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2019-11-03 15:19

橋の話<長大吊橋の落橋事故


 橋の話が続きますが、ミャンマーで発生した長大橋の落橋事故について、詳細が一応報道されていた。但し一般の人の目にはなかなか触れない報道だったと思われ、日本の専門家でも知らなかった人が多いようだ。
そこでその事故の内容を日経 xTECH(クロステック)の報道から見てみたい。

最初にこの報道、事故の3日前に東大の生産技術研究所長井研究室がこの橋を視察している。そんな事で事故直前の様子が分かる貴重なモノ。

但し、この報道で初めてこの橋が中国が設計し、ミャンマーが中国の指導の下に建設したことが分かるが、JICAの記事にはそのことが触れられていない。
更に引用した記事では記載されていないが、他の方の記事を読むと、この橋も老朽化で日本が架け替える対象になっているようだ。

更に末尾に追記しましたが、この橋にかわる新ミャウンミャ橋は20年に完成予定を前倒しして19年4月1日に開通していました。どうなっている事やらです・・・ブツブツ。

ではその橋の崩落についての報道から。

<以下引用>
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32926330S8A710C1000000/
腐食を見逃した吊り橋の末路
2018/8/7 6:30
日経クロステック
2019-11-3ミャウンニャ橋1
事故後の4月7日にドローンで撮影した橋の様子(写真:東京大学生産技術研究所長井研究室)

 ミャンマー西部で築22年の吊り橋が2018年4月1日未明に突如崩落し、2人が死亡した。重要部材の主ケーブルが腐食して破断に至った、あってはならない事故だ。東京大学生産技術研究所がドローンで撮影した現地の状況などを基に落橋の原因を解説する。

中国企業が設計 265mの長大橋

崩落したミャウンミャ橋は、ミャンマー最大の都市ヤンゴンから140kmほど西に位置する中央支間長183m、橋長265mの長大吊り橋だ。ミャウンミャ川に南北方向に架かる。

同橋は、補剛桁に仮設橋などに用いる「ベイリー桁」を用い、その上に鋼板を敷設しただけの簡素な造りだった。事故の直前にたまたま現地を訪れた東京大学生産技術研究所の松本浩嗣特任講師は、「日本では見ない構造形式だが、ミャンマーには同種の橋がいくつかある。建設年が古いとこのような形式になるようだ」と説明する。

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落橋の3日前に撮影したミャウンミャ橋(写真:東京大学生産技術研究所長井研究室)

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落橋の3日前に撮影したミャウンミャ橋の路面の様子(写真:東京大学生産技術研究所長井研究室)

ミャウンミャ橋の供用開始は1996年。ミャンマー国内に30橋ほどあるという吊り橋の中でも古い部類に入る。同橋は中国の企業が設計し、ミャンマー建設省公共事業局が中国企業の助言を得て自ら建設した。

長らく米欧の経済制裁下にあったミャンマーは中国との結びつきが強く、同橋に限らずミャンマー国内には中国企業の支援で造った橋が多い。また、ミャンマーではかつての日本のように行政が直営で工事を実施してきた経緯がある。

未明に前触れもなく落橋

そんなミャウンミャ橋が、前触れもなく崩落したのは4月1日午前1時45分ごろ。重量18トンのトラック1台が巻き込まれ、2人が死亡した。同橋は当時、通行車両に25トンの重量制限を課したうえ、本来は片側1車線(両側2車線)のところを全体で1車線だけの運用をしていた。こうした制限と落橋の時間帯が未明だったことが重ならなければ、犠牲者はさらに増えていた恐れがある。

ミャンマー建設省の許可を得て、事故から4日後に現地を調査した東京大学生産技術研究所の長井宏平准教授は落橋の原因について、「南側の定着部で主ケーブルが局所的に激しく腐食して破断に至り、橋全体が崩落したのではないか」と推察する。劣化したケーブルカバーの隙間などから水が浸入し、末端の定着部に滞留してケーブルの腐食が進行したと考えられる。

