2016-03-04 17:23

「大災害列島」の大補修を、その5最終回

 「大災害列島」の大補修を、こんなテーマで色々書いてきたのだが、長い長いエントリーにお付き合いいただき有難うございます。
今回はその最終回、以下の5項目です。

・ 世界最先端の地位から凋落
・ インフラとGDP成長率
・ 公共事業の本来の目的
・ 一般財源化で大問題が
・ 世界に羽ばたくために

<以下引用>

世界最先端の地位から凋落

藤井 高速道路の車線数も、日本は三車線以下の高速道路が二七・一%、四~五車線が六四・九%、六車線以上は八%ですが、フランスは三車線以下が〇・四%、四~五車線が八二・三%、六車線以上は一七・三%で、諸外国では三車線以下が数%程度しか存在していないのが実態です。
 イギリスは、六車線以上が七〇・一%も占めている。統計を見る限り、日本には大量の自動車がある一方で、高速道路は「長さ」の点でも[太さ](車線数)の点でも圧倒的にサービスレベルが低いことを意味しています。日本が道路王国などというのは完全なデマです。

大石 ドイツなどは、高速道路ネットワークが整備されているのだか鉄道網は脆弱かというとそうではなく、ドイツの鉄道が四万二千キロに対して、日本は二万三千五百キロしかありません。ドイツの国土面積は三十五万平方キロメートルで、日本は三十八万平方キロメートルです。

藤井 新幹線を見ても、日本では二十万人以上の人口を抱えている都市で新幹線が接続されていない都市が全国に二十一も存在しているのに対して、ドイツではケムニッツという一都市だけ、フランスではオルレアンとクレルモンフェランの二都市だけです。新幹線はもともと日本が開発した技術ですが、いまや新幹線整備の点から言って、世界最先端の地位から凋落してしまっている。

大石 港湾もそうです。世界最大のコンテナ船が入れるコンテナ埠頭は、日本に横浜港一バースしかないそれも二〇一五年五月にできたばかり。客観的なデータで見れば、明らかに日本は「インフラ後進国」です。「これからはTPPだ、国際貿易で稼ごう」と言っていますが、これで本当に日本は世界とわたり合えるだけの競争力を確保できるのか……甚だ疑問です。

インフラとGDP成長率

藤井 そもそもインフラとは英語でいうインフラストラクチャー、すなわち「下部構造」を指し、社会、経済、行政を下から支えるもの全てを意味します。ところが、日本ではインフラというとすぐに「公共事業」をイメージし、「無駄遣い≒利権」とレッテル貼りが行われてしまう。

大石 公共事業は英語でははパブリックワークスといいますが、オバマ大統領にしても、各国の首脳はみなインフラストラクチャーという言葉しか用いません。世界の首脳たちの公共事業やインフラについての発言を見ると、わが国がいかに世界と外れているのか明らかです。
 オバマ大統領は「アメリカの再生にはインフラの再構築が必要だ」と言い、イギリスのキャメロン首相は「インフラが二流になれば、イギリスも二流になる。インフラは後回しにできる課題ではない」と言っています。さらに、ドイツのメルケル首相は連立政権を組む際の合意文書に、「質の高い交通インフラがドイツの競争力を保障する。したがってきちんと計画を立て、財源制度もしっかりしたものを作る」と言った内容を盛り込んでいます。

藤井 国内の都市間競争はもちろん、国際間競争でも一般道路、高速道路、一般鉄道、高速鉄道などインフラの整備水準が高い国ほど過去十年間のGDP成長率が高く、逆に低い国ほどGDP成長率が低いという相関関係が明確に示されています。
 多くのエコノミスト、タレント、コメンテーターが「公共投資を拡大したところで、借金が増えるだけで景気は良くならない」と繰り返しますが、全くのデタラメです。
 二○○五年と○九年にインフラ投資を増加させた時には税収も増加しており、一二年と一三年にかけてインフラ投資を増やした時期においても、税収の増加が確認できます。インフラ投資を削れば税収は減少し、インフラ投資を増やせば税収は増えるという傾向が、九八年のデフレ突入以降、明確に存在している。
 リーマンショック後のGDP回復率を見でも、インフラ投資を拡人した国家のほうが高く、インフラ投資を縮小した国家のほうが低いという世界的な結果が出ています。

公共事業の本来の目的

大石 これまで日本は二十年間、先進国で唯一、公共事業費を減らし続けてきた結果、先進国で唯一、経済成長してこなかった。何をしなければいけないか、もう答えは完全に出ています。
 よく財務省が、今後は人目が減るのだからもう新しい道路をつくっている場合ではないなどと言いますが、それは全くの逆です。いまの交通網では一日に五軒しか配達できない状態を、一日十軒に届けることができるようにする必要があるのです。つまり、一人当たりの労働生産性を高める工夫をしなければならず、それにはインフラ整備が不可欠なのです。
 インフラというと、日本では「今年は金額的にいくら事業をするのか、今年は何キロ整備できるのか」とか「今年は昨年より何%増えたのか、減ったのか」という経済的フロー効果でしか見ずに、フローで批判している。もちろん、フロー効果としても乗数効果や生産誘発効果をもたらし、経済を活発化させ、GDPを増大させて税収増を図ることができるので大いに意味があるのですが、それに加えて公共事業の本来の目的は、各年のフローの積分がストックとなって効用を発揮する点にあります。

藤井 できあがったインフラが、生産性の向上などをもたらして経済成長を導いていく、というインフラにおける最も本質的な経済効果ですね。

大石 二〇一五年三月七日に、首都高の中央環状品川線が開通しました。大橋ジャンクション~大井ジャンクション間を結ぶ延長約九・四キロの道路ですが、この開通によって都心環状の渋滞が五割も減少しました。これこそストック効果です。

藤井 インフラ投資には、「期待効果」という経済効果も期待できます。
 たとえば、熊本市に新幹線が開通することで人口集積が促されましたが、そうした人口集積は「開通する以前」から始まっていたものです。金沢市でも富山市でも、この「期待効果」ゆえに、官民あわせた様々な投資が先行的に進められたのです。

一般財源化で大問題が

大石 インフラ整備では、必ず財源の問題が議論になります。道路整備で言えば、いわゆるガソリン税などの自動車関連諸税の一般財源化という問題で、二〇〇九年四月に道路特定財源制度は廃止されました。ところが、これによって非常に重大な問題が生じています。
 揮発油税・ガソリン税をその地域の人がどれくらい負担しているかを知るために、東京都中野区と千葉県山武市の世帯の負担額を現役時代に調べたことがあるのですが、中野区の人は鉄道の交通手段が充実しているため、自動車の保有台数は世帯あたり僅か○・三台で、ガソリン税は全世帯平均で一年間に約一万二千円を支払っていた。
 他方、山武市では、東京近郊農作地帯として生鮮野菜を作っていますが、鉄道網もダイヤも粗ですから生産や輸送には車を使わざるを得ず、子供たちの送り迎えや自分の移動にも自家用車に頼る生活の割合が高い。そのため、一家に一・九台も車を保有しており、全世帯平均で年間約十九万円ものガソリン税を負担していたのです。地方部はすべてよく似た状況にあります。
 なぜ、財政再建や福祉の財源を都市部よりも十倍も多く地方が負担しなければならないのか。受益者が負担して道路整備に充てるという合理性という点でも、税の公平さという観点からも、一般財源化は重大な問題なのです。道路特定財源を復活させ、先進国で最低水準の道路整備とインフラ整備に充てるべきです。

藤井 老朽化対策も遅々として進んでいませんから、少なくともそうした議論をしていくことは重要ですね。

大石 そもそも公共事業費を増やすと、福祉や教育関連の予算が減らされると思っている人が多いのですが、全くの誤解です。公共事業費と教育費や福祉の費用は、トレードオフの関係に全然ないのです。建設国債は法律上、公共事業に使途が限定されており、公共事業を減らした分、教育や福祉にお金が回ることにはなりません。この関係が、国民にはほとんど伝わっていません。

世界に羽ばたくために

藤井 安倍総理は、二〇二〇年までにGDP六百兆円を目指すと表明されました。増税をするまではアベノミクスは大成功だった。アベノミクス効果は増税によってぶっ飛んだような状況で、今後も楽観はできません。いま、第三の矢である「成長戦略」が注目を集めていますが、これは長期的なもので、五年間で徹底的に構造的な変化を迫るのは原理的にも難しく、かと言って第一の矢である金融緩和だけではデフレ脱却は不可能です。
 消去法で考えても、第二の矢「機動的財政政策」しか選択肢はありません。そして、第二の矢には非常に大きな効果があることがデータで裏付けられている。そこで重要なのは、行き当たりばったりでお金を使うのではなく、ワイズスペンディング(賢い使い方)をすることです。すなわち、地方創生や国土強靫化、アベノミクスのために今後五年間で何か一番良いのかを、しっかり投資プランとしてまとめる。
 アベノミクス投資プランとして「五年間、これをやる」と宣言するだけで、「期待効果」によって様々な民間投資が呼び込まれ、民問投資によってお金がさらに回っていき、日本は確実にデフレを脱却できます。そして、税収も増える。建設国債を発しなくても、税収増が投資プランの原資となっていくのです。

大石 東日本大震災後、大きな混乱や犯罪が起こらず、粛々と運命を受け入れ、前向きに生きる被災者の姿に世界中の人が驚嘆しました。その国民性の秘密は、実は「国土」にありました。日本は国土の至るところで大地震が起こる可能性があり、台風、豪雨、豪雪といった自然災害と常に向き合う国です。
 それが日本人の国民性を養ってきて、そうした共同作業が仲間意識や郷土意識を創り上げてきた歴史があります。日本人としてのアイデンティティーを大切にしながら世界に羽ばたくためには、経済の成長と競争力の向上が不可欠で、そのためにはいまこそ事実に基づいた骨太のインフラ整備が日本には必要なのです。

●WiLL-2016年3月号

<引用終り>


最初に
世界最大のコンテナ船が入れるコンテナ埠頭は、日本に横浜港一バースだけ

こんな話を取り上げたいと思う。
港と言ってもあまりどんなことになっているか分からない。
そこで国土交通省の資料からちょっと見てみます。
参照資料
http://www.kanzei.or.jp/tokyo/tokyo_files/pdfs/other/boujitu2610.pdf

最初に日本の港が世界・アジアの中でどうなっているか

2016-3-3アジア主要港のコンテナ取扱量

30年前は日本の神戸が世界の港ランキングの4位、それが30年後の2012年には東京で28位、神戸などは52位まで落ちている・・・。
日本は釜山(5位)にも大きく負けている・・・。
しかしそこまで日本の貿易量が減ったのかと言うと

これは自国発着のコンテナ貨物量

2016-3-3自国発着コンテナ貨物量ランキング

これで見ると中国は一寸別にすると、失われた20年と言われながらも貿易量はアメリカに次いで3位。はてどうしてこうなるのか?

