2017-06-25 15:35

IT企業が恐れるラジアルタイヤの教訓

 WSJの社説で「IT企業が恐れるラジアルタイヤの教訓」という記事があった。
ラジアルタイヤの教訓と言っても、もう四十年以上も前の話。おそらく皆さんは初耳の話だと思う。私は個人的に車に乗り始めた当初からラジアルタイヤを使っており、多分私の住む愛知県では最初のユーザーの一人。そんな事でこのラジアルタイヤの教訓は良く分かるので、取り上げてみました。物作りに携わる者として、もっと良いものを作ろうとするとこんな矛盾にぶつかる。そんないい例かと思います。

本題に入る前にそのラジアルタイヤとバイアスタイヤの違いをこんな図で説明
2017-6-25ラジアルタイヤとバイアスタイヤ
https://www.goodyear.co.jp/knowledge/radial_bias.html


それではそのWSJの社説を。

<以下引用>
http://jp.wsj.com/articles/SB10372492675706814214504583188400241193718
オピニオン
【寄稿】IT企業が恐れる「ラジアルタイヤ」の教訓
買い替えサイクルが延びたスマホやPC、メーカーは適応できるか

By Andy Kessler
2017 年 6 月 5 日 18:02 JST

――筆者のアンディ・ケスラー氏は元ヘッジファンドマネジャーでWSJの寄稿者

***

 情報技術(IT)企業のトップたちが恐れていることを知りたいだろうか? それは中国の競合企業ではなく、「ワナクライ」といった「ランサム(身代金)ウエア」でもなく、第2、第3のマーク・ザッカーバーグ氏によって自分たちの存在が消されてしまうことでもない。彼らが恐れているのは、「ラジアルタイヤ」だ。

 1970年頃までほぼすべての自動車やトラックは、ラバー製トレッドの内側にナイロン製のベルトが30度から45度の角度で斜めにクロス配列された「バイアスタイヤ」を装着していた。この作りによってバイアスタイヤは側面が強化されただけでなく、製造価格も低く抑えられていた。ただし1万2000マイル(約1万9000キロ)の走行ごとにタイヤ交換が必要なのが難点だった。

 そこに登場したのが、 ミシュラン が1949年に発表したラジアルタイヤだ。スチール製のベルトが90度の角度で編み込まれたラジアルタイヤは、より幅が広く、放熱性が高く、安全性も優れている。製造価格はバイアスタイヤよりも少し高めだが、少なくとも4万マイルの走行が可能だ。

 ラジアルタイヤを装着した形で初めて米国内で売られたのは、1970年製のリンカーンコンチネンタルだった。その4年後には、米タイヤ製造大手 グッドイヤー・タイヤ ・アンド・ラバーはラジアルタイヤのみの製造に切り替えた。その他の企業は波に乗り遅れ、手痛い失態を演じた。1970年代の終盤には、ラジアルが車用タイヤ市場の100%を実質的に占有するまでになった。

買い換え周期の変化

 ここで話をシリコンバレーに移してみたい。1980年代から1990年代にかけての技術革新はめざましく、パソコンは数年ごとに買い換えられ、まるで消耗品のように扱われていた。だが進歩のスピードが遅くなるにつれ、パソコンの寿命は延び、結果的にパソコンを新たに購入する消費者の数も減っていった

 ビル・ゲイツ氏は1991年にこのことを危惧していた。同氏は当時のインタビューで「ラジアルタイヤが発明された際も、(中略)消費者が車をより多く運転するようなことにならなかったため、生産能力を向上させる必要性は極端に減り、すべてがめちゃくちゃになった。タイヤ業界は今も混乱が続いている」と述べている。

 ゲイツ氏はITバブルの頃にも、「光ファイバーやワイヤレス技術について読むたびに、『これがラジアルタイヤになるような気がする』と自分に言い聞かせている」と発言。「ラジアルタイヤの寿命が長いからといって、消費者はそれまでの4倍の距離を走行するようになったか? 答えはノーだ。産業が縮小しただけだ」と指摘した。

 読者のみなさんが最後にパソコンを買い換えたのはいつだろうか? まさに今、恐れていた事態が到来したと言えるだろう。パソコンは延々と「走り」続けているのだ。パソコンの出荷台数は2011年に3億6500万台まで伸びてピークを迎えたが、その5年後には約30%減の2億6000万台まで落ち込んだ。IT企業は今も製品のパフォーマンス向上やコスト面の削減に取り組むものの、それはパソコンではなくクラウド技術や人工知能(AI)、そして音声認識技術の向上を目的としたものだ。

スマホがいらなくなる未来も?

