2017-09-17 22:38

新幹線輸出は日本文明の輸出

 インドで日本の新幹線が敷設されることが決まり、9月14日に起工式が行われた。

インド高速鉄道建設、他路線に意欲 安倍晋三首相が起工式出席 日本先行…中国は「領土」で逆風
2017.9.14 21:21
http://www.sankei.com/world/photos/170914/wor1709140050-p1.html

2017-9-17インドの新幹線起工式 

良い話である。だが手放しで喜んでもいられない。この仕事は単に線路を敷設し、電車を持っていけばいいというものではない。日本文明をインドと言う大地に移植する、そんな壮大な仕事の第一歩なのだ。

何故この仕事が文明を移植するなどという大げさなことになるのか、そしてそのためのコミュニケーション、言葉の重要性について少し考えてみたい。
尚この話は古いエントリーだが、2010年の「英語を公用語?」エントリーに最近興味深いコメントをいただいたので、そんな事も踏まえて考えてみたいと思います。

最初の問題提起は新幹線のトイレについて

新幹線のトイレの構造はこうなっている。
「TGV vs 新幹線」 佐藤芳彦著 講談社刊より
2017-9-17新幹線のトイレ構造   

上段は第2世代のモノで、薬液を注入し循環させる循環式
第一世代は循環式の薬液・循環ポンプの無い単なる貯留式だった。
下段は現在の第3世代の真空式トイレ。航空機と同じシステムである。

フランスのTGVも現在貯留式から真空式へ移行中らしい。だがヨーロッパでは在来線などでは未だに垂れ流し式が一般的のようである。(黄害をまき散らしている・・・)
(余談だが、ヨーロッパは環境にうるさいと思われているが、こんな汚物垂れ流しがいまだに残っている所、VWのディーゼル不正と似たような所があるようだ


さてではインドはどうなっているかと言うと、これはインドの鉄道のトイレ
2017-9-17インドの鉄道のトイレ 

勿論垂れ流し式である。インド人に言わせるとこの方が気持ちが良いんだとか。


こんなトイレの問題を持ち出したのは、実はインドと言う国は、インド人の家庭は、テレビや冷蔵庫はあってもトイレが無い(!)、こんな事情がある。国民の約半数は現在でも屋外で大小便をする習慣がある。
そんな事情をWSJが少々古いが2014年に報道している。

これはWSJの記事
インド人はなぜトイレが嫌いか―外での用足しは「快適」
2014 年 10 月 9 日 13:41 JST
2017-9-17インドの用足しに行く子供たち 
用を足しに出かけるウッタル・プラデシュ州の子どもたち(8月31日)

詳細は上掲リンク先参照ください。

冒頭、新幹線の起工式について、「日本文明をインドと言う大地に移植する、そんな壮大な仕事の第一歩」と書いた。このトイレ事情を見るとそんな所が過大な表現でないことが理解いただけよう。

しかもトイレがないという事は当然下水処理がうまくいっていない訳で、単に鉄道敷設や駅の建設だけでなく、その上下水道や電力など色んなインフラにも関係する。新幹線がきっかけになって、そんな変革が起こるという理解をするべきだと思う。


それでは次にコミュニケーション、言葉の重要性について少し考えてみたいと思います。
尚この話は古いエントリーだが、2010年の「英語を公用語?」エントリーに最近興味深いコメントをいただいたので、そんな事も踏まえて考えてみたい。

上掲エントリーに最近タイ在住のラチャプックさんからのコメントがきっかけで、これは寛八さんから頂いたコメント。

現地人通訳
>反対の例で私が一番気をつけていたこと、それは話をしているときに相手が現地の言葉で「この短足野郎、気に入らんからドヅイたろか」と言っても「気がつかずにへらへらしている」事である。この状態になると相手に舐められ、必ず問題が起こる。 

そういう人(引用者注:問題を起こす人)を、中国で何度か見かけたことがあります。よく見たのが、日本語ができる中国人を専属通訳として雇って、現場の中国人従業員とのやり取りは、必ずその通訳を通すパターンですね。 
通訳として雇われた中国人も、だんだんとその工場や会社の抱えている事情がわかってくるから、いちいち細かい説明をしなくても済むようになるんですよね。 

でも、それって危険ですよね。人の入れ替わりが激しい中国で、一介の通訳に工場や会社の内情を教えてしまってよいのか? 
それに、そもそも現地人の通訳が、都合の悪い事まで全て訳してくれているとは限らないんですよね。私にもわかるような、いい加減な訳をしている通訳もいましたし。
2017-09-11 22:21 URL かんぱち 

