FC2ブログ

2018-09-16 17:15

ラオスのダムは沢山あるが、日本製と言えるのは二つだけ


 ネットの噂で「ラオスの首相が日本が作ったダムが素晴らしいと称賛している」という話がある。
しかしこれは間違いでは無いものの不正確な自賛記事。この時ラオス首相が称賛したのはナムトゥン2というダムで、これは日本企業が工事の一部を担当しただけ、主になって建設したわけではない。

但しネットでは噂になっていないが、ラオス首相はその直後に別の場で二つのダムを称賛している。そのダムの一つは上掲ナムトゥン2ダム。もう一つがナムグム1ダムである。このナムグム1ダムはラオス最初の本格的発電ダムで、もう50年以上前に完成したもの。建設したのは水豊ダム(現在は北朝鮮)を作った日本の久保田豊・・・古い話です。


 そこで私の知るラオスの発電用ダム事情についてまとめてみたい。
浮かび上がってきたのは、ラオスが発電ダム・バブルに踊った、その為に環境問題や少数民族問題を犠牲にしてきたこと。そしてこのバブルで儲けたのは誰だったのか。最後にとんでもないヘマをやった国は・・・等など。

大まかに言えば
 ネットの噂で「ラオスの首相が日本のダムを称賛」、これは正しくも有り正しくも無し。
称賛したのは50年以上前に久保田豊が作ったナムグムダムという事です。


ネットの噂の内容 ・・ こんな噂が流れている
<以下news-usより>
ラオス首相 日本製ダム 高く評価

 ビエンチャンタイムズさんによれば、ラオスの首相がナムトゥン2というダムプロジェクトを成功例として捉えているそうです。アジア開発銀行などの支援を受けてタイと日本の合弁企業が建設し、2010年に稼働を始めました。年間で約6000GWhを発電し、95%がタイへと売られています。韓国が建設したダムはなぜ失敗してしまったんでしょうか?

PM holds up Nam Theun 2 dam as successful hydro model
Latest Update September 10, 2018

The government views the Nam Theun 2 hydropower project in Khammuan province as a successful model
以下略
<引用終り>
ソース
news-us:http://news-us.org/article-20180913-0023062054-korea

Vientiane Times(9/10付):
http://www.vientianetimes.org.la/FreeContent/FreeConten_PM_holds_211.php
(引用者注:この話は9/7の世界銀行との会議後の会見で述べられたもの)


同じくVientiane Timesの9/14付:
http://www.vientianetimes.org.la/FreeContent/FreeConten_Development_of_215.php
(引用者注:この記事は9/11-13にハノイで行われた世界経済フォーラム後の会見時のモノ)

内容は
Development of hydropower ‘must be safe’, PM tells World Economic Forum

Hanoi, Vietnam: Prime Minister Thongloun Sisoulith told the World Economic Forum (WEF) in Hanoi, Vietnam, on Wednesday that the development of hydroelectricity dams in Laos must be safe and environmentally friendly.

・・中略・・

Dams that have been built must provide assurance that there will be no fracture or environmental damage, the prime minister said.
There are currently 52 hydropower projects with a combined installed capacity of more than 7,231MW operating in Laos and many more are under construction. Two-thirds of the power generated is exported with Thailand being the largest export market for the energy produced in Laos.
Mr Thongloun said many hydropower projects in Laos have met international safety standards and were deemed to be good models for hydropower development in the region and world. They include the Nam Ngum 1 hydropower project, which has been in operation for more than five decades. 
The Nam Theun II hydropower project, which went into operation about 10 years ago, is another good example.

・・・適当に機械翻訳・・・
水力発電の開発は安全でなければならない、とPMは世界経済フォーラム
ベトナムハノイ: Thongloun Sisoulith首相は、水曜日、ベトナムのハノイで開催された世界経済フォーラム(WEF)にラオスの水力発電ダムの開発は安全で環境に優しいものでなければならないと語った。

・・・中略・・・

首相は、建設されたダムは、破損や環境破壊がないことを保証しなければならないと述べた。
現在52の水力発電プロジェクトがあり、ラオスで7,231MW以上の発電容量が組み合わされ、多くは建設中です。生産された電力の3分の2がラオスで生産されるエネルギーの最大輸出市場であるタイと輸出されている。
Thongloun氏は、ラオスの多くの水力発電プロジェクトは国際的な安全基準を満たしており、地域および世界の水力開発の良いモデルとみなされたと語った。これには、ナムグム1水力発電プロジェクトが含まれています。これは、50年以上にわたって運用されています。
約10年前に操業したナムトゥン(Nam Theun )II水力発電プロジェクトは、もう一つの良い例です。
・・・以下略・・・
ビエンチャンハノイ&SouksakhoneでKhamphanh (最新更新年9月14、 2018年 
<引用終り>



この9/14付の記事によれば、人口690万のラオスに現在52の水力発電プロジェクトがあり、発電能力は723万kw。日本では北海道の大停電で分かったのだが、人口537万の北海道で電力が350万kwとか380万kwで大騒ぎしましたが、それと比べてみてください。


そしてラオスの首相が言及した世界の水力発電の良いモデルだという、その一つは日本が作りました。50年も稼働しているという、そのダムはナムグムダムと言います。ナムグム1水力発電プロジェクトは今から50年以上前に日本の久保田豊が作ったラオスで最初の本格的発電ダム。
以下エントリー参照ください
http://tansoku159.blog.fc2.com/blog-entry-1559.html
ナムグムダムの建設に関しては以下参照ください。
https://www.data-max.co.jp/2014/03/24/post_16456_ik1.html


そしてもう一つのダムはナムトゥン2ダムと言います。

2018-9-15Nam Theun2概要 

このダム、凄いですねえ。一つの発電所で108万kw、大きな原発並みの出力です。
そしてこのダムには確かに日本の会社も建設に参加しています。土木工事や鉄構・鉄管工事には西松建設。送電設備には三菱商事とジェイパワーシステムズ。
しかしあくまでこの事業の主体はフランスですね。事業主体のナムトゥン2発電会社の株主はメインがフランス。そしてコンサルタントもフランス電力です。コンサルタントと書くと分かりにくいですが、ここが全体の基本設計や採算などFSをやっています。勿論事前の地質調査などの調査もこの段階。

ですからこのダムはフランスが作ったというのが正しいでしょう。

そのダムの位置
2018-9-15Nam Theun2ダム地図 

ダムだらけの地図ですが、中央やや下の大きなダム湖がナムトゥン2ダム。琵琶湖の三分の二位の大きさがあるというダム湖です。
この辺りナカイ高原という所で、その高原に水を貯めて、高原の下に水を落とす構造。この構造は今回ダムの決壊事故を起こしたセピアン・セナムノイダムと同じ構造です。コリアが真似したんでしょうね。

このダムが出来たために、この地域の住民6200人が移住を余儀なくされました。
此処からは推測ですが、この辺りに住民はラオスの主流派である「ラオ族」(全体の60%)ではなく、少数民族(山岳民族)だと思われます。しかも一つの民族ではなく幾つかの少数民族に分かれていた。特に重要なのはこの少数民族というのは生業が主流派のラオ族(水田稲作が生業)とは異なるという事です。稲を作っても傾斜地の焼き畑で陸稲栽培。あるいはキャッサバなどの栽培、そして漁業ですね。

此処でこのプロジェクトの問題点が浮かぶ上がってきます。6200人という多数の住民を移住させ、定着させる。これは彼らの生業を成り立たせるという事で、現実は上手く行っていないようです。
更にダムから下流の川を付け替えたので、周辺の漁業への影響、そして川の増水での周辺への影響など、問題は多数残っています。

今回ラオス首相がこのプロジェクトが上手く行っていると言っているのは、問題は多数残っているが、しっかり稼いでいる。まあそういう事が言いたいのでしょう。


ダムと発電所の配置
2018-9-15Nam Theun2project plan 

ダム全景
2018-9-15Nam Theun2ダム本体 


発電所 ラオス最大の発電所です。
2018-9-15Nam Theun2ダム発電所 


此処でこのプロジェクトの重要なポイント。それはこのプロジェクトがBOT方式だという事。
つまりラオスは殆ど金を出さずにダムを作ってもらえる。但し、25年~30年間は事業主体の会社のモノで、その間に投資を回収する。事業主体の会社は、だからその間に儲けるだけ儲ければいい。
これに目を付けたのが外国の投資家。まさに雨後の筍の如くダムを作っていき、上掲ラオス首相の話によれば、現在52の水力発電プロジェクトがあり、未だ 379 hydropower plantsが控えているとの事。当にダムバブルである。

所で日本はと言えば、第一号のナムグムダムを作ってから日本は殆どラオスには滲出しなかった。上掲ナムトゥンダムが成功し、毛唐のハイエナ連中が一斉に進出してきたが、日本は手を出さなかった。
結果、ナムグムダム以降、日本が主体となって建設したダムは皆無。最近やっと関西電力がナムニアップ1水力プロジェクトを手掛けることになり、現在試験湛水中である。来年には完成予定。

結論として、日本が作ったと言えるダムは50年以上前のナムグムダム、それから来年完成予定のナムニアップ1ダム、この2件だけである。その間でも日本の建設会社が手掛けているダムはある。しかしこれは事業主体としてではなく、工事の一部を受け持ったと言える。

