億ドルは汚職捜査で凍結されているようだ。


次に政権の基盤となったタイ愛国党について

1998年 タクシンによって設立
タイ語名称 : パック・タイ・ラック・タイ (ラック(Rak)はタイ語で愛すると言う意味)
中国語名称 : 泰愛泰黨 (日本語としてはなじめないがこれが正しい名称)

日本語名称が愛国となっているので日本人には右派的な印象がある、
しかし実際は左派的色彩が強いグループ。
特に党員の中に1982年まで反政府武力闘争を続けていたタイ共産党の元党員が多数いる。

タクシン政権下で副首相・エネルギー大臣をしたプロミン氏、情報通信技術大臣だったスラポン氏、運輸省副大臣だったプームタム氏、農業省副大臣だったプラパット氏などが閣僚・側近の元共産党員。

党勢拡大、選挙の時などには特に地方では元共産党員を総動員して活動

政策は開発独裁を志向し、やや反民主主義的かつばら撒き福祉的とも、
景気のいい話で財界の支持を集める一方貧困層向け施策で北部・東北部の農村で人気、
しかし言うこととやることが食い違い、反対派からはタクシンの個人的利権団体と言われている。

タクシンが華僑2世である為か中国と親密な関係が有り、北京に支部を開く。


次に日本ではなじみが無いが、タクシン派内に元党員が多数いるタイ共産党について

タイ国共産党 : 設立~1930年
  設立当初のメンバーはほとんど華僑だけ、その後も華僑が重要な位置を占める
  1960年代初め農村における拠点作りから活動展開、
  その後武装闘争開始、
  (1969年頃には多数の学生・民主活動家が参加)
  1970年代を通じてタイ北部山岳地帯を拠点に、激しい武力闘争を行う
  1982年時の政府による特赦と引き換えの投降呼びかけ
  これに応じほとんどのメンバーが投降した為徐々に弱体化
  (この背景には1975年のベトナム戦争終結、1982年カンボジアで民主カンボジア政権誕生、中国で文化大革命一掃などがある)
  1990年代にはほとんど活動なし


2015-4-13旧データタイ共産党本部があったナーン解放区
タイ共産党本部が有ったタイ北部ナーン県の解放区


2015-4-13旧データ復元されたパヨームの住居
復元されたタイ共産党本部の幹部の住居


何故タクシン派が総選挙で圧倒的多数を占めたか?

タクシンを倒した2006年の軍によるクーデター、そして記憶に新しい2008年末の空港占拠騒動、
これらの原因になっているのがタクシン派が選挙で圧勝していることにある。
このため諸外国からは民主的な選挙で選ばれた政権をクーデターなどで倒す、これは非民主的だとの見方が多い、
これを理解する為にはタイの選挙制度、警察制度を知る必要がある。



まず選挙制度、

タイは18歳以上の全ての国民に選挙権がある事になっている、
この選挙人名簿は「タビアン・バーン」と言う家の登記証と戸籍と住民登録の中間のようなものが一緒になったものに基づいて作成される。
(分かりにくく長ったらしい話だが我慢してみて欲しい)
このタビアン・バーンは持ち家にしか発行されない、また戸主との姻戚関係が無くても登記できる、15歳になってID(身分証明書)を作る際必要と言った理由から、田舎の親・親戚・知人の家に登記することが多い。

バンコク周辺には多数のタイ人がアパート暮らしをしている、
この人たちは例え結婚しようと、子どもが生れようとタビアン・バーンは持てない、
だから生れた子どもも同様である・・・これがタイの法律。


以上の理由でタイでは選挙は田舎に帰って投票する必要があるわけだ、
(但し最近 正当な理由を明確にして事前に登録すれば別の居住地でも投票できるようだ。)

タイは投票は国民の義務との考えが強く、投票率は70%位と高い、また投票しないといろんなペナルティが有る様だ。

投票は日本と同じように小学校などに投票所を設けそこで投票するのだが、日本と違い一人一人の入場証は無い、
投票所の壁に選挙人名簿を張り出し、投票する人は自分のIDカード(身分証明書)を提示しチェック後投票する。

タイのIDカードサンプル
2015-4-13旧データタイのIDカード写真
これは最近採用が始まったICチップ付きのもの
(写真の人は本文とは(無論私とも・・残念!)関係有りません)


以上のことから一見公正な選挙のように見えるが、誰々さんちの人はまだ投票に来てないことが分かるとか、
投票に来た人が写真に似ていれば(鼻薬を利かせれば)別人投票が可能とか色んな問題が有る。
極端な例では選挙人登録人数より投票総数が多い(!)とか、開票中停電(!)したりとかが有るといわれている。


この様な選挙なので田舎に勢力を拡大し、巨額の裏金を持ったタクシン派が有利なのは当然である。
この選挙制度、簡単には改善が難しいので反タクシン派にとってもあからさまに問題と言いにくい。

この裏金がどれくらいなのか? 今まで噂ばかりだったが今回の赤シャツ騒動でその一端が見えた。
前々回エントリー参照)
1人5,000バーツで雇われていた事が分かったが、この5,000バーツと言う金額、バンコク周辺の工場労働者の1か月分の所得に相当するが、タイ北部・東北部では2か月分、或いは3か月分以上に相当する。


無論1票5,000バーツでは無いであろう、しかしタクシンのばら撒く金が田舎の貧しい農民にはとても貴重であったことは間違いない。



次に警察制度

タイの警察官は給料が安いことは一般に知られている。
そのためさまざまな副業をしないと食べていけない。
一般日本人の方でも時々道路を走っていてお巡りさんに止められ、わけのわからない交通違反で金を取られたことがあると思う。
この金が彼らの生活費であり、又上部への上納金に当てられているわけだ。

