2016-08-09 11:29

外国産のコメの値段

 外国産のコメがどのようにして日本に入ってきているのか調べてみた。


最初に日本のコメの生産から消費者までの流れの変遷はこうなっている。

2016-8-8コメの流通制度の変遷
ソース
http://www.maff.go.jp/j/study/ryutu_system/01/pdf/data8.pdf

平成20年の資料だが、現在も同じ。

昭和17年から平成7年までが食糧管理法、ただし昔ヤミ米と言っていた時代が長かった、そしてその後は自主流通米と言い換え。建前はともかく本音はいろいろ変化したと思う。

問題は1993年(平成5年)の平成のコメ騒動、これは昔ながらの食糧管理法下での出来事だった。
このとき緊急輸入として200万トン(最終的に250万トン)ものコメをタイから輸入
緊急輸入しておいて、コメは原則輸入しない、こんな理屈は通るわけもなく、同年12月にコメのミニマムアクセスによる無関税輸入を決定。(輸入は1995年から)
それが今日まで続いている。

なお平成のコメ騒動の時、輸入したタイ米が非常に不味かった、そんなことを記憶されている方もいると思う。
この経緯についてタイの食糧庁の係官から直接聞いた話がある。これは次回エントリーします。


さてそのコメのミニマムアクセスにより輸入はこうなっている。

2016-8-8コメの輸入制度
ソース
http://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/pdf/ref_data3.pdf


コメのミニマムアクセスによる輸入は最初42万トン/年から始まり、現在では77万トン/年である。

この資料で左側の部分、コメの関税が778%と書いてあるが、これは事実ではない
事実は、コメの関税は「%」ではなく、キログラム当たりいくらの従量税であり、現在は341円/㎏である。
極端なことを言って、たとえ1円/㎏の値段であっても(ダンピングしてきても)、国内に入れば342円/㎏になる。
コメは一粒たりとも輸入させない、こんな話があるのはこの制度のためである。

では778%と云う関税はどうして出てきたか、この数字を算出したとき、コメの海外相場が44円/㎏くらいだったので、それなら778%に相当する、こういう計算上の数字。今こんな税率が存在する訳ではない。お役人様の国民ダマクラカシ数字である。
なおその44円程度という価格も、多分おいしい主食用のコメも豚のエサ用のコメもゴチャマゼの数字ではないだろうか。

参考までに以下がコメの実行関税の表。
http://www.customs.go.jp/tariff/2016_6/data/j_10.htm

ここを見るとわかるが、コメの関税は原則402円/㎏、WTO協定で341円/㎏、そしてさらに特例で無税、この無税がミニマムアクセス分だ。

このミニマムアクセス輸入米はどのように消費されたのか、過去20年間のデータ

2016-8-8コメMA米の販売状況
ソース:上掲と同じ

ここで見るとわかるが、政府の国家貿易によるミニマムアクセス分のコメ(つまり関税ゼロのコメ)は大部分が飼料用や加工用。
その中で10万トン/年が主食用で、これがSBS方式となっている。
なお、ではその他の輸入米は無いのかと言えば、極めて高額の関税のためほとんど輸入はゼロの様である。


一寸余談
裏の桜さんから沖縄のコメの流通は他都道府県とは違うとのご指摘があった。
調べてみると現在の沖縄のコメ収穫量は3千トン/年程度、県内のコメ自給率は4%ほどである。
しかし沖縄では昭和30年代はコメは3万トン/年くらいは収穫できていた。またアメリカ占領時代は海外のコメが自由に買えたので、主にビルマ産米を食べていた。また沖縄の地酒泡盛はタイ米を使って醸造されている。
こんな事情があるので、沖縄のコメに関しては裏の事情がたくさんありそうだ。しかしこの件は調べても分からないので、疑問とだけ提起しておきます。


次にSBSの入札状況、これは27年度8回の入札の7回目

2016-8-8コメのSBS結果サンプル
ソース
http://www.maff.go.jp/j/seisan/boueki/nyusatu/n_sbsrice/pdf/27_sbs7.pdf

ここで外国からのコメ輸入はアメリカ・オーストラリア・インド・パキスタン・タイの5ヵ国から入っていることが分かる。
また政府の買いの値段と売りの値段両方同時に入札し、売買差額が政府に入る仕組み、この差額分が農家への補助金の源資なんだとか。
そして前回紹介したのだが、この入札が最近不調になっている。海外のコメ価格が上がり、国内のコメ価格が下がっているので、この売買差額がなくなり入札が不調なのだという。

今コメの値段は日本人が普通に食べる「コシヒカリ」のようなおいしいコメ、このようなものを比べると内外価格差は無い
しかし海外には味よりも安ければいい、こんなコメも沢山ある。そんなコメと日本のコシヒカリクラスを比べれば、当然日本のものは高いという話にもなる。これは比較すべきでない、グレード違いを比べたもの。そうみていいと思う。


最後に参考として、 田牧一郎 (田牧ファームズ代表)さんの論考が大変参考になります。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5562?page=1

