2010-04-15 16:51

混乱するタイ<混乱の元凶タクシンの実像

タイの反政府デモは未だ続いている。日本人村本さんを含む21人もの死者を出したが、未だ収束の方向は見えていない。

然しこの時期タイはソンクランと言うタイの正月にあたり、水掛祭りで有名な時期。

デモ隊も繁華街に一角に座り込んでいるものの、ライフル銃ではなく水鉄砲を持って水掛祭りを楽しんでいる。

                             

忙中閑ありなのか、我々にはなんとも理解しがたい光景では有る。

 

 

このデモ参加者にはUDD側から日当が支払われている事が分かっている。

デモ参加者は一日500バーツ(約1500円)、

(参加時間が少なければ300バーツくらいになる事もあるようだ)

タイ東北部の最低賃金は一日150バーツ~160バーツ、バンコクでも一日205バーツである。アゴ・アシ付きでこのカネがもらえるならいい仕事。

 

また昨年のデモ騒ぎのとき殺人や障害などで逮捕された連中は1人5,000バーツで雇われていた。この5,000バーツと言う金額、バンコク周辺の工場労働者の1か月分の所得に相当するが、タイ北部・東北部では2か月分、或いは3か月分以上に相当する。

 

 

この様な反政府デモの内幕を理解した上でその首謀者を見てみたい。

この反政府デモの首謀者タクシンは現在国外逃亡中であるが、その支持者が今回の反政府デモを引き起こした。

そのタクシンの真の狙いは何か、この点を私なりの見方で述べてみたい。

この件は丁度一年前にも「タイ混乱の元凶タクシンとは?」としてエントリーしたが、内容を改訂した。

 

 

 

まずは簡単にタクシンの経歴を

 

タクシン・チナワット  

・ 1949年生まれ  中国名:丘達新

  チナワット家はタイ北部チェンマイ在住、中国広東省出身の華僑、1860年来タイの通称「客家」

  同家はビルマとのシルク・アヘン取引で財を成したといわれている

・ タクシンは警察士官学校を出た警察官、アメリカの大学に2度国費留学

  警察時代から事業を始め、はじめは失敗するも携帯電話事業が成功(タイ最大手AI

・ 1987年 警察を辞職

・ 1994年 政治活動開始

・ 1998年 タイ愛国党設立

・ 2001年 総選挙に勝利し首相に就任

・ 2006年 クーデターで失脚

・ 2008年 2007年末の総選挙でタクシン派が勝利 

        同派の首相就任

        2008,1-2008,11,9 サマック氏(タクシン子飼い)

        2008,11,9-2008,12,2 ソムチャイ氏(タクシンの妹婿)

        PAD(黄シャツ集団)による空港占拠などの混乱で辞任

・ 2008年12月15日 反タクシン派アピシット首相就任により反政府運動開始(赤シャツ集団)

・ 2010年2月26日 タイの最高裁、タクシンの不正蓄財を認め国内で凍結中のタクシン資産の約6割、約1240億円の没収決定

 

 

この経歴の中で注目することは2つ

1) 警察時代から事業を始めたとはいえ、2001年首相就任頃迄の僅か20年くらいでタイ一番の富豪といわれる財を成したこと

2) 政治活動を始めて7年、与党タイ愛国党結成して3年で過半数を占める多数派となり首相就任

 

この様に非常に短期間で巨万の富と政権トップの地位を手に入れた事を注意して欲しい

 

尚米経済誌フォーブス2008年度版等によればタクシンの推定資産は約24億USドル(約2,400億円)。

この内2050億円は汚職捜査で凍結されていた、しかし2010年2月最高裁の判決でこの内約1240億円は没収。

 

 

 

次に2001年のタクシン政権の基盤となったタイ愛国党について

 (注:現在は活動禁止されている)

1998年 タクシンによって設立

日本語名称が愛国となっているので日本人には右派的な印象がある、

しかし実際は左派的色彩が強いグループ。

特に党員の中に1982年まで反政府武力闘争を続けていたタイ共産党の元党員が多数いる。

タクシン政権下で副首相・エネルギー大臣をしたプロミン氏、情報通信技術大臣だったスラポン氏、運輸省副大臣だったプームタム氏、農業省副大臣だったプラパット氏などが閣僚・側近の元共産党員。