関電の手掛けているダムはこれ
ラオス ナムニアップ1水力プロジェクト(建設中・・・現在試験湛水中)
http://www.kepco.co.jp/corporate/international/generate/laos.html


所で余談だが、マーケットの世界でハイエナぶりを発揮している毛唐の間でこんな話があると聞いたことがある。
曰く、「日本が出てきたら、相場は終わりだ」というもの。
ダムバブルに踊って、悪どい儲けをした連中は「もうダム景気は終わったよ、日本が出てきたからねえ」と言っているのではないだろうか。
そこへガオリー(ラオス語で韓国朝鮮の事、語源は「高麗」のシナ語読みから)が出てきた。そして毛唐連中にうまく丸め込まれて・・・(以下略)。


最後のもう一つ、ラオス最初の本格的ダムであるナムグムダムの話。
このダムは現在ダム本体に穴を開けて取水口を増やし、発電機を増設する工事を行っている。ダムというのはこんな風に長い間手を入れていくものだという事例である。

更にもう一つ、このダムは久保田豊が作ったのだが、その久保田豊の作った水豊ダムは朝鮮戦争当時アメリカ軍の激しい空爆を受けたのだが、それに耐え抜いた実績がある。
この話には伏線として、WW2当時の1943年、ドイツのルール工業地帯の二つのダム(メーネ・ダム、エーデル・ダム)をイギリス軍が爆撃し破壊し、大損害を与えたことがある。

古い話だがダムの安全問題として、恐らくこれからも話題になると思うので付記しておきます。ドイツのダムは壊れたが、日本のダムはアメリカの空爆にも耐えたと。

  1. ラオス
  2. TB(0)
  3. CM(8)

2018-08-29 16:53

ラオスのダム事故についてのスクープ記事


 ラオスのダム事故について色々書いてきたのだが、前回既に予備調査が始まっていて、調査チームは国際大ダム会議(本部:フランス)と日本の東京電力であると書いた。所でその日本が如何してここに出てきたのか、そんなスクープ記事が出てきた(コメント欄でkazkさんよりの情報をいただいた)。

そこでこのスクープ記事を紹介したいのだが、この記事、スクープもだが他の部分にはかなり古い情報や間違った記載もある。そこでそんな事を注釈をつけながら書いてみたい。


話の前段として、今回の東電の調査参加について、8月26日のエントリーで書いたように唯一の報道はヴィエンチャンタイムズなので、その要点だけ。
<以下適当に翻訳し抜粋引用>
 トンルン首相は、7月23日にアタプー省のダム崩壊の本当の理由を明らかにするため、ラオス当局と緊密に協力するよう、国際専門家に要請した。トンルン氏は、国際大ダム会議(ICOLD)と東京電力(TEPCO)のメンバーからの表敬訪問を受けての表明。(8月21日)
8月22日の政府のウェブサイトの声明によると、同グループは、ICOLDの上級専門家、Anton J. Schleiss教授をリーダーとし、ラオス当局者を含む他の専門家と提携して、ダム崩壊の原因を調査する。
・・・中略・・・
Schleiss教授は、ダムの崩壊の正確な状況はまだ不明であるが、事故の真の理由を発見するために10月に調査を再開すると述べた。(引用者注:現在ラオスは雨季で調査には不向き、9月いっぱいで雨季は終わる)・・・以下略
<引用ここまで>

こんな事で唐突に東電が出てくる。その裏話のスクープ記事がアゴラに載っていた。
尚この記事を書いた酒井 直樹氏については私はまったく知識がない。唯一アゴラの人物紹介に「株式会社電力シェアリング代表」とあるだけなので、電力関係に人脈のある方なのだと思う。

以下アゴラのスクープ記事、日経記事は青字、それに対する私のコメントは黒字にします。

では最初にそのスクープ記事

<以下アゴラより引用>
http://agora-web.jp/archives/2034425.html

「韓国ダム」決壊で孤立のラオスに日本が救いの手
2018年08月26日 11:00

酒井 直樹  
株式会社電力シェアリング代表

これは信頼すべき筋から聞いたスクープ記事だ。これは国連筋から得た情報だが、情報源を秘匿するために配慮して書く。

先月、ラオス南東部のアッタプー県でセピアンセナムノイダムが決壊し、辺の村落が水没、少なくとも27人が死亡、3千人以上が家を失った。世界でも日本でも大々的に報道されているのでみなさんご存知だろう。ただ、報道されていない熾烈な外交ゲームが水面下で今現在繰り広げられている。

(私のコメント:「死者が少なくとも27人」、これは相当前の情報だ。現にこの記事で引用した8月24日付の日経の記事では死者は少なくとも39人になっている。それから「の村落が水没」、これは「周辺の村落が水没」の間違いと思うが、現地の地図も見ないでこんな事を言うものではない。ジャーナリストの風上にも置けない奴だ。被害にあった六つの村は決壊したダムから30キロから50キロ離れている。標高差は800m位はある筈だ。想像を絶する遠方のダム決壊事故だったのだ)

決壊したダムの完成予想図(セピアン・セナムノイ電力会社のホームページから)
2018-8-28セナムノイダムの完成予想図 

(私のコメント:この写真のダムは決壊したダムではありません。このダムは特殊な構造で、メインダムは確かにこのダムですが、他にサドルダム(副ダム)が6か所あります。決壊したのはそのサドルダムD、全く場所も構造も違います。後ほど詳しく説明します)

この発電所は、韓国大手財閥SKグループのSK建設と韓国西部発電、タイ政府系の発電大手ラチャブリ電力、ラオスの国営企業が合弁で建設していた。筆頭株主は26%を出資するSK建設。2013年に着工し、19年の稼働を目指して建設を進めていた。

(私のコメント:この記事も正確ではありません。こう書くと4社によるJV(Joint Venture)での受注のようですが、このプロジェクトはBOT方式(=Build、Operation、Transfer)と言って、この4社が自己資金で建設し、長年操業して投資額を回収し(この場合は27年間)、その後施設一式をラオス政府に引き渡す契約。だからこのダムは51%は韓国のものです)

8月24日日経新聞に岸本まりみ記者の以下のような署名記事がとても控えめな扱いで掲載された。

ラオスの水力発電計画、宙に ダム決壊から1カ月

ラオス南部で建設中のダムの決壊事故から23日で1カ月が過ぎた。同国政府は世界銀行の支援を受け、新たなダム建設の安全基準の策定を急ぐ。計画の認可体制についても見直しを進めており、新規のダムは事実上建設が延期されている。水力発電の売電収入で稼ぐラオス政府の構想は宙に浮いた状態だ。政府は外貨獲得のため外国人観光客の誘致などを急ぐが、課題も多い。

記事はこう結ばれている。

工業製品や消費財などの多くを輸入に頼る小国ラオスにとって、外貨の獲得は喫緊の課題だ。収入の柱になるはずだった水力発電計画が壁に直面する中、第2、第3の収入源の育成が急がれる。

しかし、世界のネットメディアでこの事故が議論されているポイントはそこではない。それは、「人災」か「天災」かという一点だ。米紙ニューヨーク・タイムズは「欠陥工事か」と報じている。何故か日本のメディアは、今回は頰被りでこの点を一切報じていない。社会正義とは一体なんなんだろうか?メディアの役割とは一体なんなんだろうか?

ラオス政府や国民の怒りは高まっていて、事故を「人災」と断定し、韓国側に対し、罰則的ともいえる「特別補償」を求めている。欧米メディアは「欠陥・手抜き工事」の可能性を報じ、工法自体への疑問も浮上している。このダムはアースダム方式と呼ばれ、ダムの形式として最も古い土でできたダムで、「地震で壊れてしまう可能性がある」「洪水時の異常出水で越水して決壊してしまう可能性がある」のは業界の常識とも言われる。今回の事故は、韓国企業による海外インフラ受注競争にも、影響が出かねないだけに韓国サイドは、「天災」(英語でフォースマジュール)つまり予期できなかった異常事態なので自分たちには責任がないとの主張を展開している。何度もいうが日本のテレビや全国紙はこれを一切報道していない。
(引用者注:Force Majeure(フォース・マジュール)」とは、「不可抗力」を意味するフランス語で契約などの用語)

ラオス政府は、こうしたラオスと韓国の当事者二国間の水掛け論に終止符を打つため、信頼の置ける第三者による客観的調査と評価を国連などの国際機関に必死になってお願いして回ってきた。それが社会正義であり、そのために国連などの国際機関は世界中の国民の税金の下に存在しているというのはみなさんもきっと共感してくれるだろう。

ところが、国連はそんなに綺麗な組織ではない。私も類似した国際機関に17年間勤めていたのでその裏と表を熟知している。そこは、「世界の正義・公正の実現」を看板に掲げるが、国益と国益がぶつかり合う情報戦の戦場であり、各国の外交官が角と角を付き合わせて自国を少しでも有利にするためのゲームを日々行なっているタフでワイルドな場所だ。実は、韓国はこのような情報戦や外交戦術に非常に長けている。各国ともそのような存在感の高い韓国を「忖度し」、ラオスが「第三者委員会での調査・仲介を」と涙ながらに訴えてもビクともしない。