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6540

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5006



次回は
・タイ米の話
・コメの調理法の話 を取り上げます。
  1. 農業
  2. TB(0)
  3. CM(4)

コメント

こんばんは。

先のエントリの返信も兼ねて。

国の黒いコメ行政を暴く!みたいなエントリになるのかと思ってましたが、実際にその様な趣旨で書かれたかにも読めますが、正直、言わんとされていることがよく分かりませんでした。

ただ、何点か明らかに認識誤りがあるので、恐縮ですがそこだけ指摘させてください。

まず、先のコメントにも書きましたが、コメ騒動とミニマムアクセスは無関係です。

ガットウルグアイラウンドにおいて、工業分野の自由化を求める日本は、農業分野の開放を求める途上国らの要求を一部のまざるを得ず、このとき、それこそ「一粒の輸入もまかりならぬ!」とする農業保護派を説得するために、タイミング良く発生した米騒動を利用しました。ただの建前ですよ。

緊急輸入したから自由化、そんなことあり得ませんから。バターなんてしょっちゅう緊急輸入してますし。

コメの関税778%に何やら疑念を持たれている様ですが、これは世間に分かりやすいよう他の品目に合わせて%表示しただけで、国が従量税を隠したことはありませんし、778%はWTOに定められた計算ルールで算出していますから、「お役人様の国民ダマクラカシ数字」は穿った見方だと思います。

SBS不調について、いつの時期と比較されているのか分かりませんが、少し前までSBSは絶好調でした。

それは外国産が安かったからではなくて、福島原発事故の出荷制限で仕入計画に支障の生じた会社、同じく風評被害を確実に避けられるコメを求めた会社が殺到たこと、そしてコメトレサ法の施行で大手菓子メーカーが出所の分かりやすいSBS米に参入してきたこと等が原因です。

外国産のコメが高くなったと書かれていますが、これは正しい認識ではないです。正しくは、外国産の内の「輸出用」が高くなった、です。

コメは小麦と違い市場が小さいので、作柄により輸出価格はしょっちゅう乱高下しています。今はたまたま高く、一時的なSBSブームも落ち着いてきたので、「外国産が高くなったからSBSが不調になった」様に見えるだけ、という可能性が高いと思いますよ。

最後に、これは認識間違いとするか微妙ですけど、比較すべきグレードについてです。

日本人の好む特殊なコメは生産量が少ないから価格も高く、自由化すれば量産化されて価格は大きく下振れすることが想定されますから、現時点では国際的に一般的なコメと比較することは合理的だと思いますよ。

たとえば、フランスでも100円くらいで豆腐が売られるようになりましたが、それは日本の豆腐とはかなり質が違うものです。日本人好みの豆腐も少量生産されていますが、こちらの価格は4~5倍になります。

どちらの豆腐の価格と比較するのが適切か、私は一般的な豆腐だと思います。量産化すればそちらに近づいていくわけですし。

以上、長々と失礼しました。

  1. 2016-08-09 18:38
  2. URL
  3. no-risu #-
  4. 編集

To:no-risu さん

> 先のエントリの返信も兼ねて。
>
> 国の黒いコメ行政を暴く!みたいなエントリになるのかと思ってましたが、実際にその様な趣旨で書かれたかにも読めますが、正直、言わんとされていることがよく分かりませんでした。
>
> ただ、何点か明らかに認識誤りがあるので、恐縮ですがそこだけ指摘させてください。
>
> まず、先のコメントにも書きましたが、コメ騒動とミニマムアクセスは無関係です。
>
> ガットウルグアイラウンドにおいて、工業分野の自由化を求める日本は、農業分野の開放を求める途上国らの要求を一部のまざるを得ず、このとき、それこそ「一粒の輸入もまかりならぬ!」とする農業保護派を説得するために、タイミング良く発生した米騒動を利用しました。ただの建前ですよ。
>
> 緊急輸入したから自由化、そんなことあり得ませんから。バターなんてしょっちゅう緊急輸入してますし。
>
> コメの関税778%に何やら疑念を持たれている様ですが、これは世間に分かりやすいよう他の品目に合わせて%表示しただけで、国が従量税を隠したことはありませんし、778%はWTOに定められた計算ルールで算出していますから、「お役人様の国民ダマクラカシ数字」は穿った見方だと思います。
>
> SBS不調について、いつの時期と比較されているのか分かりませんが、少し前までSBSは絶好調でした。
>
> それは外国産が安かったからではなくて、福島原発事故の出荷制限で仕入計画に支障の生じた会社、同じく風評被害を確実に避けられるコメを求めた会社が殺到たこと、そしてコメトレサ法の施行で大手菓子メーカーが出所の分かりやすいSBS米に参入してきたこと等が原因です。
>
> 外国産のコメが高くなったと書かれていますが、これは正しい認識ではないです。正しくは、外国産の内の「輸出用」が高くなった、です。
>
> コメは小麦と違い市場が小さいので、作柄により輸出価格はしょっちゅう乱高下しています。今はたまたま高く、一時的なSBSブームも落ち着いてきたので、「外国産が高くなったからSBSが不調になった」様に見えるだけ、という可能性が高いと思いますよ。
>
> 最後に、これは認識間違いとするか微妙ですけど、比較すべきグレードについてです。
>
> 日本人の好む特殊なコメは生産量が少ないから価格も高く、自由化すれば量産化されて価格は大きく下振れすることが想定されますから、現時点では国際的に一般的なコメと比較することは合理的だと思いますよ。
>
> たとえば、フランスでも100円くらいで豆腐が売られるようになりましたが、それは日本の豆腐とはかなり質が違うものです。日本人好みの豆腐も少量生産されていますが、こちらの価格は4~5倍になります。
>
> どちらの豆腐の価格と比較するのが適切か、私は一般的な豆腐だと思います。量産化すればそちらに近づいていくわけですし。
>
> 以上、長々と失礼しました。