チョッと物流のアウトラインをおさらいしてみると、

これは日本から欧米への海上輸送ルート、アメリカへは東に向かい太平洋を越えてアメリカ西海岸へ。
(アメリカ東海岸へはパナマ運河経由、又は西海岸から大陸横断鉄道でコンテナ2段積みで輸送)
そして欧州へは西に向かい、南シナ海、マラッカ海峡、インド洋、スエズ運河、地中海を通ってゆく。

2016-3-3日本に寄港する欧米コンテナ航路

そしてこれは日本周辺のアメリカ航路の図。中国の上海あたりからアメリカに向かう船は殆ど日本海、津軽海峡を通っている事が分かる。この航路上の要衝に対馬や竹島がある事に注意。

2016-3-3日本周辺の北米航路

これは欧州への航路、南シナ海の重要性が良く分かる。

2016-3-3日本周辺の欧州航路

そしてこれがコンテナ船のサイズ、年々大型化している。特に一番上のモノがパナマ運河を通れる限界の大きさ(パナマっクスと言う)、昔はこのサイズが最大だったのだが、パナマ運河を通らないと言う考え方で大型化した。

2016-3-3大型化するコンテナ船

一番下が世界最大のコンテナ船、全長400メーター、約19万㌧。
こんな巨大なものが25ノットでガンガン走る。こんな事で物流費を低減しているのだ。

そしてこんな巨大なコンテナ船、埠頭岸壁の水深が深くないといけない。水深18メーターが必要になっている。

これが冒頭の引用文に有った「世界最大のコンテナ船が入れるコンテナ埠頭は、日本に横浜港一バースしかない。それも二〇一五年五月にできたばかり」、これが現実なのだ。
横浜港については以下参照ください
南本牧ふ頭
http://www.yokohamaport.co.jp/facilities/minamihonmoku/

そしてここからが本論。
日本や中国など東アジア地区から欧米への海上物流はコンテナ船が中心だが、そのコンテナ船の大型化で主要港と欧米との間は大型コンテナ船。主要港で積み替えて小型のコンテナ船(フィーダー船という)で目的地まで運ぶ。こんな事が一般的になった。
そしてその大型コンテナ船の寄港する主要港はシンガポール、香港、上海、釜山等であり、日本の港はこの主要港から外れ、小型コンテナ船の立ち寄るフィーダー路線になってしまった。

こんなイメージである

2016-3-4トランシップ説明図

日本人は気が付かないが、国際コンテナ物流の世界では最早日本は主役ではない。30年前は神戸港が世界の第四位だったのに残念である。

この原因は神戸の場合阪神淡路大震災も痛かったが、全体として日本の港湾の整備遅れ、それから日本の道路の整備遅れがあげられる。
日本の道路は海上コンテナの30トンの重量に耐えられない所が多いのだ。たとえば首都高速では大きなコンテナを積んだトラックはほとんど見ない。理由は首都高速は湾岸線を除いてコンテナの重量に耐えられないためだ。

それともう一つ厄介な事。日本の港湾は昼間しか稼働していない。ゲートが開くのは8時半から4時半まで。最近これではいけないと夜7時までゲートを開ける試行をしている段階。24時間ゲートが開いているのは神戸港だけだ。
しかし世界の当り前は24時間操業である。特に巨大なコンテナ船では積んでいるコンテナ数も半端ではない。たとえば世界最大のコンテナ船はTEUが18000、という事は20フィートコンテナで18000本、40フィートコンテナでも9000本である。
昼間の8時間しか使えない港と24時間使える港、どちらに軍配が上がるか分かろうと言うものだ。


話が長くなったが、世界の当り前に対応するためには単に港と言うインフラ整備だけでなく、それを使って創業する仕組みや働く人の問題、そして港に接続する道路などのインフラの問題等、広い範囲で整備していかねばいけない問題。
こんな事を日本は何十年も放置してきた付けが今回っている、こんな状況になっている。



もう一つ海の港ではなく空の港、空港についても同じ事が言える。
東京に住んでみえる方はほとんど感じないだろうが、九州、四国、山陰、東北、北海道などにお住まいの方。
海外に旅行に行くときどこの空港を使いますか?。
成田や関空を使う人も多いと思いますが、それより韓国の仁川空港経由で海外へ行く人が意外と多いと思います。
そんな事は無い、自分の周りにもそんな人はいない、これは首都圏の方はそう言うでしょう。
一方九州、四国、山陰、東北、北海道の方は韓国仁川経由の人が多いはずです。理由は簡単、成田や関空が地方の人が海外に行くのにはあまりにも不便だから。

この図を見てください

これは2010年か2011年のモノで少々古いが傾向は同じ。

2016-3-4成田と仁川比較

韓国仁川空港から日本の地方都市の空港にはまんべんなく空路が開かれている。だから仁川でトランジットすれば海外旅行はいとも簡単。おまけに値段も遥かに安い。

日本は成田空港が反対運動で大停滞。

その失敗で関空をハブ空港化しようとしたが、最適な場所である神戸沖は反対運動で潰れ結局現在の場所になった。
しかしハブ空港化には国内線国際線を同じ空港にしないといけないのだが、関空が出来たらあれほど反対していた伊丹空港が存続してくれと掌返し。結局ハブ空港化に失敗した。
オマケにあれほど反対していた神戸は矢張り空港が欲しいと騒ぎ出し、神戸空港を作ってしまった。
今は3空港を一本化しようとしているが、遅々として進んでいないですね。此れでは大阪からヒトが逃げ出すわけだ・・・・。

そしてもう一つ最後に出来たのが愛知県の中部国際空港。
しかし残念ながら完成したのが2005年、もう既に仁川から網の目のように日本の地方空港に路線が出来た後だった。
実は私もセントレアにはいろいろ提案などしてきたのだが、もはや手遅れであった。

結局海運・港湾は韓国(釜山)頼り、空港・空路は韓国(仁川・コリアンエアー)頼りになってしまった。
こんな体たらくなので、アキヒロ君に「日本乗っ取り完了」などと宣言されてしまう始末。

こんな原因に政治家もお役人もマスゴミも皆さん東京住まいで東京からしか見ていない、だから地方の苦労も分からないし、世界がどうなっているのかも全く見えていないことがあげられるのではないだろうか。

こんな事が日本のインフラの現状でした。
そんな停滞を脱却するためには、矢張り国土強靭化、もっと頑張って推進していきたいものです。
その為にはこんな現状を認識したうえで、「よし!、やろう」、こんな声をもっと大きくしていかないといけない、そう思います。

これでこの話はオシマイとします。お付き合い頂き有難うございました。

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2016-02-29 14:05

「大災害列島」の大補修を、その4 <タイの思い出とともに

 「大災害列島」の大補修を、その4、今回は「日本だけ公共投資額を半減」、「日本は「道路王国」の大嘘」を取り上げます。

「大災害列島」の大補修を!
 
・ 日本だけ公共投資額を半減
・ 日本は「道路王国」の大嘘



<以下引用>

日本だけ公共投資額を半減

藤井 諸外国ではほとんど何も気にしなくてもよい様々なリスクを抱えているのが現実で、そのことは日本がそうしたリスクに対する十分な防災対策があって初めて、諸外国と同じ条件に立つことができるというとを意味しています。
 しかし日本ではそうなっていないばかりか、防災の分野で重要な役割を担う公共投資額を見ると、過去二十年間で日本は半分以下にまで減らしているのです。他方、イギリスは三倍、アメリカは二倍、ドイツは一・○六倍に増やしている(グラフ参照)。
 後述するように、日本は「インフラ後進国」です。道路も新幹線も整備は進んでいない。したがって、深刻な自然災害のリスクに加えて諸外国よりも整備の遅れた状態を取り戻すためには、諸外国よりも当然速い速度でインフラ整備を推し進めていかなければならない。にもかかわらず、予算は日本だけが半額になっていて他国は二、三倍になっている。信じ難い状況です。これでは、日本が国際競争で「必敗」するのも仕方ありません。

大石 「公共事業が必要です」というと、「無駄だ」とか「財政悪化の原因だ」とか、根拠や証明のない議論が行われてきました。それがいまも続いています。わが国の最大の脆弱性は、事実や客観的データに基づく議論の欠如かもしれません。

藤井 そうですね。どれだけ恨拠のある合理的意見を述べても、「不安を煽って土建屋を儲けさせようとしている」とか「藤井は土建屋の回し者」「既得権益を守りたいだけ」など誹誇中傷、バッシングの嵐が必ず起きる。ただし、そういう人たちは常に根拠を一切示さない。つまりそれは単に予断と偏見、イメージだけ。そして、そういうイメージがすでに世間で共有されているから多数が賛同してしまう。なぜこんなことになってしまっているのかと言うと、世論の側に公共投資の必要性や災害対策の必要性、また諸外国と日本との相違について全く理解が進んでいないことが問題の根本にあると思います。
 その世論は何によってつくられるか。やはりメディアの影響が非常に大きいと考えられます。

大石 左頁のグラフ(引用者注:下記グラフの事)は、国土交通省が経済財政諮問会議などに提出した完全にオープンな資料ですが、活字でも放送でもメディアが取り上げたことはありません。

2016-2-20国別インフラ支出推移2


藤井 私の教えている博士課程の学生が、新聞の論調の変遷と年代ごとに使用されているキーワードを定量的に調べたところ、七〇年代には公共事業に対する肯定的な記事が約七割を占めていたのが、九〇年代中盤から否定的な記事が増え、二〇〇〇年代になると肯定的な記事は一割弱、九割が否定記事に変わっていったことが分かりました。
 ただし最近の二〇一〇年以降では、東日本大震災や笹子トンネル事故などの要因からか、肯定的な記事が若干増えています。また、「主要キーワード」も、環境の時もあれば予測の時もあるなど、明確に流行(はや)り廃(すた)りがある。つまり、「報道の客観性」が保証されているとは言えない様子が良く分かりました。

大石 九〇年代に入ってから日本を席巻した構造改革と称される主流派経済学で、政府の役割は小さければ小さいほど良い、民間の自由な競争に任せれば万事うまくいくから政府は余計なことを一切するなという動きと、それにちょうど呼応するように財政危機が叫ばれ始めて、政府は防災投資を控えるようになっていきました。

藤井 新自由主義経済では、あらゆることをマーケット(市場)の原理で解こうとするわけですが、防災は経済学上、市場に織り込むことができない分野です。市場は利益を出すために短期的かつ視点も倭小化する特徴がありますが、防災は広い視点から長期的に対策を講じる必要がある分野だからです。
 さらには財政危機に伴い、緊縮が絶対善だという「緊縮思想」が生まれました。すると目の前で実際に起きたことには投資するが、起こる可能性への投資は最初に削られていく。緊縮と市場原理主義の二つの思想が日本を覆っているため、自ずと長期的、広域的な視野が求められる防災投資が削減されていくのです。
 政策決定の責任者たちも思考停止状態に陥り、目の前に起こったことに対しては何百億円も費やすのに、これから起こるかもしれない何百兆円の被害に対してはビター文出さない。
 自然災害のような危機は一種の見えないもので、それを見るためには知性が必要なのですが、そうした知性や理性が欠如しています。白痴化の「痴性」に覆われてしまっている。