そしてこれは2010年のコメントだが、東北の魚屋さんのコメント。ご自身の海外での体験を語っておられる。
No title
シナ、タイなどは現地の言葉を使っても
伝わらないので、紙芝居モドキでレクチャーしてましたね。
タイでは、イカリングフライを製造してもらってましたが
英語などは、話せるわけではなく現地の言葉でも細かい事は通じません。
やはり、身振り手振りです。

なんか、楽天とかユニクロとか馬鹿なんでしょうか??
国内でも英語しか使わないなんて。
2010-07-24 08:42  東北の魚屋 


そしてこれは今は筆を置かれたSonoさんのコメント。Sonoさんの豊富な海外体験からの話は傾聴に値します。それにしてもSonoさん、今はどうされていることやら。

No title
>だが事実は日本での公用語化が無用なのであって英語そのものは従来以上に必要。
こういう事である。

正に御意。
しかし日本国内で英語を公用語にする楽天などは愚の骨頂でしょう。
そんな事をしてもコミュニケーション力は上がらない。
英語ペラペラながら全く使えない日本人社員は幾らでもいます。
そういう奴は人格、人間力が無いから真のコミュニケーションが出来ない。
仕事には使えないのです。
逆に英語は片言のブロークンでも手振り身振り筆談、
絵談で実に相手の胸の中にうまい事飛び込んで仕事してくる奴もいる。
言葉はその人物の人格の表現手段です。
人格なければ言葉は何の力も発揮出来ないのは
日本語を話す我々の社会を見れば分かります。
それは英語社会でもフランス語社会でも同じ。
どんなに言葉が流暢でも人格と人間力と仕事の実力が伴わなければ
相手から侮蔑されるだけです。
2010-07-24 09:44   sonoraone 

皆さんの意見は大体同じです。外国語がペラペラであることはさして重要ではない。それよりその人の仕事に対する熱意、人格と人間力が重要だと言っています。
私はタイでは「全人格で勝負」と言っていました。仕事はもちろんですが日常生活やモノの食べ方などすべてが重要なのだと。
いわば日本文明をインドに移植する、こんな大仕事になると思います
冒頭何故トイレの話を持ち出したか、それはこのトイレの習慣と言うのはまさに文明そのもの。これの改革を新幹線プロジェクトの推進を通じて実現する。実にやりがいのある仕事だと思います。
苦労の多い仕事ですが、JRはじめ皆さん頑張ってほしいですね。


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2017-09-16 15:11

急加速のEVシフトに潜む5つの課題

 電気自動車について色々書いてきたのだが、最近やっとまともな意見が出てきたので紹介したい。
最初にこれは電池などの破壊試験などを行い会社に勤務されている佐藤 登氏の論稿。さすがに電池の安全問題に明るい方と見えてそんな視点が素晴らしい。
ただ長文なので、最初に論点をまとめてみたい。


急加速のEVシフトに潜む5つの課題
佐藤 登     2017年9月14日(木)

5つの課題とは
①EVを購入する顧客層はどれだけいるか?
②中古車市場で見劣りするEV
③電池メーカー、部材メーカーの投資チャンスとリスク
④安全性・信頼性に関する徹底した取り組みの必要性
⑤中国市場でのビジネスのリスク
まとめ
 今後、世界市場に出現することになる数多くのEVであるが、消費者の需要が同時に比例して拡大するとは思えない。すなわち市場に出てくる各社のEV群が、まんべんなく売れるとは思えないのである。選ばれるEVのみが勝ち組となっていく一方で、選ばれないEV製品も出現するだろう。
・・・中略・・・
 そして中国のような価格重視の市場においては、そこに適合する部材や評価装置などを持ち合わせないと市場開拓にはつながらない。その理由は、価格の安い中国ローカル製品に対して、自動車業界や電池業界は特段の不満はなく適用したり使用したりしている実態があるからだ。
 従来の先進諸国を対象主体に開発してきた製品だけでは立ち行かなくなる状況に陥る。新興国をも攻略できる事業戦略が、日本企業に改めて問われているのではないだろうか。


以上が佐藤 登氏の意見だが、同氏はどちらかと言えばメーカー側、それも部品メーカー側の意見を述べているが、自動車電動化にはもっと重要な視点がある。
自動車電動化が実現していけば当然大量の電力が必要になる。この電力の発電・送電の仕組み全体で急激な需要増、供給不足が起こる。これが大問題
また日本のように車は必ず保管場所が確保されているのならば問題は少ないが、外国では路上駐車が当たり前の所が多い(欧州などは特にそうだ)。こんな所では自宅での充電が難しいので、これが結構大きなネックになると思う。

 この電気については「トータルで勘定が合ってもダメ、ピークが問題」という事だが、こんな事は会社などでデマンドで苦労している方しか知らないだろう。自動車の電動化はこんな所まで考えないといけない問題という事だ。