色々詳しい話、ありがとうございます。
残念ながら私はコメには明るくないので、黒い内幕暴露などとてもできませんが、それでも知っていることを書いてみます。
最初に
>農業保護派を説得するために、タイミング良く発生した米騒動を利用しました

この件はコメ輸入のいきさつとして、こういう見方もある、確かにそうかもしれません。
しかしいろんな文献を見ても、また当時の記憶でも、日本のコメ緊急輸入は世界中の総スカンを食っていました。
本文でも書いた通り、1993年当時、世界のコメ流通量は1100万トン程度。どの国でもコメは自国内消費で輸出市場には出ていなかったんです。そこへ200万トンとか250万トンとかの輸入。世界から金持ち日本の横暴、こういった非難を浴びました。
そのうえでもコメの部分的な輸入、私は止む無く輸入せざるを得なかった、それが当時の判断だったと思っています。

それから778%の件、こんなものがいまだに数字が生きていることに驚いています。
若し例えば外国のコメが130円/㎏だったら、130円x7.78=1011円の関税がかかるんですか。違いますよね。
778%は昔々のある時点でのコメの価格に対し、341円/㎏の税金をかけたら率にしてこうなった。ただこれだけのものです。
その時だけの計算結果を後生大事にいまだに書いている神経が私には理解不能なんです。

なお今日のエントリーでタイの食糧庁のお役人さんから聞いた話を書きました。ご参考にしていただければ幸いです。
私もコメに関しては素人、至らぬ点があろうかと思いますが、これからもよろしくお願いします。
  1. 2016-08-10 18:33
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
  4. 編集

平成16年(2004年)の改正食糧法により、流通自由化が図られたということで、2001-2006年の小泉内閣の聖域ない構造改革の結果です。
米穀価格形成センターは2011年に廃止されており、青刈りでの生産調整も実質的には終わってます。
これからどうなるかは予想できます。他の業界は既に経験済みですから。
価格が下がるのは大変なことですが、他の商品の多く家電・事務所用品・家庭用小物は海外生産に切り替えました。その結果が地方の空洞化です。
国内生産国内消費が確保できているのは自動車ですね。
自動車は大丈夫ですが、農業も国内生産国内消費を続けていけると思いますが応援しないといけないです。
それに最近は牛肉、豚肉、鶏肉、マトンもえらく安くなりました。まだ、一部の店で実験的にやっているようですが、消費者は「安すぎて怖い」と手を出さないため広がってせん。私は気にしないので、時々、購入しております。




  1. 2016-08-11 11:32
  2. URL
  3. 友遊 #-
  4. 編集

To:友遊 さん

> 平成16年(2004年)の改正食糧法により、流通自由化が図られたということで、2001-2006年の小泉内閣の聖域ない構造改革の結果です。
> 米穀価格形成センターは2011年に廃止されており、青刈りでの生産調整も実質的には終わってます。
> これからどうなるかは予想できます。他の業界は既に経験済みですから。
> 価格が下がるのは大変なことですが、他の商品の多く家電・事務所用品・家庭用小物は海外生産に切り替えました。その結果が地方の空洞化です。
> 国内生産国内消費が確保できているのは自動車ですね。
> 自動車は大丈夫ですが、農業も国内生産国内消費を続けていけると思いますが応援しないといけないです。
> それに最近は牛肉、豚肉、鶏肉、マトンもえらく安くなりました。まだ、一部の店で実験的にやっているようですが、消費者は「安すぎて怖い」と手を出さないため広がってせん。私は気にしないので、時々、購入しております。



さすが友遊 さんはよくご存じ、コメの値下げは20年も前から続いている政策で、そこに変な利権に食いつく蟻どもがいるという構図ですね。
私にはコメもですが牛肉も危機的状況と思っています。
そして最近のアメリカの干ばつを見ているとわかりますが、いくら何を言われようとも食料をアメリカ・オーストラリアなど白人国に頼りすぎるのは危険極まりない。
彼らには信義もなにもありません。あるのは金もうけだけです。
それを承知で付き合うべきですね。
  1. 2016-08-11 21:42
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
  4. 編集

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