大石 公共事業費を抑えたことで内需が減少し、デフレが促進され、税収が減り、さらに公共事業費を削減していかざるを得ない。この二十年間、このような「悪魔の循環」から脱し切れていないのが現状です。

日本は「道路王国」の大嘘

藤井 公共事業費が減らされた結果、どうなっているかと言いますと、たとえば土砂災害を防ぐには砂防堰堤(えんてい)を整備することが急務なのですが、その整備率は未だに二割程度しかありません。
大石 台風十七号、十八号による集中豪雨によって、茨城県常総市で鬼怒川堤防が決壊し、大きな災害となって人命や財産が奪われましたが、ある決壊箇所は堤防強化計画があり、まさに着手の準備をしていたところだったと言われます。
 この二十年間、先進国で唯一、公共事業費を削減してきた煽りを受けて、河川改修の予算も大きく減少した。予算が伸びていれば、この堤防強化事業もずっと前に整備が完了していたはずです。救える命があった。メディアも上空から「堤防が決壊した」という映像を流すだけで、問題の根本を国民に知らせようとしません。強い憤りを覚えます。

藤井 津波対策を見ても、南海トラフ巨大地震などの主要な津波対策のために計画されている堤防のうち、整備が完了しているのは僅か三割です。巨大堤防は景観を損なうという反対意見がありますが、この整備水準率の数値は、津波の高さとして想定されている二つのレベルのうち低いレベルに対してのものなのです。「最低限のインフラ対策」ですらなされていない箇所が七割にも上る。これが日本の現状です。
 笹子トンネル事故などが契機となり、高度成長期につくったインフラの多くがこれから大量に寿命を迎えることはよく知られていると思うのですが、インフラのメンテナンスも遅々として進んでいません。

大石 現在も、公共事業の予算は増えていませんからね。

藤井 その点は、内閲官房参与としても責任を痛感しています。もっと国民や政策責任者に訴えていく必要があります。ある日、危機が具現化して激甚被害が起こってからでは遅いのです。

大石 テレビのインタビューで「ここに七十年以上住んでいるが、こんな災害は初めてです」と言う人たちに、もし災害に遭う前に水害の危険性があるから堤防を作りましょうと提案したとすると、「そんなもの必要はない。現に私は七十年以上、ここで生活してきたが、一度もそんな水害に遭ったことはない≒無駄遣いだ」と拒絶する人が多いと思います。
 スーパー堤防建設構想なども、二百年に一度の水害に対応するような非効率的な建造物は必要ない、と安易に切り捨てられてしまいました。

藤井 「道路ももっと整備しなければならない」と主張すると、「日本は道路王国なのにまだ作ろうとするのか」「利権に群がるシロアリだ」と批判されてしまう。高速道路の整備水準は統計的にも先進国中最低水準にある、という事実が一般に全く知られていません。「日本は道路王国」とイメージだけで批判しているのです。
 自動車一万台あたりの高速道路の総延長は〇・九キロしかなく、主要な先進諸外国中、最下位です。諸外国は一・五キロ~七、八キロある。高速道路ネットワークを見ても、日本は束京や名古屋や大阪などの人目集中地域においてはそれなりに整備されていますが、日本海地域にはほとんど整備されておらず、山陰や東九州、四国や紀伊半島、東北日本海側、北海道東部といった地域に至っては全ぐ整備されていません。

大石 「わが国の高速道路は、すでに先進国の水準を遥かに超えている」(五十嵐敬喜法人名誉教授)といった言説を大新聞や岩波新書が垂れ流してきました。可住地面積あたりの高速道路延長を算出して、それがドイツ、フランス、イギリスの延長に比べてかなり長いから、日本はすでに高速道路大国だと言うのです。

藤井 誤った議論の典型ですね。

大石 先ほど述べたように、日本の国土はその多くが山脈地帯であり丘陵地帯で、極めて少ない可住地面積しかありません。高速道路は、この可住地にある都市と都市を結んでネットワークを形成するために整備されるものですから、可住地にも存在する一方で、その延長の圧倒的部分は可住地以外を通っている。
 可住地以外を通って都市と都市とを連携させるための高速道路の長さを可住地だけの面積で割っても何の意味もありませんし、何の説明にもなっていません。

<引用終り>

最初にここで「日本だけ公共事業費を半減」、その結果現場でどんな事が起こっているか、その実例をコメント欄でprijonさんが書いてくれた。現場を体験した方の貴重なご意見なのでそれから紹介。

「マスコミの公共事業叩きも問題ですが、土木・建設業全般に労働条件が 悪すぎるのも問題かと。

実は私も、建設・土木関係者の端くれ(電気工事)だったのですが、 とにかく休日が本当に少ない(月何日単位、週休2日?なにそれ?状態)
おまけに不規則。
昔はそれでも給料、身入りが良かったけど、今はそのメリットもない。 まともな労働条件は元請けの大企業だけです。

はっきり言って、仕事が趣味で遊び・・のような人でないと続かないでしょう。
世の中に必要なものを作り、責任は重いのに待遇は低い・・誰がやりたがるでしょうか。
事実、若い人はなかなか入らない、入っても続かないです。
現場の高齢化は進む一方。
「近頃の若いもんは・・」とかナントか言って労働条件を改善しなかったツケが 今後ジワジワとくると思いますよ

大上段に振りかぶった国家論もいいけれど、若者が長続き、定着する現場に しないことには、肝心の作業する人、工事する人がいなくなるわけですから。
2016-02-22 22:35 URL prijon 」


大変貴重なご意見である。この問題の根底には仕事を無理やり減らしてしまった。だから小さな会社はつぶれるし、人は当然要らなくなる。そしてそんな業界は給料も下がる。
そんな悪循環でもこれから十分回っていくと言うのなら問題ないが、これからもっとインフラ整備せねばいけない時にこんな状況。
これは是非とも政府、地方自治体に考えて欲しい事だ。


がしかし、藤井氏・大石氏が例えば
「わが国の高速道路は、すでに先進国の水準を遥かに超えている」等と言う五十嵐敬喜法政大名誉教授の暴言を取り上げている。
五十嵐敬喜については以下wiki参照ください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E5%8D%81%E5%B5%90%E6%95%AC%E5%96%9C

五十嵐敬喜は私も知らなかったのだが、あの空き缶管直人のブレーンであるらしい。そして公共事業が大嫌いな御仁。
そんな奴が可笑しな言説を垂れ流しているのを止めないとインフラ整備は進まないのだ。
それには一般の人一人一人が、五十嵐敬喜のような悪徳野郎に文句をつけないといけないのだと思う。

そしてインフラ整備は計画から完成までには長い年月がかかる。だから空き缶時代??、もうそんなモノ終わっただろ。こんな議論にはならないのです。
2月18日に「新東名の愛知区間は2車線に格下げされていた」をエントリーしました。
こんな酷い事をした下手人は猪瀬直樹でした。その時期は平成14年(2002年)でした。
こんな時にしでかした不始末が今頃利いてきたのです。
ですから空き缶時代のツケもこれから回って来るのではないでしょうか。


尚コメント欄にはほかにも皆さんの貴重なご意見があるのだが、全部は紹介しきれませんので悪しからずご了承ください。



次に日本の道路行政が如何に遅れているか、それをタイでの経験から書いてみたいと思います。

タイと言えば最近だいぶ良くなりましたが、バンコクの道路事情が大渋滞で余りにも有名。私がタイで仕事を始めた98年頃は本当に酷いものでした。
しかしそれはバンコクだけの話。一旦そこから郊外に出ると実に素晴らしい道路が四方八方に伸びています。

これからは私の思い出話。

タイで生活を始めた頃ですから1998年の事。道路について大いに考え直させられたことが有ります。
それはタイの道路事情でした。
普段は運転手君がいるので気が付かないのですが、休日に自分で走ってみた時のこと。バンコクから120キロほど離れた郊外の道路についてです。
これはパタヤ方面に向かう国道3号線。タイで最初に整備された国道で「スクムビット通り」という名称がついている。
このカーブがビックリの元

2016-2-27シラチャの国道3号線パタヤ方向1

何の変哲もない片側2車線の国道に見えますが、左カーブで左側に強く傾斜しています。
この傾斜、カント(cant)片勾配とか横断勾配と言い、カーブを安全に通過するために遠心力に抗するためにつけるモノです。
(鉄道の線路も同じくカントといい、同じ目的です)
強いカントを付けた為、道路の反対車線は一段下を走っているように見えます。

何がビックリかそれはこのカーブを100キロで走ると全くハンドルを動かさなくてもそのまま道なりに走れることです
自分で試してみました。手放しで走っても自然にスーッとカーブに入り、そのまま何もしなくてもスーッと元の直線に戻ります。目をつぶって乗っている人ならカーブであることも分からない位。
実はこんな強いカントが一般道路に有る、こんな事は日本では有りえません
このカーブの2~300メーター手前はこうなっています。

2016-2-27シラチャの国道3号線パタヤ方向だがややシラチャより1

こんな風に極平坦な所で片側2車線です。ガードレールは有りません。中央分離帯として中央部分が溝になっています。
道路左側に電柱が並んでいますが、此処までが道路用地です。だからアパートやカーディーラーが見えますが、そこの出入りが本線の交通を邪魔することは有りません。ちなみにこの道路の制限速度は法定速度で90キロ。

そしてこんな道路にも驚きました。
これはバンコクからアユタヤ・ナコーンサワン・チェンマイ・チェンライ方面への国道32号線(国道1号線バイパス)

2016-2-28タイの国道32号線アユタヤの手前

片側4車線プラス側道2車線、合計で往復12車線。
しかし道路用地は左手遠くに見える電柱の所までなので、更に拡幅の余地は十分。

尚こんな道、勿論横切る事が出来ない。たとえば左手方向から来た車がこの道路を横切ろうとしたら一旦本線に入って遠くに見えるUターンブリッジで反対車線に入り、そこから左折する。こんな事で信号なしの道路が出来た。
タイの道路はこんな凄いものである。
タイはバンコク市内は渋滞で何ともならないが、いったん郊外に出れば道路は良い。1時間に100キロ走れる。500キロ先なら5時間で走れる、こんな風だった。

