2018-04-28 16:42

朝は「あさ」か「あした」か


 なぜ「朝」を「あした」と読むかは寡聞にして知らない、こんな書き出しで始まるコラムが読売新聞(朝刊1面、編集手帳 4月24日)に載っていた。まさか編集手帳士が「あした」を知らなかったとも思えないので、この後をつなぐため惚けて見せたと思うが、時の概念というのは大変難しい。

私の失敗談も含めてそんな「あした」の話を書いてみたい。


これが編集手帳
2018-4-28読売新聞編集手帳 

4月24日 編集手帳
2018年4月24日
 なぜ「朝」を「あした」と読むかは寡聞にして知らない。論語に<朝(あした)に道を聞かば、夕べに死すとも可なり>という一節がある
◆朝(あさ)どう生きるかを悟れば、夕方に死んでも後悔はない――との意味だが、映画『男はつらいよ』で寅さんが「朝」を「あした」と受け取ったまま、この一節を披露する場面がある。あした道を聞こうと思っていたら、夕方に死んじまったと
◆少し先にどんなトラブルが待つか、人には分からない。命にはかかわらずとも、思いがけず大けがをした居酒屋社員の男性の訴えを本紙社会面(23日東京版)で読んだ
◆ある年の12月、上司の誘いを断り切れず、休日をさいて忘年会に参加した。1次会のあと、カラオケ店での2次会が午前2時半から。その席で酔った同僚から暴行を受け、肋骨ろっこつを折る重傷を負った。東京地裁は私的な会合とは認めず、責任は会社にあるとして賠償を命じたという
◆もし防げるとしたら、宴会の“強制”などの旧弊に物言える雇用主だけだろう。組織管理は往々「あした道聞かば」では遅い。寅さんは勘違いのようで、じつは道理を述べている。
<引用終り>


所でこんな歌を知らないだろうか、。
浜辺の歌



 「あしーた~はーま~べーぇーをー♪、さ~まーぁーよーえ~ばー♪」。「ー」はまっすぐ伸ばして、「~」は細かく動きながら伸ばす。少ない言葉に起伏のある複雑なメロディです。
でも名曲ですね。

そして誰でも子どもの頃にこの歌を歌いながら、「あした」の話だろ、どうして今日さまようんだろう?、こんな疑問を持ったのではないか。

一寸そんな所を手元の広辞苑(昭和48年の第二版第七刷、古い!)を見てみるとこんな風にかいてある。

あした【朝】 ❶(古代には昼間を中心にした時間の言い方と、夜間を中心にした時間の言い方があり、「あした」「ゆうべ」「よい」「よなか」「あかとき」「あした」の最終の部分)朝①夜が終り明るくなって暫くの間。旦。②夫が来て泊っていった翌朝。また夜中に何か事が有った、その翌朝
❷あす。明日。・・・以下略

ではもう一つの言い方「あさ」はどうなっているかというと、
あさ【朝】(古代には昼間を中心にした時間の言い方と、夜間を中心にした時間の言い方とがあり、「あさ」は昼間を中心にした「あさ」「ひる」「ゆう」の最初の部分)夜明けからしばらくの間、また、正午。までの間・・・以下略

こんな風である、漢字で書けば「朝」の一字だが、日本語は「あした」と「あさ」、この二つの言い方が有り、意味が微妙に違う。
「あした」は夜が明けてしばらくの間だが、「あさ」は夜が明けてからでいいが午前中いっぱいは朝で良い、こんな違いがあるようだ。
編集手帳で論語の<朝(あした)に道を聞かば、夕べに死すとも可なり>を引いて、漢字の朝を「あした」と読ませているが、論語原文(里仁第四の八)は「子曰、朝聞道、夕死可矣」であり、読みは「あさ」でも「あした」でも構わないのだろうが意訳で「あした」になっている。
編集手帳士はその後ろのことを言いたいために無理やり話を捻じ曲げたのだろうが、こんな事は今はネットでいくらでも調べられる。もっとキチンと調べて書いて欲しいものだ。