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ケーブルが破断した南側の様子(写真:東京大学生産技術研究所長井研究室)

■点検箇所が見えづらい設計

吊り橋は、2本の主塔に2組の主ケーブルを架け渡し、ハンガーロープを介して補剛桁を吊り下げる構造形式だ。主ケーブルの両端はコンクリートのアンカレイジ(アンカーブロック)と呼ぶ重りに定着する。主ケーブルとその定着部は、吊り橋の最重要部材。ミャウンミャ橋ではまさにこの部分が損傷し、橋全体が崩落する事態に陥った。

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同橋は、主塔から伸びた主ケーブルがサイドスパンの床版を貫通し、桁下でアンカレイジと定着する仕様になっていた。ミャンマー建設省は2年に1度の頻度で同橋を路面上から点検していたが、桁下にある定着部の状態は確認していなかった模様だ。定着部以外ではケーブルに目立った腐食がみられなかったことから、路面上で点検しているだけでは落橋を予見できなかったと考えられる。

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ミャウンミャ橋の概要と崩落後の状況(断面図)。図中の単位はm(資料:日経コンストラクション編集部が取材を基に作成)

本来は、損傷が重大事故につながり得る定着部を、特に注意を払って点検すべきだった。しかし、定着部が桁下の点検しづらい位置にあったうえ、ケーブルがカバーに覆われているなど、目視で腐食を見つけることが難しい状態だった。ポイントを理解せずに点検していたことや、維持管理しにくい設計になっていたことが、落橋の元凶と言えそうだ。

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南側のアンカレイジの状況(写真:東京大学生産技術研究所長井研究室)

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定着部の様子(写真:東京大学生産技術研究所長井研究室)


吊り橋のように、局所的な損傷が落橋につながる構造形式だと、橋全体の挙動をセンサーなどでモニタリングしていたとしても事故を防げない可能性がある。実際、ミャンマー建設省はミャウンミャ橋の南側の主塔頂部の変位を数カ月ごとに確認していたが、落橋の3週間前のデータにも異常はなかった。

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定着部に水がたまった吊り橋(写真:東京大学生産技術研究所長井研究室)

東京大学の長井准教授は、「ミャンマーには、ミャウンミャ橋に限らず維持管理に対する基本的な配慮がなされていない橋が多い」と指摘する。事故から約1カ月後、ミャンマー建設省の依頼を受けて同国内にある他の吊り橋を調査したところ、主ケーブルの定着部を収めたチャンバーに水がたまっている橋などが見つかった。

日本にも危険な橋

日本では、定着部を点検しやすいように空間を設けたり、ケーブルのカバーに窓を付けて、水がたまっていないか確認できるようにしたりするのが一般的。明石海峡大橋のように橋長が長い重要橋梁では、主ケーブルの腐食を防ぐためにカバー内に乾燥した空気を送風するシステムを採用している。

「日本の技術は、ミャンマーでも役に立つのではないか」(長井准教授)。ミャンマー建設省は、長井准教授らの研究チームがまとめた調査結果を基に、今後の対策や維持管理の方針を決める方針だ。研究チームは、吊り橋のような特殊橋梁の定期点検の制度化や、点検手法の確立、損傷後の性能評価技術などを提案していく。

一方、日本でミャウンミャ橋のような事故が起こらないかというと、必ずしもそうとは言い切れない。

例えば国内では12年4月、浜松市が管理する橋長約139mの原田橋で主ケーブルが一部破断しているのが見つかり、全面通行止めとなる事態に陥った。そのわずか1年後の13年2月には、同市内で橋長32mの歩行者専用吊り橋「第一弁天橋」が突然傾く事故が起こっている。第一弁天橋では、定着部のターンバックルと呼ぶ部材が腐食し、破断した。道路管理者の市は、原田橋の損傷発見後に第一弁天橋でも緊急点検を実施したが、損傷を見抜けなかった。