こんな事なのだが、佐藤 登氏の意見は材料・部品メーカーに偏った所もあるので、以下の話も併せてご覧いただくと分かりやすいかも。

2040年までに"全車を電動化"は絶対無理
アウトバーンの走行には課題がある


それでは、佐藤 登氏の論稿を紹介したい

<以下引用>

急加速のEVシフトに潜む5つの課題
日欧米韓中の鍔迫り合いとビジネスリスク
佐藤 登     2017年9月14日(木)

 9月6日、日産自動車は7年ぶりに全面改良した電気自動車(EV)「リーフ」を発表した。実際の国内販売は10月2日からとのこと。新規開発したリチウムイオン電池(LIB)は、従来の30kWhから40kWhに容量アップしたことで航続距離はJC08燃費モード表示で400kmに達したと言う。急速充電するとLIB容量の80%まで充電が可能。LIBの保証は8年または16万kmとしている。

 一方、EVブームをつくったとも言える立役者のひとつ、米テスラも従来の高級EV「モデルS」に加え、価格を3万5千ドルに抑えた普及型「モデル3」の販売を7月末に開始した。富裕層のみだけではなく、一般顧客を取り込む戦略に出たことで受注は50万台に達したと言われている。

 また、米国ゼロエミッション自動車(ZEV)規制、中国新エネルギー自動車(NEV)規制を受けて、日米欧韓中の自動車各社がEVシフトを鮮明に打ち出している。中でも、2015年にディーゼル自動車の燃費不正事件を起こした独フォルクスワーゲン(VW)は、グループ全体で25年までに30種以上のEVとプラグインハイブリッド車(PHV)を発売することを既に明言した。世界販売の20~25%に相当する200万~300万台規模と言うから、極めて大規模かつチャレンジングな目標である。これはVWのみにとどまらず、独ダイムラーや独BMWも同様な目標を掲げている。

 そのような折、9月12日の日本経済新聞夕刊に、VWが2030年までにEVに200億ユーロ(約2兆6千億円)を投資するとの記事が掲載された。同時に、25年までに30車種としていた上記の計画を、EVで50車種以上、PHVが30車種以上の計80車種以上に上方修正した。車載用電池に対しては2兆6千億円とは別に、約6兆5千億円分を調達するとも報道されている。

 9月12日に開幕した「フランクフルト国際自動車ショー」での主役は電動車、中でもEVのオンパレードと各メディアが報じている。EVに対して腰の重かったホンダも、量産型EV「アーバンEVコンセプト」を世界初公開し、このモデルをベースにしたEVを19年に欧州で発売すると言う。

 米国ZEV規制はカリフォルニア州に端を発しているものだが、他にマサチューセッツ州、ニューヨーク州、コネチカット州、メイン州、ニュージャージー州、オレゴン州、ロードアイランド州、バーモント州、メリーランド州が追随している。18年から強化されるZEV規制は、トヨタとホンダが主導してきたハイブリッド車(HV)が対象から外れることで、EVやPHVの開発に拍車がかかる。

 同様に、中国NEV規制もZEV規制の基本的な考えを踏襲し、EVやPHVを主体に規制をかける内容である。中国政策はHVを除外した理由を公言している。それは、「内燃機関エンジンでは、いかに立ち向かっても日本には勝てない。EVならばエンジンは不要、部品点数も少なく、参入障壁が低い」という消去法的選択でEVを重点化している。PHVはエンジンを搭載するのでHVと同様に難度が高いが、EV走行ができることでNEV規制枠に取り込んでいる。しかし、中国ローカル自動車メーカーでPHVを販売しているのはBYDのみで、他はすべてEVに集中している。

 これも9月12日の日経新聞の一面に紹介されたが、英仏が宣言した2040年までのガソリン車・ディーゼル車の販売禁止政策に追随し、中国もガソリン車・ディーゼル車の製造・販売禁止に関する導入時期の検討に入ったとのこと。

 このように、グローバルにEV化が急速に進んでいる。こんな中、業界が抱える課題も徐々に明らかになってきたる。以下、5つの観点からまとめる。

①EVを購入する顧客層はどれだけいるか?

