FC2ブログ

2019-04-06 14:59

エチオピア航空機墜落、737MAXシステムが原因=調査報告


 新鋭旅客機ボーイング737MAXの事故について、3月10日発生したエチオピア航空機事故の中間報告が4月4日に発表された。
一言で言って深刻な話である。

しかも、この件は特に日本の報道はどうにも靴の底から足の裏を掻く感がある。
そこで最初にWSJの報道から。

<以下WSJより引用>
https://jp.wsj.com/articles/SB10330143325861623706704585222280219850888

エチオピア航空機墜落、737MAXシステムが原因=調査報告
2019 年 4 月 4 日 21:24 JST

 【アディスアベバ】3月10日に当地発のエチオピア航空302便が墜落した事故を巡り、エチオピア当局は4日、米ボーイング「737MAX(マックス)」の飛行制御システムの誤作動が原因だとする中間報告を公表した。

 報告書は、乗員は承認された緊急時の手続きに従ったが体勢を立て直すことができなかったと指摘。また、ボーイングはMAXの飛行制御システムを見直し各国当局は見直し内容を確認した上で同型機の運航停止措置を解くべきだの見方を示した

 別の737MAXが昨年インドネシアで墜落して以来、MAXの失速防止機能「MCAS」に注目が集まっている。昨年の事故の初期調査では、センサーの不具合でシステムが機首を押し下げたため、パイロットの修正措置が間に合わずに墜落したことが判明した。エチオピア航空機の事故も同じような展開で、搭乗していた157人全員が死亡した。

 ボーイングの広報担当者は、エチオピア当局の報告を確認し、追ってコメントを出すと話した。同社は昨年からMCASの改良に取り組んでいる。

 エチオピアは米運輸安全委員会(NTSB)やボーイングなど外国専門家の協力を得て調査を進めている。
<引用終り>

最初にこの事故、フライトレコーダーやボイスレコーダーの解析は事故機の製造国であるアメリカではやっていない。フランスのBEA(フランス航空事故調査局)で解析している。製造国でもなければ、墜落場所でもないフランスに調査依頼すること自体が異例であり、事の異常性を示していると言える。

参考記事
「737 MAXの墜落調査、仏で開始 エチオピアが米国に不信感、ボーイングは納入停止」


所でこの事故の異常性はもう一つある。

(参考ウィキペディア(Wikipedia)ボーイング737 MAXにおける飛行トラブル

それは殆ど報道されていないが、アメリカのサウスウエスト航空でも類似のトラブルが8件発生している。

<以下引用>
737 MAX、サウスウエスト航空でも類似不具合 手動操縦で回避
2019年3月26日 11:39 JST

 墜落が相次いだボーイング737 MAXについて、米国のサウスウエスト航空(SWA/WN)でも類似のシステムトラブルが8件起きていたことが、関係者への取材でわかった。いずれもパイロットが手動操縦に切り替えて問題を回避し、事故には至らなかった。
・・・中略・・・
 関係者によると、サウスウエスト航空の737 MAX 8でも、MCASが原因とみられる不具合が8件発生8件とも、パイロットがオートパイロット(自動操縦)を解除し、手動操縦で不具合を回避したという。
・・・中略・・・
 ボーイングによると、サウスウエスト航空は2月末時点で737 MAXを280機発注しており、31機が引き渡されている。サウスウエスト航空の社内では、MCASの不具合は運航時の注意事項として回避策が共有されているという。

<引用終り>


このサウスウエスト航空の事例は、2回目のエチオピア航空の事故の直後から分かっていた筈だが、なぜか2週間以上たってから報道されている。若し最初のインドネシアでの事故直後から騒いでおれば、2回目の事故は回避できた可能性があるのではないか、そんな議論がこれから出てくるはずだ。
何故サウスウエスト航空では共有化されていた事故回避策が、横並び展開されていなかったのか? 恐らくこの問題が今後大問題になると予測します。


所でこの事故、どうすれば回避できるのか、それが上掲wikiに記載されている。
以下引用する。

737MAXの操縦特性補助システム(MCAS)

737MAXではCFMインターナショナル LEAPエンジンが採用されたことによって約14%の燃費改善を実現したが、エンジンの大型化やナセルの形状変更に伴い、エンジンの取り付け位置を従来型の737よりも若干上方および前方に移動させる必要が生じた。この影響でエンジンナセルが仰角を取った時に揚力を生む事で機首がピッチアップのモーメントが働くという機体の特性があった。 そのため、ボーイングは失速を防ぐために「操縦特性補助システム」(Maneuvering Characteristics Augmentation System)と呼ばれる操縦支援システムを737MAXに導入した。

MCASは2機ある迎角(AoA)センサーの片方の値を取り込み、一定値を超えた状態で、機体コンフィギュレーション(フラップ角度等)および対空速度・高度が閾値を超えていた場合に作動し、水平尾翼の水平安定板(スタビライザー)を自動的に操作して機体を降下させる。MCASが作動した場合、スタビライザートリムホィールが動くが、パイロットが単にオートトリムを切っただけでは解除されないオートトリムを切りスタビライザー制御システムを切ってマニュアルにし手動でスタビライザートリムホィールを回さなければいけない