こんな道路事情、同じアセアンでもマレーシア・インドネシアなどとは相当違うのだが、タイにいる間折に触れ、どうしてあんな宵道路網が出来たのか調べてきた。
随分かかったのだが結論、それはベトナム戦争当時の「フレンドシップハイウェイ」が原点らしい。
ベトナム戦争で米軍はタイに出撃基地を作り、兵士の慰安の為、慰安用の歓楽街を作った。
バンコクのパッポンどうりの歓楽街や東部海岸のパタヤの歓楽街はそんな時出来た。

このフレンドシップハイウェイはそんな目的でアメリカが建設したもの。だから道路は全部アメリカ規格になっている。

これはフレンドシップハイウェイの現在の姿。タイ東北部ウドンタニ(米軍基地の有った所)近くの国道2号線

2016-2-27タイの国道2号線コンケン・ウドンタニ間ノンカイ方向

左側の電柱の所までが道路。こんな道路なら建設コストも安い。そしてこの道路が法定速度90キロだがほとんどのクルマが100キロ以上で走っている。
こんなお手本があるので、その後タイが建設した道路は皆こんな規格で出来ている。


以上、私の知るタイの道路事情について書きました。
世界を知らないアホな空き缶ブレーン辺りの言っている事に騙されてはいけません。
「わが国の高速道路は、すでに先進国の水準を遥かに超えている」

冗談じゃない、先進国どころか発展途上国辺りにも追い越されえているのが現状なのです。
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2016-02-27 11:52

「大災害列島」の大補修を、その3

 今回は「大災害列島」の大補修を、その3回目は「世界でも例のない悪条件」を取り上げます。

「大災害列島」の大補修を!
 藤井聡 京都大学大学院教授
 大石久和 国土政策研究所所長

・ 「奇跡の経済成長」の裏に
・ 恐ろしい歴史的事実
・ 「都市崩壊」の恐れ
・ 世界でも例のない悪条件
・ 日本だけ公共投資額を半減
・ 日本は「道路王国」の大嘘
・ 世界最先端の地位から凋落
・ インフラとGDP成長率
・ 公共事業の本来の目的
・ 一般財源化で大問題が
・ 世界に羽ばたくために

<以下引用>

世界でも例のない悪条件

藤井 平野という点では、日本は可住地面積が小さいのも特徴です。

大石 国土面積に対する可住地面積はイギリス八四・六%、フランス七二・五%、ドイツ六六・七%ですが、日本は二七・二%しかありません。しかもこの可住地が、きわめて分散的にしか存在していない。平野は内陸地域では盆地として、また海岸地域では河川が押し出してきた河口部の土砂の上にしかないのです。
 そのうえ、ちょうど台風の通り道に沿うように列島が展開しており、雨の多くがこの台風期と梅雨末期に集中する。日本の年間降雨量は一千六百~一千八百ミリメートルといわれていて、全地球の地表平均八百ミリメートルと比べると水資源の豊かな国というイメージがあるのですが、河川が急流であるため降った雨が一挙に流れ出て海に注ぐという構造になっています。したがって、水資源的に恵まれているわけではなく、雨が多いのに使える水は少ない。

藤井 川は急峻であり、かつ大雨が頻繁に降るということは、土砂災害のリスクもまた、極めて高いことを意味しています。二〇一四年八月に広島で起きた集中豪雨で土砂災害が発生し、残念なことに七十名以上もの尊い命が失われてしまった。集中豪雨は非常に増えており、こうした事態が、いつ、どこで起こったとしても全く不思議ではありません。
大石 広大な平野に居住地を構えることができるヨーロッパなどとは異なり、山腹の麓に住宅を設けることの多い日本では、豪雨による斜面崩壊とともに、土石流や土砂流による災害が毎年のように人命を奪っています。
 さらに国土面積の六〇%が積雪寒冷地にあり、かつ年間累積降雪量が四メートルを超える豪雪地帯に人目五十万人を超える大都市が存在している。日本より寒冷な地域に大都市が存在する例はロシア・カナダなど世界にいくつもありますが、これだけの豪雪地に大人口を抱える都市を持つ国は存在しません。日本列島は、世界でも例のない悪条件に覆われた国なのです。

<引用終り>

最初に可住地面積と言う言葉がある。これについて良く分かる資料がある。
国土交通省の資料「国土の脆弱性」
http://www.mlit.go.jp/common/000997376.pdf

此処に可住地面積の比較図がある。日本・イギリス・フランス・ドイツを比較したもの。

2016-2-26国別可住地面積比較1


そしてニューヨーク・ロンドン・パリと比較して東京は

2016-2-27世界の大都市の断面比較


さて世界はとも角、わが東京はと言うと前回こんな地図を紹介した。縄文海進の図である。

2016-2-23縄文海進2

こんな風に東京の地盤は縄文時代には海だった所、そしてこの東京の地盤がどうなっているか。

2016-2-26東京の地盤断面図1

この図で東京の下町と言われる所は沖積層という地盤であることが分かる。
沖積層はwikiによれば
沖積層は地質学的に最も新しい地層である。最終氷期の最寒冷期において、大地は洪積層に覆われ、海面は現在(完新世)よりも約120mほど低かった。発達した氷河や河川のはたらきによって、洪積層は削り取られ、河谷を形成した。最終氷期後期に入り、海面が上昇すると、それまで河谷であった河川の下流部に土砂が堆積し、周りの洪積層(洪積台地)よりも一段低い低地(沖積平野)を形成した。このようにしてできた地層を沖積層という。地形としては、平坦で湿地が多い。

こんな土地なのだが、実は建築関係の仕事をしている人は皆さんこんな事情は知っている。
アソコの地耐力はこれだけだったとか、杭を打ったら何メーターの杭がスポッと入ってしまったとか、そんな事を身近に聞いた事のある人も多いのではないだろうか。


一寸細かい話だが、その沖積層が出来た理由である海面の上昇について
これは海面の上昇を今から2万年くらい前からグラフにしたもの。(縄文海進が分からないので、それは次で)

2016-2-27氷河期後の海面上昇の図
参考エントリー:http://tansoku159.blog.fc2.com/blog-entry-147.html

1万5千年前から7千年前までの8千年間で120メーター海面が上昇した
これは100年で1.5メーターの上昇である。
この様にゆっくる海面が上昇したので、そこに土砂が堆積し沖積層を作り上げた。

だがこの図では縄文海進が見えないがこうなっている。

2016-2-27縄文海進での海面レベル(内海)
参考エントリー:http://tansoku159.blog.fc2.com/blog-entry-343.html


東京は分かった、では外国はどうかというと・・・
これはニューヨークが岩盤で出来ていると言う事が分かる写真、ニューヨーク・セントラルパークにこんなモノがある。
氷河が削った跡の残る岩盤の露頭

2016-2-27氷河が岩盤を削った跡(セントラルパーク)



一寸ここで視点を変えて、タイの事例について面白い話。

タイは日本の1.4倍の国土があるが自動車用のトンネルはどうもひとつも無いと言われている。鉄道用トンネルも一つもない。
否ひとつだけあるという人もいるが、それはバンコク辺りの道路の立体交差で道路の下を道路がくぐっている所らしい。でも入り口にはトンネルと書いてあるので、まあトンネルなのかもしれない。

だからこんな風景は日本独特のモノなのだ。

2016-2-27トンネルのある風景by山下清
山下清「トンネルのある風景」


そんな事情で以前のエントリー「高速道路無料化の愚」によもぎねこさんからこんなコメントを頂いた。
「ドイツを旅行した時、汽車に6時間乗って、トンネルも高架線も一度もなく、小さな鉄橋が幾つかあるだけでした。 延々と畑と牧場の中を走るだけで、山も川も人口密集地も無いのだから当然です。 
 北海道でさへこんな路線はありません。
 これなら道路の建設費が安いのも当然です。 以前猪瀬直樹が「ドイツの道路建設費は日本の3分の1」と言っていましたが、この地形なら3分の1でも結構無駄遣いが多いのでは思ってしまいました。
 一緒に考える方が無理なのです。」


こんな日本の特殊性は普段我々は意識していない。しかし外国と比較して色々文句を言う輩はこんな事情など全く知らん顔。
こんな事情をしっかり理解することが大切なのではないだろうか。


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2016-02-23 14:26

「大災害列島」の大補修を、その2

 「大災害列島」の大補修を、今日はその2回目として書き小見出しの太字部分、 「恐ろしい歴史的事実」、「「都市崩壊」の恐れ」を取り上げます。

「大災害列島」の大補修を!
 藤井聡 京都大学大学院教授
 大石久和 国土政策研究所所長

・ 「奇跡の経済成長」の裏に
・ 恐ろしい歴史的事実
・ 「都市崩壊」の恐れ
・ 世界でも例のない悪条件
・ 日本だけ公共投資額を半減
・ 日本は「道路王国」の大嘘
・ 世界最先端の地位から凋落
・ インフラとGDP成長率
・ 公共事業の本来の目的
・ 一般財源化で大問題が
・ 世界に羽ばたくために

<以下引用>

恐ろしい歴史的事実

藤井 東日本大震災は「千年に一度」と言われましたが、実は西目本の太平洋側では百年から百五十年周期で、これと同様のことが繰り返し起きています。東海・東南海・南海地震によって引き起こされる「西日本大震災」です。
 これらの地震は、過去一千年の歴史のなかで合計で七回も起こっているのですが、そのうち三つの地震が単独で起こったケースは一度もなく、全て連動しています。ですので、次に西日本大震災が生じるときもそれが連動するであろうことは、ほぽ間違いないと予想されます。
 静岡、浜松、豊橋、名古屋、津、和歌山、大阪、神戸、徳島をはじめとした西日本の太平洋側の諸都市に、巨大な地震の揺れに加えて東日本大震災によって生じた巨大津波と同様の規模の津波が襲いかかるとされ、被害額は二百兆円、三百兆円の規模に達すると見られています。
 さらに、この西日本大震災と東日本大震災との連動を調べると、恐ろしい歴史的事実が明らかとなります。
 東日本の太平洋沖で発生するM八以上の巨大地震は過去一千年の間に四回、起こっているのですが、それらのうち実に三回、つまり七五%において、最長で十八年以内に西日本大震災が連動しているのです。
 貞観地震の時には十八年後、慶長三陸地震の時には六年前、昭和三陸地震の時には十一年後に、それぞれ西日本大震災が生じています。
 この歴史的な事実を踏まえると、二〇一一年の東日本大震災から早ければ五~六年、遅くても二十年弱の誤差で西日本大震災が発生することが、相当程度の確率で見込まれる状況にあることが分かります。

大石 先ほど、「大自然災害空白期」と申し上げましたが、たとえば東海地震を見れば、現在までこの地域で大地震が百五十七年間も起こっていないことがわかります。それまでは百年から百五十年の周期で発生しています。

藤井 今日、明日にも東海地震が発生したとしてもおかしくない。内閣府の見解では、南海トラフ地震は三十年以内に七〇%、東海地震だけに限ると八八%の確率で起こるとされています。そしてその時には、東南海地震や南海地震を道連れにして生じることは確実視されている。
 これだけではありません。過去に東日本の太平洋側で生じた四つの巨大地震の全てのケース(一〇〇%)において、十年以内の時間差で首都直下型地霖が連動しているのです。

