2016-05-22 08:11

「現場の限界認めないといけない」、モノ造りで心すべきこと

 「現場の限界認めないといけない」、こんな事をSUBARUの富士重工社長が言っている事が昨日(5月21日)報道されている。
これは三菱自動車の燃費不正に関しての読売新聞の報道なのだが、大変興味深い記事だ。

全文はこんな感じ、5月21日の読売新聞経済面(8面)記事

2016-5-22読売新聞5月21日縮小版

記事は三菱の問題で、そこに同じ自動車メーカーの社長としての考え方を聞かれた際の回答として記事になっている。
大変興味深い話なので、吉永社長の話を引用したい。


<以下読売新聞より引用>
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20160520-OYT1T50168.html?from=ytop_main3


富士重工社長「現場の限界認めないといけない」
2016年05月21日 11時05分

 富士重工業の吉永泰之社長は読売新聞のインタビューに応じ、三菱自動車の燃費偽装問題に関連し、「燃費に限らず、現場が『今の実力では限界』と言ったら、認めてあげないといけない」と述べた。

 目標達成のために経営陣が部下に過度なプレッシャーを与えることを戒めたものだ

 三菱自を巡っては、軽自動車の燃費目標が開発現場にとって重荷となり、不正に手を染めたとみられている。吉永氏は「取り繕う文化はダメだ」と強調。その上で自身については「『(目標を)絶対に達成しろ』とは言わないように気をつけている」とも述べた。

 富士重工業は創業100周年を機に、2017年4月から社名を「SUBARU」に変更する。主に車のブランドとして知られる「スバル」を採用することについて、「規模は小さいが魅力あるブランドになるため、社員の力を結集したい」と狙いを語った。

<引用終り>


目標必達、誰でも一度は言ったり聞いたりした言葉である。
がしかし、この言葉の中にこんな不正問題の真因が潜んでいる。これが三菱問題の真相のようだ。

『今の実力では限界』と言ったら、認めてあげないといけない」
これを安易に認めれば、皆が「出来ません、出来ません」と言いだして、これならサボった方が勝。
しかしそれを、どうしても無理なものを無理やりやらせると不正が起こる。

これは各自動車メーカーがこの問題で散々苦労してきた。
例えばトヨタは生産販売台数にこだわって失敗し、豊田章男社長は「もっといい車を造ろうよ」に目標の大転換を図った。
つい最近もホンダが矢張り「生産販売台数目標にこだわり過ぎた」と反省し、新社長のもと立て直しに取り組んでいる。
VWだって排ガス不正問題の真因はこんな所だ。

そしてこんな問題は意外な問題をクローズアップさせている。
人の評価、企業の評価で減点主義の弊害である。

ある持ち点を持っていて、目標未達だと減点。目標達成してもある範囲は持ち点の範囲なので特別評価しない。
こんな評価システムが結構アチコチに有る。
例えば「休まず働かず」をモットーにしている痴呆公務員などはこの典型だろう。
働かなければ、「ノープレー、ノーミス」で減点されない、だから働かない事が美徳になっている。

目標必達、これが無ければ企業の発展はない、当たり前の話である。
がしかし、そこにはある限度があり、人の能力や経営資源にも限界がある。
そんな事を考えさせられる話である。
  1. 自動車
  2. TB(0)
  3. CM(16)

コメント

 学校のテストがこれですから。
 
 決まった範囲から出題して、できなければ×を付けて減点です。

 しかし子供が学校で習った事以外を、勉強しても評価対象にはなりません。 

 成績の良い子と言うのは、実はこの減点を減らす事に努力してきた子なのです。

 だからこうした高等教育が普及して、こうした学校式の人間評価に慣れた人間が増える程、こうした減点思想が社会を覆う事になります。

 減点思考の問題のもう一つは、学校のテストと同じで、決められた範囲以外での出題ができなくなることです。

 「数学のテスト範囲教科書の123ページから195ページまで」と決めるように、極めて狭くそして極めて常識的で凡庸なレベルで目標を定めてしまうのです。
 
 企業で言えば同業他社が皆やっているような事を、自分達も目標にするのです。

 そうしないと減点法評価の対照になるような目標は作れません。 
 
 だって他の企業が全く思いつかなかった、誰もやっていないような事では、細かい点数評価の基礎になる目安もありませんから。

 だから減点法が普及すると、独創的な目標など設定不能になります。

 しかし学校のテストと同じで、細かい数値まで決めて目標を設定し、それを減点法で評価すると、形式的には大変公正公平であり合理的に見えます。

 だから減点法で高評価を得てきた人達にとっては、堪らない魅力でしょう。 と言うよりそれ以外の評価自体思いつかないでしょう。 
 
 ワタシはこれが日本の活力を奪っている大きな原因だと思います。

 
  1. 2016-05-22 12:52
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

失敗学のすすめ
http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0058pdf/ks0058010.pdf

