2015-10-16 09:24

VW排ガス・スキャンダルの引き金を引いたもの

 フォルクスワーゲンの排ガス・スキャンダルがますます深刻な状況で、遂にドイツ政府が「強制リコール」に踏み出したと報道されている。
独政府、VWに来年のリコール開始指示 国内240万台対象
http://jp.reuters.com/article/2015/10/15/volkswagen-emissions-recall-idJPKCN0S90NG20151015

詳細は上掲記事を見ていただくとして、要は「VW案のユーザーが自主的に修理に持ち込むのではなく強制的に修理しろ」、こんな事らしい。
ことほど左様に大変な状況のようだが、そのスキャンダルの引き金を引いたものの一つがプリウスショックではないかと思っている。

そんな事の分かるブログ記事が有ったので紹介したい。
書いた方はプリウスの設計者「八重樫武久さん」。

<以下抜粋引用>

二代目プリウス欧州カーオブザイヤー受賞
10月 11 2015 Published by Takehisa Yaegashi under プリウス開発秘話
http://www.cordia.jp/blog/?p=1839

プリウス、ハイブリッド開発で様々な賞をいただき、その授賞式やフォーラム、環境イベント、広報宣伝イベントにも数えきらないほど出席しました。その中で、一番印象深いイベントは2005年1月17日スウェーデンのストックホルムで開催された“2005年欧州カーオブザイヤー受賞式”です。クルマとしての受賞式ですので、パワートレイン担当は本来は黒子、海外でのクルマ関係の受賞式にはそれまで出席はしませんでしたが、この欧州カーオブザイヤー受賞式だけは、自分で手を挙げストックホルムまで出かけて行き、受賞式に参加しました。

初代の開発エピソードは以前のブログでもお伝えしてきましたが、”21世紀に間に合いました”のキャッチフレーズで量産ハイブリッドとして脚光を浴びたスタートでした。しかし、当時の開発現場の実態としては京都COP3のタイミング1997年12月生産販売開始にやっとの思いで間に合わせたというのが正直なところです。

・・・以下初代プリウスに関する部分は省略、詳細は上掲リンク先参照ください・・・


二代目は、そんな中で欧米でも普通に走れるハイブリッド車を目指しましたが、振り返ると初代は無我夢中の技術チャレンジであっという間に過ぎ去っていきましたが、二代目の開発はそれ以外の苦労が多かった印象です。様々な制約、費用回収の要求からのコスト低減要求、さらに様々な外乱の中で、グローバルスタンダードの志しを下ろさず、知恵を絞り抜いて取り組んだ開発でした。

それだけ、いろいろあった2代目プリウスの開発でしたので、2005年欧州カーオブザイヤーの受賞はなにより感激した出来事でした。欧州販売開始は2003年末からでしたので、選考委員もしっかり欧州で走り込んだうえでの審査だったと思います。非常に高い得点で2005年カーオブザイヤーに選ばれました。

その選考委員の採点表欄をみると、初代後期型ではゼロ、もしくは非常に低い点数を付けた選考委員の方々が、この2代目プリウスには高い点をつけ、コメント欄に前回の低い点を付けたことが間違いで、ここまでの進化を見抜けなかったとのコメントが複数ありました。このコメントを読み、欧州でも評価してもらえるクルマにすることができと嬉しさがこみ上げてきました。これが自ら受賞式出席に手をあげ、寒い冬の観光にも不向きな1月中旬、ブリュッセルから一泊二日、トンボ帰りの受賞式でしたがストックホルムの受賞式に参加した背景です。

冒頭の選考委員会委員長Mr. Rey Huttonのスピーチの中で

「トヨタは(自動車としての)厳しい道を学んできた。カーオブザイヤーの審査委員は、2000年プリウスも候補としたが、その投票は割れていた。当時では、プリウスが将来のビーコン(引用者注: beacon 、標識、かがり火、航空標識などの意味、将来の方向を指し示すものと言う意味と思われる)と見なした委員と、ハイブリッドのアイデアは見当違いと片づけた委員に分かれていた。新型プリウスは2000年には無かった大部分を持つようになった。今回は、32の候補車の中で、過去最高得点の一つ139点を獲得し、58人の審査員のうち39名がトップとした。」

などとこの受賞を紹介してくれました。

その後、当時の技術担当副社長がトロフィーを受け取るのを見守り、一緒に写真撮影を行い、多くの選考委員の方々と話しをすることができました。そのディナーで味わったワインは、それまでもその後も味わうことのあった有名シャトーのワインよりも美味しかったことが忘れられない思い出です。(写真2)

2015-10-16プリウス欧州カーオブザイヤー授賞式

写真2(2005欧州カーオブザイヤー)

このブログを書きながら、はたと思い至ったことがあります。この欧州カーオブザイヤーの受賞式は2005年1月、これがひょっとすると今大騒ぎになっているVWスキャンダルの引き金の一つになったのではとの思いです。

プリウスハイブリッドが米国で、欧州で認知度が高まり、急激に販売を伸ばし始めたのもこの頃からです。講演会、フォーラムでの欧米エンジニアの態度、目線に変化を感じ始めたのもこの時期からのような気がします。特に、欧州のエンジニア、ジャーナリストは、審査員のコメント、委員長のスピーチにあったように2000年のモデルまでは、ハイブリッドを収益無視の広告宣伝用のシステム、欧州では通用しないとの意見が主流であったのに対し、この2003年二代目でその見方が変わったように思います。