 上記のように自動車各社が2025年まで拡大させようとしているEVであるが、NEV規制はともかく、ZEV規制では販売された台数で初めて自動車各社の実績としてカウントされることになる。このためEVを生産しても販売までに至らなければ意味をなさない。それを決定するのは自動車各社ではなく、消費者側である。

 1998年、ZEV規制(日米各ビッグ3が対象で、98年に販売台数の2%をEV化することを求めた)をクリアするために、97年にはトヨタもホンダも400台規模のEVをカリフォルニア州に供給した。しかし、市場の反応は冷めていた。当時の両社が搭載したニッケル水素電池容量は27kWhで、モード走行は215km、充電時間は約8時間。リース販売としたのだが、航続距離の短さ、家庭への充電器の導入と長い充電時間、電池価格と車両価格の高さ(当時は搭載電池が1台分約500万円、車両価格はまともに販売すると約2500万円、そのためリース対応を実施)などがネックとなり、EVはその後、カリフォルニア市場から姿を消した。

 それから20年経過した現在、モード走行が400kmにも及ぶEVが出現している。しかし、夏冬場のエアコンの使用前提で市街地走行した場合には、モード燃費よりは明らかに低下するため、実際での走行はおおよそ300km前後となろう。とすれば、EVの中では高性能商品に入るであろうが、従来のガソリン車やHVに比べれば、まだまだハンディを背負った自動車である。

 急速充電のインフラは徐々に整備されつつあるとしても、充電器の導入と充電時間は20年前と同様な状況だ。LIB(引用者注:リチウム・イオン・バッテリー)価格や他のコンポーネントのコスト低減が進み、車両価格という視点では相当な進化が実現された。車両価格は300万~400万円程度、電池も20年前の約20万円/kWhから2万円/kWh程度まで、すなわち10分の1までのコスト低減が実現されている。今後も、LIBのコストは更に1.5万円/kWhを標榜しつつ、30%程度のコストダウンが期待されている。

 このように20年間の進化は大きいとしても、ガソリン車やHVに比べてはまだ劣勢のEVであることに変わりはない。全世界の自動車各社が、そして新興の中国新規参入組も入って商品を市場に供給することになるが、そこに消費者がどれだけの価値を見出し、そして購買意欲を示すかが大きな関心事項となる。

 言い換えれば、世界のEV消費者層のパイは暫くの間は限られていると考えるべきであろう。世界各国の自動車各社がEVを市場に供給する今後を考えれば、選ばれるEVはどのようなものか?そしてどのEVが消費者から支持されるのか? EVシフトの裏にはこのような過激な競争が待ち構える。それはテスラも例外ではなく、今後は同社の真価が問われることにもなるだろう。

②中古車市場で見劣りするEV

 ガソリン燃料より安く走行できるEVの電気代ランニングコストは、消費者にとっては魅力の1つである。しかし一方では、同一年式、同一車両価格帯のガソリン車やHVに比べれば、中古車市場でのEVは大きな下落を強いられているという面も見過ごせない。年数が経過したEVの価値が低ければ、それだけ新製品に寄せる想いは高まらない。

 ガソリン車やHVの中でも中古車市場価格が高めに維持される商品は、新車市場でも人気車に位置付けられている。筆者自身も、自動車購入に当たっての1つの条件としており、中古車市場での価格は重要な指標と位置付けている。同様な考えをもつ消費者は少なくないはずだ。

 実際に購入して使用した消費者の意見は最も大きな影響を及ぼす1つであろうが、電池の劣化と共に進む航続距離の低下に対する消費者の不満は、これまでの最多のものではなかっただろうか。それだけに、電池劣化を制御する素材や電池マネジメントは今後も大きな課題である。

 ともかく自動車各社は新車EVの新規開発と同様に、いかに中古車市場でも力を持つ魅力あるEVの製品開発を考えるべき段階に突入したのではないだろうか。今後、各社のブランドでEVが市場に出回ることで、中古車市場で相対的に優位な価格を提示できるEVこそが選ばれるEVと言う指標になるはずだ。

③電池メーカー、部材メーカーの投資チャンスとリスク

 ここは上記①と関連する部分であり、選ばれるEVと連結される電池メーカー、そしてそこにつながる部材メーカーにとってビジネスチャンスになるだろう。一方、選ばれないEVにつながる電池メーカーや部材メーカーにとっては、ビジネスリスクと化すことも考慮すべきであろう。

 2009年に発売された三菱自動車のEV「i-MiEV」、そして10年に市販された日産の「リーフ」が市場供給される前段階で、そこに連結する電池メーカーや部材メーカーは大きな投資に打って出た。

 と言うのも、自動車各社のEV販売目標が高かったことで、それをそのまま受けて投資に踏み切ったからだ。例えば、11年に日産自動車が掲げた16年度までの目標は、仏ルノーとの累計販売で150万台と設定された。ところが実際の累計販売は目標の30%程度の42万台にとどまった。目標比で30%という実績は目標自体の設定根拠に誤りがあったか、あるいは非常に過度な期待があったからに他ならない。このような高すぎる目標に対峙するために、電池メーカーや部材メーカーも大きな投資を決断した。しかし、市場と言う蓋を開けてみたら、EVの存在感は非常に小さく、結果として過剰投資をしてしまった過去の事例は記憶に新しい。

