カテゴリ:コメ の記事一覧

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2016-08-17 17:55

羽釜の話

 コメの話をエントリーしているのだが、どうしても書いておきたいことがある。
日本のコメの調理方法、釜で炊くという炊飯方法がもともと日本独自のものだという事だ。


日本の伝統的なコメを炊く釜、羽釜という。

これが今日も市販されている羽釜と木の蓋

2016-8-16現代の羽釜とふた

これが羽釜と竈(かまど)による炊飯

2016-8-16象印に見る羽釜

竈という熱効率の良く、保温性の良い設備と羽釜と重い蓋で炊飯時の羽釜の中の圧力を高くし、高温にする。
また重い木の蓋は水を吸うので、炊きあがったとき水滴がご飯の上に落ちるのを防いでいる。

そして、この羽釜による炊飯には独特のノウハウがある。それを昔からこんな言葉で言い伝えてきた。
『はじめチョロチョロ 中パッパ 赤子泣いても蓋とるな』、
こんな事を聞いた事が無いだろうか。

この飯炊きのコツ、正確にはこういうのが正しい様だ。
『はじめチョロチョロ 中パッパ ジュウジュウ吹いたら火を引いて 赤子泣いても蓋とるな』


所でちょっと見方を変えて、こんな方法が何時頃から普及していたのかというと江戸時代の中頃らしい。
それ以前はコメの調理は
蒸籠(せいろ)で蒸す・・・蒸しあがったコメは「強飯(こわいい)」という。こわいい⇒こわい⇒おこわで現在も使われていますね。

2016-8-17伊勢神宮のせいろ

せいろの無い昔々は「甑(こしき)」で蒸す・・・甕を火にかけ、水を熱する。その上に甑を置いて中にコメをいれて蒸す

2016-8-17甕と甑


もう一つの調理方法が「コメを煮る」方法。
上掲のような甕でもツボ・鍋でもよいので煮る・・・煮あがったコメは「姫飯(ひめいい)」または「粥(かゆ)」という

鍋はその後、こんな風に発展する。内耳鍋という。室町時代頃まではこんなものだった

2016-8-17内耳鍋
火にかけたとき、ヒモが焼けないように鍋の内側にひもをかけるようになっていた。

江戸時代になって鉄鍋が普及すると内耳鍋は使われなくなった。

これは北斎の浮世絵、諸国滝巡りの「阿弥陀が滝」に見える調理風景

2016-8-17諸国滝巡り阿弥陀が滝部分赤丸付き

こんな簡単な方法で煮炊きができた。このころには鉄の生産量が増えたので土鍋の代わりに鉄鍋を使うようになった。
鉄鍋ならヒモが燃えて鍋が落ちる心配がない。

鍋で煮たコメをもう少しおいしくする方法がある。
煮あがったコメの余分な水を(湯を)捨てて蒸らしたものを「湯取りメシ(湯取り法)」という。羽釜が普及するまではこれがメシの主流だった。
今でもこれは簡単に調理できる。炊きあがった「湯取りメシ」は粘り気が少なく、カレーライス等には良いのではないか。


前置きが長くなったが、コメの調理方法で蒸す、煮るとは違う方法が「炊く」である。
羽釜の登場だ。

羽釜が確認される最も古いものは鎌倉時代頃のもので、愛知県の知多半島で発見された。
これがその最古の羽釜、昭和36年に愛知用水に伴う発掘調査で発見されたもので、運よくほぼ完器に近い状態で出土。

2016-8-17半田市博物館の羽釜
羽釜は胴の径は約40センチ、高さは約50センチ、輪積みでつくられ、轆轤(ろくろ)で成形されている。

この羽釜は丁度いま愛知県知多半島の中ほど、半田市にある半田市博物館で知多の古窯展という展覧会を開催しており、そこに出品されている。(普段は愛知県陶磁美術館蔵)
この知多の古窯展は会期が8月31日までなので、興味のある方はどうぞ。


最後にもう一度現代に戻ります。
日本の炊飯器は昭和30年代に爆発的に普及しました。主婦の飯炊きの苦労を減らす画期的な商品だったのです。
竈と羽釜で飯を炊くのは最初から最後まで人が付いていないといけない、家庭の主婦にはとても大変な作業でした。
それが炊飯器の登場で炊きあがれば自動的に止まる。素晴らしい発明だったんですが、味はかまどと羽釜で炊いたご飯のほうがおいしかった。
詳しくは以下の資料参照ください。NHKのプロジェクトXの内容紹介です。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~tougyuu/nikki3a01.htm

その後も日本のメーカーはこの竈炊きご飯のおいしさを追及してきました。
そして最近の炊飯器(電気炊飯器、ガス炊飯器共)は遂に竈と羽釜で炊いたご飯並のものができています。

これは東京ガスのガス炊飯器の資料から

2016-8-17羽釜での炊飯を現代に再現
http://home.tokyo-gas.co.jp/living/kitchen/suihanki/lineup/s01.html