 所で時の概念について、私のタイでの経験を少し。
一日が24時間であることは誰でも知っている。そしてその24時間を二つに分けて深夜0時で日付けを変え、そこから正午まで12時間を午前、正午以降を午後と称して、何時と言っている。これ以外に午前午後では不便なので、1日を24時間制で言うことも有る。(13時とか20時とか言いますね)

ではタイである。
タイでの時間は6時間で0に戻る言い方をしている。1時、2時・・5時、その次6時は又0時になる。これだけでは何がなんやらわからないので、午前午後と同じように、タイの時刻は最初の何時、朝の何時、午後の何時、夜の何時、こんな言い方になる。但し特に午前7時~午前11時はビジネスでよく使う時間帯なので例えば午前8時は本来のタイ語は「朝の2時」なのだが「朝8時」という事が一般的になってきた。

タイに行ったらすぐにこんな事が有った。日本人用の運転手がタイ語の分かる日本人の所に飛んできた。「ミスター〇〇が明日7時に迎えに来いと言っているが、朝の7時なのか夜7時なのか分からないので聴いてほしい」と。
まあこの程度なら笑い話で済むのだが、私もこんな経験が有る。
夕方、運転手に「明日の朝4時の来てくれ」と言っておいたのだが来ない。急用だったので大騒ぎだったのだが、如何してこなかったのか聞いてみた。
その運転手にとって今日というのは夜明けから翌日の夜明けまで。だからまだ真っ暗な午前4時というのは「今日」と理解していた。
そこでスタッフなどに聞き込んでみた。「今日と明日の境目はどこか」。結果高学歴の都会人スタッフは午前0時が境目で、それを超えると日付が変わるときちんと理解していた。しかし主に田舎出身のワーカークラスはそこがあいまい。明日の朝、真っ暗なうちは今日、明るくなったら明日と思っている者が少なからずいた。

そういえば日本でもマスコミ人などは25時とか26時などと言いますね。
私の見ている衛星テレビ「クラシカジャパン」の番組表などは、例えば本日4月28日の番組は29日の午前5時までが28日の番組欄に記載されています。

たかが時刻表示一つでも世の中多様な時代になったものです。
そういえば「朝日」となると、将来の辞書には、日本を貶める不逞の輩の巣窟だったが今は無い、こんな事が書かれるかもしれませんね。

  1. 社会一般
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コメント

意味の派生と派生語の誕生

もともと「朝(一日の始まり)」と「明日(次の日)」は近い概念で、昔ははっきりと区別されていなかったのが、時代が下るにつれて異なる概念だと意識されるようになって、使い分けられるようになったのでしょう。

私が知っているところでは、ドイツ語とスペイン語では、今でも「朝」と「明日」は同じ単語です。翻訳サイトを使って調べたところ、ドイツ語と同系統の言語であるスウェーデン語や、スペイン語と同系統の言語であるポルトガル語でも「朝(一日の始まり)」と「明日(次の日)」は非常に似ている単語でした。

ドイツ語

朝    Morgen

明日   Morgen

明日の朝 Morgen früh(früh = 早い)

スウェーデン語

朝    Morgon

明日   Imorgon

明日の朝 Imorgon morgon

スペイン語

朝    Mañana

明日   Mañana

明日の朝 Mañana por la mañana(por la = for the)

ポルトガル語

朝    Manhã

明日   Amanhã

明日の朝 Amanhã de manhã(de = of)

これら以外のヨーロッパの言語でも、やはり元々は「朝」と「明日」は同じ単語だったのが、どこかの時代で全く違う形の新しい単語が生まれて、使い分けられるようなったなったみたいですね。

ちなみに「明日」という漢字は「あす」と読むと常用漢字で定められています。テレビのニュースや天気予報では「あしたの天気」とは言わずに「あすの天気」というのは、そのためです。
  1. 2018-04-29 08:15
  2. URL
  3. かんぱち #vF6NeGQU
  4. 編集