 現在、自動車各社は電池メーカーへの投資促進、電池各社は部材メーカーへの投資促進を働きかけている。電池メーカーでは韓国のサムスンSDIとLG化学が中国の西安市と南京市に、いち早く車載用LIB生産工場を建設したものの、中国政府のホワイトリスト(バッテリー模範基準)に登録されないまま当てが外れ、中国でのビジネスに苦慮している。

 その両社は、新たに欧州に拠点を構えることで、欧州自動車メーカーを中心にした顧客開拓を進める。LG化学はポーランドにLIB工場を建設し、今後も増産体制を構築すべく拡大する。サムスンSDIはハンガリーに約400億円規模の投資でLIB工場を建設し、顧客開拓を進める。

 また、韓国で3番目の地位を築こうとするSKイノベーションも潤沢な資金を背景に欧州拠点を構えようとしている。同社のLIB生産キャパは1.1GWhであったが、18年下半期には3.9GWhまで拡大する計画と言う。韓国の瑞山工場を中心にグローバル拠点の設立を着々と進めようとしている。さらには、中国のCATLも同様に欧州拠点の構築に積極的である。

 LIB事業も、現時点では日韓中の競争のまっただ中にあり、投資競争と顧客開拓で熾烈な展開が繰り広げられている。電池各社、部材各社も広い視野と高い視点から自社の事業戦略を描かないと、大きな過ちを犯すリスクにもつながる。

④安全性・信頼性に関する徹底した取り組みの必要性


二次電池のリコール・事故の歴史
2017-9-15二次電池の事故の記録
 さて、EVやPHVに関する安全性についてはまだ解決されていないのが実態である。すべての製品に共通した問題ではないが、EVではいまだに火災事故が発生している。

 三菱自動車の「i-MiEV」と日産自動車の「リーフ」は、火災事故に関しては1件も報道されていない。リーフは市販から7年になり、累積販売は30万台になろうとしている。走行距離では35億kmを超えたとされる。安全性に関しては誇れる根拠であろう。

 一方、テスラの「モデルS」は2013年に米国市場で立て続けに5台の火災事故が起こり、大きく報道された。16年には、フランスでの試乗会での火災事故、他にもノルウェーや中国等でも少なからずの火災事故を起こしていると聞く。

 中国もLIBを搭載したタクシーや乗用車、EVバスで、2010年以降から火災が多発し、現在も大きな課題となっている。それが背景にあり、安全性・信頼性に高いエコカーを実現するためのエコカーライセンスの発行、およびLIBの安全性を担保するためのホワイトリストの政策実施により、危険なLIBを排除しようとする中国政府筋の計らいが見られる。

 車載用電池ではドイツが主導してきた国連規則、ECE R-100.02 Part2が2016年7月に発効した。電池パックまでに及ぶ9項目の評価試験が課せられる認証制度が導入された。試験項目には電池パックの圧壊試験、外部短絡試験、耐火試験などの相当危険な試験法が導入されている。


2015年9月に開設した「バッテリー安全認証センター」内の電池圧壊試験室と装置。左は開設直後の未使用状態、右は多くの試験を実施してきた現在の様子(最大荷重:1000kN、最大速度:1.5mm/s、テストエリア:W2000×H600×D2000mm)
2017-9-15電池破壊試験機
 筆者が在籍するエスペックでは、2013年に宇都宮事業所に「バッテリー受託試験センター」を開設した。そして国連規則導入計画を勘案し、いち早く15年9月には同事業所に「バッテリー安全認証センター」も開設した。 

 上の左の写真は認証センター内の電池圧壊試験室とその装置であるが、開設を祝う開所式の時の写真であり、未使用状態を示したものである。以降、ちょうど2年が経過したが、国内外から多くの電池が持ち込まれる中、試験室内は試験に供されたLIBの爆発や火災等で発生した煤により、常時清掃しているものの、現在は右写真のように相当黒ずんでいる。

 もっとも、そういう過激な結果事象を想定した堅牢な建屋と試験装置設計を具現化した当センターは、国内外からも非常に注目され高い評価を受けており、国内はもとより海外からの委託試験ニーズも日に日に高まっている。

 認証試験を義務教育と例えれば、自動車メーカー個社単位で構築している独自試験項目や限界試験項目は高等教育に値する。筆者がサムスンSDIに在籍していた際には、日米欧韓の自動車各社を訪問し、安全性・信頼性に対する考え方、評価試験法、そして判定基準について多くの議論を交わしてきた。高等教育領域での内容、すなわち各社の独自試験や限界試験、そして判定基準は、他国に比べて日本勢が圧倒的に厳しい評価試験と判定基準を構築している。だからこそ、HV、PHV、EV、そして燃料電池車(FCV)のいずれにおいても火災事故を起こしていないと言う実績につながっているのであろう。

