FC2ブログ

2020-07-23 17:53

中国のイデオロギーの原動力<勿忘国恥(国恥を忘れるな)


 中国の「香港国家安全法」が7月1日に施行された。この日から中国は全く新しい時代に突入したと言ってもいい事態。
こんな中国を理解するのにちょうどいい記事を櫻井よしこさんが上梓している。
記事は週刊新潮に2回にわたって掲載されたもので、最初は
❶ 国恥を忘れるな、中国の暗い原動力 週刊新潮6月26日号
https://www.genron.tv/ch/sakura-live/column/vol?id=685

二番目は
➋ 嘘と力で押し切る中国の「戦狼外交」 週刊新潮7月23日号
https://www.genron.tv/ch/sakura-live/column/vol?id=689

この❷の記事で櫻井よしこさんはこんな言葉でこの事態に日本人がどう対処すべきかを提言している。

曰く
 『恥辱の歴史への恨みから生まれるナショナリズムと、中華民族こそ世界に君臨すべき優れた存在だとの強烈な自意識は、いかなる批判も受け付けない。撥ねつけ反撃し、戦狼外交の波が起きる。政治家、財界、国民全員は、その中国に筋の通った厳しい姿勢で接しなければならない。一瞬の隙心にもない微笑卑屈な友好は、固く禁すべきだ。

「一瞬のスキも許されない」、これは武道の話などでよく言われるが、言うは易く・・・、これを行うのは極めて難しい。
尚最初に、❶の論稿は7月1日の香港国家安全法」公表前に書かれたもので、同法の問題点などを検討する前の話なのをご理解いただきたい。

キーワードは、「勿忘国恥」である。

ではどんな話なのかを紹介したい。

<以下週刊新潮より引用> (注:下記URLはコピー不可なので、週刊新潮から取り込んだ)
日本ルネッサンス
櫻井よしこ

国恥を忘れるな、中国の暗い原動力

 世界に武漢ウイルスを拡散させ、すでに43万人の命を奪っているにもかかわらず、中国政府も中国人も反省の姿勢を見せないどころか、いまや次の世界秩序を構築し、世界を主導するのは中国に他ならないと主張 する。横柄というべきこの態度はど こから生まれてくるのだろうか。   

 右の疑問は日本だけでなく、多くの国々の多くの人々が抱いているに違いない。そうした問いに汪錚氏の著書『中国の歴史認識はどう作られたのか』(東洋経済新報社・伊藤真訳)が答えてくれる。
       
 汪氏は、中国人は、この世の中の最も優れた民族は中華民族であると信じていると強調する。古来より中国が周囲の民族を東夷西戎南蛮北狄と呼び、蛮族ととらえてきたのは周知のとおりだ。中華民族は優れた文化・文明を有し、その徳によって国を治めていると自負し、周囲を軽蔑してきた。その意味で中国は人種差別の色彩が濃い社会だと言ってよいだろう。しかし、同時に「蛮族」が中華の教えに従い、中華文明に染まり、中国人になるのであれば、中国は受け入れてきた。その点で中華民族は寛大であると、彼ら自身は考えている。

中国人の心理を理解するには彼らの誇りと愛国を支える三つの要素を知っておくべきだと、汪氏は言う。
 ①選民意識、②神話、③トラウマである。①は、古代に遡る。古代中国人は自分たちは世界の中心の聖なる土地に暮らす選ばれた民だと信じた。中国の哲学、習慣、文字などが近隣諸国に広まり「一種の師弟関係」を近隣諸国との間に結んだことで、中国文明の普遍性や優位性を強く確信するに至り、選民意識が深く根づいていったというのだ。

中国人のコンプレックス

 選民である民族の物語は②の神話となって、これまた中国の人々の心に定着した。だがそれを打ち砕いたのがアヘン戦争以降「恥辱」の一世紀だった。③のトラウマである。
 恥辱の一世紀は以下の6度にわたる戦争から成る。①第一次アヘン戦争(1840~42年)、②第二次アヘン戦争(56~60年)、③日清戦争(94~95年)、④義和団事件(1900年)満州事変(31年)(引用者注:満州事変の引き金になった柳条湖事件のあった9月18日は中国では国恥記念日なのだとか)、⑥日中戦争(37~45年)である。