 タブレット端末がパソコン販売台数の減少を招いたのも事実だが、そのタブレット端末の出荷台数もピークを過ぎている。スティーブ・ジョブズ氏が「iPad(アイパッド)」を発表したのは2010年で、2014年には6800万台のiPadが出荷された。昨年はそれが3割減の4500万台にまで落ち込み、今年はさらに出荷台数が減ることになりそうだ。これらタブレット端末は摩耗する商品ではない上、新たに発表されるタブレット製品は買い換えを促すほどの新たな機能やアプリを搭載していない。まさにラジアルタイヤなのだ。

 スマートフォンについても同じことが言えるだろう。「iPhone(アイフォーン)」が2007年に発表された際は高い注目を集めた。ガラス面の裏にはコンピューターが搭載され、利用者はタップやフリップ、ピンチで操作できる。まさに「Think Different(シンク・ディファレント)」を体現する製品だったと言える。その後アップルは大きなスクリーンのiPhoneを加え、グラフィックを向上させ、ポリカーボネート製の外枠に変更し、指紋認識センサーを加え、圧力センサーも加えたディスプレーや前面カメラ、そして音声認識機能「Siri(シリ)」も付け加えた。昨年7月までの累計で10億台のiPhoneが売れ、その多くは早い周期で端末を買い換える消費者の手に渡っていった。

 だがiPhoneの販売台数は2015年以降、おおむね横ばいの状況が続く。スマホの機能が充実し、2年ではなく3年から4年はもつようになったのだろうか? 利用者に買い換えを促すには、何が必要なのだろうか? iPhoneの発売から10周年という節目を迎えた今年の秋に「iPhone8」が発表されることは、すでに耳にしたかもしれない。誰に聞いても、素晴らしい製品になりそうだ。業界の事情通によれば、iPhone8には サムスン電子 の「ギャラクシーS8」に搭載されているような端から端までの大型のディスプレーなど、クールな機能が搭載される。だがそのS8は最初の1カ月で500万台しか売れなかった。2014年に発表された「ギャラクシーS4」は、最初の1カ月で1000万台が売れている。

「マックルーマーズ」によると、ワイヤレス充電機能が加わる可能性があるほか、位置や深度の測定ができる赤外線の3Dセンサーを備えたカメラを組み込むことで、顔認識や虹彩スキャン、そして拡張現実(AR)に対応するようになるかもしれない。だが高まる期待に応えるにはこれで十分だろうか? 新iPhoneの価格は1000ドル(約11万円)に達するとも言われている。多くの人の目には、iPhone7が少し使われただけのラジアルタイヤのように映るのではないだろうか。

 パソコンと同じように、業界の技術面での進歩は別の場に現れている。アマゾン・ドット・コムの「エコー」やグーグルの「ホーム」に続き、間もなくアップルが単独で動作する「シリ」を搭載した機器を市場に投入するとみられている。音声認識技術が向上するペースを考えれば、スマホを必要としない時代がくるかもしれない。そもそもディスプレーを利用することが時代遅れで、モトローラが作っていたような折りたたみ式の携帯電話が復活することも考えられる。つまるところ、空飛ぶ車が実現すれば、たとえラジアルであろうとタイヤそのものが不必要になるのだ。