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原田橋の全景。補強工事を踏まえて片側交互通行で運用していたが、15年1月に右岸側の斜面崩壊の影響で崩落した(写真:国土交通省)
原田橋の破断したケーブル(写真:国土交通省)

16年4月時点で日本国内に865カ所ある橋長15m以上の吊り橋のうち799カ所を市町村が管理している。このうち通行を制限している橋が85カ所、通行止めが420カ所もあり、問題なく通行できる橋は294橋にすぎない。多くの橋を抱え、技術力や予算の不足に悩む道路管理者をいかにサポートするかが重要になる。

ワイヤを用いた近代的な吊り橋が維持管理の不備で落橋したのは、ニューヨークのブルックリン橋に始まる130年の歴史で初めてのことだ。維持管理を怠れば、橋は落ちる――。そんな当たり前の、しかし普段は忘れがちな事実を突きつけたミャウンミャ橋の落橋から、日本が学ぶべきことは多い。

(日経 xTECH/日経コンストラクション 木村駿)
[日経 xTECH 2018年7月9日付の記事を再構成]
<引用終り>
 

もう一つ、この事故に関してこんな記事が有りました。

道路構造物ジャーナル
これでよいのか専門技術者
(一般財団法人)首都高速道路技術センター 上席研究員 髙木 千太郎 氏
https://www.kozobutsu-hozen-journal.net/series/detail.php?id=154

詳細は技術的な話なのでリンク先を見てください。
しかし高木氏が末尾で言っている報道に対する批判は真剣に考えるべきではないかと思います。
その部分だけ抜粋引用します。

<以下引用>

5.報道の差異と技術者として私の願い

 今回話題提供したミャンマーの鋼吊り橋崩落事故は、関係者の中では周知の事実ではあるが、国内で大きく報道されることはなかった。それは何故だろう!

 前回の米国・フロリダの歩道橋崩落事故は、多くの報道局から全国放送され、事故状況を見た多くの人々は、我が国に同様な事故が起こらないようにと願い、日本の技術者に向けた注意喚起となったと考える。しかし、ミャンマー・エイヤーワディ管区、ミャウンミャで起こった鋼製吊り橋崩落事故は、私の知る限りではニュースとして詳細な報道解説や現地画像が映し出された記憶がない。片や先進国、片や発展途上国の違いであろうか? まさか、亡くなられた人の数で判断しているのではないだろう。
・・・中略・・・
しかし、私は、数多くの日本人技術者が現地で仕事をし、技術支援も行っている状況を見聞きしている。そのような人々に崩落した状況や原因を聞こうとしても固く口を閉ざして聞くことも、映像や写真を見ることも出来なかったのが現状だ。

 確かに、崩落した吊り橋に替わる道路橋を日本の援助で建設されること崩落した吊り橋に中華人民共和国が関与していることを考えた、政治的配慮からかもしれない。よくいわれることに、「日本では世界の動きに対応した報道がなされていない」「グローバル化に大きく後れをとる日本」……など情けない言葉が並ぶ。

 海外で活躍する一部の技術者は、現地での対応や諸外国の技術者からの評価も非常に高い。しかし、我が国の諸外国との接し方に関して、私が肌で感じるのは、未だ鎖国状態、保護主義国日本、幸せ溢れる外敵から自然で守られた離島国民なのだ。持てる情報や技術をもっとオープンにすることが出来ないのだろうか? 少なくとも国内の技術者に対して。

 もう一つ余計なことを言わせてもらう。数年前に言われていた「メンテナンス元年」「今すぐメンテナンスに舵を切れ」など国の掛け声は何処に行ったのだろう? 
・・・以下略・・・
<引用終り>

この高木さんの日本の報道に対する疑問は私も同感だ。
日本子K内で電波芸者相手にヘラヘラ番組ばかり作っているから人間が腑抜けになる。
もっと報道機関のレベルを上げることが必要だと思う。