 

党勢拡大、選挙の時などには特に地方では元共産党員を総動員して活動

 

政策は開発独裁を志向し、やや反民主主義的かつばら撒き福祉的とも、

景気のいい話で財界の支持を集める一方貧困層向け施策で北部・東北部の農村で人気、

しかし言うこととやることが食い違い、反対派からはタクシンの個人的利権団体と言われている。

 

タクシンが華僑2世である為か中国と親密な関係が有り、北京に支部を開く。

 

然しこのタイ愛国党は2007年憲法裁判所により解党命令を受けた。

従って今はタイ愛国等のメンバーはバラバラになっているように見えるが、2007年の総選挙にはPPPとして参加している。

 

そして今回の反政府デモを行っている「反独裁民主統一戦線(UDD)」としてタクシン派が再結集している。

 

 

 

また何故タクシン派が総選挙を要求しているのか?

 

今回の反政府デモでもタクシン派は総選挙を要求している。

外から見ると民主的な選挙で選ばれた人が政治を行うのが当たり前、何故いけないのか。

また総選挙をすると何故タクシン派が勝つのか?

 

 

これを理解する為にはタイの選挙制度、警察制度を知る必要がある。

 

まず選挙制度、

 

タイは18歳以上の全ての国民に選挙権がある事になっている。

この選挙人名簿は「タビアン・バーン」と言う家の登記証と戸籍と住民登録が一緒になったものに基づいて作成される。

(分かりにくく長ったらしい話だが我慢してみて欲しい)

このタビアン・バーンは持ち家にしか発行されない、また戸主との姻戚関係が無くても登記できる、15歳になってID(身分証明書)を作る際必要と言った理由から、田舎の親・親戚・知人の家に登記することが多い。

 

バンコク周辺には多数のタイ人がアパート暮らしをしている、

この人たちは例え結婚しようと、子どもが生れようとタビアン・バーンは持てない、

だから生れた子どもも同様である・・・これがタイの法律。

 

 

以上の理由でタイでは選挙は田舎に帰って投票する必要があるわけだ、

(但し最近 正当な理由を明確にして事前に登録すれば別の居住地でも投票できるようになってきた。)

 

タイは投票は国民の義務との考えが強く、投票率は70%位と高い、また投票しないといろんなペナルティが有る様だ。

 

投票は日本と同じように小学校などに投票所を設けそこで投票するのだが、日本と違い一人一人の入場証は無い、

投票所の壁に選挙人名簿を張り出し、投票する人は自分のIDカード(身分証明書)を提示しチェック後投票する。

 

タイのIDカードサンプル

これは最近採用が始まったICチップ付きのもの

(写真の人は本文とは(無論私とも・・残念!)関係有りません)

 

 

以上のことから一見公正な選挙のように見えるが、誰々さんちの人はまだ投票に来てないことが分かるとか、

投票に来た人が写真に似ていれば(鼻薬を利かせれば)別人投票が可能とか色んな問題が有る。

極端な例では選挙人登録人数より投票総数が多い(!)とか、開票中停電(!)したりとかが有るといわれている。

 

これは2007年の総選挙風景 (タイの東北部コンケーン県) 

 

またこの投票所の責任者は村長が勤める事が多い、然しタイの田舎などでは村長さん自身が買収組織の要員である。

そして投票日前夜は犬の鳴く夜といわれ、夜になると各家を回り買収金を渡していく事が当たり前である。

 

この様な選挙なので田舎に勢力を拡大し、巨額の買収資金を持ったタクシン派が有利なのは当然である。

この選挙制度、簡単には改善が難しいので反タクシン派にとってもあからさまに問題と言いにくい。

 

この買収金がいくら位かは公にされる事は勿論無い。

しかし2007年12月の総選挙では1人300バーツプラス一戸当り1000バーツとか、都会では高齢の男性にはバイアグラ(!)をつけたとか言われている。

(誰ですか! それなら私もと言ってるのは・・・)

 

尚タイの総選挙に掛かる費用はアメリカの大統領選挙に掛かる費用より巨額だと言われている。 

 

 

 

 

次に警察制度

 