大石 東日本大震災後に「平成・関東大震災」が起こる可能性は極めて高い、ということですね。

藤井 内開府は、三十年以内に起こる可能性は七〇%と公表しています。少なくとも過去二千年の歴史を見る限り、東日本大震災のような巨大地震が東日本側で生じた場合、一○○%の確率で、関東平野でも十年前後の時間差で巨大地震が発生している。
 しかも、関東平野で生じた直近の大地震は1923年に起きた関東大震災なのですが、その前にこの地域に起きた大地震は、関東大震災から僅か約三十年前の一八九四年です。さらに遡ると、それから約四十年前(一八五五年)、そしてさらにその約四十年前(一八二一年)にもそれぞれ関東平野で地震が発生している。これが歴史的事実です。
 すなわち、関東平野という土地は、おおよそ三十~四十年ごとに大地震に襲われ続けてきた土地なのです。

大石 それが、関東大震災から九十年以上も巨大地震が発生していない。

藤井 九十年間も地震のエネルギーが解放されずに、関東平野の下で蓄積され続けていることを意味しています。この点を考えるだけでも、いつ何時、本当に「メチャクチヤでかい平成・関東大震災」が生じても不思議ではない。そんな状況下で、あろうことか、十年以内に関束平野での大震災を必ず併発させてきた東日本太平洋側での大地震が発生したのが、今日の状況なのです。

大石 地震とともに、津波のリスクにも晒されている。

藤井 さらに火山です。世界の活火山の一〇%が日本に存在しており、火山活動もきわめて活発な国土のうえに私たちは暮らしているのです。

「都市崩壊」の恐れ

大石 他の先進国と比較にならないほどの地震や津波、火山のリスクに加えて、日本の大都市はほぼ全てが軟弱地盤上にあるという点も見逃せまん。
 私たちが住む都市の大地は、大半が六千年前頃の「縄文海進」という海面がかなり高かった状態から、その後、海面が下がるにつれて河川が土砂を押し出してきて作り上げられました。江戸川や荒川や利根川が押し出した土砂の上に東京は成り立っている。大阪は淀川ですし、広島は太田川というように、日本の大都市は全部そうです。
 他方、ニューヨークもパリもベルリンもロンドンも、いまから数百万年前に、氷河が削り取った固い台地の上に成り立っているうえに地震もない。日本はマヨネーズのようなグジュグジュの地盤なのに地震が多い。大地震が起きて都市が崩壊してしまう可能性のある先進国は日本だけです。しかも全ての日本の大都市は降雨特性が厳しく、河川の氾濫区城にある。

藤井 とてつもない悪条件が収なり合っていることがわかります。

大石 その他にも、国土形状は長い海岸線をもつ弓状列島で、列島の最大幅は二百五十キロ程度しかないにもかかわらず、列島の東北端から南西端までの距離は直線距離で三千三百キロという極めて細長い地形ですから、地域間の連携や農産物や工業生産物の移送でも、非常に長い距離を克服しなければなりません。
 フランスやドイツ、アメリカ、中国といった国が、円に近い形をしているのとは大きな違いです。これらの国では、中心部に拠点を置けば全土の各地と放射状に結ぶことで繋がり合うことができます。
 しかも日本は、弓状列島の中央を急峻な脊梁(せきりょう)山脈が縦貫しています。それも二千から三千メートル級の山脈ですから、日本海側と太平洋側を結ぶためには大変な片労を要する。トンネルと橋梁を多用しなければ、両地域を結ぶことはできません。国土は脊梁山脈によって、完全に二分されているのです。
 さらに、脊梁山脈から流れ下る河川が細長い幅の狭い国土を南北に流れ分けるため、川はきわめて短く、流れは急です。そのうえに強い豪雨に襲われるため、洪水も起こりやすい。主要河川において、洪水時には欧米では平時の数倍から数十倍程度の流量ですが、日本では平時の一千倍近い流量が流れる河川もあります。

<引用終り>


関東平野で生じた直近の大地震は1923年に起きた関東大震災なのですが、その前にこの地域に起きた大地震は、関東大震災から僅か約三十年前の一八九四年です。さらに遡ると、それから約四十年前(一八五五年)、そしてさらにその約四十年前(一八二一年)にもそれぞれ関東平野で地震が発生

これはこんな地震だった
関東大震災・・・1923年(大正12年)9月1日 M7.9-8.1
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%A2%E6%9D%B1%E5%A4%A7%E9%9C%87%E7%81%BD

明治東京地震・・・1894年(明治27年)6月20日 M7.0
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%8E%E6%B2%BB%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%9C%B0%E9%9C%87

安政江戸地震・・・安政2年10月2日(1855年11月11日) M6.9-7.4
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E6%94%BF%E6%B1%9F%E6%88%B8%E5%9C%B0%E9%9C%87


関東大震災についてはその被害の大きさから9月1日を防災の日と定め、色んな行事をする事で語り継がれてきた。
しかしそれ以外の地震については殆ど語られることは無い。

所で以前こんなモノをエントリーした。
「地震の歴史」
http://tansoku159.blog.fc2.com/blog-entry-276.html

ここでこんな古文書を紹介しました。我が家にある古文書で、1855年11月11日(旧暦10月2日)江戸を襲った安政の大地震(安政江戸地震)の被害状況を伝える瓦版です。

2016-2-23安静大地震の古文書1

この瓦版、何度も再版されているのだがこの再々版では「地震年代記が追加されている。
江戸時代でも地震は周期的にやってくることが分かっており、その為にわざわざ年代記が追加された。

これがその年代記、青枠内は東日本大震災の千年前に発生した貞観地震(東日本大震災発生までは日本最大の地震と言われていた)
2016-2-23安静大地震の古文書2

2016-2-23安静大地震の古文書3

この地震被害、地盤の状態によって大きく異なる。
安政江戸地震の場合、上掲wikiではこんな記述がある。

<以下wikiより>
 被災したのは江戸を中心とする関東平野南部の狭い地域に限られたが、大都市江戸の被害は甚大であった。被害は軟弱地盤である沖積層の厚みに明確に比例するもので、武蔵野台地上の山手地区や、埋没した洪積台地が地表面のすぐ下に伏在する日本橋地区の大半や銀座などでは、大名屋敷が半壊にとどまることなどから震度5強程度とみられ、被害は少なかったが、下町地区、とりわけ埋立ての歴史の浅い隅田川東岸の深川などでは、震度6弱以上と推定され、甚大な被害を生じた。また、日比谷から西の丸下、大手町、神田神保町といった谷地を埋め立てた地域でも、大名屋敷が全壊した記録が残っているなど、被害が大きく、震度6弱以上と推定されている


さて軟弱な地盤が問題と分かったが、実際は何処がそんな所だろうか。
大石氏が「縄文海進」と言っているように、縄文時代は今より海面が訳5メーター程度高く、東京には古東京湾という海が広がっていた。

これが縄文海進(古東京湾)で海がこんな風に広がっていた所
2016-2-23縄文海進1


この図の方が現在の地名が詳しく分かるので理解しやすいかも
2016-2-23縄文海進2
注:この図は松山義章著 「貝が語る縄文海進」より借用

埼玉県の幸手辺りまで昔は海だった、俄かには信じがたいがこれが事実だ。
そしてこんな昔海だった所と言うのはそこに土砂が堆積して沖積層を作っている。
沖積層というのはそんな軟弱な地盤と言うことだ。


こんな今自分が立っている所がどんな所かをしっかり理解する所から災害に強い、強靭な国土造りが始まるのだと思う。
例えば上掲の地図で昨年の鬼怒川水害の場所を見ると分かるが、水害の有った所は昔の海だった。


藤井聡氏、大石久和氏はそんな事が言いたいのだろうが、今はまだ総論を語っている状態。
先ずは現状を把握して具体的な活動につなげていかねばいけないのだろう。


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2016-02-21 12:57

「大災害列島」の大補修を、その1

 今発売中のWiLL-2016年3月号に藤井聡氏と大石久和氏の対談と言う形で「新日本列島改造論、大災害列島の大補修を」と言う記事がある。
読んでみると非常に興味深い。そして私が以前からテーマとしてきた問題とも関連する内容も多い。
そこで、この新日本列島改造論を私なりに読み解いてみたい。

更にこのエントリーは前回のエントリー「新東名高速道、西側部分が全通」の続編でもあります。


さて、そこで新日本列島改造論。
藤井聡教授は現安倍内閣で内閣官房参与をつとめている。こんな持論を国の政策に反映させてほしいものだ。
但し、藤井さんの持論が採用されるためには世論の後押しが必要。そう思います。

ではその新日本列島改造論、何せWillで14ページも有る。先ずはその見出しだけでも。

新日本列島改造論   WiLL-2016年3月号

「大災害列島」の大補修を!
 藤井聡 京都大学大学院教授
 大石久和 国土政策研究所所長

・ 「奇跡の経済成長」の裏に
・ 恐ろしい歴史的事実
・ 「都市崩壊」の恐れ
・ 世界でも例のない悪条件
・ 日本だけ公共投資額を半減
・ 日本は「道路王国」の大嘘
・ 世界最先端の地位から凋落
・ インフラとGDP成長率
・ 公共事業の本来の目的
・ 一般財源化で大問題が
・ 世界に羽ばたくために

こんな内容です。
では最初に 「「奇跡の経済成長」の裏に」から

・・・補足:全文を今回だけ文末に小さな字で参考用に掲載しました・・・

<以下引用>

「大災害列島」の大補修を!
「奇跡の経済成長」の裏に

大石 昨今の自然災害の頻度を見る限り、日本はまた災害集中期に入っているのではないかと私は思っています。
 日本は過去に何度も災害集中期を経験し、災害との付き合いのなかから国民性を育んできましたが、振り返ってみますと、1995年の阪神・淡路大震災以前に1千名以上の命を失う災害を経験したのは、36年も前の1959(昭和三十四)年に起きた伊勢湾台風にまで遡ります。この三十六年間に、日本は「奇跡の経済成長」を果たしたわけですが、その成功の裏には、この時期が大自然災害空白期と重なっていたことが大きく寄与していました。
 そのため、「自分たちが大災害列島に暮らしている」という意識が希薄となり、むしろ「災害は克服できた」と多くの国民が錯覚してしまった。しかし決してそうではなく、たまたま運が良かったに過ぎないのです。