タクシンが警察官時代、その給料は月3,000バーツで有ったとの話がある、
(勿論初めの頃の話、だから彼の20歳代の事であろう)
いくら彼が20歳代・・多分1970年代(?) の事とはいえ国費で2度も米国留学するエリートの給料としては???である。

その分裏金、賄賂、副業が当たり前で、その分があるから警察官商売が成り立つ・・これがタイの警察の実態。
初めてタイに行ったときタイでもっとも危険なマフィアは警察と言われ、全く信じられなかったが事実であった。

そして>タクシンは警察内部を金でしっかりおさえている、
(また彼の奥さんポチャマン夫人は警察中将の娘でこの面からもおさえている)、
結果として今でも警察はほとんどタクシン派である。


今回の赤シャツ騒動で日本から見ると何故あの程度の人数のデモ隊が暴れまわるのを警察は阻止できなかったのか?
そう感じた人が多いと思う。
しかし実態はタクシンと金で繋がっているのが警察、だからアセアン会議場に乱入するのを簡単に許してしまった訳だ。

ここに警察が当初からこの赤シャツ騒動を積極的に関与していなかったことを連想させる写真が有る、
デモ隊がアセアン会場のホテルに乱入しようとしている瞬間の写真だ、(ロイターより転載)

2015-4-13旧データアセアン会議場に乱入するデモ隊
これは丁度ガラスを破ったときのものだが、デモ隊以外に写っているのは軍服の兵士、
警察の姿は無い (警察の制服は茶色なのですぐ分かる)
つまりデモ隊が乱入しようとしたとき、そこには警察はいなかった・・・。

選挙においても警察の役割は大きく、それがタクシン派であること、しかもこれを簡単には排除できない事も問題だ。


以上をまとめると
タクシンが選挙で勝つため
・ 地元行政・有力者を取り込み
・ 地方の貧しい層に浸透した元共産党組織・人脈を利用し
・ 徹底した地方へのばら撒き作戦を行い
・ 警察組織を自派に取り込む

この様な多角的な組織づくりで選挙を戦ってきた、
この為わずか結党3年で過半数を制し首相に就任するという結果となった。
<実に素晴らしい能力の持ち主! 並みの政治家では到底まねの出来ない企画・管理能力では無いか!>


最後に、ではタクシンの真の狙いは何処にあるか、
蓄財か?
 ・・・それなら十分稼いだと思うが・・・
政権か?
 ・・・首相になればその上には何があるか・・・

この真の狙いについては巷間噂されるところしか知りえない、
しかしタイ人の間でまことしやかに流されている噂は、
「首相の上を狙う」というもの、
これが王政転覆なのか、タクシン王朝なのかは分からないが、
タイ人はそんなことを言っている。
しかしこれは単なる憶測の域を出ないので、
こんな噂話があることを指摘するにとどめたい。

今回の赤シャツデモ隊が拳銃などだけでなく、M79などという
軍隊用の小火器等で武装しているところ、1970年代のタイ共産党の武装闘争を髣髴とさせる。
(元共産党員にとっては「昔取った杵柄」であろう)
又17日未明に発生したPAD(黄シャツ集団)幹部のソンティ氏襲撃事件ではAK47・M16(どちらも軍用自動小銃)が使われ、
100発以上が発射されているところを見るとプロ集団の可能性が高い。
こんな所を見ると上記噂がまんざら単なる噂でないような気もするが・・・・・<

今の所日本人関係に被害は無さそうだが、今後も注意深く見て生きたい。

尚タクシンの政策、そして日本人・日系企業への影響については別の機会に述べたいと思う。
(タクシンの二枚舌の為かなりひどい目にあっているのだが、真相が分かりにくい)

最後に、左翼がかった政権が腐敗にまみれ、
国民の耳に心地よい話をしながら実際は私服を肥やすのに汲々としている、
これは中国や韓国ノムヒョン政権でも同じ、
左翼がかった政権に共通する特技のように感じるのは、私1人だろうか。

  1. タイiza10年以前
  2. TB(0)
  3. CM(2)

コメント

No title

 大富豪と共産党と華僑って凄いコンビネーションですね。 これって後ろに中国がいるのでは?
  1. 2009-04-18 19:49
  2. URL
  3. よもぎねこ #79D/WHSg
  4. 編集

No title

To よもぎねこさん
> 大富豪と共産党と華僑って凄いコンビネーションですね。 これって後ろに中国がいるのでは?


居ると思います、いや居るはずです。
タクシンのつくったタイ愛国党はすぐに北京に支部を作っています。
日本の自民党が北京に支部を作るなんて事は考えられないことを見ても、
タイ愛国党の(タクシンの)行動がシナとの深いつながりを感じさせます。

またタイ共産党はシナから武器などの援助をもらっていました。
このつながりが残っていると思います。

タクシンは客家(Hakkaと読んでください)です、
特にタクシンの母親は客家語、広東語をしゃべると言われています。
客家とはシナ南部に生息する民族で、唐・元代に北部から移住してきたので
外来者と言う意味で客家と言われているが、
アジアのユダヤ人といわれる位の金の亡者です。
福建省に住む客家は、土楼と呼ばれる丸い形の集合住宅を作ることで有名で、
世界遺産になっているはずなので、TVなどでも紹介されていると思います。

客家出身の有名人としては
孫文、宋慶齢(孫文夫人)、宋美齢(蒋介石夫人)、朱徳、鄧小平、李鵬、りー・クアンユー(シンガポール初代首相・・シンガポールは2代・3代首相も客家)等があげられます。

こんな所を見てもタクシンと中国が裏で繋がっていることは容易に想像がつきます。

  1. 2009-04-18 21:36
  2. URL
  3. 短足おじさん #79D/WHSg
  4. 編集

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