現場でリアルな情報に触れている日経新聞の記者がそのような現場を知らないはずがない。もし知らなかったらメディアを名乗る資格はない。そして忖度の結果あのような読者が読んでも争点がなんだかわからない記事になる。日経は記事化しただけまだいい。他の大手新聞やテレビ番組は一切取り上げずに、日々「森友・かけ・財務省」等々の日本政府のどちらかというと軽度な問題を「忖度・忖度」とあげつらう。忖度しているのはあなたたちの方だ。偽善者のレッテルを貼られても仕方ないのではないか。フェイクニュースとどこが違うのか。国民の知る権利を阻害しているのはあなた方大手メディアだ。

さて、八方塞がりで窮地に追い込まれたラオス政府とラオス国民に、「私たちが中立の第三者として入ってあげましょう」と言ってきたある国がある。もちろん正式な外交ルートではなく企業の皮を被ってだが。その国の名前は中国だ。

ラオス政府はこれを断る。これ以上中国に影響力を行使されたら国を乗っ取られてしまうからだ。そして、ラオス政府が助けを求めた国がある。

それは日本だ。

国連筋によると、ラオス政府は事故直後から安倍政権に第三者の仲介役の段取りをするよう助けを求め続けていたそうだ。しかし、日本としても火中の栗を拾うには大きなリスクとコストが付きまとう。今、朝鮮半島の非核化や拉致問題を巡って韓国との距離を縮めているところだ。中国、そして米国と熾烈な外交ゲームを繰り広げている。こんなところで、ホワイトナイト(白馬の騎士)として仲裁役に立つと、韓国との外交問題に発展しかねない。

・・・中略・・・

そこで首相官邸は、日本が前面には出ないが、欧米等と連携して、この問題に当たる座組みを考え、先週日本や国際組織の非政府専門家を現地に赴かせた。表向きは政府は絡んでいない。政府とは無関係の法人の専門家が詳細に客観的に情報を分析した。

彼らは、現地をつぶさに冷静に確認した後、ラオスの首都ビエンチャンの首相官邸に赴き、トーンルン・シースリット首相に直接面会しその結果を口頭で伝えた。もちろんその場に現地の日本大使館関係者も日本政府系機関職員も同席していない。

安倍首相は大変したたかだ。表向きは、韓国と直接対峙しない。中国のこれ以上のインドシナ半島への侵食を食い止められる。ラオス政府や国民からは感謝される。それは米国の影響力が低下するアジアの新秩序形成において、大変意義深い良手である。

多分、早晩、国際的な陣容で第三者評価委員会の立ち上げが世界的なニュースとして駆け巡ることになるだろう。日本ではあまり報道されないだろうが。

これが、外交の現場で起きていることだ。私もリスク覚悟で私なりの正義を貫くため、こうした情報をみなさんに提供していきたい。
<引用ここまで>



私のコメント
此処でこの事故の全体像から見てみたい。

これは7月25日の記事に有った地図で、死者行方不明者数などが全体像不明な時のもの。
死者数は8/29現在(公式発表は8/18付けが最後)、死者39、行方不明97という。

2018-8-28ラオスのダム決壊事故関連地図7月25日 

ダムは図の一番上、Xe Namnoy Damである。このダムには左側にサドルダムが6か所あり、そのサドルダムD(赤色表示)が今回決壊した。
サドルダムDから青い点線が左に延びている。今回のダム決壊で新たに出来てしまった川だ。
この地図の真ん中、広い高原に降った雨水は以前は右側Xe Namnoy川は右へ(東側へ)。
左側Xe Pian川の水は左へ(西側へ)流れていた。しかし今回の事故でこの流域の水は大部分左側(西側)へ流れることになった。下流の被災地の水が簡単にひかないのはその為でもある。
尚このボラヴェン高原はラオスで一番降水量の多い所でその年間降水量は3500㎜という。日本で一番雨の多い町の一つである三重県の尾鷲市が年間3800㎜、東京都区部だと1500㎜、いかに多いか分かるだろう。

問題のダムから90キロほどの所にラオス第二の都市パクセーがあり、そこの気候はこうなっている。
2018-8-29パクセーの気温と降水量 
ラオスは一般に雨季は5月~10月と言われているが、これを見れば9月いっぱいで大体雨季は終わるのは理解できよう。尚SK建設側は異常な豪雨による不可抗力と言っているらしいが、そもそもラオスの雨季は豪雨が降る。ましてやボラヴェン高原はラオスで一番雨の多い所。その雨量を狙ってダムを作ったという事を忘れてはいけない。



これがメインダムのXe Namnoy Dam (丁度満水の様子)
2018-8-28セナムノイダムの満水状態

左側から勢いよく水が出ていますが、洪水吐きのクレストゲートです。この位置で満水の湖面レベルが決まります。これより湖面を下げるためにはダムの堤体下部に導管を設置し、そこにゲートをつけて(コンジット・ゲート)、そこから水を排出せねばいけませんが、良く分かりません。これから調査で問題になるところの一つでしょう。

これがサドルダムDの建設中の所 
2018-8-9サドルダムD1 

この写真の左側がダム湖側、右側が下流側。サドルダム下流の森林の中に小さな沢がある筈。少しずつは水が流れていたのだろうが、川にはなっていなかった模様。

2018-8-10サドルダムD8 

これがダム決壊後の写真。以前は森に隠れていた小さな沢が大きな川になってしまった。

そして被災地の状況はというと

2018-8-29被災したアッタプーよりボラヴェン高原ロイター画像

これは下流の被災地からボラヴェン高原を見たところ。撮影地点はロイターでは記載されていないが電線のあるところなどから下流の被災地であることが分かる。決壊したダムはこの山の上、はるか遠く約50キロほど離れている。標高差は800mほどだ。
日本にこのダムを当てはめてみると、軽井沢辺りに巨大ダムを作り、碓氷峠に700mの立て坑を穿ち、安中あたりに発電所を作った。そのダムが決壊したので高崎辺りが水没した。こんな感じでしょうか。浅間山の爆発以上と言えるかもしれません。 



アゴラの酒井 直樹氏の記事で引用している日経記事です。参考までに全文引用しておきます。
<以下日経より引用>
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34505440T20C18A8EAF000/
ラオスの水力発電計画、宙に ダム決壊から1カ月 
2018/8/24 6:30
 
 【バンコク=岸本まりみ】ラオス南部で建設中のダムの決壊事故から23日で1カ月が過ぎた。同国政府は世界銀行の支援を受け、新たなダム建設の安全基準の策定を急ぐ。計画の認可体制についても見直しを進めており、新規のダムは事実上建設が延期されている。水力発電の売電収入で稼ぐラオス政府の構想は宙に浮いた状態だ。政府は外貨獲得のため外国人観光客の誘致などを急ぐが、課題も多い。

 7月のセピアンセナムノイダムの決壊事故は周辺の村に甚大な被害をもたらした。ラオス国営通信によると少なくとも39人が死亡、数十人が行方不明のままだ。

 これまでダム建設の認可は大規模ならエネルギー・鉱業省、小規模なら各県の認可で建設できていた。関係者によると相次ぐ事故を受け、政府内ではすべての権限を首相府に移すことも検討されている。認可体制が定まらない中、新規計画の承認は事実上棚上げになっている状態だ。

 ただ、承認済みだが未着工のダムの扱いなどは明確に定められておらず現場は混乱している。ラオス政府は2030年までにダムを159カ所新設する計画を打ち出しており、すでに投資の承認を受けたダムはラオス国内に相当数あるとみられる。日本では関西電力がダムを建設中で「今のところ作業に遅れは出ていない」(同社)という。

 政府は事故の再発防止のため対策を急ぐ。設計や施工の安全基準の改定作業は世界銀行などの協力を受けて進められている。2017年に北東部で起きた別の小規模ダムの決壊事故を受け、ラオス政府が世銀に依頼していた。7月の事故を受けて実施されることになった全国のダムの再点検も並行して進められる予定だが、具体的な作業スケジュールなどは示されないままだ。改定の内容次第では売電で外貨収入を増やす狙いだったラオスの長期計画に乱れが生じる可能性がある。

 周辺国はラオスの対応を好意的に受け止めている。タイ、ラオス、カンボジア、ベトナムの下流域4カ国で構成するメコン川委員会は「ダム建設の延期と見直しの決断を支持する」と声明を発表。ダム開発計画の見直しに協力する姿勢を示した。

 産業の少ないラオスで政府が売電に代わる外貨獲得手段として力を入れるのが観光だ。17年にラオスを訪れる観光客が9%減少したこともあり、18年は観光キャンペーン「ビジット・ラオス・イヤー」を展開。年間500万人の訪問を目標に掲げ、世界遺産のルアンプラバンなどへの観光客誘致を急ぐ。

 8月には日本政府の支援を受けてビエンチャンの国際空港の受け入れ能力を拡大し、外国人観光客の受け入れ体制を整えた。内陸国のラオスは集客の目玉となるビーチリゾートなどがなく、各地の祭りを核にイベントを企画する。

 海外からの投資誘致のために設けた経済特区も思うように企業の進出が進まず、空きが目立つ。5月に3年ぶりに最低賃金を引き上げたことも、人件費の増加を嫌う企業にとってはマイナス材料になった。

 工業製品や消費財などの多くを輸入に頼る小国ラオスにとって、外貨の獲得は喫緊の課題だ。収入の柱になるはずだった水力発電計画が壁に直面する中、第2、第3の収入源の育成が急がれる。

  1. ラオス
  2. TB(0)
  3. CM(2)