「編集手帳」編集者は精神年齢12歳か。

>もし防げるとしたら、宴会の“強制”などの旧弊に物言える雇用主だけだろう

「飲み会」が会社のオフサイトミーティングであると認定されたのだと思いますが、オフサイトミーティングと認定されたら、なぜ会社の責任になるのか、事情を知りませんのでよく解りません。
アメリカはオフサイトミーティングが盛んなようです。アメリカのテレビドラマを見ると、このオフサイトミーティングをよくやっています。高級レストランで食事をしながらというのもありました。何だ社用族かよ、オレたちは自腹で飲み会だぞと言いたくなります。
東京帝国ホテルの地下にお寿司屋さんがあります。高級寿司屋さんですが、一度接待で行ったことがあります。アメリカ人のビジネスマンと思しき連中が数人、背広にネクタイで一人で不器用に箸を使って食べているのを見かけました。帰りがけにクレジットカードを出しています。「会社のクレジットだろうな」と思いながら、アメリカにも社用族は沢山いるんだなと思いました。私も似たようなもんか(笑)。
またまたアメリカのテレビドラマですが、上司の誕生パーティをやるんですよ。フランスのドラマでもやってました。これなどオフサイトミーティングというよりゴマすりミーティングじゃないかと思うんですが。
こういうのも旧弊ですかね。何だアメリカやヨーロッパは旧弊だらけじゃないか(笑)。
日本の新聞記者と呼ばれる人種を見ていますと、つくづく精神年齢12歳だなあという気がしてきます。



  1. 2018-04-29 10:02
  2. URL
  3. 縄文人 #wM6nolEE
  4. 編集

Re: 意味の派生と派生語の誕生

> もともと「早朝」と「明日」は近い概念で、昔ははっきりと区別されていなかったのが、時代が下るにつれて異なる概念だと意識されるようになって、使い分けられるようになったのでしょう。
>
> 私が知っているところでは、ドイツ語とスペイン語では、今でも「朝(早朝)」と「明日」は同じ単語です。翻訳サイトを使って調べたところ、ドイツ語と同系統の言語であるスウェーデン語や、スペイン語と同系統の言語であるポルトガル語でも「朝(早朝)」と「明日」は非常に似ている単語でした。
>
> ドイツ語
>
> 朝    Morgen
>
> 明日   Morgen
>
> 明日の朝 Morgen früh(früh = 早い)
>
> スウェーデン語
>
> 朝    Morgon
>
> 明日   Imorgon
>
> 明日の朝 Imorgon morgon
>
> スペイン語
>
> 朝    Mañana
>
> 明日   Mañana
>
> 明日の朝 Mañana por la mañana(por la = for the)
>
> ポルトガル語
>
> 朝    Manhã
>
> 明日   Amanhã
>
> 明日の朝 Amanhã de manhã(de = of)
>
> これら以外のヨーロッパの言語でも、やはり元々は「朝」と「明日」は同じ単語だったのが、どこかの時代で全く違う形の新しい単語が生まれて、使い分けられるようなったなったみたいですね。
>
> ちなみに「明日」という漢字は「あす」と読むと常用漢字で定められています。テレビのニュースや天気予報では「あしたの天気」とは言わずに「あすの天気」というのは、そのためです。




凄い話ですねえ。博識なところ、感服しました。
確かに日本語でも「あさ」と「あす」は似ていますが、もともと「あす」は「あさ」が転じたもの、或いは「明かす(アカス)」の略称なので、言葉は民族が全く違っても概念が似ている言葉は似てくる。そんな事なのでしょう。

いやあ、改めて言葉の面白さに感心するばかりです。

しかしこんな所が有ると、ドイツ語などは難しい概念は長々と話さないと分からない。ドイツ語の単語は長ったらしいのですが、こんなところに原因が有るのでしょうね。
そうしてみると日本語は漢字の訓読みを発明して、その難しい所を上手く逃げている。
高島俊男氏の「漢字と日本人」にはそんな所を日本人は会話の中で同音異義語が出てくると、頭の中でちらっと漢字を思い浮かべて意味を理解している、こんな事を言っています。
例えば、あるお母さんの会話、「あの子は第一志望のコーコー(ちらっと高校)に入ってくれた、本当に親コーコー(ちらっと孝行)な子です」、こんな会話が成り立つと書いています。面白いですね。
  1. 2018-04-29 16:38
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
  4. 編集