 ここで日本人の私たちが注目すべきことは6度の戦争の内、4度までも日本が関わっていることだ。日清戦争でも義和団事件でも中国は無残に敗れた。日本が完璧に勝った。中国側は日中戦争には勝ったが、それは日本が米国に敗れた結果にすぎない。彼らはそのことでも誇りを傷つけられていると、汪氏は解説する。

 汪氏の著書の帯には「なぜ日本人はかくも憎まれるのか?」と書かれており、第3章では蒋介石が日記に「私は倭(日本人ども)を滅ぼし国恥を雪ぐ(すすぐ)ための方策を記すことにする」と繰り返し書きつけていたことが紹介されている。まさに中国人のトラウマは、自分たちよりも劣ると見倣していた日本人との戦いに敗れたことから生まれたというのだ。その分、日本と日本人は格別に憎まれにていると心得ておくのが正解なのである。また彼らの憎しみは、そのときどきの政治情勢によって蛇口を開閉され、いつでも必要な時に私たちを襲う。
             
 中国社会の深部にこびりついている選民意識、中国の偉大さについての神話とそれを打ち砕かれたトラウマが複合して生まれた心理、中国人のコンプレックスを知ることなしには、現在の中国人の行動や中国共産党政権の世界戦略を真に理解することはできないと、汪氏は強調する。

 選ばれた民は誇り高い。習氏が2017年10月18日、中国共産党第19回全国人民代表大会での演説で語ったように、中国は経済力をつけ、軍事力を強化し、世界の諸民族の中にそびえ立つべき存在だと、彼らは信じている。中国は世界の諸民族に価値観を教え、導くのであるから、尊敬され、称賛されるべき存在だと疑わない。従って、わずかな誹膀や批判も許容できないのである。

 一例が中国政府の武漢ウイルスに関する当初の拙劣な対処や経済への影響を論じた米国の政治学者、ウォルター・ミート氏の「ウォールストリートジャーナル(WSJ)」紙の記事に「中国は真にアジアの病人だ」という見出しがついたことへの尋常ならざる怒りであろう。中国政府は感情のコントロールができないかのように、2月19日、ミート氏の記事とは何の関係もない北京駐在の同紙特派員3名の追放に踏み切った。

豪州国籍の男性に死刑

 1100万人の住む都市、武漢を一夜にして封鎖し、一切の実情を報道させず、それでも一応武漢ウイルスを他国に先がけて抑制したと誇る。彼らはその「実績」を掲げ、国際社会に中国の規範を示すのである。

 彼らはいまが勢力拡大の好機と見て、持てるすべての手段を駆使する。4月23日に豪州首相のモリソン氏が武漢ウイルスの発生源に関して国際社会は独立した調査を行うべきだと、私たちの側の論理では当然の主張を展開すると、中国は、5月12日、豪州産の農産物輸入規制で報復した。

 6月5日、豪州で中国人への差別的言動が増加中として、国民に豪州への渡航自粛を促した。10日には広州市中級人民法院が薬物密輸の罪で起訴された豪州国籍の男性に死刑判決を下した。

 経済力だけでなく司法の力も彼らは自在に活用する。中国共産党は三権の上に君臨する超法規的存在であるため、何でもできる。無論、軍事力の効用も最大限活用中であることは、南シナ海や台湾海峡における中国軍の海と空での行動を見れば明らかだ。尖閣諸島に「海警」所属の事実上の軍艦4隻が常に侵入しているのも、彼らが力を信奉するためだ。

 国際社会は中国を突き動かす力が「国恥」という言葉から生まれていることに思いを致せというのが汪氏の警告である。中国の子供たちは幼い頃から「勿忘国恥」(国恥を忘れることなかれ)という言葉を教え込まれる。

 列強諸国、とりわけ日本にどんなに酷い目に遭わされたか、民族の恨みと憤りを教え込むのである。国恥への歯ぎしりが、中華民族は復興を遂げなければならないとの切望を生み出す力につながる。