>新たな事に挑戦して失敗した事を罵倒してはなりませんが、同じ失敗を繰り返す者に対しては厳しく叱責しなければならないでしょうね。
  1. 2016-05-22 17:20
  2. URL
  3. taigen #-
  4. 編集

三菱自動車は論外でしょうが、スズキは良い車だしてるじゃないですか。ドイツ式に杓子定規にやりすぎるのも問題があると思う。
  1. 2016-05-22 18:07
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  3. NINJA300 #/xzFVZWc
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技術者をいぢめるのは技術者

今回の三菱の事例は良く分かりませんが、技術者をいぢめまくるのは技術者上がりの人間が多いということが多いように感じます。小生は航空技術戦史については相当詳しいと自負していますが、大戦時の日本の航空技術の失敗は殆どこれで起きました。

技術の発展は時間的に均等に発展するものではありません。ある時にブレークスルーとなる新理論などが発見され、その理論的進化と周辺技術の向上で一時的に大幅の性能向上を示すことが良くあります。そしてそれを担当した技術者はその功績で出世し。管理職となり後輩を指導する立場になります。

しかしそういうブレークスルーがあったあとは停滞期が来ます。そこで現役の技術者は七転八倒するわけです。即ち、理論だけでなくさらなる機械精度の向上や部品の品質改善などの別の分野の向上を待たねば性能の向上はできなくなります。

しかしこの時上司はどういう対応を取るか、俺ができたんだだからやれば出来る、となるわけです。現役の技術者たちにしても実績のある人間に言われると何も言えなくなる。そこで理論的に未成熟な技術や劣った部品精度で無理な性能向上を図ろうとし皆失敗するという事のオンパレードとなるわけです。旧軍で現場をいぢめたのは会社の技術上がりの重役や軍の技官という連中でした。こういう人たちに出来ませんとはいえないのが現場ですから…

こういう時には本来は営業の出番なんだろうと思います。
三菱で言うならば例えばパジェロミニなんてのは今でも人気です。リニューアルして生産すれば一時的に食いつなげるでしょう。ホンダのNワゴンは燃費はけっしてNo1ではないはずです。しかし車の魅力で売れるのです。ここで食いつなぎ時間を稼いで技術者を助けねばなりません。

旧軍ではこのような無理が祟り飛べぬヒコーキの続出となりました。総合性能では劣ってもきちんと使え、稼働率が良い物を作るほうがなんぼか戦力となったわけです。

軽自動車は確かに経済性で選ぶ車ではあります。でもそれだけで勝負する必要なんてさらさらないでしょう。三菱にしろスバルにしろこれから大会社のように生産量を増やす可能性なんてゼロでしょう。とすればニッチを目指す必要だってあるわけです。そのくらいの時間を稼げなくては生き残りなんて土台無理という気がしてなりません。

技術は技術者の力だけで発展するものではありません。もっと当たり前の常識が必要なんだということは歴史が教えてくれます。
  1. 2016-05-22 18:20
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  3. kazk #cPv2SIBE
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 我が国は現場の能力が高くて、無理が効くのは先の大戦中もそうだったようです。でも現場の限界を上が聞いてくれたら、職場環境が良くなりその方が業績も向上すると思います。確かスバルとマツダは社員満足度が高くて、業績も順調だと聞いたことがあります。
  1. 2016-05-23 18:18
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  3. 都民です。 #-
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 現場の声を聞いてくれる上司がいるなら、仕事もかえってはかどると思います。社員満足度が高い会社や部署は、業績も堅実に伸ばしているそうで、確かマツダがそうだと聞いたことが有ります。

 三菱と日産はこれから上手くいくと良いのですが、社風が違いそうだから大変なような気がします。
  1. 2016-05-23 18:23
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  3. 都民です。 #-
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 失礼いたしました。最初のコメントが失敗したと思って、また送ってしまいました。
  1. 2016-05-23 18:27
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  3. 都民です。 #-
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To:よもぎねこさん

