10月1日に中国で軍事パレードが有った。
その報道でちょっと気になることが有ったのだが、丁度家人がケガをしたこともあり、全く時間が取れず、気になることを書けなかった。やっと時間が取れたのと問題の内容が分かってきた。
特に、今月26日発売の月刊誌「Hanada」に青山繁晴さんの寄稿文が有り、その気になることが詳しく書かれているので紹介したい。
最初に何が気になったのか、これは読売の報道から
<以下引用>
中国軍事パレード、米本土射程のICBMなど最新兵器を公開
2019/10/01 13:17
【北京=中川孝之】中国は1日に建国70年を迎え、北京中心部の天安門広場で午前、軍事パレードが行われた。習近平(シージンピン)政権は、米本土を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)など国産の最新兵器を多数公開し、対中圧力を強める米国に軍事力の増強で対抗する姿勢を改めて示した。
建国記念日に合わせた北京での軍事パレードは、今回が15回目となる。1949年の建国式典が最初で、前回は胡錦濤(フージンタオ)政権の2009年(建国60年)に行われた。
パレードは午前10時に始まり、軍トップの中央軍事委員会主席を兼ねる習国家主席(66)が天安門の楼上で演説した。
習氏は、中国が建国から70年で発展し、「社会主義の中国は今日、世界の東方にきつ立し、いかなる勢力も我が祖国の偉大な地位を揺るがすことはできない」と自賛した。今後の対外政策は「平和発展の道を堅持し、ウィンウィンの開放戦略を実行する」と述べた。
香港と中国両政府に対する抗議デモが続く香港を巡っては、香港に高度な自治を保証する「一国二制度」を維持すると表明した。台湾問題では、「両岸(中台)関係の平和発展を進め、祖国の完全な統一のため引き続き奮闘する」と強調した。
パレードでは、米本土の全体を射程に収め、核弾頭10個を搭載できる新型ICBM「東風(DF)41」や、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の「巨浪(JL)2」が初公開され、対米核抑止力の向上を示した。
既存のミサイル迎撃システムでは撃墜が困難な極超音速滑空兵器を搭載する「DF17」も初めて披露された。極超音速兵器は米中露が開発を競っており、中国軍の技術進展を見せつける狙いがある。
中国国防省によると、今回のパレードは過去最大規模となった。兵士約1万5000人が参加し、ミサイルや戦車など約580の兵器、160機以上の戦闘機などはすべて中国製で統一された。
天安門の楼上では、江沢民(ジアンズォーミン)元国家主席(93)、胡錦濤前国家主席(76)も姿を見せ、習氏や現役の共産党指導部と並んでパレードを観閲した。
<引用終り>
何が気になるのか、それは先ずこの写真から。
この写真を見ると胡錦涛、江沢民とも背広姿であるが、習近平だけは中山服、つまり毛沢東の後継者はこのオレ、習近平様だ。皇帝はオレだ。そう言っている訳だ。
更にもっと気になること。記事にはこんな記述がある。
米本土の全体を射程に収め、核弾頭10個を搭載できる新型ICBM「東風(DF)41」
既存のミサイル迎撃システムでは撃墜が困難な極超音速滑空兵器を搭載する「DF17」
中国がアメリカ本土を直接攻撃できる兵器を持った、さらにアメリカの軍事力の象徴である空母を直接攻撃できる兵器を持った。そんな事が堂々と世界に見せつけたということである。
そのDF41とはこんなもの。
更にDF17とはこんなもの
(下の画像2枚も同じ)
青山繁晴さんの言う「史上最初に姿を現した巨大イカ頭」と言うのはコレ
極超音速滑空ミサイルDF-17がどのように飛んでくるのか
このように低空を飛ぶので、レーダーによる発見が遅れてしまう。
さてでは、この件についての青山繁晴さんの寄稿文を見てみよう。
<以下月刊Hanada12月号(10/26発売)より引用>
澄哲録片片 青山繁晴
Hanada-2019年12月号
中国軍事パレードの衝撃 (p214-p216)
去る十月一日に中華人民共和国は国慶節、すなわち建国の記念日を迎えた。
西暦一九四九年、大戦が終わって四年目の十月一日に、毛沢東主席(当時)が、晴ればれと美しかったという北京秋天のもと、天安門広場から高らかに中国共産党の独裁政権の樹立を宣告してから、今年ちょうど七十年である。
お祝いだから、多様な行事が北京を中心に行われる。ところが七十年の節目の今年は、軍事パレードだけしか世界の記憶に残らないだろう。
逆に言うと、今回の軍事パレードの衝撃が強すぎた。アメリカの喉元にぎらぎらに光る刃を何本も突きつけたのと同じである。
まず噂の巨大イカの登場だ。
これはDF17、すなわち東風17号という名の弾道核ミサイルだ。
極超音速ミサイルと呼ばれている。光を別にすれば音はこの世でもっとも速い。速いから、たとえばわたしが月に一度、各地の千人を収容する広いホールで前述の独立講演会を開くとき、いちばん後ろの席のみなさんにもリアルタイムで声が届く。