 ここに紹介した後方支援としてのエスペックの役割は、第三者的な客観性をもって安全性確保の担保につなげることはもちろんのこと、認証試験以外でも各社の高度な独自試験に柔軟に対応してLIBに対する不安感を一掃していくこと、自動車業界と電池業界の発展に寄与することにほかならない。

 まだ完全に担保されていない海外勢のLIBについても、エスペックはオープンスタンスでのビジネスを提供している。高度な対応が可能な当社のセンターを国内外関連企業が最大限活用いただくことで、EV等のエコカーの火災事故を市場からなくしていくことを可能にする重要な機能となっている。

 拡大するEVシフトの中で火災事故が多発していくような状況が生じれば、全世界でのEV事業にブレーキがかかり急降下する。その結果、各業界への甚大な影響を招くことになる。それだけに、現時点から着実な評価試験を通じた安全性確保のための開発が重要な意味をもつことになり、後方支援の担う役割は一層拡大する。

⑤中国市場でのビジネスのリスク

 中国政策が国策優先として進めているNEV規制におけるエコカーライセンス制度では、ようやく外資系合弁企業のVW-JACがライセンスを取得するに至った。独中のトップ外交が功を奏した結果と受け止めるが、トヨタ、ホンダ、日産、および韓・現代自動車はライセンス未取得のままである。

 現代自動車に至っては、エコカーどころか既存事業にも大きな影響が出ている。中国市場での自動車販売では、2017年1月から8月までの前年同期比で45%減になったとのこと。また、合弁を組んでいる北京自動車との関係も悪化の一途をたどり、一説では合弁解消のような状況も今後あり得るとのこと。エコカーライセンス取得には程遠く、中国市場でのビジネスチャンスは遠のくばかりのようである。勘案すれば、終末高高度防衛ミサイル(THAAD:Terminal High Altitude Area Defense Missile)を設置した韓国に対する産業分野での報復と見る向きが大きい。

 日本勢の自動車各社も、エコカーライセンスは未取得であるが、ここは時間の問題と映る。日系大手自動車各社は個々のロビー活動を推し進め、一方では来年からのNEV規制に適合するEVやPHVを中国市場に供給する戦略に打って出た。逆に、中国市場が日本勢を排除するようなことになるなら、中国のエコカー技術開発にブレーキがかかることになり、中国の産業界にとっては大きなマイナスになるだろう。

まとめ

 今後、世界市場に出現することになる数多くのEVであるが、消費者の需要が同時に比例して拡大するとは思えない。すなわち市場に出てくる各社のEV群が、まんべんなく売れるとは思えないのである。選ばれるEVのみが勝ち組となっていく一方で、選ばれないEV製品も出現するだろう。

 そのためにも自動車各社、電池各社、および部材各社の世界戦略は、今後の各社の命運を決める。一方で、どちらに主流が動こうとも、後方支援のような普遍的ビジネスにはかなりの追い風である。

 しかし部材業界も試験機器業界も、中国のような価格重視の市場においては、そこに適合する部材や評価装置などを持ち合わせないと市場開拓にはつながらない。その理由は、価格の安い中国ローカル製品に対して、自動車業界や電池業界は特段の不満はなく適用したり使用したりしている実態があるからだ。

 従来の先進諸国を対象主体に開発してきた製品だけでは立ち行かなくなる状況に陥る。新興国をも攻略できる事業戦略が、日本企業に改めて問われているのではないだろうか。

<引用終り>

  1. 自動車
  2. TB(0)
  3. CM(10)

2017-09-15 17:48

スズキのマニュアルミッションを自動化したAGS

  今週火曜日(9月12日)に私の叔父が天寿を全うし、黄泉の国へ旅立っていった。
その時全く関係ないが最近のクルマについて意外に思ったことが有ったので、その顛末を書いてみたい。

 叔父は95歳、あと2ヶ月で96歳と高齢で介護施設に入所していた。12日(火)夜9時頃、其の介護施設から電話があった。「〇〇さんの呼吸が止まっています。〇〇さん(叔父の長男、つまり私のいとこ)と連絡が取れないので、こちらに連絡しました。すぐ来てください」、こんな電話だった。叔父の長男は一人暮らしなので、万一の時の連絡先に私も登録してあったので、こんな連絡が入ったわけ。
そんな時間なので一杯飲んでいるため仕方なくタクシーで介護施設まで。さほど遠くはないがタクシー代が3千円ほどの距離。

叔父の長男・三男と合流し、介護施設で医師の診察確認、遺体搬送車の手配等などを済ませ、遺体を送り出したのが午後11時頃。そして帰ろうとしてタクシーを呼んだのだが・・・、タクシーも車が出払っていて来てくれない。(夜11時です。仕方ないですね)
そんな事で叔父の三男に遠回りして送ってもらったのだが、そんな時ふと思ったことがあった。