2018-08-26 17:10

ラオスのダム事故の原因調査には日本も参加


 ラオスのダム決壊事故について色々書いてきたのだが、その原因調査が既に始まっていることが分かった。調査機関は国際大ダム会議(本部:フランス)と日本の東京電力だった
実はこの事については殆ど報道がなく、全く分からなかったのだが、ラオスのヴィエンチャン・タイムズにその報道があった。
最初の調査(多分予備調査)が終わって、国際大ダム会議のシュレイス会長( Anton Schleiss、スイス人らしい)がラオスの首相を8月21日に表敬訪問した事が報道されている。

この調査団に国際大ダム会議からの専門家グループと日本の東京電力の専門家グループがいることが書かれている。


<以下ヴィエンチャンタイムズより引用>
http://www.vientianetimes.org.la/FreeContent/FreeConten_PM_calls_198.php
(機械翻訳で適当に手直ししました)

PM(Prime Minister=首相)は専門家にダム崩壊の真実を明らかにするよう求めた

 トンルン首相は、7月23日にアタプー省のダム崩壊の本当の理由を明らかにするため、ラオス当局と緊密に協力するよう、国際専門家に要請した。トンルン氏は、国際大ダム会議(ICOLD)と東京電力(TEPCO)のメンバーからの表敬訪問を受けての表明。(8月21日)
8月22日の政府のウェブサイトの声明によると、同グループは、ICOLDの上級専門家、Anton J. Schleiss教授をリーダーとし、ラオス当局者を含む他の専門家と提携して、ダム崩壊の原因を調査する。

Schleiss教授は、彼と彼の代表団を歓迎する貴重な時間をさいてくれたことを首相に心から感謝した。
彼はまた、Sanamxay地区でのダム破壊の悲劇的な結果について彼の悲しみを表明した。
教授博士Schleissは言って、国際的な専門家が事故の調査に協力したことを首相に伝えた「調査は、様々な分野から協力して軌道に乗っている。」
「我々は、私たちは今回参加していない2人の他の専門家との問題を議論します、この機会にすべての情報を収集し、調査を行い、ダムの設計を評価した」と付け加えた。
Schleiss教授は、ダムの崩壊の正確な状況はまだ不明であるが、事故の真の理由を発見するために10月に調査を再開すると述べた。(引用者注:現在ラオスは雨季で調査には不向き、9月いっぱいで雨季は終わる)
彼は、このような事故は、どの国でもいつでも発生する可能性があり、最先端の技術を採用した先進国で起こったと述べた。
しかし、起こったときには、実際の原因を調査して、レッスンを学び、そのような出来事が再び起こらないようにするための対策を講ずる必要がある」と彼は語った。
Thongloun首相はSchleiss博士とその代表団に事故の調査に時間を割いたことに感謝した。

By Times Reporters (最新の更新: 2018年 8月25日)
<引用ここまで> 


そしてこれは産経ニュースの報道

<以下引用>

産経ニュース 2018.8.23 
ラオスのダム決壊から1カ月 避難者6000人、補償が焦点 建設企業の責任追及へ

 【シンガポール=吉村英輝】ラオス南部アッタプー県で建設中だった水力発電用ダムが決壊してから、23日で1カ月。洪水で家や農地を追われた住民への補償が今後の焦点となるなか、ラオス政府は日本を含む海外の専門家を招いて決壊原因の解明を進め、建設企業などの責任を追及する構えだ。

 ラオス政府が、国連機関などと16日付で発表した被害状況は死者39人、行方不明者97人、緊急施設への避難者6千人、影響を受けた被災者1万3100人。救援活動は大量の泥に阻まれ難航が続いているという。

 決壊したダムは、韓国のSK建設と韓国西部発電、タイのラチャブリ電力、ラオスの国営企業による合弁会社が建設中だった。

 ラオスの英字紙ビエンチャン・タイムズ(21日付、電子版)によると、SK建設の代表者は18日、ラオス政府に1千万ドル(約11億円)を救援資金として寄付し、「事故に見舞われた現地住民への深い追悼」を述べた。同社は200人で現地の救援にも当たり、仮設住宅も建設するという。

 ラオス政府は、新規ダム建設を全面中止し、決壊に関し、構造など原因究明と、決壊につながる関係者の汚職を調査する、2つの組織を8日に立ち上げた。

 トンルン首相は21日、現地調査した国際大ダム会議(本部パリ)のシュレイス会長や東京電力の技術者の表敬訪問を受けた。東電は「ラオス政府の要請を受け、調査団のサポートを実施した」としている。

<引用ここまで>


誰が聞いても「本当はこの件は日本が関るべきではない。非韓3原則だ」と思う話である。
がしかし、国際的には「こんな時こそ日本だ」、そう思われていると思う。
この件で日本が原因調査をしていることを韓国が知れば、いくらラオス政府の公式要請だったとしても病の民がう事は目に見えている。
大いに迷惑千万な話だ。

しかしよく考えてみると、ラオス政府が直接東京電力に依頼することは有りえない。少なくともラオス政府⇒国際大ダム会議⇒日本政府⇒東京電力、こんなルートで要請。更に別ルートとして世界銀行、アジア開発銀行(これは日本が最大の出資者)も絡んでいることは間違いないと思う。
こんな国際紛争間違いなしの案件、日本は色んな所に手を回していると思うが、まあそれはボチボチ分かってくるでしょう。安倍さんの手腕に期待します。

もう一つ、ダムの事故は日本も結構あると思うのだが、世界から見ると多分少ない部類では無いか。
そして古い話と思うが、日本統治時代の朝鮮に作った水豊ダム、これを朝鮮戦争時にアメリカ軍が空爆したが破壊に失敗。日本の当時の技術の優秀さが証明された事例がある。この件はその前第二次大戦中、ドイツのダムをイギリス軍が空爆し破壊した事例と絶えず比較されているが、多分ダム関係者の間ではこんな時こそ日本だ。そんな意見の出る要因の一つではないかと思う。
その水豊ダムを作った久保田豊は戦後日本工営の初代の社長になり、ラオスの最初の大ダムであるナムグムダムを作った

ナムグムダム
2018-8-26ナムグムダム 

ラオスの水力発電は1956年、熊本県阿蘇出身の久保田豊氏(当時66歳)がラオスのスファヌボン殿下(後の現政府の国家主席)に提案したことが始まりだった。セタパレスホテルでの会合の席で、スファヌボン殿下から「ビエンチャンの電力が不足して困っている。良い知恵があったらお借りしたい」と問われた久保田氏は、「ラオスには山もあり水も豊富で、水力発電ができます。水力発電をお考えになってはいかがでしょうか?」と助言した。これが、ラオスの経済発展において重要な意味を持つ提案となった。
https://www.data-max.co.jp/2014/03/24/post_16456_ik1.html


ちょっと参考までに今から20年近く前、私のタイ時代の初めころ、タイ東北部のラオスとの国境の町ノンカイからメコン川(タイラオス国境)とそこを渡る送電鉄塔。
2018-8-26ノンカイからメコン川を渡る送電鉄塔 
一寸薄くて見にくいですが画面中央に送電鉄塔が見えます。
タイ側ノンカイの町は夜となれば煌々と明かりがつきますが、対岸のラオス側は真っ暗。
でも昼間よく見ると民家も有るし人が働いているのも見える。この頃の電気は多分ナムグムダムからの電気だったと思います。


最後に本題に戻ります。
今回の国際大ダム会議、東京電力による調査は事前調査で、雨季が明ける10月から本格的調査に入ることになる。その結果がどうなるか待ちたいと思う。結論は見えているけれど・・・。

もう一つおまけ。タイの場合、上座部仏教で雨季は僧侶が出歩かず(遊行せず)寺にこもるものとされ、7月28日のカオパンサー(入安居)から10月24日(旧暦11月で満月の日)のオーク・パンサー(出安居)までがそれにあたる。多分ラオスも同じだと思う。
10月からの本格調査にはこんな信仰上のことも有るのではないか、まあこれは余談です。

  1. ラオス
  2. TB(0)
  3. CM(6)

2018-08-23 15:51

日本の銀行がラオスにカネを貸さなければダム事故も無かった??との噂


 ラオスのダム決壊事故は大惨事なのだが、最近コメント欄で皆さんから奇妙な話を教えていただいた。曰く、ラオスのダム事故は日本の銀行がラオスにカネを支援したせいだという。
出ました! 日本のセイダーズ!!、

ネットの反応はこうである。(注:参考事例として紹介)

2018-8-22アノニマスポストの投稿 
https://twitter.com/anonymous201504/status/1031877765090308096


マジで頭大丈夫か、これで終わりではあるが、ちょっと私の知るところを書いてみます。
主旨は本当に日本の銀行がカネを貸したのかという事。

まず最初にこの件の関連エントリー
「ラオスのダム事故の根は深い」
http://tansoku159.blog.fc2.com/blog-entry-1557.html

そしてこれがメコンウォッチ
http://www.mekongwatch.org/PDF/LaosDam_%E5%A3%B0%E6%98%8E_20180731.pdf
メコン・ウォッチ  2018 年7 月31 日
声 明
「ラオス南部のダム決壊で甚大な被害」
「開発には日本からの資金も」

これがパヨクの報道
https://hbol.jp/173229
建設中に決壊したラオスのダムは、日本の資金によるものだった――韓国叩きに終始するメディアが報じるべきこと
志葉玲
2018.08.21
ダム建設に韓国企業が加わっていたことで、韓国叩きの“燃料”に