<引用終り>

読んでみるとなるほどですね。私も携帯電話などはもう随分長く買い替えていません。またパソコンもそうですね。

所で最初のライアルタイヤの話ですが、私は車に乗り始めた当初からラジアルタイヤを使っていました。

最初はこんな車から
2017-6-24KE10 
初代カローラの最初期モデル。当時は2ドアセダンだけでした。

タイヤはもちろん普通のタイヤ(バイアスタイヤ)が付いていましたので、それを外して当時唯一のラジアルタイヤ、ミシュランXに取り換えました。この当時はラジアルタイヤという名前も知られておらず、ラジアルタイヤの特性でサイドウォールが膨らむため、信号待ちなどでパンクしてますよとよく注意されたものです。そして寿命は10万キロまで使えました。バイアスタイヤで運転のうまい人で3万キロくらい、荒い運転の人だと7,8千キロで交換せねばいけないので、寿命の長さを実感したものです。(その後今日までずっとタイヤだけはミシュラン一筋・・・)

そして引用文にあるように70年代に入り、タイヤがラジアルに大転換の時代が来ました。実はタイヤの変更にはクルマ側でもそれなりに変更が必要で(例えばトーインが違う)、整備工場の教育も含め、結構変更は大変だったようです、
そしてラジアル化が一段落したころ、巷のタイヤ屋さんから悲鳴が上がりました。ラジアル化でタイヤの寿命が延び、タイヤ屋で交換する補修用タイヤの売り上げが激減したのです。このことはタイヤメーカーの経営も直撃しました。タイヤメーカーは新車組付け用のタイヤはぎりぎりのコストで納入しシェアー確保。補修用のタイヤで利益を上げて全体のバランスをとるという価格戦略だったのです。上掲引用文でビル・ゲイツが「すべてがめちゃくちゃになった」と言っているのはこの価格戦略の話も関連していると思います。


結論です。
こんな矛盾は「もっと良いものを作ろう」とすると必ず、大なり小なり出てきます。これを避けていては競争には勝てない。次のステップはコストダウンです。
口で言うのは簡単ですが、私も永年これで苦労してきました。しかしこの苦労は永遠に続く。そんな覚悟が必要です。
WSJの記事を見て、こんな事を考えた次第です。

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コメント

 バイアスタイヤは今でも自転車屋オートバイのタイヤとして生き残っています。
  1. 2017-06-25 22:00
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  3. ご隠居 #-
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あなたと行こ~うハイウェイ~ラジア~ルラジア~ル ブリヂストンラジアルタイヤ~

最近、昔のCM曲を思い出して、そう言えば「ラジアル(タイヤ)」ってあったなぁ…なんて考えていましたが、標準化したので付けるまでもなく”消えた”言葉だったんですね。個人的にはバイアスの方が目新しくて(オーディオ雑誌で見たのが80年前後、「認知~」は最近)。

以下は降雪地のスタッドレスタイヤについての私見です。
札幌だとミシュランよりBS一択ですかね。量販店の南朝鮮製などは夏タイヤでも撥水性が悪くハイドロプレーニング現象を起こしやすいそうで、そんな技術力のメーカーのスタッドレスはちょっと考えられない。これは四輪で最高速度360㌔出したことのあるという知り合いの女性(各社のスタッドレスをカニ走りでチェック)の助言を元にしています。ただ滑る時はなんだって滑るというのも弁えなければなりませんが。
  1. 2017-06-26 03:38
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  3. ノッチmrng #-
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To:ご隠居 さん

>  バイアスタイヤは今でも自転車屋オートバイのタイヤとして生き残っています。



確かにそうでした。マウンティンバイク愛好家のご隠居 さんならよくご存じ。
でもバイクのタイヤはあのパンクし易さは何とかならないものですかねえ。長男がロードバイク愛好者なのですが、しばしばパンクする。一寸遠出するときはスペアのチューブまで持って行っています。
  1. 2017-06-26 07:48
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  3. 短足おじさん二世 #-
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Re: あなたと行こ~うハイウェイ~ラジア~ルラジア~ル ブリヂストンラジアルタイヤ~