タイの警察官は給料が安いことは一般に知られている。

そのためさまざまな副業をしないと食べていけない。

一般日本人の方でも時々道路を走っていてお巡りさんに止められ、わけのわからない交通違反で金を取られたことがあると思う。

この金が彼らの生活費であり、又上部への上納金に当てられているわけだ。

 

タクシンが警察官時代、その給料は月3,000バーツで有ったとの話がある、

(勿論初めの頃の話、だから彼の20歳代の事であろう)

いくら彼が20歳代・・多分1970年代(?) の事とはいえ国費で2度も米国留学するエリートの給料としては???である。

 

その分裏金、賄賂、副業が当たり前で、その分があるから警察官商売が成り立つ・・これがタイの警察の実態。

初めてタイに行ったときタイでもっとも危険なマフィアは警察と言われ、全く信じられなかったが事実であった。

 

そしてタクシンは警察内部を金でしっかりおさえている、

(また彼の奥さんポチャマン夫人は警察中将の娘でこの面からもおさえている)、

結果として今でも警察はほとんどタクシン派である

 

だから選挙においてもタクシン派が選挙違反になるのは都会だけ、田舎では警察に刃向かうのは命がけである。

 

今回のデモ隊との衝突事件、デモ隊からは軍を狙って狙撃された。(村本さんも不運にも狙撃されたようだ)

だが警察には死者はいない、警察はデモ隊の標的ではないのである。 

  

 

選挙においても警察の役割は大きく、それがタクシン派であること、しかもこれを簡単には排除できない事も問題だ。

 

 

以上をまとめると

タクシンが選挙で勝つため

・ 地元行政・有力者を取り込み

・ 地方の貧しい層に浸透した元共産党組織・人脈を利用し

・ 徹底した地方へのばら撒き作戦を行い

・ 警察組織を自派に取り込む

 

この様な多角的な組織づくりで選挙を戦ってきた、

この為わずか結党3年で過半数を制し首相に就任するという結果となった。

<実に素晴らしい能力の持ち主! 並みの政治家では到底まねの出来ない企画・管理能力では無いか!>

 

 

最後に、ではタクシンの真の狙いは何処にあるか、

蓄財か?

 ・・・それなら十分稼いだと思うが・・・

政権か?

 ・・・首相になればその上には何があるか・・・

 

この真の狙いについては巷間噂されるところしか知りえない、

しかしタイ人の間でまことしやかにされている噂は、

首相の上を狙う」というもの、

これが王政転覆なのか、タクシン王朝なのかは分からないが、

タイ人はそんなことを言っている。

しかしこれは単なる憶測の域を出ないので、

こんな噂話があることを指摘するにとどめたい。

 

今回の赤シャツデモ隊がライフル銃だけでなく、M79などという軍隊用の小火器等で武装しているところ、1970年代のタイ共産党の武装闘争を髣髴とさせる。

(元共産党員にとっては「昔取った杵柄」であろう)

 

タクシンの政策、そして日本人・日系企業への影響については

別の機会に述べたい。

タクシンの二枚舌の為、かなりひどい目にあっているのだが、真相が分かりにくい

 

 

左翼がかった政権が腐敗にまみれ、国民の耳に心地よい話をしながら、実際は私服を肥やすのに汲々としている。

これは中国韓国ノムヒョン政権でも同じ、

左翼がかった政権に共通する特技のようだ

 

 

最後に日本の民主政権と瓜二つと言ってよい共通点がある。

 

   <タクシン>       <日本の民主政権>

1) 華僑である   ⇒ 在日が異常に多い。

               帰化して即国会議員になった議員も

 

2) 共産党の残党 ⇒ 日本赤軍上がりの法務大臣以下多数

 

3) 大富豪     ⇒ 子ども手当てが月1500万ははした金

              (貰っても知らぬ存ぜぬ)

 

4) ばら撒き政治 ⇒ 口から出任せの政策

              (子ども手当て他多数)

 

タイの政治情勢は日本にも良い鏡となると思う。

 

  1. タイiza10年以前
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コメント

No title

もう一つ小沢民主党との共通点は背後に中国共産党の存在がある。

毛沢東の工作要諦と符合する点多々で興味深いですねえ。

タイのマスコミはどんな感じなんでしょう?
日本のマスコミと比較して。
  1. 2010-04-16 03:07
  2. URL
  3. sonoraone #79D/WHSg
  4. 編集