<引用ここまで>

内容はバカバカしいので、本文は引用しません。まあリンク先を見てください。

尚、裏の桜さんの意見では、この志葉玲という人物、このようなパヨクとは「真性の差別主義者で真性の反日反国家主義者」なのだという。私もまったく同感で実に危険な人物である。だからこそ事実がどうなっているかを皆さんに知っていただきたいと思う。


所でメコンウォッチで見逃せないのがこんな記述なので、ここだけ本文を抜粋引用し問題点を指摘したい。
<以下該当部分だけ>
セピアン・セナムノイ・ダム事業を実施しているのは、①タイと韓国の企業、ラオスの国営企業による合弁会社ですが、②資金面では日本も関与しています。合弁会社に協調融資するタイ銀行団のうち、クルンシィ・アユタヤ銀行は現在、株式の76.88%を三菱UFJ 銀行が保有、三菱UFJ フィナンシャル・グループの傘下にあります(*6)。融資決定は統合前となりますが、現経営陣には最高経営責任者(CEO)をはじめ多数の日本人が加わっています(*7)。同じく、③クルンタイ銀行では時価総額 14 億 8,265 万 6,244 円の株を年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)が保有しています。また、GPIF は、合弁会社を構成するラオス国営企業に融資をしている韓国輸出入銀行の債権も時価総額62 億6,814 万2,753 円を保有しています(ともに2017 年度末)(*8)。
<引用終り>


問題点を分かりやすくするため、セピアン・セナムノイ発電事業(PNPC)の概要を説明。

重要ポイントは、この事業はBOTと言って(BOT=Build、Operation、Transfe)契約会社が自己調達資金で建設し、操業して投資を回収、その後(この場合は27年後)設備一式をラオスに引き渡す方式。
普通は工事完了したら設備は発注元(ラオス)に引き渡すと考えるのだが、この場合は違う。このダムは27年間契約会社(PNPC)のモノであるその契約会社(PNOC)は韓国2社、タイ、ラオスの合弁だが、マジョリティは51%で韓国である。だからこの会社は韓国の会社といってもいい

この事故はラオスにある韓国の会社が起した事故という事はこの図でわかる。

2018-8-22PNPC概要 
ソース:https://translate.google.co.jp/translate?hl=ja&sl=de&tl=ja&u=http%3A%2F%2Fwww.pnpclaos.com%2Findex.php%2Fen%2F&anno=2(ドイツ語です)

 問題点
① タイと韓国の企業、ラオスの国営企業による合弁会社
この表現は正確ではない。
「韓国2社でマジョリティを取った合弁会社で、他の2社はタイとラオス」が正しい。
だからラオスにあるダムだが、現在は韓国が51%持っている会社のものである。

② 資金面では日本も関与しています。
これは嘘です。現にすぐ次の行に
「クルンシィ・アユタヤ銀行(中略)融資決定は統合前となります」と書いてある。

此処でアユタヤ銀行を三菱UFJが買い取った経緯を見てみます。

元々アユタヤ銀行の株はアメリカのGEが大株主として持っていました。しかしGEは前CEOのイメルトが金融からの撤退を決め、株を売却することになり、それを入札で取得したのが三菱UFJでした。2013年6月でした。しかし三菱UFJは完全子会社の為、さらに株を買い増しすることにし、TOB(株式公開買い付け)を実施しました。これが終わったのが2013年12月。結局アユタヤ銀行の子会社化は2014年1月(2013年12月)からという事になります。
(日本人着任=2014年1月、株式取得手続き完了=2013年12月)

そしてこの銀行団によるプロジェクト・ファイナンスは2013年11月28日には契約文書の署名が行われています。多分このプロジェクトとしての最初の融資は2014年2月6日に実行されていますので、この時点でアユタヤ銀行が日本の三菱UFJ傘下ではありますが、これはもう決まっている融資を実行しただけという意味合いです。
これで日本のカネが云々とは言えませんね。嘘吐きしてまで隠したいのは、「この決壊したダムはラオスにある韓国の会社のモノ」という事実です。

③ クルンタイ銀行では時価総額 14 億 8,265 万 6,244 円の株を年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)が保有
これも事実かも知れませんが真実ではない。
クルンタイ銀行はタイの国営銀行でタイ国財務省直轄。株の時価総額は昨日(2018-8-22)現在で2683億バーツ(約9068億円)、せいぜい時価総額の0.2%以下を持っているだけ。
こんなことでクルンタイ銀行のやっていることにイチャモンなど云える筈がないですね。


最後のおまけ

アユタヤ銀行はこんなイエローカラーが特徴です。
これは2011年の写真だが、田舎のショッピングセンター内の銀行窓口。平日の午後7時。
2018-8-22アユタヤ銀行シラチャ支店 
土日も含め毎日午後8時まで営業。日本とは違いますね。
  1. ラオス
  2. TB(0)
  3. CM(13)

2018-08-18 19:14

ラオスのダム事故の根は深い

 
 ラオスにダム決壊事故について色々書いてきたのだが、どうもトンデモナイ根の深い話になりそうだ。最初に現地のこの地図から見て欲しい。

これはEUの地球観測衛星の画像、ダム決壊前の7月13日撮影
2018-7-28ダムの衛星写真決壊前 

これは同じく地球観測衛星の事故直後の画像、ダム湖が空っぽになっているのが良く分かる。
この決壊でダム湖の水面は15m下がっていると観測された。
2018-7-28ダムの衛星写真決壊後 

この画像で決壊したダムの右側にもう一つのダム湖が有る。Houay Ho Damという名前。
この辺りに事情についてコメント欄でkazkさんから貴重なご教示をいただいた。このダムについては決壊したダムと構造が似ているし、韓国が噛んでいることも同じ。更に決壊したダムのFSをやったと言われているベルギーの会社も出てくる。

このHouay Ho ダムの概要はこんなもの
2018-8-18houay ho dam 

このダムについてどうにも分からない事。それは上掲断念図でダムの堰堤は右側、しかし導水管は左側に出ている。ダムが出来る前はこの辺り一帯の水は右側に流れ、谷川を作り、最後はセコン川に流れていた(セコン川は最後はメコン川に合流)。しかしこのダムが出来たせいで標高差で700mくらいある水は谷川を通らずに下に流れてしまった。ダム湖から下の川はほぼ枯れてしまったのだろう。途中の川に依存していた灌漑や川魚漁などの漁業は大打撃だろう。まさに無茶苦茶な乱開発と言える。しかも同じことが今回決壊したダムでも起こっている。
此れが私の素朴な疑問だった。


このダムについては英文wikiに記述が有る
https://translate.google.co.jp/translate?hl=ja&sl=en&tl=ja&u=https%3A%2F%2Fen.wikipedia.org%2Fwiki%2FHouay_Ho_Dam

その中でも興味を引くこと
<以下上掲wikiより自動翻訳し適当に要約>
歴史 
このプロジェクトは韓国の大宇E&C(60%)、 ラオスÉlectricitidu laos(20%)、Loxely PLC(20%)(タイの開発会社)が参加し、1993年に建設開始。これまで未開発だったボラヴェン高原の水力発電開発開始。これはタイで初めてのBOT契約だった。
(注:BOT=Build、Operation、Transferで、契約会社が自己調達資金で建設し、操業して投資を回収、その後(この場合は30年後)ラオス側に設備一式を引き渡す方式。虫のいい話である)

しかしアジア通貨危機で大宇、Loxelyは経営不振に陥り、最終的に 2002年1月、 ベルギーのTractebel Electricity and Gas Internationalとタイの会社MCLが、大宇およびLoxely PLCの株式および債務の80%を1億4000万ドルで購入した。(残りの部分はラオス政府が保有)
  TractabelはGDF Suezの子会社です。 タイの銀行のシンジケートは資金提供を提供し、 ベルギーの輸出信用機関 (ONDD)はTractebelを支援した。 

論争
ベルギーのNGOであるProyecto Gatoは、2004年にOECDの多国籍企業ガイドラインの下で、 Tractebelがダムのために移動するよう強制された人々に適切な報酬を支払わなければならないと主張した。 彼らが流域地域に住んでいたので、12の村からおよそ3,000人が強制的に追い出されて、移住を余儀なくされた。 Proyecto Gatoはまた、移住者が基本的な保健医療、教育用具、医療を利用できるようにTractebelに要請しました。

1994年4月、大宇はプロジェクトの環境社会的影響評価を実施したことになっているらしいが、社会経済状況の基礎調査が不十分だった。

最終的に、Houay Ho集水域のすべての村と隣接するXe Pian-Xe Namnoy水力発電計画の集水域にあるすべての集落が、再定住地に移転された。
しかし現地は少数民族の住むところであり、異なる少数民族をくっつけて住まわせれば紛争が起こる。結果的にこの再定住はうまく行かなかった。

<要約ここまで>


此処で一寸ラオスの民族事情を

ラオス人口約660万人、民族構成は約6割が低地ラオ族、その他アカ族、モン族など49の少数民族。
この内低地ラオ族は広い意味でのタイ族であり、タイ東北部(イサーン地方)と同じ。言葉もタイ語の東北方言(イサーン語)と全く同じである。また宗教も上座部仏教で同じ。
この主流派のラオ族と少数民族が如何して暮らしているかというと、彼らは永年住むところの標高で住み分けてきた。