>  学校のテストがこれですから。
>  
>  決まった範囲から出題して、できなければ×を付けて減点です。
>
>  しかし子供が学校で習った事以外を、勉強しても評価対象にはなりません。 
>
>  成績の良い子と言うのは、実はこの減点を減らす事に努力してきた子なのです。
>
>  だからこうした高等教育が普及して、こうした学校式の人間評価に慣れた人間が増える程、こうした減点思想が社会を覆う事になります。
>
>  減点思考の問題のもう一つは、学校のテストと同じで、決められた範囲以外での出題ができなくなることです。
>
>  「数学のテスト範囲教科書の123ページから195ページまで」と決めるように、極めて狭くそして極めて常識的で凡庸なレベルで目標を定めてしまうのです。
>  
>  企業で言えば同業他社が皆やっているような事を、自分達も目標にするのです。
>
>  そうしないと減点法評価の対照になるような目標は作れません。 
>  
>  だって他の企業が全く思いつかなかった、誰もやっていないような事では、細かい点数評価の基礎になる目安もありませんから。
>
>  だから減点法が普及すると、独創的な目標など設定不能になります。
>
>  しかし学校のテストと同じで、細かい数値まで決めて目標を設定し、それを減点法で評価すると、形式的には大変公正公平であり合理的に見えます。
>
>  だから減点法で高評価を得てきた人達にとっては、堪らない魅力でしょう。 と言うよりそれ以外の評価自体思いつかないでしょう。 
>  
>  ワタシはこれが日本の活力を奪っている大きな原因だと思います。


ご指摘の件は私もまったく同感です。
そして長年苦労してきたことでもあります。
この件で別途エントリーしたいと思っています。
その際このコメントも引用させていただきたいと思いますので、ご了承いただくようお願いします。
  1. 2016-05-23 20:03
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  3. 短足おじさん二世 #-
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To:taigen さん

> 失敗学のすすめ
> http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0058pdf/ks0058010.pdf
>
> >新たな事に挑戦して失敗した事を罵倒してはなりませんが、同じ失敗を繰り返す者に対しては厳しく叱責しなければならないでしょうね。


情報ありがとうございます。
この人が最初に失敗学を言い出した時から、いろいろ著書など読んでいます。
ビジネスに関係ない人でもぜひ読んでほしい話だと思っています。
  1. 2016-05-23 20:06
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  3. 短足おじさん二世 #-
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To:NINJA300 さん

> 三菱自動車は論外でしょうが、スズキは良い車だしてるじゃないですか。ドイツ式に杓子定規にやりすぎるのも問題があると思う。



スズキは問題ないでしょう。
どこかよそから指摘されたわけではないし、規定通りの測定方法だって燃費はほとんど変わらない筈(誤差の範囲)。
おそらくこれで終息すると思います。

スズキの問題はフィアットからかうディーゼルエンジンでしょう。
これもボッシュが噛んでますから。
  1. 2016-05-24 05:20
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  3. 短足おじさん二世 #-
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Re: 技術者をいぢめるのは技術者

> 今回の三菱の事例は良く分かりませんが、技術者をいぢめまくるのは技術者上がりの人間が多いということが多いように感じます。小生は航空技術戦史については相当詳しいと自負していますが、大戦時の日本の航空技術の失敗は殆どこれで起きました。
>
> 技術の発展は時間的に均等に発展するものではありません。ある時にブレークスルーとなる新理論などが発見され、その理論的進化と周辺技術の向上で一時的に大幅の性能向上を示すことが良くあります。そしてそれを担当した技術者はその功績で出世し。管理職となり後輩を指導する立場になります。
>
> しかしそういうブレークスルーがあったあとは停滞期が来ます。そこで現役の技術者は七転八倒するわけです。即ち、理論だけでなくさらなる機械精度の向上や部品の品質改善などの別の分野の向上を待たねば性能の向上はできなくなります。
>
> しかしこの時上司はどういう対応を取るか、俺ができたんだだからやれば出来る、となるわけです。現役の技術者たちにしても実績のある人間に言われると何も言えなくなる。そこで理論的に未成熟な技術や劣った部品精度で無理な性能向上を図ろうとし皆失敗するという事のオンパレードとなるわけです。旧軍で現場をいぢめたのは会社の技術上がりの重役や軍の技官という連中でした。こういう人たちに出来ませんとはいえないのが現場ですから…
>
> こういう時には本来は営業の出番なんだろうと思います。
> 三菱で言うならば例えばパジェロミニなんてのは今でも人気です。リニューアルして生産すれば一時的に食いつなげるでしょう。ホンダのNワゴンは燃費はけっしてNo1ではないはずです。しかし車の魅力で売れるのです。ここで食いつなぎ時間を稼いで技術者を助けねばなりません。
>
> 旧軍ではこのような無理が祟り飛べぬヒコーキの続出となりました。総合性能では劣ってもきちんと使え、稼働率が良い物を作るほうがなんぼか戦力となったわけです。
>
> 軽自動車は確かに経済性で選ぶ車ではあります。でもそれだけで勝負する必要なんてさらさらないでしょう。三菱にしろスバルにしろこれから大会社のように生産量を増やす可能性なんてゼロでしょう。とすればニッチを目指す必要だってあるわけです。そのくらいの時間を稼げなくては生き残りなんて土台無理という気がしてなりません。
>
> 技術は技術者の力だけで発展するものではありません。もっと当たり前の常識が必要なんだということは歴史が教えてくれます。