三男はこんな車に乗っている。
スズキ・エブリィ・ワゴン
2017-9-15スズキエブリィワゴン 

深夜だし、短時間乗せてもらっただけなのでどんな車かも気にしなかったのだが・・・。
走り出して最初の印象。
「あれっ、マニュアルミッションなのに結構運転上手いなあ」、エンジン音を聞いてそう思ったのだが、よく見るとオートマ車であった。マニュアルミッションのクラッチ操作とギヤチェンジを自動化した「AGS(オート・ギヤ・シフト)と言うクルマだった。
そうこうしている内に家についてしまったので、この時はそれ以上何も聞かなかったのだが、家に帰ってつくづく思う事が有る。

最近のヨーロッパのクルマには「素晴らしい技術」と喧伝されるものの大きな欠点を内包しているものが有る。VWで大騒ぎになった似非クリーン・ディーゼルがその代表だが、トランスミッションにもそんな技術がある。デュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT、vwではDSG)である。
簡単に言えば、普通のマニュアルミッションにクラッチを二つ付け、常時二組のギアがかみ合っている構造にしてオートマにしたミッション。ギヤシフトが早く高速走行には向いているが、発進がスムーズでなく、半クラッチ状態が長いので故障が多い。そしてクラッチが二組あるのでその分重量が重くなる。
そんな技術である。この技術も欧州では普及しているが、日本やアメリカではほとんど普及していない。似非クリーン・ディーゼルと並んで、自動車技術が欧州と日米で大きく乖離した事例だ。


そんな技術の趨勢を見ていてこんな事を考えた。
スズキのAGSも色々難点もあるようだが、世界一厳しい日本のユーザーの意見をしっかり取り入れて発展させてほしい。多少ショックなどはあるかも知れないが、安価で故障が少なければ、ローコストミッションとして結構使えるのではないだろうかと。

叔父の通夜・葬儀でドタバタしながら、ふとこんな事を考えてみました。
  1. 自動車
  2. TB(0)
  3. CM(6)

2017-09-13 15:43

EVマンセー報道への疑問

 最近自動車のトレンドとして電気自動車(EV)を取り上げることが多い。しかも大抵は電気自動車はすんばらしい~、こんな報道である。しかもお決まりは「日本は遅れている、ヨーロッパや中国を見習え」と結んでいる。しかしこれは日本の駄マスゴミ(騙すゴミ)特有のマヤカシ報道だ。
そんな事を裏の桜さんのブログにコメントとして書いた。
http://sakuraura.blog.fc2.com/blog-entry-4366.html
http://sakuraura.blog.fc2.com/blog-entry-4369.html

詳細は上掲ブログを見ていただきたいが、ここで今電気自動車の中古車価格が暴落していることをWSJが取り上げていると書いた。それでその記事を紹介したいと思います。
尚この記事は少々古く2年前のものですが、参考になります。

<以下WSJより引用>

米で電気自動車の中古価格が暴落-日産リーフなど
By Christina Rogers
2015 年 2 月 27 日 19:32 JST 更新

 米ジョージア州アトランタの自動車販売業者パット・ホーバン氏の店舗では過去3年間、日産の電気自動車(EV)「リーフ」が人気商品だった。月額のリース料金が安いことが寄与した。しかし、ガソリン価格が安くなる中で、リース契約が満了を迎えるリーフは悩みの種になりつつある。

 ホーバン氏はリース契約の満了に伴い、向こう2年間にわたり月に100―150台のリーフが自身の経営する「キャピトル・シティ・ニッサン」に返却されると見込んでいる。だが中古のリーフへの需要はあまりない。

 ガソリン価格が1年前から33%下がり、購入者のEV熱が冷めるなか、一部の自動車メーカーはEVやプラグインハイブリッド車(PHV)について、大幅な値引きをしたり、魅力的なリース条件を提示したりしている。

 日産は2013年にリーフの新車価格を6400ドル(約76万円)引き下げたが、今では、新車のリーフを月額199ドルでリースすることも可能なほか、3500ドルのキャッシュバックに加え72カ月間のローン金利免除といった販売奨励策を講じている。

 購入者はまた、リーフの新車1台の購入につき、連邦政府から7500ドルの価格控除を受けられる。このため、中古車を求める理由がほとんどないほか、高価なバッテリーを交換しなければならないかもしれないことを懸念する向きもある。ホーバン氏は「中古のリーフはあまり売れていない」と述べ、「消費者は新車をより安くリースできるだけに、中古を買おうという気に全くならない」と話し た。

2012年型の電気自動車の価格推移
2017-9-13電気自動車の中古車価格暴落 
 この結果、リーフやゼネラル・モーターズ(GM)の「シボレー・ボルト」などプラグインEVの中古車価格は低下している。これは代替燃料車の販売を増やそうとしている自動車メーカーにとって新たな障害になっている。

