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2017-08-31 10:07

元気のないニコン

 前回「ニコンの物作りの原点」を書いたのだが、そこへ色々コメントをいただいた。
とにかく今のニコンは元気が無い。そんなコメントを紹介しながら、同じカメラメーカーでも元気のよい富士フィルムの言っていることを見てみた。
変化の激しい時代を生き抜くという事がどういうことなのか、そんなことの参考になればと思います。

一寸自己紹介 私も永年のニコン党でこれは最初に買ったニコンF、もう半世紀も前のもの。
まだちゃんと使えるのですが、もう出番は無くなりました。
2017-8-30ニコンF 


最初に前回のエントリーにいただいたコメントの紹介。
これは丸山光三さんから、丸山光三さんはニコンの企業姿勢・体質を問題にしています。

<以下引用>
ニコンにかぶさる暗雲
いわゆる「フルサイズ」これは英語圏ではFullframeと呼ばれるLeica版35㎜フィルムと同じ面積のイメージセンサーをもつデジタルカメラですが、これの普及版として2012年のPhotokinaで発表されたD600、この欠陥が今のNikonの不振に大きく影響していると思います。ユーザーのとくにニコンユーザーのD600への期待は大きかったのです。また同時期に発表されたキャノンの競合機EOS6Dよりスペック的にはあらゆる面で勝っていたものの、D600はシャッターユニットの不備によるものと思われるセンサーの汚れが酷く、またニコン側は当初これをデジタルカメラには不可避なものとして真面目に対応せず、多くのユーザーの怒りをかいました。そしてニコンユーザーが激減していったのです。欧米人は日本人と違いニコン神話への思い入れはなくドライかつドラステイックに反応しただけでした。そしてニコンへの不信だけが残ったのです。

結局、ニコンはD600の欠陥を認めることなく早急に後継機D610を一年後に発表しました。事実はD600のシャッターユニットを交換しただけだったのですが、ニコンはD600ユーザーに対してD610への無償交換を提供したのですから事実上ニコンの敗北です。この問題ではもっと早くにD600シャッターユニットの欠陥を誠実に認めていれば傷はそれほど深くならなかったことでしょう。面子にこだわり実利を無くしたのでした。

それにしても不可解なのはこの問題について日本国内ではほとんど騒がれることがなかったことです。「価格コム」などでの討論はありましたが、使用開始直後によくあるトラブルでその後解消する、という訳知り顔のコメントが多く、ニコン側でも深刻に受け止めていないようでした。あるいはあれらのコメントはニコン関係者によるものだったのでしょうか?

私自身もD600を購入しようとしていたのですが欧米での欠陥騒動で躊躇してD610導入まで待ちそしてそれを買いました。結果としてはD610は非常によくできた「フルサイズ」一眼で3年ほど使用しましたが、マニュアルでのピント合わせが光学ファインダーで確認できないこと小型軽量がセールポイントであるにも関わらず老体にはやはり絶対的には重いことなどから手放しました。

一眼レフカメラを先鞭を切ったのはペンタクスでしたが、しかしこれをこれまで牽引してきたのはニコンとキャノンでした。そしてこの2社だけで市場の9割を寡占しています。

一方、いわゆるミラーレス一眼の発展は目覚ましく当初は相手にしていなかった欧米のユーザーもどんどんミラーレスへと乗り換えているようです。とくにニコンからフジフィルムへのお引越しが目立つようです。かくいうわたしめもD610を捨ててフジフィルムXシリーズを使用しています。ニコンはこのような潮流を知ってか知らずか、知ってはいても一眼レフを育て発展させてきたメーカーの誇りからか、Nikon 1シリーズによる言い訳がましい、よく言ってもせいぜいお茶を濁した程度の関わりでうかうかと大切な時間を浪費してきたわけです。

またソニーRX100とその各社追随機による一時期市場をにぎわせた1インチセンサー搭載のコンデジですが、これにおいてもニコンは真面目な検討を怠り、遅ればせにDLシリーズを発表しながら発売延期のアナウンスを繰り返し結局はそれを発売に至ることができず開発中止を発表するという情けない始末でした。

何事かは知らずとも企業としてあってはならない深刻な問題がニコンにあることがここ数年の出来事でうかがい知れます。今年創業100周年を迎えたというのに特別なそれを記念する新型機を出すこともなく終わろうとしています。ミラーレスの開発はしている、とのコメントだけではもう間に合わないという自覚もないようです。数年後には一眼レフの市場はもっと縮小し、一眼市場はミラーレスが大勢を占めソニーやフジフィルムが市場の牽引車として大きく浮上してくる予感がします。その時、ニコンはプロ御用達専門の一眼レフメーカーとしてニッチな市場で小さく生き残りをはかるという凋落した姿を見せるのかも知れません。
2017-08-29    丸山光三 
<引用終り>