No title

To sonoraoneさん
>もう一つ小沢民主党との共通点は背後に中国共産党の存在がある。
>
>毛沢東の工作要諦と符合する点多々で興味深いですねえ。
>
>タイのマスコミはどんな感じなんでしょう?
>日本のマスコミと比較して。

ご指摘の通りです。追加せねばならない項目。
日本にいては難しいのですが、もう少し調べてみます。
  1. 2010-04-16 06:44
  2. URL
  3. 短足おじさん #79D/WHSg
  4. 編集

No title

短足おじさんおばんです・・・

スレタイ以下の文書はたいへん参考になった。ありがとうございます・・

でも、短足おじさんが詳しいのは当然として、テレビニュースにはタクシン派の略歴なんか説明皆無ですね。特に共産党とか華僑なんかの説明はありません。タクシン元首相が華僑とは初めて知りました。でもタイにとってこのタクシン氏はいい政治家とは言えませんね。お金を貰っているデモ参加者にはその日の暮らしが500バツで起てばいいのでしょうが。なんか一番してはいけない事をしてるタイ王国ですね。

故山本夏彦氏によると、喰うに困ると何を売ってもいい。体を売ってもいいが、正義や国は売っては絶対にいけない。・・・とか言ってましたね。


タイのデモ参加者は売ってはいけない正義を売っているのでしょうね・・
  1. 2010-04-16 18:20
  2. URL
  3. siseinotamikusa #79D/WHSg
  4. 編集

No title

To siseinotamikusaさん

>スレタイ以下の文書はたいへん参考になった。ありがとうございます・・
>
>でも、短足おじさんが詳しいのは当然として、テレビニュースにはタクシン派の略歴なんか説明皆無ですね。特に共産党とか華僑なんかの説明はありません。タクシン元首相が華僑とは初めて知りました。でもタイにとってこのタクシン氏はいい政治家とは言えませんね。お金を貰っているデモ参加者にはその日の暮らしが500バツで起てばいいのでしょうが。なんか一番してはいけない事をしてるタイ王国ですね。

日本の報道は公平を装っていながらどうもおかしいと感じています。
疑わしきは中国の陰、
ただ日本人を殺されて如何変わるか注目しています。

>故山本夏彦氏によると、喰うに困ると何を売ってもいい。体を売ってもいいが、正義や国は売っては絶対にいけない。・・・とか言ってましたね。
>
>タイのデモ参加者は売ってはいけない正義を売っているのでしょうね・・

そうなのですがデモ参加者の大部分は政治音痴の純朴な農民、
デモ鎮圧に軍隊が及び腰なのは、その純朴な農民に銃口を向けるわけには行かない、そんな想いが有ります。
だから凶暴な共産党の残党連中はそれを人間の盾にしている。
この続編を今準備中で、その間の事情をもう少し詳しく書く予定です。
  1. 2010-04-17 06:45
  2. URL
  3. 短足おじさん #79D/WHSg
  4. 編集

首相の上をいくとすれば、国際マフィア網でさらに蓄財、マネーロンダリングで
支配を磐石にということでしょう。だけど、まっとうな産業が育たないので、不法なマフィア稼業ばかりが肥太るので、困るんです。自国民も他国もきっと。
  1. 2014-05-23 22:20
  2. URL
  3. yukiko kolin #-
  4. 編集

To:yukiko kolin さん

> 首相の上をいくとすれば、国際マフィア網でさらに蓄財、マネーロンダリングで
> 支配を磐石にということでしょう。だけど、まっとうな産業が育たないので、不法なマフィア稼業ばかりが肥太るので、困るんです。自国民も他国もきっと。


初めまして、コメント有難うございます。
タクシンの蓄財がいかに凄いかはこのエントリーでは分からないので以下参照ください。
http://tansoku159.blog.fc2.com/blog-entry-154.html

またそんな大金を稼ぐ方法はマネーロンダリングもありますが、こんな方法で賄賂を集めています。
http://tansoku159.blog.fc2.com/blog-date-201207.html

裏金が工事費の30~35%など信じられませんが事実です。
  1. 2014-05-24 09:51
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
  4. 編集

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