<引用終り>

この「パイロットが単にオートトリムを切っただけでは解除されない。オートトリムを切り、スタビライザー制御システムを切ってマニュアルにし、手動でスタビライザートリムホィールを回さなければいけない」、これは以下動画で説明されている。(英語です)




分かりにくいので一寸解説。トリムと言う言葉が出てきます。
飛行機は手放しでまっせぐには飛びません。機体の癖もありますし、積み荷や乗客数、燃料の状態などで傾いたり曲がったりします。これを調整し、手放しで真っすぐ飛ぶようにするのがトリム。中でも機首の上げ下げに関係するのが水平尾翼の水平安定板(スタビライザー)。こんな事です。

MCASという新しい仕組み。それが解除するためには2段階の操作が必要で、その上、手作業でトリムホイールを回して水平安定板の角度を調整する。簡単な事ではありません。
こんな事がキチンと徹底されていない。こんな所も問題だと思います。

またこのシステムは迎え角センサーを2個搭載していますが、コンピューターはそのうちの数値の大きいデータを使う、こうなっています。これでは実質的に1個のセンサーに頼るのと大して変わりません。万一故障で異常値が出てくれば、装置が誤動作する訳で、これは間違いなく設計思想が可笑しいと言えます。

この設計思想については、昔からDR(デザインレビュー~設計審査)とかFMEA(Failure Mode and Effect Analysis=故障モードとその影響の解析)などの考え方が声高に叫ばれてきました。しかし世の中が高度化してゆく中で、こんなモノ作りの原点ともいえるものが蔑ろになって、いつの間にか利益優先で事が進むようになってきたこと、これが原因の奥底に潜んでいるようです。
恐らくこんな事がアメリカの中でも言われる時が来たのではないか。そのきっかけが多分飛行停止がメーカーや規制当局(FAA)からではなく大統領令で出されたこと。こうではないかと見ています。


こんな事で、この問題の解決には相当の時間がかかるでしょう。エチオピアの運輸当局は、ボーイングはMAXの飛行制御システムを見直し各国当局は見直し内容を確認した上で同型機の運航停止措置を解くべきだの見方を示した。こんな事を言っています。運行停止が相当長期間になりそうです。


更にオマケ。
BBCによれば、アメリカではすでに訴訟が2件始まっていて、そのうちの1件は、何とあの「ラルフ・ネーダー」が絡んでいる。
ラルフ・ネーダーの姪の子どもがエチオピア航空機の犠牲者157人の一人だというのです。

ラルフ・ネーダーと言っても知らない人が多いと思う。今から半世紀も前、自動車が欠陥車だとしてアメリカに端を発した大騒動が有った。結果的には自動車の安全性に大いに寄与したこの動きの立役者がラルフネーダー。彼は1965年、彼は「どんなスピードでも自動車は危険―アメリカの自動車に仕組まれた危険」において、米国の乗用車の欠陥を指摘し全米に衝撃を与えた。アメリカの自動車産業がシートベルトなど安全装置の導入に抵抗し、安全性向上のための投資を渋っていると述べ、特にゼネラルモーターズ製「シボレー・コルヴェア」に欠陥が多いと告発した。こんな人物である。自動車関連の古い方なら決して忘れることのできない名前だ。私も散々苦労したので、懐かしい名前です。

  1. 海外
  2. TB(0)
  3. CM(4)

コメント

 メカ音痴なのでどうもよくわかっていないのですが、これは要するに飛行機の自動操縦システムと人間が揉めたという話でしょう?

 自動操縦で対応できない事態になった時、直ぐに解除して人間が操縦する事になっているけど、その解除が上手くいかず、ゴタゴタしているうちに墜落してしまった・・・・・。

 考えてみると自動操縦は、船と飛行機では導入されて久しく、事故もチョイチョイ起きているんですよね?

 2017年に二回立て続けに起きた米軍のイージス艦衝突事故だって、完全に自動操縦のお陰です。
 自動操縦に任せきりで、人間が前を見ていないから、巨大コンテナ船の接近に気付かないのです。

 マラッカ海峡とか伊豆沖とか、あんな場所で自動操舵に任せきりなんて、あり得ないと思うけど、でも人員にも十二分に余裕があり、ワッチだって民間船に比べたら、無茶苦茶大勢いる軍艦でそれをやっちゃったんですよね。

 こういうの思うと自動操縦は結構怖いですね。

 自動車の自動操縦実用化への道のりは険しいと思います。

 尤も中国なんか既にバスで路上試験をしているそうですが。

 何でよりにもよってバスと思ったら、中国では乗客が運転中の運転手に暴行を働いて事故になるケースが多いので、運転手がいない方が安全と言うコンセンサスがあるからと言います。

 なるほどこれなら世界の自動車会社が、中国に進出したがるわけです。
 
 こんな実験は他の国では絶対できませんから。
  1. 2019-04-08 10:36
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