丸山光三さんはたいそう御怒りですが分かります。最近のニコンの迷走・凋落ぶりは悲しいですね。そしてこの問題はとても根の深い何かが潜んでいると思います。
こんな時、やはり既存の体制を破壊する一種革命的なものが必要、ニコンの発言からはそんな革命的なものは見えてきません。社内に自浄能力が無ければダメですね。

そんな意味で私は本文で紹介したダンカン氏の発言を取り上げたつもりです。このダンカン氏の言っている従軍カメラマンのカメラのメンテの件は、今までいろいろニコン神話についてみてきましたが初めてみた話でした。だからニコンの中の心ある人たちが現状を変えたいがために、ダンカン氏の発言をあえて取り上げたのではないかと感じています。

次のコメント紹介。
これはninja300さんのコメント ninja300さんはデジカメよりスマホのほうが便利と言っています。
<以下引用>

ニコンはデジカメになってから3個目を使っています。 
ところが、3個目はまだ綺麗で作動するのですが、よく指摘されるようにスマホのカメラを使うようになってから使わなくなりました。 
スマホのカメラはWEBに通じていてフェイスブックでもブログでもGoogleDocにでも保存可能なので便利なのです。デジカメだとワンクッション(PCにファイル移動)置いてから、手動でファイル指定しないとフェイスブックやGoogleに移動できないのが不便です。いつもコネクター探しで時間がかかった。コネクターがいっぱいあったんで。 
よく言われるように、ネットへの接続性を改善していただきたいです。 
今後はデジカメのスマホ化がどうしても必須でしょう。「デジカメ部分強化のスマホ」という位置づけで、旅行時に持っていくので頑丈で、GPS機能必須。コンパス機能、湿度計、温度計、高度計もあって頑丈で防水なら売れると思う。スマホの頑丈版でスマホ以外の機能を持った機械、GPS強化版、カメラ高性能版というポジションなら欲しい。 
ニコンにはブログ記事のような伝説があるんだと知ってためになりました。だから、ニコンには現状を打開してほしい。スタートレックに出てくるトリコーダーのようなのがいい。 
https://en.wikipedia.org/wiki/Tricorder 
しかし、アップルも同じことを考えているでしょう。
2017-08-28   NINJA300 
<引用終り>

ニコンは私も永年ニコン一筋、そんな目で見ても今のニコンはダメですね。モノづくりの基本がわかっていない。モノづくりの基本とは「お客さんの喜ぶもの、欲しがるもの、世間のためになるもの」を作ることです。
これが有るから利益がキチンとついてくると思っています。
近江商人の商売のコツは「三方よし」と言って、【買い手よし、売り手よし、世間よし】です。このポリシーを受け継いだのが松下幸之助でした。
この「三方よし」で「世間よし」を忘れた典型的な事例がVW排ガス不正問題でした。ユーザーにはパワフルで燃費の良い素晴らしいエンジン。売り手のメーカーには儲かる良い車でした。そして「世間」つまり大都市の環境は最悪。ロンドンもパリ・ベルリンも排ガスのスモッグだらけ、煤だらけの真っ黒な街にしてしまいました。

いくらお客さんが欲しがっても、喜んでも、儲かっても、麻薬では作って良い訳がありません。そういう事です。
今回ニコンがあえてこんな動画をリリースした狙いもそんなところにあるのかも知れません。ニコンはモノづくりの原点に帰って、一からやり直してほしいですね。技術力はあるのですからやる気になればできる。そう思います。



ここでちょっと話題を変えて、丸山光三さんが富士フィルムのカメラを使っているというその富士フィルムの話題。
富士フィルムは今は元気ですが数年前までは地獄の底を這いまわっていました。何せ企業の主力製品である写真フィルムの需要が無くなってしまったんですから。

これは2年前の富士フィルムの説明資料から
https://www.fujifilmholdings.com/ja/investors/pdf/other/ff_presentation_20150520_001j.pdf

写真フィルムの需要の変化
2017-8-30富士フィルム1 

これだけ急激に売り上げが減少したら、ふつうは企業は潰れます。現に世界最大手のコダックは2012年に倒産しました。(2013年に大幅に規模人員を縮小し再生しましたが)