*追記します

落橋したミャウンミャ橋に代わる新ミャウンミャ橋が最近開通していました
2019年4月1日開通したとの報道が見つかりました。
国内報道は有りませんが、アジアニュース専門のNNAだけが報じています。

<以下引用>
https://www.nna.jp/news/show/1887341
新ミャウンミャ橋が開通、旧橋は昨年崩落 2019/04/02(火)

ミャンマー中部エヤワディ管区ミャウンミャで1日、イウェ川に架かる新たな橋が開通した。同橋は2017年5月に着工20年の完成を目指していたが、18年4月に旧橋が崩落したため、前倒しで工事が進められていた。国営紙グローバル・ニュー・ライト・オブ・ミャンマーが1日伝えた。…
(以下は有料記事の為読めない・・・)
<引用終り>

なるほど、これだと高木さんが
>「そのような人々に崩落した状況や原因を聞こうとしても固く口を閉ざして聞くことも、映像や写真を見ることも出来なかったのが現状だ」
こんな風にぼやくもの無理はない。
何故だろう???。

  1. ミャンマー
  2. TB(0)
  3. CM(2)

コメント

ソース漏らされるから

一番の理由は、ニュースソースの秘匿の重要性に対する日本人の認識の甘さではないかと考えます。
私は、今までに二、三の情報を漏らして多大な不利益を被ったことがあります。善かれと思って情報を伝えたのですが、ひどい目に合いました。
情報源は秘匿しないといけません。これがないと情報を伝えることができません。日本のメディアはニュースソースを秘匿しないと言われていますが、一番漏らしているのはお役所です。個人の識別情報を漏らしてはいけないと自分たちが国民に言っておきながら、個人情報を一番漏らしているのは、お役所であろうと思います。
つまり日本の社会全体でソースを秘匿するという合意ができていないのです。
これでは話したくても話せません。
これに尽きるんじゃないかと思いますが。
  1. 2019-11-04 13:05
  2. URL
  3. 縄文人 #wM6nolEE
  4. 編集

Re: ソース漏らされるから

> 一番の理由は、ニュースソースの秘匿の重要性に対する日本人の認識の甘さではないかと考えます。
> 私は、今までに二、三の情報を漏らして多大な不利益を被ったことがあります。善かれと思って情報を伝えたのですが、ひどい目に合いました。
> 情報源は秘匿しないといけません。これがないと情報を伝えることができません。日本のメディアはニュースソースを秘匿しないと言われていますが、一番漏らしているのはお役所です。個人の識別情報を漏らしてはいけないと自分たちが国民に言っておきながら、個人情報を一番漏らしているのは、お役所であろうと思います。
> つまり日本の社会全体でソースを秘匿するという合意ができていないのです。
> これでは話したくても話せません。
> これに尽きるんじゃないかと思いますが。



大変な経験をされましたね。
私は日本の役人に関してはこう考えています。
江戸時代の役人は基本的に武士でした。村役人は百姓、町役人は町人でしたが、その上が武士だったため、基本的に武士の考え方を持っていました。
そして武士の考え方の基本に、問題を起こしたら責任を取る。責任を取るとは切腹だ。こんな考え方が基本に有りました。
だから自分の行動に対し責任感が凄かった。
現在の日本の役人はその責任感が全く有りません。
例えていえば、昔は悪代官も越後屋もいましたが、シッカリした武士も多かった。
現在の役人はいわば「越後屋が役人をやっているようなもの」。山吹色のお菓子が大好きな連中が多いですね。

こんな風潮を改革するためには、矢張り信賞必罰をもっと徹底すべきです。
守秘義務が守れなかったら、即懲戒免職、それで首を吊る人がでてきても仕方ありません。
ノーパンしゃぶしゃぶ事件では確か3人の自殺者を出しています。亡くなった方には気の毒ですが、仕事に責任を持つということはそういう事でしょう。
  1. 2019-11-04 18:59
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
  4. 編集

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