この件はタイ族・ラオ族の故郷中国雲南省での西谷大氏の調査レポートによれば、山間の谷間では一番下の谷川沿いの平地はタイ族、そこから標高にして200m~300mくらい離れていろんな少数民族が暮らしている。この違いは彼らの生業の違いであるという。谷あいの低湿地で稲作をするタイ族(ラオ族)、傾斜地での棚田をする民族、急傾斜地での陸稲栽培、さらには谷川での漁業等など。
今回のボラヴェン高原も標高が1000m前後で気温は年間で最低10℃~最高30℃位の冷涼な所。
そんな所でいろんな少数民族が適当に離れて暮らしていた。それを無理やり移住させたのであろう。
軋轢が起こる訳である。
なおこのボラヴェン高原の住民、今から100年前のフランス統治が始まった頃は農業をしていなかったのだという。そんな所にコーヒー栽培を教えたのはフランス人だったという。

こんな事を知れば、少数民族の定住、自立にはとんでもない時間と労力がかかるのは想像できると思う。


一寸話は変わります。

此処にアメリカのサンフランシスコ工科大学からラオス政府に今年1月に提出されたこんなレポートがあります・
SUSTAINABLE HYDROPOWER MASTER PLAN 
FOR THE XE KONG BASIN IN LAO PDR
FINAL REPORT

Submitted to
Government of Lao PDR
Submitted by
Natural Heritage Institute, San Francisco, California
In Association with the National University of Lao
January 2018
2018-8-18xekong.jpg 

全文は200頁以上あり、私の乏しい頭では拾い読みするだけでも大変。
しかしこのボラヴェン高原をとりまくXe kong川流域の環境問題やダムにより移住させられた人たちの生活の再建はさらに大きな問題となると思う。

そんな所に今回のダム決壊事故である。

この事故が環境問題に火をつけたのは間違いないだろう。


さらにもう一つ厄介な問題が有る。

Xe Pian、Xe NamnoyダムはBOT方式で建設されてきた。BOTとは、Build、Operation、Transferで、契約会社が自己調達資金で建設し、操業して投資を回収、その後(この場合は30年後)ラオス側に設備一式を引き渡すというもの。

しかし今回の事故で完成できなくなった。しかし借入金の返済は待ったなしで始まる、又は始まっている筈である。残念ながら需要家のタイからの支払いは(当たり前だが)無い。間もなくSK建設は資金繰りに窮することになる。この事故直前、4か月早く完成したからと言ってボーナスを2000万ドル(約22億円)せしめた、そのしっぺ返しで同じ額だとしても毎月500万ドル支払わねばいけない。

こんな事になると韓国流は会社を倒産させ、役員はトンズラ。あとは知らんとなるのだが、残念ながらこのSK建設、トルコのダーダネルス海峡大橋も受注している。そう簡単にはトンズラできない訳だ。
これは昨年始めの記事だが
トルコ海峡橋、韓国勢と契約 日本のインフラ輸出に課題 
2017/3/16 

所で韓国のつり橋と言えば李舜臣大橋、あの揺れて困る橋です。
「揺れる橋の話<オマケ、凄いデータが出てきた<アニメ画像・グラフ追加しました」

そしてこの揺れて困る橋を設計したのはどこか?、これはコメント欄でテラサンさんから情報をいただきました。テラサンさんどうも有難う御座いました。
所でその設計した会社ですが「維信」という名前の会社で、この会社が今回のラオスのダムの設計もやっているようです。多分トルコの件にも絡んでいるでしょう。

何か「因果は巡るよ どこまでも・・・」、そんな思いのする話です。

さてトンズラも出来ないK国さん、これからどこへ行くのでしょうか。
それにしても事故から3週間以上、現地は雨季で困っているようです。

これはヴィエンチャンタイムズの最近の写真
2018-8-18vientienetimes.jpg 

  1. ラオス
  2. TB(0)
  3. CM(12)

2018-08-11 09:55

ラオスのダム事故<決壊前後の映像が出てきた


 ラオスのセピアン・セナムノイ水力発電プロジェクトの内、サドルダムD決壊事故について、是非とも見たかった映像が出てきた。ダム工事中の映像と決壊後の惨状が良く分かる映像である。

この件はコメント欄でkamosukeさんから情報をいただいて分かった。kamosukeさんどうも有難う御座いました。

さてその映像だが、多分どこかの内部情報の分かる方が「ホィッスルブロアー」となって匿名でネットのまとめサイトに投稿したものと推測。そこでその写真全部を投稿者のコメントも含めてそのまま掲載します。
私のコメントなどはその写真紹介の後に記します。


最初に情報ソース
http://matometanews.com/archives/1906646.html
https://log2ch.net/read.php/news/1533653750/

以下その写真です。ソース記事には番号が付いていませんが、分かりやすくするため写真1~13と番号を振りました。


では早速その写真を順に

写真1
2018-8-9サドルダムD1 
画像ソース:https://i.Imgur.com/TKtmxXt.jpg 

写真2
2018-8-9サドルダムD2 
https://i.imGur.com/NjAT6Jo.jpg 

写真3
2018-8-9サドルダムD3 
https://i.imGur.com/82ZYCjR.jpg 

写真4
2018-8-9サドルダムD4 
http://5b0988e595225.cdn.sohucs.com/images/20180729/5158ebf80d5946a8ab5105eb63bdd3df.jpeg 

写真5
2018-8-10サドルダムD5 
https://i.imgUr.com/uFkwgcY.jpg 

この画像は欧州連合(EU)とヨーロッパ宇宙機関(ESA)が運用する地球観測衛星Sentinel-1(センチネル-1)によるもの。このダム決壊前の映像は2018-7-13のもの。
以下参照ください
http://tansoku159.blog.fc2.com/blog-date-201807.html
又は
http://www.cesbio.ups-tlse.fr/multitemp/?p=13872

写真6 (決壊後)
2018-8-10サドルダムD6 
https://i.imgUr.com/AhQ6KKv.jpg 

このダム決壊後の映像は同じく地球観測衛星Sentinel-1によるもので、2018-7-25撮影
尚この映像はカラーになっているが、元の映像は合成開口レーダーの画像なのでカラーではない。
多分この関連の画像との辻褄合わせで色を付けたのではないかと推測します。
(他の航空写真がカラーなのに、これだけが白黒では迫力がない???)



写真7
2018-8-10サドルダムD7 
https://i.imgUr.com/EaaYvtD.jpg 

写真8
2018-8-10サドルダムD8 
https://i.ImGur.com/uAdW3wr.jpg 

写真9
2018-8-10サドルダムD9 
https://i.Imgur.com/TKtmxXt.jpg 

写真10
2018-8-10サドルダムD10 
http://www.iacea.com.ar/notice/00501668_2018072920180730075819.JPG 
引用者注:この画像を300%~500%に拡大すると傘をさした人物が見えます。またその左下に農民らしき人が作業しているのも見えます。
長さ770m、高さ25m、(最上部で)幅5mほどの巨大な堤防はほぼ消えて居ます。

写真11
2018-8-10サドルダムD11 
https://img.sbs.co.kr/newimg/news/20180802/201212163_1280.jpg 

写真12
2018-8-10サドルダムD12 
https://i.imgUr.com/VHRIcMb.jpg 

写真13
2018-8-10サドルダムD13 
https://i.ImGur.com/0WQOSqg.jpg 


これで全貌が分かりました。しかしダム決壊は実にとんでもない結果を生んだようです。
8月4日のエントリーで書きましたが、このダム湖は周囲を絶壁で取り囲まれた山の上の盆地に水を貯めるもの。
こんな風ですね。
2018-8-4ラオスのダム事故現場周辺の地図

この山の上の大貯水池は東へ「セナムノイ川」、西へ「セピアン川」が流れていた。つまり山の上の盆地に降った雨は二つの川で東と西に分けて流していた。しかし今回の事故で、「盆地に降った雨の大部分はサドルダムD跡地に出来てしまった大きな谷川に流れるようになった」、こんな事が言えると思う。
つまりダム決壊で川の付け替えまでできてしまったことになる。

意図せぬ川の付け替えは下流域の治水・利水・道路橋梁などにも多くの影響を与えるものと思われます。今後の事故調査ではSK建設の余りにも杜撰な設計管理施工が問題になるでしょう。

また今の所問題の出ていない二つのメインダム(セピアンダム・セナムノイダム)も本当にロックフィルダムなのかどうかまで調査されると思います。
全面的なやり直しとなれば、損説費用の何倍もの費用が掛かりますが、数字が大きすぎて、訳が分からないですね。

また建築費用もメインはタイの銀行4行の融資ですが、下手するとタイの銀行がぶっ飛ぶかもしれません。
君子危うきに近寄らず。矢張り非韓3原則(助けず、教えず、関らず)ですね。
  1. ラオス
  2. TB(0)
  3. CM(17)

2018-08-04 16:51

ラオスのダム決壊<FSから問題があるのでは?