Re: 「編集手帳」編集者は精神年齢12歳か。

> >もし防げるとしたら、宴会の“強制”などの旧弊に物言える雇用主だけだろう
>
> 「飲み会」が会社のオフサイトミーティングであると認定されたのだと思いますが、オフサイトミーティングと認定されたら、なぜ会社の責任になるのか、事情を知りませんのでよく解りません。
> アメリカはオフサイトミーティングが盛んなようです。アメリカのテレビドラマを見ると、このオフサイトミーティングをよくやっています。高級レストランで食事をしながらというのもありました。何だ社用族かよ、オレたちは自腹で飲み会だぞと言いたくなります。
> 東京帝国ホテルの地下にお寿司屋さんがあります。高級寿司屋さんですが、一度接待で行ったことがあります。アメリカ人のビジネスマンと思しき連中が数人、背広にネクタイで一人で不器用に箸を使って食べているのを見かけました。帰りがけにクレジットカードを出しています。「会社のクレジットだろうな」と思いながら、アメリカにも社用族は沢山いるんだなと思いました。私も似たようなもんか(笑)。
> またまたアメリカのテレビドラマですが、上司の誕生パーティをやるんですよ。フランスのドラマでもやってました。これなどオフサイトミーティングというよりゴマすりミーティングじゃないかと思うんですが。
> こういうのも旧弊ですかね。何だアメリカやヨーロッパは旧弊だらけじゃないか(笑)。
> 日本の新聞記者と呼ばれる人種を見ていますと、つくづく精神年齢12歳だなあという気がしてきます。



アメリカも社用族は沢山いますね。ただ最近公務員は公務員倫理規定で接待費の規制がかかり、ワシントンやニューヨークの高級レストランが苦境に陥ったと聞いたことがありますが、今はどうなったでしょうか。

それからご指摘の精神年齢12歳、これは間違いなくそうだと思います。
原因は現場で汗を流すことをしてこなかったこと。現場に出ていけば頭で考えたことが実際はどうなのかわかります。
これが欠けた連中は誰であれダメですね。
  1. 2018-04-29 17:11
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
  4. 編集

Morgen/morgen/morgens

ドイツ語の場合ですが、「Morgen」(あさ)、「morgen」(あした)と使い分けています。Morgen(あさ)が大文字ではじまるのは名詞だからです。「あした」という概念はしかし名詞ではなく時刻、様子、場所などを示す副詞です。面倒なのは「毎朝」という意味で「morgens」という言い方があることです。理屈はともかくそのまま呑み込むのが語学学習の肝であります凹凸(^^♪
  1. 2018-05-03 15:12
  2. URL
  3. 丸山光三 #S/NbrHps
  4. 編集

Re: Morgen/morgen/morgens

> ドイツ語の場合ですが、「Morgen」(あさ)、「morgen」(あした)と使い分けています。Morgen(あさ)が大文字ではじまるのは名詞だからです。「あした」という概念はしかし名詞ではなく時刻、様子、場所などを示す副詞です。面倒なのは「毎朝」という意味で「morgens」という言い方があることです。理屈はともかくそのまま呑み込むのが語学学習の肝であります凹凸(^^♪



お久しぶりです。コメント有難う御座います。
なる程、そんな使い分けだったんですね、納得しました。
ドイツはこれから一年で最も美しい時期ですね。そして夜明けがどんどん早くなる。
ドイツでは夜明けの時刻は季節でどんどん変わるので、朝という概念と夜明けという概念が結びつかないんでしょう。
そんな背景が言葉に出てきたのかなと、ふと思いました(勝手な思い込みかも知れませんが・・・)。
  1. 2018-05-03 21:37
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
  4. 編集

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