そして更なる急激な変化がやってきます。
カメラはフィルム⇒デジタル⇒スマホと変化し、さらに写真全体が変わりました。

これはスマホの普及状況と写真を撮る「ショット数の変化」
2017-8-30富士フィルム2 

なんと写真撮影自体は写真フィルム時代の20倍にまで増えている。そんな時代に変わってしまった。

そのスマホでは写真をプリントする人も減ってしまった。
2017-8-30富士フィルム3 


写真はスマホで撮ってクラウドで保存するもの。こんな激動の時代になった。
これは上掲資料に出ていた数字だが、昔は何処にでもあった町の写真屋さん、この国内の軒数はピークで3万4千軒、それが2013年には9千軒になってしまった。三分の一以下ですね。そういえばわが町でも写真屋さんはめっきり少なくなりました。
こんな事は他でも起こっています。本屋さんは99年の2万2千軒が17年には1万2千軒ガソリンスタンドは89年の3万2千軒が16年には1万6千軒と半減、静かな変化なので気が付きにくいですが、今は激動の時代なのです。


さてこんな環境の中で富士フィルムはどうやって生き残ったか。

ここに面白い話がある。GEのイメルトCEO(2017年8月退任)が2015年に来日し講演やらシンポジュームを行った。そのシンポジュームに空前の危機から脱出した富士フィルムのトップも参加している。そして興味深いことを言っている。地獄の釜の蓋をこじ開けて飛び出した富士フィルム、どんなことを言っているか。


<以下GEレポートから>
名経営者たちが語る、製造業の未来とこれからの指針
2015/07/21
https://gereports.jp/inventing-the-next-industrial-era/
GE REPORTS JAPAN今号では、
GEジャパンが7月9日(2015年)に開催したフォーラム「Inventing the Next Industrial Era with Japan」より、
“日本と創造する未来の産業 “と題したパネルディスカッションの模様をお届けします 。
(引用者注:こんな事をする背景には、GE自身が自社のビジネスを物作りと金融の2本立てから金融をカット、物作りだけに切り替えは経験があるから)

製造業に押し寄せる、大変革の波
パネリストとして登壇したのは、IHI代表取締役社長 斎藤保氏、コマツ社長(兼)CEO 大橋徹二氏、富士フイルムホールディングス代表取締役会長・CEO 古森重隆氏の三氏とGE会長兼CEO ジェフ・イメルト。一橋大学の米倉誠一郎教授の進行のもと、さまざまな角度から意見が交わされ 「これからの製造業の指針」ともいうべき下の企業姿勢が、パネリストの支持を集めました。

これからの製造業の指針:パネルディスカッションから】

・ 自らを破壊するほどの覚悟で変革しなくては、生き残ることはできない。

・ ビッグデータは、顧客自身さえ気づいていないニーズを掘り起こし、顧客のビジネスを革新することができる。

・ 顧客起点で考え、ビジネスプロセスを遡って変革することが必要。すべては顧客の利益のためである。

・ 時間をかけて100%を目指すよりも、いち早く上市し修正を重ねる方が、結果的に顧客の利益にかなう

・ 自前主義に陥らずオープン・イノベーションで社外の力を活用し、スピードを追求することが必要。

指針-1:自らを破壊するほどの覚悟で変革しなくては、生き残ることはできない。
 パネリスト全員が頷いた、今まさに製造業の大変革が巻き起こっている事実。しかし、企業の変革は簡単なことではありません。ましてそれが、成功体験を誇るコア事業であればなおのこと。売上の7割を占めていた銀塩フイルム市場がわずか4、5年のうちに消滅してしまう、という荒波を乗り越えた経験を持つ富士フイルムは、そのとき経営資源を徹底して棚卸し、その実力を客観的に見極め、既存市場/隣接市場における可能性を一から検証したといいます。「銀を使うケミカルプロセスと製薬のプロセスは、化学によって機能を再現するという点で、近いところにありました。化粧品もそうです。こうして医薬品と化粧品という新しい事業領域に取り組むことを決めました」(富士フイルム 古森氏)。

 「成功した要因は、市場選択が正しかったこと。それに社員の力、そして技術・財務力・チャレンジする精神など、会社にアセットがあったことです」(同氏)。

<引用ここまで>


こんなのを見ると丸山光三さんがニコンに対する不信・不満として指摘していることの解決策が見えてくると思う。ニコンさん、考えてくださいね!。

そしてこんな事は色んな所で起こっている。しかし日本の腐敗官僚や嘘吐きマスゴミには分からないようだ。
騙されないようにしなければならない・・・。

  1. 産業
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