 ラオス南部のダム決壊事故は大惨事なのだが、どうにも問題点が良く分からない。
そんな折、コメント欄でkazkさんから貴重な情報をいただいた。このダムはドイツ語版のwikiに出ていると。
ドイツ語版wiki
https://translate.google.co.jp/translate?hl=ja&sl=de&u=https://de.wikipedia.org/wiki/Xe-Pian_Xe-Namnoy_Hydroelectric_Power_Project&prev=search
 
そこで大体全貌が見えてきたのだが、どうもこの問題はプロジェクトの最初の段階であるFS(フィジビリティ スタディ<feasibility study>、「実行可能性調査」「企業化調査」といわれる)から問題含みでは無いかと思うので、そんな所を纏めてみた。


最初にこのプロジェクトの全体像を見てみたい。
これはダム周辺の地図だが、立体的に見えるのでわかりやすい。

2018-8-4ラオスのダム事故現場周辺の地図 
http://www.pnpclaos.com/index.php/en/project/project-in-briefより加工

現地はラオス最南部である。大まかな場所を言えば、日本からタイのバンコクへ行く航空路が南シナ海からベトナム中部のダナン市上空、ラオス第二の都市パクセー市上空を通ってバンコクに向かい、まもなく降下していきますが、そのパクセーの少し手前左側(南側)にあたります。また現地はボーラウェン高原 (Bolaven Plateau)の一部でもあります。

上掲地図で分かりますが、現地のアッタプー市辺りは標高100mくらいですが、そこから急峻な崖で、山の上は周囲を1000mくらいの山に取り囲まれた盆地。盆地の中は標高800m~900mです。
この盆地から二つの川が流れだしていまして、東に向かうのがセナムノイ川(xe namnoy)、西に向かうのがセピアン川(xe pian)、この高原に南北に二つのダムを作り、南側がセナムノイダム、北側がセピアンダム。そしてこの二つのダムを中央のセナムノイ川とセピアン川の分水嶺に当たるところに地下導水管を敷設、セナムノイダム、セピアンダムを一つのダムとして運用、ダムの水は盆地の縁の導水管で高原の下に落として発電する。こんな凄い話、見たことも無い大規模プロジェクトです。

これがメインのセナムノイダム(xe namunoy)
2018-8-4xe namnoy dam 
ロックフィルダムです。左側に見える洪水吐(余水吐)は地山に設けられている。
(構造上ロックフィルダムは越流させられない、それで地山に洪水吐を設置)
この洪水吐の位置でダム湖の満水レベルが決まります。
尚ネットではこのダムが決壊したダムだという話が色々ありますが、このダムは決壊していません。決壊したのは上掲図にありますが、左側にあるサドルダムDです。

これがもう一つのメインダム、セピアンダム
2018-8-4xe pian dam 
このダムは洪水吐は重力式ダム、それ以外のダム本体はロックフィルダムになっている。

此処からもう一つの厄介な問題が見えてきます。メインのセナムノイダムの放流水はセナムノイ川に出ていきますので、高原の東に流れます。
もう一つのセピアンダムの放流水はセピアン川に流れますので、高原の西に流れます。
そしてメインのセナムノイダムのサドルダムは左を向いているので、サドルダムが決壊するとダム湖の水は大部分西側に流れます。つまりダム湖の中に分水嶺が有るという不思議な構造、それがセナムノイダムという事です。

今回のダム決壊事故はセナムノイダムが出来て、従来流れていた谷川が全く枯れてしまった。そこにサドルダム決壊で以前なら山の向こう(東側)に流れていた水まで全部小さな谷に押し寄せたというものでした。
地元の人がこんな難しい話など知る訳ありませんね。
被害にあわれた方にはお気の毒としか言いようも有りません。


こんなダムで洪水調整をどうするかですが、こんな図で分かります。

2018-8-4ラオスのダムの断面図 ダムの水位調整は満水水位はダムの洪水吐、それより下げるには発電所用の導水管(直径4.4m~5.0m)で水を抜く構造です。(他にあるかどうか調べたが分からない)


さてその決壊したサドルダムDですが、災害当初からこんな写真が出まわっていました。

2018-8-4ラオスのダム決壊直前の様子 

しかし何時何処で撮られたものか分からないのでブログに取り上げませんでした。今回その出所が分かりました。
このダムは長さ770m、高さ25mで一見ロックフィルダム風ですが、土を盛り上げただけのアースダム(アースフィルダム)
ダム決壊寸前で約1m沈下している。

「ラオス決壊は土のダムで越流させた設計と管理ミス」
団藤保晴  | ネットジャーナリスト、元新聞記者 8/1(水) 6:00
https://news.yahoo.co.jp/byline/dandoyasuharu/20180801-00091429/

これが決壊直後の写真と日本式と韓国式の比較

2018-8-3ラオスのダム日本式と韓国式比較 
実はこの図もネットで匿名さん投稿のものとして当初から出回っていました。多分事情をよくご存じの方が匿名で実態を告発したものと思います。

日本側は堅牢で強固な方式【総合型ロックフィル方式】を提案、50年保証もつけて見積もりを出していた。一方、韓国企業が日本方式より簡素な【普通のアースダムロックフィル方式】を提案、日本の見積もりの1/3の金額で日本より短期工期ということで入札。SK建設は計画より4ヶ月前倒しして工事終了。2000万ドルのボーナスを受け取ってしまっています。

所でこのダムにはもっと致命的な欠陥も有ったようです。
参考までに日本のアースダムの代表として愛知県の入鹿池を見てみます、江戸時代初期の1633年完成、溜池としてはわが国最大貯水量だそうです。

2018-7-31入鹿池と明治村 
入鹿池と左側が博物館明治村。遠くに見えるのは御嶽山です。

これが入鹿池堤防
満水水位から約6m上が堤防上面になるように洪水吐(余水吐)で管理しています・
2018-8-4入鹿池堤防 

この入鹿池、200年以上大事故は無かったのですが、江戸時代最末期の慶応4年(明治元年)、「入鹿切れ」と呼ばれる決壊事故を起こし、死者が千人近い大惨事になりました。
今年がその150年目で慰霊祭が行われています。
「入鹿切れ 150年忌法要 犬山 /愛知」
https://mainichi.jp/articles/20180412/ddl/k23/040/162000c

この入鹿切れではこんな重さ15トンもある巨石が流れてきました。現在も悲劇を記念する記念碑になっています。
2018-8-4入鹿切れ流石 
http://www.aichi-c.ed.jp/contents/syakai/syakai/owari/owa0050.htm
余談:レンホーにもこんなものを見せて、頭を小突いてやりたいですね。100年200年に一度というのは今目の前で起こることなんだよと。


一寸余談が長くなりました。私が言いたいのは粘土を盛り上げたアースダムでも決して悪い訳ではありません、しかし問題は粘土を如何に締め固めるか、この一点に成否がかかっています。

しかしラオスのダムは堤防上面から満水水面まで1m位これでは水が堤防を越える「越流」が起きて下さいと言わんばかり。しかも粘土の締固めにも疑問符が付きます。
それに私は専門家ではありませんが、このサドルダム、水位の調整ははるか向こうのメインダムの洪水吐のみ。
サドルダムからメインダムまでは2.3キロは有ると思うのですが、一般に水路設計などで円滑に水が流れるためには千分の一(1キロで1mの高低差)は必要と言われ、若しサドルダムで何らかの理由(局地的豪雨や支流の流入など)で水位が1m上昇すると、例えメインダムゲートを開けても、「水は仕方ねえなあ、まあボチボチ行くか」で簡単には水位は下がりません。この設計は恐らく致命的なミスでしょう。

堤防の締固めについては、日本最古の貯水池「狭山池」に敷葉工法(しきはこうほう/葉のついた枝を土留めに使う工法)が使われているなど、凄い技術が見られます。
狭山池


こんなことで日本にはいろんな歴史と技術の積み重ねが有るのですが、そんな事は韓国には期待するほうが無理ですね。

最後にFSの話です。こんな巨大な建築物は最初に狙ったいろんなことが狙い通りに出来たかどうかをキチンと検証する必要があります。
例えば計画した雨量に対し実際はどうだったのか、水位の上昇はどうだったんか、こんな事をきちんと調べ、ダム管理につないでいく必要があります。
FSが重要なのは此処なのです。

しかもこのFSはベルギーの会社がやったと聞きました。多分ドイツも発電機や送電などで沢山関係していると思います。

韓国のスタッフにFSを理解できる人がいたでしょうか。ダムの貯水を始める段階で、あちこちの変異や応力などを当然調べるべきですが、そんな気配も見当たらないですね。

此処からは私の藪にらみ、独断と偏見ですが・・・。
FS段階で非常に高価な構想なので、日本の見積もりでは採算が全く合わない。そこでコリアを焚きつけて価格を叩きに叩いた。結果日本の3分の1の価格で何とか採算が合うようになった。
しかしこれは実にヤバイ。コリアにこんな難しい事が出来るだろうか。そこでドイツやベルギーは発電機やタービンをコリアに売りつけてさっさとトンズラ。そうしたら案の定ダムが崩壊した。以上私の独断と偏見、妄想でした。

計画の大本から問題だと思います。
尚このプロジェクトはBOT(Build Operate and Transfer)方式ですので、建築後27年間は運営会社が稼ぎ、その後ラオスに移転する計画なので、ここにも問題がありそうです。

  1. ラオス
  2. TB(0)
  3. CM(4)

2018-07-26 15:50

ラオスのダム決壊<日本の報道では真相は分からない


 ラオスで建設中のダムが決壊して六つの村、被災者は6千人を超えると報道されている。
このダム崩壊では鉄砲水が村を襲う瞬間が現地の人によって動画撮影されている。実は私も鉄砲水は知っているし、被害の後もあちこちで見たことは有るが、動画でその様子を見るのは初めて。