藤井 過去に何度も災害集中期を経験しているということは、今後も必ず災害集中期を迎えるということを意味しています。日本は非常に脆弱な国土であり、厳しい自然条件に晒されているという事実を今一度、自覚する必要がありますね。
大石 日本だけを見ていてもわかりません。他国と比較することで、初めて日本の脆弱な国土と厳しい自然条件が分かります。
 最大の特徴は地震、津波です。日本の国土面積は世界の地表面積の0.25%を占めるにすぎませんが、全世界のマグニチュード(M)四以上の地震の10%が日本で起こり、マグにチュード六以上になると二〇%にもなると言われています。大地震の発生頻度が日本で高い理由は、世界中で十五程度しか存在しかないプレートのうち、この狭い国土の領域に四つのプレートがせめぎあっているからです。
 ロシアなどあれほどの大国なのに、全土がユーラシアプレートに乗っています。ドイツやフランス、イギリスも地震のリスクはほとんどありません。アメリカは西海岸でこそ地震の可能性はありますが、ほぽ全土で大地震を考慮することなく、ビルを建てたり橋を架けたりできる。構造物が一切、地震を考慮することなく建設されているのです。
 私たち日本人は、先進国のほとんどの地域で地震が起きないということを認識しているでしょうか。

<引用此処まで>

最初に災害集中期と言う言葉がある。これは地震でも台風でもハッキリ言える日本列島の問題なのだが、今それを語られる事は殆どない。
最初に台風について。

昭和の三大台風と言われるものがある。大被害をもたらしたモノだが、この三つのことを言う。
               死者・行方不明者数
室戸台風    1934年9月21日     3036
枕崎台風    1945年9月17日     3756
伊勢湾台風   1959年9月26日     5098

尚ここで枕崎台風だが、被害は九州より広島の方が大きかった。広島は原爆から1ヶ月後に巨大台風に襲われて非常な苦労をされたのだが、もうそんな事を覚えている人も少ないのではないだろうか。
「天災は忘れたころやってくる」、こんな言葉が思い出される。

そして気象庁が名前を付けて巨大台風として記録している台風が八つある。これは戦後のモノだけ。
気象庁命名台風
気象庁命名 名称            国際名  年
洞爺丸台風 昭和29年台風第15号 Marie  1954年
狩野川台風 昭和33年台風第22号 Ida   1958年

宮古島台風 昭和34年台風第14号 Sarah   1959年
伊勢湾台風 昭和34年台風第15号 Vera   1959年
第2室戸台風 昭和36年台風第18号 Nancy  1961年

第2宮古島台風 昭和41年台風第18号 Cora   1966年
第3宮古島台風 昭和43年台風第16号 Della   1968年
沖永良部台風 昭和52年台風第9号 Babe   1977年

この内本州に暮らす人には太字の四つが記憶に残っていると思う。洞爺丸台風・狩野川台風・伊勢湾台風・第二室戸台風だ。
だからもう50年以上本州は巨大台風に襲われていない、こんな実感だと思う

では地震は如何だろうか。
地震についてはこんなエントリーをした。
http://tansoku159.blog.fc2.com/blog-entry-1101.html

ここでも述べたように、1945年の敗戦前後にかけて4年連続で1000名を超える死者を出した昭和の4大地震とその後の福井地震。
しかし、これらの地震は戦火と戦後の混乱に埋もれ、震災そのものが十分に伝えられているとは言いがたい。

1943年9月10日 鳥取地震(マグニチュード7.2) 死者1083人
1944年12月7日 昭和東南海地震(マグニチュード8.0) 死者1223人
1945年1月13日 三河地震(M6.8*M7.1という説もある) 死者2652人
1946年12月21日 昭和南海地震(マグニチュード8.1) 死者1330人
1948年6月28日 福井地震(マグニチュード7.1) 死者3769人

藤井聡氏が日本は「奇跡の経済成長」を果たしたわけですが、その成功の裏には、この時期が大自然災害空白期と重なっていたことが大きく寄与。こう言っているのだが、こんな事は普段意識しない。


もうひとつこれは東日本大震災後にエントリーしたものだが
http://tansoku159.blog.fc2.com/blog-entry-459.html


ここでこんなグラフで今地球はパンドラの箱を開けた状態ということを説明した。

2015-4-2820世紀からの世界の地震

このグラフを見ると20世紀100年間のM6以上の地震の数はほぼ一定している。
しかし21世紀は7倍以上に激増、これが現実なのだ。
スマトラ島沖地震(インド洋大津波・2004年)も東日本大震災も皆この激増期の中。
こんな所に日本人が住んでいる事を理解しないといけない。
こんな事である。




<参考用:これが全文です>
新日本列島改造論   WiLL-2016年3月号

「大災害列島」の大補修を!

藤井聡 京都大学大学院教授

大石久和 国土政策研究所所長


「奇跡の経済成長」の裏に

大石 昨今の自然災害の頻度を見る限り、日本はまた災害集中期に入っているのではないかと私は思っています。
 日本は過去に何度も災害集中期を経験し、災害との付き合いのなかから国民性を育んできましたが、振り返ってみますと、1995年の阪神・淡路大震災以前に1千名以上の命を失う災害を経験したのは、36年も前の1959(昭和三十四)年に起きた伊勢湾台風にまで遡ります。この三十六年間に、日本は「奇跡の経済成長」を果たしたわけですが、その成功の裏には、この時期が大自然災害空白期と重なっていたことが大きく寄与していました。
 そのため、「自分たちが大災害列島に暮らしている」という意識が希薄となり、むしろ「災害は克服できた」と多くの国民が錯覚してしまった。しかし決してそうではなく、たまたま運が良かったに過ぎないのです。

藤井 過去に何度も災害集中期を経験しているということは、今後も必ず災害集中期を迎えるということを意味しています。日本は非常に脆弱な国土であり、厳しい自然条件に晒されているという事実を今一度、自覚する必要がありますね。
大石 日本だけを見ていてもわかりません。他国と比較することで、初めて日本の脆弱な国土と厳しい自然条件が分かります。
 最大の特徴は地震、津波です。日本の国土面積は世界の地表面積の0.25%を占めるにすぎませんが、全世界のマグニチュード(M)四以上の地震の10%が日本で起こり、マグにチュード六以上になると二〇%にもなると言われています。大地震の発生頻度が日本で高い理由は、世界中で十五程度しか存在しかないプレートのうち、この狭い国土の領域に四つのプレートがせめぎあっているからです。
 ロシアなどあれほどの大国なのに、全土がユーラシアプレートに乗っています。ドイツやフランス、イギリスも地震のリスクはほとんどありません。アメリカは西海岸でこそ地震の可能性はありますが、ほぽ全土で大地震を考慮することなく、ビルを建てたり橋を架けたりできる。構造物が一切、地震を考慮することなく建設されているのです。
 私たち日本人は、先進国のほとんどの地域で地震が起きないということを認識しているでしょうか。

恐ろしい歴史的事実

藤井 東日本大震災は「千年に一度」と言われましたが、実は西目本の太平洋側では百年から百五十年周期で、これと同様のことが繰り返し起きています。東海・東南海・南海地震によって引き起こされる「西日本大震災」です。
 これらの地震は、過去一千年の歴史のなかで合計で七回も起こっているのですが、そのうち三つの地震が単独で起こったケースは一度もなく、全て連動しています。ですので、次に西日本大震災が生じるときもそれが連動するであろうことは、ほぽ間違いないと予想されます。
 静岡、浜松、豊橋、名古屋、津、和歌山、大阪、神戸、徳島をはじめとした西日本の太平洋側の諸都市に、巨大な地震の揺れに加えて東日本大震災によって生じた巨大津波と同様の規模の津波が襲いかかるとされ、被害額は二百兆円、三百兆円の規模に達すると見られています。
 さらに、この西日本大震災と東日本大震災との連動を調べると、恐ろしい歴史的事実が明らかとなります。
 東日本の太平洋沖で発生するM八以上の巨大地震は過去一千年の間に四回、起こっているのですが、それらのうち実に三回、つまり七五%において、最長で十八年以内に西日本大震災が連動しているのです。
 貞観地震の時には十八年後、慶長三陸地震の時には六年前、昭和三陸地震の時には十一年後に、それぞれ西日本大震災が生じています。
 この歴史的な事実を踏まえると、二〇一一年の東日本大震災から早ければ五~六年、遅くても二十年弱の誤差で西日本大震災が発生することが、相当程度の確率で見込まれる状況にあることが分かります。

大石 先ほど、「大自然災害空白期」と申し上げましたが、たとえば東海地震を見れば、現在までこの地域で大地震が百五十七年間も起こっていないことがわかります。それまでは百年から百五十年の周期で発生しています。

藤井 今日、明日にも東海地震が発生したとしてもおかしくない。内閣府の見解では、南海トラフ地震は三十年以内に七〇%、東海地震だけに限ると八八%の確率で起こるとされています。そしてその時には、東南海地震や南海地震を道連れにして生じることは確実視されている。
 これだけではありません。過去に東日本の太平洋側で生じた四つの巨大地震の全てのケース(一〇〇%)において、十年以内の時間差で首都直下型地霖が連動しているのです。

大石 東日本大震災後に「平成・関東大震災」が起こる可能性は極めて高い、ということですね。

藤井 内開府は、三十年以内に起こる可能性は七〇%と公表しています。少なくとも過去二千年の歴史を見る限り、東日本大震災のような巨大地震が東日本側で生じた場合、一○○%の確率で、関東平野でも十年前後の時間差で巨大地震が発生している。
 しかも、関東平野で生じた直近の大地震は1923年に起きた関東大震災なのですが、その前にこの地域に起きた大地震は、関東大震災から僅か約三十年前の一八九四年です。さらに遡ると、それから約四十年前(一八五五年)、そしてさらにその約四十年前(一八二一年)にもそれぞれ関東平野で地震が発生している。これが歴史的事実です。
 すなわち、関東平野という土地は、おおよそ三十~四十年ごとに大地震に襲われ続けてきた土地なのです。

大石 それが、関東大震災から九十年以上も巨大地震が発生していない。

藤井 九十年間も地震のエネルギーが解放されずに、関東平野の下で蓄積され続けていることを意味しています。この点を考えるだけでも、いつ何時、本当に「メチャクチヤでかい平成・関東大震災」が生じても不思議ではない。そんな状況下で、あろうことか、十年以内に関束平野での大震災を必ず併発させてきた東日本太平洋側での大地震が発生したのが、今日の状況なのです。

大石 地震とともに、津波のリスクにも晒されている。

藤井 さらに火山です。世界の活火山の一〇%が日本に存在しており、火山活動もきわめて活発な国土のうえに私たちは暮らしているのです。

「都市崩壊」の恐れ

大石 他の先進国と比較にならないほどの地震や津波、火山のリスクに加えて、日本の大都市はほぼ全てが軟弱地盤上にあるという点も見逃せまん。
 私たちが住む都市の大地は、大半が六千年前頃の「縄文海進」という海面がかなり高かった状態から、その後、海面が下がるにつれて河川が土砂を押し出してきて作り上げられました。江戸川や荒川や利根川が押し出した土砂の上に東京は成り立っている。大阪は淀川ですし、広島は太田川というように、日本の大都市は全部そうです。
 他方、ニューヨークもパリもベルリンもロンドンも、いまから数百万年前に、氷河が削り取った固い台地の上に成り立っているうえに地震もない。日本はマヨネーズのようなグジュグジュの地盤なのに地震が多い。大地震が起きて都市が崩壊してしまう可能性のある先進国は日本だけです。しかも全ての日本の大都市は降雨特性が厳しく、河川の氾濫区城にある。