まったく同感です。
多分kazkさんは例えば「誉エンジン」のケースや「五式戦」のケースが念頭にあると思います。
実は「誉エンジン」の設計者は「中川良一技師」。
そして
中川良一は後にプリンスから日産に行き、確か最後は専務だった筈。
その中川良一の誉エンジンに関しての思い出話を読んだことがあります。いいことと苦労話だけで、反省がなかったですね。
中川良一はその後のプリンス、日産の栄光と挫折、その両面を象徴する人物だったと思います。

私はそんな失敗の中から自分の仕事の「あるべき姿」を模索し続けてきました。
どうして負けたんだろう、その失敗を繰り返さないためには・・・。
この思いは今でも変わりません。
  1. 2016-05-24 05:41
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  3. 短足おじさん二世 #-
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To:都民です さん

>  我が国は現場の能力が高くて、無理が効くのは先の大戦中もそうだったようです。でも現場の限界を上が聞いてくれたら、職場環境が良くなりその方が業績も向上すると思います。確かスバルとマツダは社員満足度が高くて、業績も順調だと聞いたことがあります。


確かにご指摘の通りです。
そして、そのことに「功と罪がある」。
私の仕事の原点は「日本が戦争で負けた理由をモノづくりの面から考えよう」というものでした。
その第一歩が品質管理で、若いころ必死に勉強したものです。

私は愛知県在住ですが、タイ時代にマツダとも付き合っていまして、いまだにマツダに友人がいます。
マツダも昔は深刻な不況を経験していますが、よくぞここまで立ち直ったと思っています。
  1. 2016-05-24 06:07
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  3. 短足おじさん二世 #-
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To:都民です さん

>  現場の声を聞いてくれる上司がいるなら、仕事もかえってはかどると思います。社員満足度が高い会社や部署は、業績も堅実に伸ばしているそうで、確かマツダがそうだと聞いたことが有ります。
>
>  三菱と日産はこれから上手くいくと良いのですが、社風が違いそうだから大変なような気がします。


三菱と日産には確かに社風の違いはありますが、共通点もあります。
(実は両社とも少しだけですが仕事上で付き合いがあったので)
最大の共通点は「お役所仕事でエリートが威張っている会社」ということです。
特に日産はひどかったです。
こんな両社ですので、この話はとても難しいですね。
  1. 2016-05-24 06:14
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  3. 短足おじさん二世 #-
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To:都民です さん

>  失礼いたしました。最初のコメントが失敗したと思って、また送ってしまいました。


了解しました。問題ありません。
  1. 2016-05-24 06:15
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
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>その際このコメントも引用させていただきたいと思いますので、ご了承いただくようお願いします。

 どうぞ、どうぞ。
 
 是非短足おじさんのお役に立てるなら光栄です。
  1. 2016-05-24 11:49
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
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To:よもぎねこさん

> >その際このコメントも引用させていただきたいと思いますので、ご了承いただくようお願いします。
>
>  どうぞ、どうぞ。
>  
>  是非短足おじさんのお役に立てるなら光栄です。


ありがとうございます。
近日中にアップしたいと思います。

  1. 2016-05-25 06:22
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
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