 そこで最初にその動画を紹介します。
動画の最初の方、下側に人影や動く車が見えていますが、この人たちは無事だったんでしょうか。無事であることを祈って動画を見てください。


https://youtu.be/t6_kVSyE-0A

女の人が「マーレ~オ」と叫んでいますが、「来たぞ~」という意味ですね。
(ラオス語はタイ語の東北方言と同じ)
この動画は鉄砲水の怖さを知るうえで大変貴重。是非参考にしていただきたいと思います。


さて本題です。



これは歪曲報道で知られる赤匪新聞(朝日新聞だったかな?)の報道
<以下引用>
朝日新聞デジタル>記事

ラオスでダム決壊、26人死亡 131人不明
シンガポール=貝瀬秋彦2018年7月25日22時13分

2018-7-26ラオスのダム事故 
ラオス南東部アッタプー県で、セピエン・セナムノイダムの決壊による洪水からボートで救助され、水の中を歩いて避難する人々。24日のソーシャルメディアから=ロイター

 ラオス南東部のアッタプー県で23日夜に起きた建設中のダムの決壊で、トンルン首相は25日、少なくとも26人が死亡し、131人が行方不明になっていると述べた。AFP通信などが伝えた。地元メディアは同日朝の段階の当局者の話として、3千人以上が救助を待っていると伝えており、救助が難航すれば犠牲者の数は増える可能性がある。

ラオスでダム決壊、大量の水流出 数百人が行方不明か
 地元紙ビエンチャン・タイムズ(電子版)によると地元当局者は25日朝、6千人以上が被災し、約2850人が救助されたが、まだ3千人以上が濁流につかった家の屋根や木の上に取り残されていると話した。

 ラオス当局は捜索・救助活動を続ける一方、被災者を支援するため国内外に食料や水、衣服、薬などの提供を呼びかけている。周辺国が救助チームを派遣する動きもある。

 ダムは水力発電用で建設中だった。建設に携わる企業側は、決壊について、暴風雨が続いたのが原因と説明している。(シンガポール=貝瀬秋彦)

<引用ここまで>

日本の報道はこんなものである。だが一寸待てよ!

此処で「建設に携わる企業側」と言っているが、その企業側とはどんなところかというと

 セーピヤン・セーナムノイ水力発電ダムは複数のダムからなり、出力410メガワット。開発運営会社には韓国のSKエンジニアリング・アンド・コンストラクションが26%、韓国電力公社傘下の韓国西部発電が25%タイの電力会社ラチャブリ・エレクトリシティ・ジェネレーティング・ホールディングが25%、ラオス政府傘下のラオ・ホールディング・ステート・エンタープライズが24%出資している。
(引用者注:建設工事は「韓国のSKエンジニアリング・アンド・コンストラクション」が100%受注している。つまり開発運営会社は51%韓国、工事は100%韓国だった)
ソース:ラオス南部で建設中のダム決壊、数百人不明 韓国電力公社など出資
http://www.newsclip.be/article/2018/07/24/37101.html

そしてその建設に携わる企業側の言い分は・・・
・・・「決壊について、暴風雨が続いたのが原因」・・・

だが待てよ、ダムというのは降った雨をためるものだろ。その降った雨を貯めたらダムが壊れた、だからダムが悪いんじゃなくて、<降った雨が悪い・・・>
流石韓国クォリティー、言い訳が凄い、これは笑うしか無いのだが・・

はて、どっかで聞いたような話じゃありませんか・・・。確か落語の枕でよく聞きますよねえ。
〽 熊さん:「おい、お前の釣ってくれた棚な、すぐ落ちちまったぜ」
 八っつぁん:「え、そんなはずはねえがなあ……もしや、何か乗せやしなかったかい」
元は十返舎一九の『臍繰金』の「細工じまん」辺りに出てきた話だそうな。


こんな落語みたいな話は置いといて、では実態はどうかというと、こいつは日本の報道では分からない。その海外代表としてBBCの報道を見てみよう。
これを見れば朝日新聞の言い分が、落語の熊さん、八っつぁんと大して変わらないことが分かると思う。

<以下引用>

ラオスのダム決壊、数十人死亡 6600人以上が家失う
2018年07月25日

2018-7-26ラオスのダム事故bbc1 
ラオス・ダム決壊、屋根の上に取り残された住民たち
(引用者注:元画像は動画です。興味のある方は上掲リンク先参照ください)

ラオス南東部のダム決壊による洪水で、24日までに少なくとも20人が死亡し、100人以上が行方不明となっている。

アッタプー県にある水力発電用のダムが一部損傷しているのが22日夜に見つかり、近隣住民は避難したが、ダムは23日夜に決壊し、鉄砲水が6つの村を襲った。

ラオス国営通信によると、6600人以上が住居を失ったという。

現地の写真から、軒下まで泥水に使った家屋の屋根に、住民が避難している様子がうかがえる。

2018-7-26ラオスのダム事故bbc2 
Image copyrightREUTERS
地元当局は、住民をボートで救出する活動を続けている。さらに、近隣自治体や政府に、衣類や水、食料、医薬品などの支援物資の提供を呼びかけている。

国営メディアによると、トンルン・シースリット首相は予定されていた会議を延期し、アッタプー県サーンサイ郡の被災地を訪れた。

アッタプー県の当局者はAFP通信に対し、洪水被災地は電話が使えない状態になっていると話した。

アッタプー県はラオス最南端の県で、カンボジアやベトナムと国境を接する。農業や林業が産業の中心で、水力発電による電力も主要な輸出品のひとつ。

決壊したダムとは
決壊したダムは、ラオス、タイ、韓国の企業が参加するセピアン・セナムノイ水力発電所の一部。発電所は2つの主ダムと5つのサドルダム(副ダム)からなり、決壊したのは「サドルダムD」と呼ばれるもの。

建設事業に参加する韓国のSKエンジニアリング・アンド・コンストラクションは、22日に最初に亀裂を発見したと明らかにした。

22日午後9時(日本時間同11時)― 「サドルダムD」に部分的な破損を発見。当局が通報を受け、近隣住民の避難開始。修理チームがダムに向かうが、豪雨のため作業難航。豪雨で複数の道路も被害を受けている。
23日午前3時(日本時間同5時)― 亀裂の入ったサドルダムDの水位を下げるため、主ダム(セナムノイ・ダム)の1つから水を放出。
23日正午(日本時間同午後2時) ― ダムの破損状態が悪化する危険の知らせを受け、州政府は下流の住民にも避難を命令。
23日午後6時(日本時間同8時)― ダムの亀裂拡大を確認。
24日午前1時半(日本時間同3時半)までに― サドルダム近くの村が冠水。午前9時半までに、7つの村が冠水。
発電所事業に参加するタイのラチャブリ発電ホールディングは、「相次ぐ暴風雨」によって「大量の水が発電所の貯水池に流れ込んだ」ため、ダムに「亀裂が入った」と発表した。大量増水の結果、水が下流へ流出し、約5キロ離れたセピアン川の流域にも流れ込んだという。

Laos Dam Collapse
2018-7-26ラオスのダム事故bbc3 
Image caption
セピアン・ダム(Main Xe Pian Dam site)と決壊した副ダム(Subsidiary dam collapses)から鉄砲水が下流に流れ(surge downstream)、複数の村が冠水した(villages flooded)位置関係
「サドルダムD」は幅8メートル、長さ770メートル、高さ16メートルで、近くの貯水池に水を迂回させるよう設計されていたという。

ラチャブリ発電ホールディングとSKエンジニアリング・アンド・コンストラクションは共に、避難・救助活動に参加していると明らかにした。

地元メディアなどによると、ラオス政府は、メコン川と支流を活用した水力発電事業を強力に推進し、「アジアのバッテリー」を目指している。2017年には46カ所の水力発電所を稼動させ、54カ所が新設中だ。2020年までには、54の送電線と16カ所の変電所を増設する方針。

ラオスはすでに水力発電による電力の3分の2を輸出しており、電力輸出が総輸出量の約3割を占める。


<引用終り>


最後にこのダム決壊と関係は無いのだが、ラオスの電気事情は昔から気にしていた。
何故か?
ラオスは貧しい国だが、山ばっかりなので水力発電には向いている。そしてそこで発電した電気は国民を明るく照らすのではなく外国(主にタイ)に売ってしまっていた。だから国民が真っ暗な中で暮らしている時隣国タイはラオスの電気で夜も煌々と明かりをつけ、文化的な生活を楽しんでいた。
厳しい現実だった。

そんな事の分かる写真など

これはタイ東北部ムクダハンからメコン川と対岸ラオスを望む。今から6年ほど前のモノ。
12月の朝6時7分、もう人々の生活は始まっているのだが、明かりはポツンポツンと
尚下の写真とは少し方角が違うので、送電鉄塔は写っていない。
2018-7-26ラオスメコン川の朝6時07分 

同じ場所から朝7時、メコン川の夜明け
2018-7-26ラオスメコン川の朝6時50分 

高々と鉄塔が見えます。タイに電気を送る送電線の鉄塔。この鉄塔の下にも家が有るのが見えるが、殆ど明かりがついていない。
この貧富に差がタイとラオスの差という事です。
  1. ラオス
  2. TB(0)
  3. CM(6)