『はじめチョロチョロ 中パッパ ジュウジュウ吹いたら火を引いて 赤子泣いても蓋とるな』
この口伝の方法を現代の技術でどのように実現したか、それが上掲の図でとてもよくわかると思います。
(写真がはみ出してますが、中の文字を読みやすくするためです。ご了承を)
技術には長い歴史が要る。そして技術にはハードウェアとソフトウェアがあり、どちらが欠けてもダメ。
そんな事がよく分かる事例ではないかと思います。

最後に羽釜での飯炊きには「煮る・蒸す・焼く」という全部の調理方法がつまっているという人がいます。
最後の「焼く」は上掲図のところで最終工程で「一つかみの藁を燃やす行程」がありますが、ここで釜底の温度を上げ、「おこげ(お焦げ)」を作る、つまり炊きあがったコメを焼くわけです。

技術は一日にして成らずですね。感謝してご飯を食べたいものです。
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2016-08-14 22:10

美味しいタイ米<しかし不味いのもある

 前回エントリーで「タイ米は不味いは誤解」を書いた。
確かにおいしいタイ米だが、しかし不味いタイ米も無くはない。そこで私のタイでの経験を書いてみたい。


 タイでの工場操業がある程度落ち着いてきたころ、従業員からメシが不味いので何とかして、こんな要望が出てきた。
最初は工場は昼勤一直だけ、そして昼飯は工場の食堂で出すのだが、値段は同業各社の値段を調べてほぼ横並び。
多少のうまい不味いはあるだろうが、大差はないはずと思っていた。

しかし従業員からは、おかずの種類が少ないとか、不味いとか、ご飯が不味いとか、まあ色々言ってくる。
そして最後に出てくるのが業者を変えろ、そんな事だった。
では業者を変えるとどうなるか。
業者を新しくしても暫くはいいが、またまた同じ話が蒸し返されてくる。
私も食べてみてもおいしくない。
(実は他社の食堂の飯も食べてみた・・・)

何度かそんなことを繰り返して、最後にコメは会社が購入して業者に無償支給することにした。業者にしてみると実質値上げ。
これで一件落着かというと実はそうではない。
その頃、社内で不祥事があり、現地人責任者を退職させた。その騒動の中でさらに不祥事が明るみに出てきた。
現地人責任者はいろんな業者に裏金(タイではコミッションという)を要求しており、なんと食堂の業者に対しても裏金を要求していたとのこと。そしてこれはタイでは当たり前の事になっているのだと言う。
そしてこの当時のわいろの相場は5%~10%だった。

食堂の業者にしてみると、ぎりぎりの費用で食事を作っている。その中からさらに裏金を支払わねばいけない。
だからおかずも貧弱になるし、コメも特別安い、つまり不味いコメにせざるを得なかった。
では普通の町の食堂や屋台などはどうか。
ご飯が不味ければお客さんは来なくなる・・・当たり前だ。だからご飯はおいしい。

だがお客さんが不満であっても、それしか食えない環境、会社の社員食堂とか、学校の食堂のようなところは飯は不味い
不味い飯の裏には賄賂・不正が臭う・・・。こんな事だった。
タイの飯が不味いという人にはこんな事情を理解してほしいと思っている。

さらに最近のタイの裏金事情。これはタクシン時代に入って凄いことになっている。
タイで未だに隠然たる力を持つタクシンなどはこの裏金で私腹を肥やしてきた。だから一般人も賄賂は当たり前になっている。
タクシン時代の賄賂は30%~35%である・・・日本人には想像を絶する世界だと思う。
こんなエントリーを参照ください。
http://tansoku159.blog.fc2.com/blog-entry-528.html

最後においしいコメを不味くするタイのコメ管理について。

こんな写真を見てください、

タイのコメ保管状況

2016-8-14タイのコメ保管状況
これはタイがタクシンの妹インラック政権でのコメ高値買い上げによる莫大なコメ在庫問題での写真。
タイのような高温多湿の国でこの管理状態なら、コメの劣化が激しいのは理解できよう。
おまけに鳥や昆虫・ネズミなどがいくらでも入ってくる。これも当たり前だ。


所で日本のコメの管理状況はどうか。
日本では今はコメは低温倉庫での保管が当たり前だ。

これはコメの低温倉庫の一例
2016-8-14コメの低温倉庫外観一例

低温倉庫内部の一例 (上掲外観写真の建物内部とは異なります)
2016-8-14コメの低温倉庫内部
米にとって最適な温度13~15℃、湿度70~75℃で玄米を保管

所で単に低温ならいいかというとそうでは無い。7月8月のような高温多湿のところに13度から15度の低温で保管されたコメを出すとたちまち結露してしまい、コメがダメになってしまう。
だから低温倉庫には温度調整用の前室を設けたり、コメの出し入れ教育などで的確な管理をしている。

美味しいタイ米・日本米の裏にはこんな事情が隠れている。私のタイでの経験でした。
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