藤井 とてつもない悪条件が収なり合っていることがわかります。

大石 その他にも、国土形状は長い海岸線をもつ弓状列島で、列島の最大幅は二百五十キロ程度しかないにもかかわらず、列島の東北端から南西端までの距離は直線距離で三千三百キロという極めて細長い地形ですから、地域間の連携や農産物や工業生産物の移送でも、非常に長い距離を克服しなければなりません。
 フランスやドイツ、アメリカ、中国といった国が、円に近い形をしているのとは大きな違いです。これらの国では、中心部に拠点を置けば全土の各地と放射状に結ぶことで繋がり合うことができます。
 しかも日本は、弓状列島の中央を急峻な脊梁(せきりょう)山脈が縦貫しています。それも二千から三千メートル級の山脈ですから、日本海側と太平洋側を結ぶためには大変な片労を要する。トンネルと橋梁を多用しなければ、両地域を結ぶことはできません。国土は脊梁山脈によって、完全に二分されているのです。
 さらに、脊梁山脈から流れ下る河川が細長い幅の狭い国土を南北に流れ分けるため、川はきわめて短く、流れは急です。そのうえに強い豪雨に襲われるため、洪水も起こりやすい。主要河川において、洪水時には欧米では平時の数倍から数十倍程度の流量ですが、日本では平時の一千倍近い流量が流れる河川もあります。

世界でも例のない悪条件

藤井 平野という点では、日本は可住地面積が小さいのも特徴です。

大石 国土面積に対する可住地面積はイギリス八四・六%、フランス七二・五%、ドイツ六六・七%ですが、日本は二七・二%しかありません。しかもこの可住地が、きわめて分散的にしか存在していない。平野は内陸地域では盆地として、また海岸地域では河川が押し出してきた河口部の土砂の上にしかないのです。
 そのうえ、ちょうど台風の通り道に沿うように列島が展開しており、雨の多くがこの台風期と梅雨末期に集中する。日本の年間降雨量は一千六百~一千八百ミリメートルといわれていて、全地球の地表平均八百ミリメートルと比べると水資源の豊かな国というイメージがあるのですが、河川が急流であるため降った雨が一挙に流れ出て海に注ぐという構造になっています。したがって、水資源的に恵まれているわけではなく、雨が多いのに使える水は少ない。

藤井 川は急峻であり、かつ大雨が頻繁に降るということは、土砂災害のリスクもまた、極めて高いことを意味しています。二〇一四年八月に広島で起きた集中豪雨で土砂災害が発生し、残念なことに七十名以上もの尊い命が失われてしまった。集中豪雨は非常に増えており、こうした事態が、いつ、どこで起こったとしても全く不思議ではありません。
大石 広大な平野に居住地を構えることができるヨーロッパなどとは異なり、山腹の麓に住宅を設けることの多い日本では、豪雨による斜面崩壊とともに、土石流や土砂流による災害が毎年のように人命を奪っています。
 さらに国土面積の六〇%が積雪寒冷地にあり、かつ年間累積降雪量が四メートルを超える豪雪地帯に人目五十万人を超える大都市が存在している。日本より寒冷な地域に大都市が存在する例はロシア・カナダなど世界にいくつもありますが、これだけの豪雪地に大人口を抱える都市を持つ国は存在しません。日本列島は、世界でも例のない悪条件に覆われた国なのです。

日本だけ公共投資額を半減

藤井 諸外国ではほとんど何も気にしなくてもよい様々なリスクを抱えているのが現実で、そのことは日本がそうしたリスクに対する十分な防災対策があって初めて、諸外国と同じ条件に立つことができるというとを意味しています。
 しかし日本ではそうなっていないばかりか、防災の分野で重要な役割を担う公共投資額を見ると、過去二十年間で日本は半分以下にまで減らしているのです。他方、イギリスは三倍、アメリカは二倍、ドイツは一・○六倍に増やしている(グラフ参照)。
 後述するように、日本は「インフラ後進国」です。道路も新幹線も整備は進んでいない。したがって、深刻な自然災害のリスクに加えて諸外国よりも整備の遅れた状態を取り戻すためには、諸外国よりも当然速い速度でインフラ整備を推し進めていかなければならない。にもかかわらず、予算は日本だけが半額になっていて他国は二、三倍になっている。信じ難い状況です。これでは、日本が国際競争で「必敗」するのも仕方ありません。

大石 「公共事業が必要です」というと、「無駄だ」とか「財政悪化の原因だ」とか、根拠や証明のない議論が行われてきました。それがいまも続いています。わが国の最大の脆弱性は、事実や客観的データに基づく議論の欠如かもしれません。

藤井 そうですね。どれだけ恨拠のある合理的意見を述べても、「不安を煽って土建屋を儲けさせようとしている」とか「藤井は土建屋の回し者」「既得権益を守りたいだけ」など誹誇中傷、バッシングの嵐が必ず起きる。ただし、そういう人たちは常に根拠を一切示さない。つまりそれは単に予断と偏見、イメージだけ。そして、そういうイメージがすでに世間で共有されているから多数が賛同してしまう。なぜこんなことになってしまっているのかと言うと、世論の側に公共投資の必要性や災害対策の必要性、また諸外国と日本との相違について全く理解が進んでいないことが問題の根本にあると思います。
 その世論は何によってつくられるか。やはりメディアの影響が非常に大きいと考えられます。

大石 左頁のグラフ(引用者注:下記グラフの事)は、国土交通省が経済財政諮問会議などに提出した完全にオープンな資料ですが、活字でも放送でもメディアが取り上げたことはありません。

2016-2-20国別インフラ支出推移2

藤井 私の教えている博士課程の学生が、新聞の論調の変遷と年代ごとに使用されているキーワードを定量的に調べたところ、七〇年代には公共事業に対する肯定的な記事が約七割を占めていたのが、九〇年代中盤から否定的な記事が増え、二〇〇〇年代になると肯定的な記事は一割弱、九割が否定記事に変わっていったことが分かりました。
 ただし最近の二〇一〇年以降では、東日本大震災や笹子トンネル事故などの要因からか、肯定的な記事が若干増えています。また、「主要キーワード」も、環境の時もあれば予測の時もあるなど、明確に流行(はや)り廃(すた)りがある。つまり、「報道の客観性」が保証されているとは言えない様子が良く分かりました。

大石 九〇年代に入ってから日本を席巻した構造改革と称される主流派経済学で、政府の役割は小さければ小さいほど良い、民間の自由な競争に任せれば万事うまくいくから政府は余計なことを一切するなという動きと、それにちょうど呼応するように財政危機が叫ばれ始めて、政府は防災投資を控えるようになっていきました。

藤井 新自由主義経済では、あらゆることをマーケット(市場)の原理で解こうとするわけですが、防災は経済学上、市場に織り込むことができない分野です。市場は利益を出すために短期的かつ視点も倭小化する特徴がありますが、防災は広い視点から長期的に対策を講じる必要がある分野だからです。
 さらには財政危機に伴い、緊縮が絶対善だという「緊縮思想」が生まれました。すると目の前で実際に起きたことには投資するが、起こる可能性への投資は最初に削られていく。緊縮と市場原理主義の二つの思想が日本を覆っているため、自ずと長期的、広域的な視野が求められる防災投資が削減されていくのです。
 政策決定の責任者たちも思考停止状態に陥り、目の前に起こったことに対しては何百億円も費やすのに、これから起こるかもしれない何百兆円の被害に対してはビター文出さない。
 自然災害のような危機は一種の見えないもので、それを見るためには知性が必要なのですが、そうした知性や理性が欠如しています。白痴化の「痴性」に覆われてしまっている。

大石 公共事業費を抑えたことで内需が減少し、デフレが促進され、税収が減り、さらに公共事業費を削減していかざるを得ない。この二十年間、このような「悪魔の循環」から脱し切れていないのが現状です。

日本は「道路王国」の大嘘

藤井 公共事業費が減らされた結果、どうなっているかと言いますと、たとえば土砂災害を防ぐには砂防堰堤(えんてい)を整備することが急務なのですが、その整備率は未だに二割程度しかありません。
大石 台風十七号、十八号による集中豪雨によって、茨城県常総市で鬼怒川堤防が決壊し、大きな災害となって人命や財産が奪われましたが、ある決壊箇所は堤防強化計画があり、まさに着手の準備をしていたところだったと言われます。
 この二十年間、先進国で唯一、公共事業費を削減してきた煽りを受けて、河川改修の予算も大きく減少した。予算が伸びていれば、この堤防強化事業もずっと前に整備が完了していたはずです。救える命があった。メディアも上空から「堤防が決壊した」という映像を流すだけで、問題の根本を国民に知らせようとしません。強い憤りを覚えます。

藤井 津波対策を見ても、南海トラフ巨大地震などの主要な津波対策のために計画されている堤防のうち、整備が完了しているのは僅か三割です。巨大堤防は景観を損なうという反対意見がありますが、この整備水準率の数値は、津波の高さとして想定されている二つのレベルのうち低いレベルに対してのものなのです。「最低限のインフラ対策」ですらなされていない箇所が七割にも上る。これが日本の現状です。
 笹子トンネル事故などが契機となり、高度成長期につくったインフラの多くがこれから大量に寿命を迎えることはよく知られていると思うのですが、インフラのメンテナンスも遅々として進んでいません。

大石 現在も、公共事業の予算は増えていませんからね。

藤井 その点は、内閲官房参与としても責任を痛感しています。もっと国民や政策責任者に訴えていく必要があります。ある日、危機が具現化して激甚被害が起こってからでは遅いのです。

大石 テレビのインタビューで「ここに七十年以上住んでいるが、こんな災害は初めてです」と言う人たちに、もし災害に遭う前に水害の危険性があるから堤防を作りましょうと提案したとすると、「そんなもの必要はない。現に私は七十年以上、ここで生活してきたが、一度もそんな水害に遭ったことはない≒無駄遣いだ」と拒絶する人が多いと思います。
 スーパー堤防建設構想なども、二百年に一度の水害に対応するような非効率的な建造物は必要ない、と安易に切り捨てられてしまいました。