当時は、欧州でも認知されたことを喜ぶばかりでしたが、そこまでインパクトを与えたとすると、それから10年、3代目から4代目をこの世界にサプライズを与えたインパクトを引き継げているか、次の機会には振り返ってみたいと思っています。

この二代目プリウスは、このブログのように、2005年欧州カーオブザイヤー受賞の他、北米カーオブザイヤーも受賞しました。しかし、本家本元日本ではカーオブザイヤーを逃してしまいました。日本のエンジニアである私にとっても残念なことでした。

二代目のハイブリッド開発は、様々な制約はありましたが、我々には我慢のエコカーから欧州(ドイツアウトバーンを除き)で普通に心配なく走れるエコカーの実現の目標にはブレはありませんでした。しかし、今振り返ると、社内では走りの良さをアピールポイントにしたいとの声が強すぎ、走り系のモータージャーナリストから、欧州車との対比で拒否反応があったことも原因かとも思っています。

今回の騒ぎで思い出したことが、あたりか、外れは判りませんが、時代を切り拓くつもりでやったことは確かです。フェアな土俵で、その次の時代にも安全・安心、自由に快適に移動そのものも楽しめるFuture Mobilityを巡る、世界自動車エンジニアのチャレンジを期待します。

<引用終り>


八重樫さんは二代目プリウス発売当時の欧州での雰囲気を実に詳細に語っておられる。正に全く新しいクルマが登場した、そんな雰囲気だったのだろう。
そしてこの事は欧州だけでなくアメリカでも注目された。
一番大きかったのがアメリカの著名な俳優ディカプリオがアカデミー賞の授賞式にプリウスで乗り付けた事だった。
「オスカー」受賞の為に豪華リムジンで乗り付け、赤じゅうたんの上を歩く、そんな映画人の夢の場にプリウスで登場したこと、これは当時大センセーションを巻き起こしたモノだった。

しかし二代目プリウスは八重樫さんが仰っておられるように「ドイツのアウトバーンのような高速走行には弱い、燃費も思ったほどよくならない」、こんな問題も内在していた。(この解決策の為三代目プリウスは排気量を1500⇔1800にアップ)

こんな事でVWはディーゼル化を推進、そして今回のスキャンダルに至った、VWは2004年~5年頃からこんな不正をしていたようなので、タイミング的にも丁度合う訳だ。

しかし不思議なのはこの当時トヨタとVWは提携関係にあった。
ガソリンエンジンの直噴化技術とそれに伴うNOx対策技術はトヨタからVWに提供されている。
(トヨタとVW技術提携、1999年にトヨタD-4エンジン技術がNOx処理技術も含め技術供与)
http://d-wise.org/b9910/car.pdf
(この資料はfcq821 さんに紹介いただきました)

またこの頃トヨタ系の販売店でVWを売っていたこともご記憶の方があると思います。確かこの提携関係は2010年頃まで続いたはず・・・。
ライバルであると同時に提携関係でもあった、そんな関係だった事も有った訳です。

一体何がVWを此処まで狂わせてしまったのか、疑問はつきません。

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コメント

本末転倒にならんことを・・・

こんにちは。

この様な問題が出てきますと、技術の専門的な話などが大きく扱われやすくなり、専門外の方々・・・まあ、私の様など素人ですね・・にはよくわからなくなるし、最終的に「本末転倒な魔女狩り」になってしまいます。

とはいえ、専門家などが掲げる細かい数値、データと言うのを否定はしません。客観的「指標」でありますからね。

問題は、こちらのエントリ・・・短足様がブログで常々問題提起しておられる様に、VWは何故ここまでして車を売ろうとしたのか?でありましょう。たしかに、企業がその売り上げを追い求めることは当然でありますが、その利益を出す行為に今現在の価値観では決して許されない方法に突き進まねばならなかった、その根本部分がわからねば、この問題はおかしな方向へ進み、ヘンチクリンで納得できない終わり方になりましょう。
  1. 2015-10-17 12:31
  2. URL
  3. 裏の桜 #-
  4. 編集

Re: 本末転倒にならんことを・・・

> こんにちは。
>
> この様な問題が出てきますと、技術の専門的な話などが大きく扱われやすくなり、専門外の方々・・・まあ、私の様など素人ですね・・にはよくわからなくなるし、最終的に「本末転倒な魔女狩り」になってしまいます。
>
> とはいえ、専門家などが掲げる細かい数値、データと言うのを否定はしません。客観的「指標」でありますからね。
>
> 問題は、こちらのエントリ・・・短足様がブログで常々問題提起しておられる様に、VWは何故ここまでして車を売ろうとしたのか?でありましょう。たしかに、企業がその売り上げを追い求めることは当然でありますが、その利益を出す行為に今現在の価値観では決して許されない方法に突き進まねばならなかった、その根本部分がわからねば、この問題はおかしな方向へ進み、ヘンチクリンで納得できない終わり方になりましょう。


鋭いご指摘、正にその心配の通りに進んでいるような気がします。
ドイツからはVWの不正を糾弾する声よりもVWを擁護する声の方が高まっている、そんな話が聞こえてきます。そして案の定、アメリカ憎しの反米感情が高まっていると聞きました。
これに移民問題の混乱が今凄い事になっている。何せ移民に住宅を提供するためという美名で、生粋のドイツ人が暮らしている公営住宅からそのドイツ人を追い出しているんだとか。
こんな事がどんな風に暴発するか分かりませんから。
ヒットラーが台頭したのはこんな混乱の中からだったのではないか、そんな風に心配しています。
  1. 2015-10-17 20:27
  2. URL
  3. 短足おじさん二世 #-
  4. 編集

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