 文革で毛沢東主義の過ちが判明し、東西の冷戦で共産主義のソ連が崩壊し、そこに生じたイデオロギーの空白を、中国共産党は埋めなければならなかった共産主義社会の実現に替わる思想を見つけなければ共産党の存在意義は消滅する。空白を埋める新たな思想が、愛国主義、中華民族の偉大なる復興だった。愛国主義につながる「勿忘国恥」こそ中国共産党の生き残りを支えた言葉なのだ。

 中国の強硬姿勢を抑制する力を多国間協力を通して強めることが日本の生き残る道であろう。

<引用終り>


ここで引用している汪錚氏の著書はこんなモノ。原著(英文)は2012年、邦訳は2014年。
もう8年も前の本だが、今これを持ち出す、それだけ危機意識が有るということだと思う。

2020-7-23「中国の歴史認識はどう作られたか」


ここで言及している共産主義社会の実現に替わる思想を見つけなければ共産党の存在意義は消滅する空白を埋める新たな思想が、愛国主義、中華民族の偉大なる復興だった。
このイデオロギーの変革は、多分この写真の衝撃が大きかった。
2020-7-23天安門事件戦車男写真
中国最大のタブーのひとつとされる戦車男の写真

そしてこのイデオロギーの変革は1992年の中国教育カリキュラムの大変更で歴史教育が一変し、激烈な反日教育が始まったのだが、こんな事は日本では報道されることは無い・・・。
(引用者注:1992年は天皇陛下(現上皇陛下)訪中の年、天皇陛下を大歓迎しながら、その裏で激烈は反日教育を始めていた。これが中国)

そしてそのイデオロギー変革がこんな形に。

中国夢
2015-11-29中国夢


気をつけねばいけないのが、中国夢の裏返しが「激烈な反日」ということだ。
だから中国人は表の顔とは別に激烈な反日思想を持っている。

紹介した櫻井よしこさんの論稿は、実は香港国家安全法」公表前のモノで、この点の分析は次回に譲るが、櫻井よしこさんはこんな言葉で締めくくっている。

曰く
「中国の強硬姿勢を抑制する力を多国間協力を通して強めることが日本の生き残る道であろう」
だが中国は最早はっきり決意したと認識すべきだと思う。
以下次回に

  1. 中国
  2. TB(0)
  3. CM(4)

コメント

歴史を覚えていないから洗脳できる

中国人には 「国家」 という意識も 「民族」 という意識も希薄です。北方 (北京語圏) の漢族は、南方 (非北京語圏) の漢族とは仲が悪いが、漢化して北京語を話すモンゴル族・満州族・朝鮮族とは仲が良い。なので、モンゴル族の王朝 「元」 や満州族の王朝 「清」 を 「異民族の王朝だった」 とは思っておらず、どちらも 「中国の歴代王朝の1つ」 と思っている中国人がほとんどです。

なので、中国人の意識は 「選民意識」 とは違うと思います。中国人 (漢族) 社会を見ると・・・
① 共産主義国家なのに、人民が 「都市戸籍」 と 「農村戸籍」 に分けられている
② 香港やシンガポールでも、富裕層と庶民では生活圏がハッキリ分かれている
・・・以上のことから、漢族に強いのは 「選民意識」 ではなくて 「階級意識」 でしょう。

漢族の文化と同化すれば、異民族でも差別しないが、同化しなければ徹底的に弾圧する。そういう社会なんだと思います。 (そこが、選民意識も階級意識も強い朝鮮人とは違う。)
妙佛さんという中国ウォッチャーの人気ユーチューバーがいるんですが、この人が言ってる 「中国人の世界観」 が、私自身の経験からも一番しっくりきます。

「これのどこが美しいんだよ?」 BBC出演で墓穴を掘った! - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=jsEd8_qJ35c&t=365
※6分5秒ごろ~

中国人の反日意識や反欧米意識は、やはり教育によるところが大きいと思います。なにしろ 「万里の長城より北は異民族の土地である」 という事も 「満州に漢族が住むようになったのは、あそこに満州国があったからだ」 という事も忘れてしまっている人達です。もっと最近の 「文化大革命」 や 「天安門事件」 も無かったことにできる国です。昔の事など覚えている訳がないのです。