藤井 「道路ももっと整備しなければならない」と主張すると、「日本は道路王国なのにまだ作ろうとするのか」「利権に群がるシロアリだ」と批判されてしまう。高速道路の整備水準は統計的にも先進国中最低水準にある、という事実が一般に全く知られていません。「日本は道路王国」とイメージだけで批判しているのです。
 自動車一万台あたりの高速道路の総延長は〇・九キロしかなく、主要な先進諸外国中、最下位です。諸外国は一・五キロ~七、八キロある。高速道路ネットワークを見ても、日本は束京や名古屋や大阪などの人目集中地域においてはそれなりに整備されていますが、日本海地域にはほとんど整備されておらず、山陰や東九州、四国や紀伊半島、東北日本海側、北海道東部といった地域に至っては全ぐ整備されていません。

大石 「わが国の高速道路は、すでに先進国の水準を遥かに超えている」(五十嵐敬喜法人名誉教授)といった言説を大新聞や岩波新書が垂れ流してきました。可住地面積あたりの高速道路延長を算出して、それがドイツ、フランス、イギリスの延長に比べてかなり長いから、日本はすでに高速道路大国だと言うのです。

藤井 誤った議論の典型ですね。

大石 先ほど述べたように、日本の国土はその多くが山脈地帯であり丘陵地帯で、極めて少ない可住地面積しかありません。高速道路は、この可住地にある都市と都市を結んでネットワークを形成するために整備されるものですから、可住地にも存在する一方で、その延長の圧倒的部分は可住地以外を通っている。
 可住地以外を通って都市と都市とを連携させるための高速道路の長さを可住地だけの面積で割っても何の意味もありませんし、何の説明にもなっていません。

世界最先端の地位から凋落

藤井 高速道路の車線数も、日本は三車線以下の高速道路が二七・一%、四~五車線が六四・九%、六車線以上は八%ですが、フランスは三車線以下が〇・四%、四~五車線が八二・三%、六車線以上は一七・三%で、諸外国では三車線以下が数%程度しか存在していないのが実態です。
 イギリスは、六車線以上が七〇・一%も占めている。統計を見る限り、日本には大量の自動車がある一方で、高速道路は「長さ」の点でも[太さ](車線数)の点でも圧倒的にサービスレベルが低いことを意味しています。日本が道路王国などというのは完全なデマです。

大石 ドイツなどは、高速道路ネットワークが整備されているのだか鉄道網は脆弱かというとそうではなく、ドイツの鉄道が四万二千キロに対して、日本は二万三千五百キロしかありません。ドイツの国土面積は三十五万平方キロメートルで、日本は三十八万平方キロメートルです。

藤井 新幹線を見ても、日本では二十万人以上の人口を抱えている都市で新幹線が接続されていない都市が全国に二十一も存在しているのに対して、ドイツではケムニッツという一都市だけ、フランスではオルレアンとクレルモンフェランの二都市だけです。新幹線はもともと日本が開発した技術ですが、いまや新幹線整備の点から言って、世界最先端の地位から凋落してしまっている。

大石 港湾もそうです。世界最大のコンテナ船が入れるコンテナ埠頭は、日本に横浜港一バースしかない。それも二〇一五年五月にできたばかり。客観的なデータで見れば、明らかに日本は「インフラ後進国」です。「これからはTPPだ、国際貿易で稼ごう」と言っていますが、これで本当に日本は世界とわたり合えるだけの競争力を確保できるのか……甚だ疑問です。

インフラとGDP成長率

藤井 そもそもインフラとは英語でいうインフラストラクチャー、すなわち「下部構造」を指し、社会、経済、行政を下から支えるもの全てを意味します。ところが、日本ではインフラというとすぐに「公共事業」をイメージし、「無駄遣い≒利権」とレッテル貼りが行われてしまう。

大石 公共事業は英語でははパブリックワークスといいますが、オバマ大統領にしても、各国の首脳はみなインフラストラクチャーという言葉しか用いません。世界の首脳たちの公共事業やインフラについての発言を見ると、わが国がいかに世界と外れているのか明らかです。
 オバマ大統領は「アメリカの再生にはインフラの再構築が必要だ」と言い、イギリスのキャメロン首相は「インフラが二流になれば、イギリスも二流になる。インフラは後回しにできる課題ではない」と言っています。さらに、ドイツのメルケル首相は連立政権を組む際の合意文書に、「質の高い交通インフラがドイツの競争力を保障する。したがってきちんと計画を立て、財源制度もしっかりしたものを作る」と言った内容を盛り込んでいます。

藤井 国内の都市間競争はもちろん、国際間競争でも一般道路、高速道路、一般鉄道、高速鉄道などインフラの整備水準が高い国ほど過去十年間のGDP成長率が高く、逆に低い国ほどGDP成長率が低いという相関関係が明確に示されています。
 多くのエコノミスト、タレント、コメンテーターが「公共投資を拡大したところで、借金が増えるだけで景気は良くならない」と繰り返しますが、全くのデタラメです。
 二○○五年と○九年にインフラ投資を増加させた時には税収も増加しており、一二年と一三年にかけてインフラ投資を増やした時期においても、税収の増加が確認できます。インフラ投資を削れば税収は減少し、インフラ投資を増やせば税収は増えるという傾向が、九八年のデフレ突入以降、明確に存在している。
 リーマンショック後のGDP回復率を見でも、インフラ投資を拡人した国家のほうが高く、インフラ投資を縮小した国家のほうが低いという世界的な結果が出ています。

公共事業の本来の目的

大石 これまで日本は二十年間、先進国で唯一、公共事業費を減らし続けてきた結果、先進国で唯一、経済成長してこなかった。何をしなければいけないか、もう答えは完全に出ています。
 よく財務省が、今後は人目が減るのだからもう新しい道路をつくっている場合ではないなどと言いますが、それは全くの逆です。いまの交通網では一日に五軒しか配達できない状態を、一日十軒に届けることができるようにする必要があるのです。つまり、一人当たりの労働生産性を高める工夫をしなければならず、それにはインフラ整備が不可欠なのです。
 インフラというと、日本では「今年は金額的にいくら事業をするのか、今年は何キロ整備できるのか」とか「今年は昨年より何%増えたのか、減ったのか」という経済的フロー効果でしか見ずに、フローで批判している。もちろん、フロー効果としても乗数効果や生産誘発効果をもたらし、経済を活発化させ、GDPを増大させて税収増を図ることができるので大いに意味があるのですが、それに加えて公共事業の本来の目的は、各年のフローの積分がストックとなって効用を発揮する点にあります。

藤井 できあがったインフラが、生産性の向上などをもたらして経済成長を導いていく、というインフラにおける最も本質的な経済効果ですね。

大石 二〇一五年三月七日に、首都高の中央環状品川線が開通しました。大橋ジャンクション~大井ジャンクション間を結ぶ延長約九・四キロの道路ですが、この開通によって都心環状の渋滞が五割も減少しました。これこそストック効果です。

藤井 インフラ投資には、「期待効果」という経済効果も期待できます。
 たとえば、熊本市に新幹線が開通することで人口集積が促されましたが、そうした人口集積は「開通する以前」から始まっていたものです。金沢市でも富山市でも、この「期待効果」ゆえに、官民あわせた様々な投資が先行的に進められたのです。

一般財源化で大問題が

大石 インフラ整備では、必ず財源の問題が議論になります。道路整備で言えば、いわゆるガソリン税などの自動車関連諸税の一般財源化という問題で、二〇〇九年四月に道路特定財源制度は廃止されました。ところが、これによって非常に重大な問題が生じています。
 揮発油税・ガソリン税をその地域の人がどれくらい負担しているかを知るために、東京都中野区と千葉県山武市の世帯の負担額を現役時代に調べたことがあるのですが、中野区の人は鉄道の交通手段が充実しているため、自動車の保有台数は世帯あたり僅か○・三台で、ガソリン税は全世帯平均で一年間に約一万二千円を支払っていた。
 他方、山武市では、東京近郊農作地帯として生鮮野菜を作っていますが、鉄道網もダイヤも粗ですから生産や輸送には車を使わざるを得ず、子供たちの送り迎えや自分の移動にも自家用車に頼る生活の割合が高い。そのため、一家に一・九台も車を保有しており、全世帯平均で年間約十九万円ものガソリン税を負担していたのです。地方部はすべてよく似た状況にあります。
 なぜ、財政再建や福祉の財源を都市部よりも十倍も多く地方が負担しなければならないのか。受益者が負担して道路整備に充てるという合理性という点でも、税の公平さという観点からも、一般財源化は重大な問題なのです。道路特定財源を復活させ、先進国で最低水準の道路整備とインフラ整備に充てるべきです。

藤井 老朽化対策も遅々として進んでいませんから、少なくともそうした議論をしていくことは重要ですね。

大石 そもそも公共事業費を増やすと、福祉や教育関連の予算が減らされると思っている人が多いのですが、全くの誤解です。公共事業費と教育費や福祉の費用は、トレードオフの関係に全然ないのです。建設国債は法律上、公共事業に使途が限定されており、公共事業を減らした分、教育や福祉にお金が回ることにはなりません。この関係が、国民にはほとんど伝わっていません。

世界に羽ばたくために

藤井 安倍総理は、二〇二〇年までにGDP六百兆円を目指すと表明されました。増税をするまではアベノミクスは大成功だった。アベノミクス効果は増税によってぶっ飛んだような状況で、今後も楽観はできません。いま、第三の矢である「成長戦略」が注目を集めていますが、これは長期的なもので、五年間で徹底的に構造的な変化を迫るのは原理的にも難しく、かと言って第一の矢である金融緩和だけではデフレ脱却は不可能です。
 消去法で考えても、第二の矢「機動的財政政策」しか選択肢はありません。そして、第二の矢には非常に大きな効果があることがデータで裏付けられている。そこで重要なのは、行き当たりばったりでお金を使うのではなく、ワイズスペンディング(賢い使い方)をすることです。すなわち、地方創生や国土強靫化、アベノミクスのために今後五年間で何か一番良いのかを、しっかり投資プランとしてまとめる。
 アベノミクス投資プランとして「五年間、これをやる」と宣言するだけで、「期待効果」によって様々な民間投資が呼び込まれ、民問投資によってお金がさらに回っていき、日本は確実にデフレを脱却できます。そして、税収も増える。建設国債を発しなくても、税収増が投資プランの原資となっていくのです。

大石 東日本大震災後、大きな混乱や犯罪が起こらず、粛々と運命を受け入れ、前向きに生きる被災者の姿に世界中の人が驚嘆しました。その国民性の秘密は、実は「国土」にありました。日本は国土の至るところで大地震が起こる可能性があり、台風、豪雨、豪雪といった自然災害と常に向き合う国です。
 それが日本人の国民性を養ってきて、そうした共同作業が仲間意識や郷土意識を創り上げてきた歴史があります。日本人としてのアイデンティティーを大切にしながら世界に羽ばたくためには、経済の成長と競争力の向上が不可欠で、そのためにはいまこそ事実に基づいた骨太のインフラ整備が日本には必要なのです。

●WiLL-2016年3月号
  1. 自然災害
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