> 最近、昔のCM曲を思い出して、そう言えば「ラジアル(タイヤ)」ってあったなぁ…なんて考えていましたが、標準化したので付けるまでもなく”消えた”言葉だったんですね。個人的にはバイアスの方が目新しくて(オーディオ雑誌で見たのが80年前後、「認知~」は最近)。
>
> 以下は降雪地のスタッドレスタイヤについての私見です。
> 札幌だとミシュランよりBS一択ですかね。量販店の南朝鮮製などは夏タイヤでも撥水性が悪くハイドロプレーニング現象を起こしやすいそうで、そんな技術力のメーカーのスタッドレスはちょっと考えられない。これは四輪で最高速度360㌔出したことのあるという知り合いの女性(各社のスタッドレスをカニ走りでチェック)の助言を元にしています。ただ滑る時はなんだって滑るというのも弁えなければなりませんが。




懐かしい歌ですねえ。有りましたよね、そんな歌が・・・。でもラジアルタイヤという言葉自体がもう死語なんですね。

北海道のスタッドレスの状況は良く分かりました。何せ北海道は世界有数の先進国の中の極寒地帯。自動車メーカーや部品メーカーが一杯テストコースを作るわけです。
私がちょっと気にしているのが、最近車が格段に良くなって、ABSだのトラクションコントロールだのが付いてきたのはいいのですが、ドライバーの腕前がそれに追いつかない。つまり荒っぽい人が一部ではありますが結構いる。これが気になります。
  1. 2017-06-26 09:32
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  3. 短足おじさん二世 #-
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>>でもバイクのタイヤはあのパンクし易さは何とかならないものですかねえ。長男がロードバイク愛好者なのですが、しばしばパンクする。一寸遠出するときはスペアのチューブまで持って行っています。


はめれるなら、チューブレスに履き替えればどうでしょうか。
  1. 2017-06-26 12:45
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  3. NINJA300 #/xzFVZWc
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To:NINJA300 さん

> >>でもバイクのタイヤはあのパンクし易さは何とかならないものですかねえ。長男がロードバイク愛好者なのですが、しばしばパンクする。一寸遠出するときはスペアのチューブまで持って行っています。
>
>
> はめれるなら、チューブレスに履き替えればどうでしょうか。


長男は自転車とオートバイの両方乗っていまして、どちらもパンクし易いですね。
オートバイの方は10Rなのでチューブレスですが、やはりゴムが薄いせいだと思いますが、パンクは多い。
自転車はあのゴムの薄さでは仕方ないのかも知れません。
四輪の場合はパンクし易い走り方が分かっているので気をつけることができるのですが、二輪の場合は難しいようです。
  1. 2017-06-26 17:29
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  3. 短足おじさん二世 #-
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チューブレスもパンクしますが、圧の落ち具合がゆっくりなのと、修理キットと空気入れがあればなんとかなるとこは、チューブよりも優れていると思います。
ベトナムを走っているバイクのほとんどはチューブタイヤですが、一方でバイク屋がたくさんあることです。日本ではバイク屋がなかなかないですから。
  1. 2017-06-27 19:13
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  3. NINJA300 #/xzFVZWc
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To:NINJA300 さん

> チューブレスもパンクしますが、圧の落ち具合がゆっくりなのと、修理キットと空気入れがあればなんとかなるとこは、チューブよりも優れていると思います。
> ベトナムを走っているバイクのほとんどはチューブタイヤですが、一方でバイク屋がたくさんあることです。日本ではバイク屋がなかなかないですから。



日本ではバイク屋は絶滅危惧種並みに減ってしまいました。
昔はそんな所に若者が集まってバイク談義をしたもので、そんな風土が日本のオートバイや車の強さだったんですがね。
でも最近またそんな空気が復活してきたと感じています。
昔は車やバイクのレースというとそう簡単にはやれなかったんですが、最近あちこちにカートレース場ができまして、手軽にカートでレースを楽しめるようになりました。
ベトナム辺りだとそんな空気が残っているのでしょう。ベトナムもこれから大改革が必要でしょうが、そんな若者が力をつけてくると先が楽しみです。
  1. 2017-06-28 07:06
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  3. 短足おじさん二世 #-
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