もっとも、朝鮮人と同じように、改竄・捏造された歴史や、洗脳教育を受け入れてしまいやすい民族性というのは、あると思います。民主化する前の台湾やフィリピンでも反日教育は行われていたけど、台湾人やフィリピン人は、反日には染まらなかったわけですから。
  1. 2020-07-24 00:53
  2. URL
  3. かんぱち #vF6NeGQU
  4. 編集

Re: 歴史を覚えていないから洗脳できる

> 中国人には 「国家」 という意識も 「民族」 という意識も希薄です。北方 (北京語圏) の漢族は、南方 (非北京語圏) の漢族とは仲が悪いが、漢化して北京語を話すモンゴル族・満州族・朝鮮族とは仲が良い。なので、モンゴル族の王朝 「元」 や満州族の王朝 「清」 を 「異民族の王朝だった」 とは思っておらず、どちらも 「中国の歴代王朝の1つ」 と思っている中国人がほとんどです。
>
> なので、中国人の意識は 「選民意識」 とは違うと思います。中国人 (漢族) 社会を見ると・・・
> ① 共産主義国家なのに、人民が 「都市戸籍」 と 「農村戸籍」 に分けられている
> ② 香港やシンガポールでも、富裕層と庶民では生活圏がハッキリ分かれている
> ・・・以上のことから、漢族に強いのは 「選民意識」 ではなくて 「階級意識」 でしょう。
>
> 漢族の文化と同化すれば、異民族でも差別しないが、同化しなければ徹底的に弾圧する。そういう社会なんだと思います。 (そこが、選民意識も階級意識も強い朝鮮人とは違う。)
> 妙佛さんという中国ウォッチャーの人気ユーチューバーがいるんですが、この人が言ってる 「中国人の世界観」 が、私自身の経験からも一番しっくりきます。
>
> 「これのどこが美しいんだよ?」 BBC出演で墓穴を掘った! - YouTube
> https://www.youtube.com/watch?v=jsEd8_qJ35c&t=365
> ※6分5秒ごろ~
>
> 中国人の反日意識や反欧米意識は、やはり教育によるところが大きいと思います。なにしろ 「万里の長城より北は異民族の土地である」 という事も 「満州に漢族が住むようになったのは、あそこに満州国があったからだ」 という事も忘れてしまっている人達です。もっと最近の 「文化大革命」 や 「天安門事件」 も無かったことにできる国です。昔の事など覚えている訳がないのです。
>
> もっとも、朝鮮人と同じように、改竄・捏造された歴史や、洗脳教育を受け入れてしまいやすい民族性というのは、あると思います。民主化する前の台湾やフィリピンでも反日教育は行われていたけど、台湾人やフィリピン人は、反日には染まらなかったわけですから。




中国・中国人は国境という意識がないと見ています。
自分らが世界の中心に聳え立ち、そこから灯台のように四方八方を照らす。
その光の届く所までが自分らの世界と見ています。
その背景には中国は国内でも民族も言葉も違う。だから中国をまとめ上げるアイデンティティーが無いのです。
その為、中央の強大な力がアイデンティティーになる。そうだと思います。

こんなことで中国は国境を接するほとんどの地域で国境紛争を起こしていますし、日本を虎視眈々と狙っています。

今回の中国問題で、私も日本人のアイデンティティーとは、こんな事を改めて考えさせられました。
  1. 2020-07-25 16:23
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
  4. 編集

イデオロギーがボロボロになり権力維持のために愛国やらなんやらに走るってのはソ連のスターリンと同じですね。
あれも確か粛清で大量に殺しておいてドイツに攻められたら大祖国戦争だーなんて言い出しましたから。
  1. 2020-07-31 06:55
  2. URL
  3. 太朗 #cRy4jAvc
  4. 編集

To:太朗 さん

> イデオロギーがボロボロになり権力維持のために愛国やらなんやらに走るってのはソ連のスターリンと同じですね。
> あれも確か粛清で大量に殺しておいてドイツに攻められたら大祖国戦争だーなんて言い出しましたから。



今その心配が現実のものになりそうで困ったものです。
昨日発売の正論最新号は特集が「尖閣喪失寸前」です。
メインの論稿が「日本は『受け身』をやめよ」。
今危機が目の前ということでしょう。
  1. 2020-08-01 10:18
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
  4. 編集

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する