命の値段

・迎え角センサーを2個搭載
・そのうちの数値の大きいデータを使う
故障や異常値を想定(当たり前ですが)しているなら最低3-5個程度はセンサーが無いとフェイルソフトな設計とは言えないですよね。
でも実際は他の複数の計器の値も使用しているのでしょうがソフト(制御装置)のロジックの考慮不足になるのかな?
そっちの修正の方が圧倒的に安いですし。
あとは手動操作移行手順の徹底若しくは簡略可あたりで解除を要請するんじゃないですかね。
  1. 2019-04-08 15:28
  2. URL
  3. すあたり #-
  4. 編集

To:よもぎねこ さん

>  メカ音痴なのでどうもよくわかっていないのですが、これは要するに飛行機の自動操縦システムと人間が揉めたという話でしょう?
>
>  自動操縦で対応できない事態になった時、直ぐに解除して人間が操縦する事になっているけど、その解除が上手くいかず、ゴタゴタしているうちに墜落してしまった・・・・・。
>
>  考えてみると自動操縦は、船と飛行機では導入されて久しく、事故もチョイチョイ起きているんですよね?
>
>  2017年に二回立て続けに起きた米軍のイージス艦衝突事故だって、完全に自動操縦のお陰です。
>  自動操縦に任せきりで、人間が前を見ていないから、巨大コンテナ船の接近に気付かないのです。
>
>  マラッカ海峡とか伊豆沖とか、あんな場所で自動操舵に任せきりなんて、あり得ないと思うけど、でも人員にも十二分に余裕があり、ワッチだって民間船に比べたら、無茶苦茶大勢いる軍艦でそれをやっちゃったんですよね。
>
>  こういうの思うと自動操縦は結構怖いですね。
>
>  自動車の自動操縦実用化への道のりは険しいと思います。
>
>  尤も中国なんか既にバスで路上試験をしているそうですが。
>
>  何でよりにもよってバスと思ったら、中国では乗客が運転中の運転手に暴行を働いて事故になるケースが多いので、運転手がいない方が安全と言うコンセンサスがあるからと言います。
>
>  なるほどこれなら世界の自動車会社が、中国に進出したがるわけです。
>  
>  こんな実験は他の国では絶対できませんから。



今回の問題は完全な自動操縦と言うより「人間の操縦の補助をする装置の誤動作」が原因ですね。
そしてその問題の根っこにある物は
1) 設計段階での完全な手抜き・・・恐らくライバルに勝つための開発期間短縮が原因
2) パイロットや整備士への教育訓練不足
3) ユーザーからの問題指摘に対し、対策が全く行われていない。

さらに奥を見ていくと、アメリカの航空会社へは内緒で取り扱い方を説明していた形跡があるが、他の国の航空会社には知らん顔をしていた。多分根っこには白人至上主義が潜んでいるようです。

こんな事でこの問題をきっかけにして、ものづくりの思想にまでさかのぼる問題になると見ています。
それからボーイングは適当のお茶を濁して逃げ切りを図ろうとしたと思うのですが、大いなる誤算は訴訟を始めたのがラルフ・ネーダーだったこと。まさかネーダーの姪の子どもが157人の死者の一人だったとは、偶然とは恐ろしいものです。
50年前、当時世界最大のメーカーだったGMとフォードをコテンパンにやっつけたネーダー。今度はオーイングがその相手になりますね。
  1. 2019-04-08 16:33
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
  4. 編集

Re: 命の値段

> ・迎え角センサーを2個搭載
> ・そのうちの数値の大きいデータを使う
> 故障や異常値を想定(当たり前ですが)しているなら最低3-5個程度はセンサーが無いとフェイルソフトな設計とは言えないですよね。
> でも実際は他の複数の計器の値も使用しているのでしょうがソフト(制御装置)のロジックの考慮不足になるのかな?
> そっちの修正の方が圧倒的に安いですし。
> あとは手動操作移行手順の徹底若しくは簡略可あたりで解除を要請するんじゃないですかね。



センサーが2個だったこと自体が可笑しいですが、百歩譲って2個だったとしても、2個のセンサーの値が食い違ったらその時点でシステムを止めるべきだったと思います。
多分大きなエンジンを搭載することになって、簡単な手直しで行けるだろうと高を括って実際飛ばしてみたら異常な動きが出てきた。それで急遽センサーを追加し、ソフトの手直しを始めた。こんな事だと思います。
このセンサーは多分オリジナル設計では元々1個は有った。それを2個にしただけ。こんな事なのでしょう。

そんな時点でDR(デザインレビュー)をやれば、あんな可笑しなソフトにはならなかったと思うのですが、完全な手抜きだったと思います。

トヨタやホンダが業績拡大の過程で問題が多発した時、社長を交代させ、ものづくりの思想から転換を図った。そして今日がある訳ですが、ボーイングも全く同じことが言えるようです。
これを命の値段と言う切り口でとらえるのも正鵠を射たことと思います。

  1. 2019-04-08 16:47
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
  4. 編集

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する