音速を標準大気での時速にすると、1225キロだ。
それを超えるスピードで飛ぶものを超音速と呼んで久しいが、ついにそこに「極」(ごく)が付くものが登場した。
音速を超えるどころじゃない。五倍以上にもなる凄まじい猛速だ。
こんなミサイルを確実に撃ち落とす手段など、アメリカ軍を含めて人類は持っていない。
しかもこの東風17号はレーダーを避けて低空を飛ぶことができる。アメリカ軍を支える原子力空母が、横須賀にいる世界最大、最新鋭のロナルド・レーガンを含め、この東風17号によってことごとく撃沈される恐れがある。
さらにパレードには巨大な丸い頭のICBM(大陸間弾道核ミサイル)のDF41、東風41号も登場した。これはアメリカのICBMよりも一千キロほど長く、推定一万四千キロ以上を飛ぶ。つまりワシントンDCやニューヨークの頭上に現れ、しかも上空で弾頭が十個に分かれる。大統領を含むワシントンDCの住民全員やNY市民に十個の核弾頭が一斉に降り注ぐ。
いずれも中国は、ただの噂の存在 だったものを、この十月一日に初登 場させた。
十月一日が分かれ道に
ただしパレードでトレーラーに載せられて行進していくだけなら、実戦配備されていることにはならない。わかりやすく言えばドンガラだけということがあり得る。
たとえば北朝鮮にしても実弾、ほんとうに核爆発を起こす弾頭を装填して発射したことは一度もない。あれほどさまざまな弾道核ミサイルを花火よろしく撃ち続けながら、全てドンガラである。
だから北京の今は汚れに汚れた秋空の下、史上最初に姿を現した巨大イカ頭も、巨大坊主頭もドンガラだけだという可能性はあった。
可能性はある、のではなく過去形だ。
実は中国共産党は十月一日のパレードの前に、あるヒソヒソ話を朝日新聞をはじめ日本のオールドメディアにリーグした。
それは「パレードの通り路の下の地下でね、地下鉄の線路、駅、地下街のすべてを超重量に耐えるように改修する工事をやったんだよ」という囁きだった。
核爆弾は重い。それを実弾装填しているミサイルを行進させるんだというアピールである。
この十月一日をもって、アメリヵは中国との共存を断念したと言ってもいい。
わたしが不肖なりに培ってきた人脈のアメリカ軍、アメリカ政府の高官たちは考えがさまざまだ。それがアメリカ合州国である。ところが「十月一日が分かれ道になった」という認識はぴたり、みな一致した。
すなわち中国が経済覇権をアメリカと共有することを、今や合州国は許さない。特にサイバーやハイテクノロジーの分野では、決して許さない。経済成長とハイテク覇権を許せば、安全保障の脅威としてのチャイナをさらに強大な脅威にするからだ。
アメリカ製の産品は、もはや世界でろくに売れない。車をはじめアメリカの産品を大量に買ってくれるのは中国ぐらいだ。中国では独裁者が指示すれば、国も企業も民も、アメリカ製を買い続ける。アメリカ経済はそれを頼みとしていた。だから中国共産党はトランプ大統領の攻撃もアメリカそのものも甘く見ている。
しかしアメリカは、中国共産党の支配下にあるチャイナとの共存を国策として断念する、つまり大統領が誰であれ諦めつつある。
事実、中国の利益のためにワシントンDCで長年、動いている老練なアメリカ人ロビイストはわたしに「ウォーレン女史の方がトランプよりさらに嫌だね」と言った。
トランプ大統領は来年十一月に迫り来る大統領選で苦戦中だ。六月に大阪で開かれたG20に合わせて大挙、日本にやってきた米国のインテリジェンス関係者はほぽ一致して「中国がアメリカの穀物を買わなくなって農民票が大規模なトランプ離れを起こしている。特にスウィングステート(共和、民主いずれの支持か、大統領選ごとに揺れる州)で顕著だ」という認識を示していた。
だからトランプさんは負けるかも知れないし、負けないために中国と一時的な、かつ一部の妥協は必ずやるだろう。すでにそれが始まっている。トランプ大統領は中国がアメリカ産農産物を再び大量購入することに同意したと述べて、中国を懲らしめるための関税引き上げを延期すると公表した。
しかし、中長期的には米中は非妥協的に対峙する。
<引用終り>
アメリヵは中国との共存を断念した この一言はとてつもなく重い意味を持つのではないか。
例えトランプが選挙に負けても、次の大統領にもこの政策は引き継がれる。そう云う事だと思う。難しい時代に入ったことは間違いない。
そしてこの中国の脅威はアメリカに対してだけではない。日本はもっとこの脅威にさらされていることを忘れてはいけない。
しかし日本ではお花畑マスゴミと国会が「未だ覚めず池塘春草の夢」状態。もういい加減に目を覚まさないと取り返しがつかないと思うのだが。
最後に参考記事も
流石にnewsweekは危機感一杯
「建国70周年の中国が披露したアメリカを脅かす最新兵器」
パレードの様子