 全米自動車販売業協会(NADA)の「中古車ガイド」によると、他のEV(フォード・モーターの「フォーカス」やトヨタの「プリウス」といったPHVを含む)の中古車価格もリーフと同じようなペースで下がっており、14年の平均下取り価格は車種によって22〜35%下がった。これによると、プラグインEVの下落率は比較可能なガソリン車のそれの2倍近くに達している。

 中古車ガイドによると、例えば昨年12月と今年1月の2012年型リーフの競売における平均販売価格は約1万ドルと、当初の定価の約4分の1で、前年からは4700ドル下がった。1月の3年前の型のボルトの競売における平均販売価格は1万3000ドルと、連邦政府の税控除分を差し引いた4万ドルから下がっている。

 インターネット中古車購入サイトCarlypsoの共同創設者のクリス・コールマン氏は、「これらの車の転売価格は崩壊している」と述べ、「中古車の価値を考えると、絶対にお得だ」と話した。

 このトレンドはハンス・サベリオさんのような人にとっては朗報だ。サベリオさんは最近、2台目の車を探しに行った。1台目としてジャガー・ランドローバーのSUV(多目的スポーツ車)「レンジローバー」を所有するサベリオさんは、1万5000ドルという価格が付いた走行距離1万1000マイルの2013年型リーフを見つけた。価格は新車時の定価の半額にも満たない。

 サベリオさんは「かなりの車を見て回ったが、リーフが飛び抜けて安かった。2万1000ドルから2万2000ドルはすると思っていた」と話した。
<引用終り>

新車を買ったら、わずか三年で中古車価格が三分の一!、これではユーザーから見放されるのは間違いない。
勿論これはアメリカだけの問題ではなく、日本でも同様だ。そして中古車市場には売れないリーフが在庫として積みあがっているそうだが、なぜか駄マスゴミ(騙すゴミ)は触れるのを避けているようだ。

これは一般ユーザーのブログ記事
http://www.sekkachi.com/entry/nissan_LEAF_demerit

そしてこれは評論家国沢光宏の記事
電池寿命に不安。電気自動車の中古価格が暴落中!
(尚私はこの国沢光宏なる評論家、言っていることが軽薄で、どうにも信用しがたい人物とみているのだが、この記事はまともと思い紹介しました)


幸いニッサンリーフは今まで販売台数は多くない。だから未だ問題が大きくなっていないが、此れから販売台数が増え、廃車になる台数が増えるとき、廃棄バッテリーの処理問題が大きくなると思う。ニッサンのことだからよもや何も考えていないとは思えないが、これから大丈夫なんだろうか、気になるところです。

最後に一つこれだけは強調したいこと。日本はハイブリッドで欧州より20年先行しています。
欧州が「ハイブリッドなんか駄目だ、ディーゼルがクリーンですんばらしい」と言っていた頃、その環境問題を分かって、ハイブリッドをトヨタとホンダで推進してきました。
ハイブリッド(の内でも「ストロング・ハイブリッド」)はエンジンを止めればそのまま電気自動車になります。だから電気自動車の必要な要素は全てハイブリッドで研究している訳で、日本が欧州に後れを取っている訳ではありません。

もう一つ、今月日産はリーフのモデルチェンジを発表しました。この内容は私も良く分からないので論評しませんが、日産は売りっぱなしではなく、お客さんから最後廃車になるまで愛用されるよう、しっかり面倒を見て欲しいともいます。ゴーン流の金儲けにはつながりませんが、これがビジネスの王道だと思います。
江戸時代の近江商人は「三方よし」をモットーにしていまして、松下イズムになりました。
三方よしとは
買い手よし
売り手よし
世間よし  です。
この世間よしを忘れた事例がVWの排ガス不正問題でした。

もう一つ付け足し、ニッサンのことを大分批判的に書きましたが、ゴーンの功績は大変大きいと思っています。その最大のモノは「川又克二元社長、現日産労連の塩路一郎元会長」が作り上げた悪しき伝統を打ち破ったこと。これからゴーン流から脱却し、新しい未来を開いてほしいと思います。

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2017-09-09 15:00

「真珠湾攻撃」の5か月前 米が日本爆撃計画 「大統領も承認」


 日米戦争は昭和16年12月8日(アメリカ時間:12月7日)、日本軍の真珠湾攻撃で始まった、これは誰でもそう信じているが、日米戦争は実はもっと前から始まっていた。
アメリカ軍が中国で蒋介石軍支援のためフライング・タイガース部隊を運営していることは良く知られているが、これを増強し日本空爆を計画、フランクリン・ルーズベルト大統領も承認していた。空爆目標は長崎・大阪・東京一般市民を狙った無差別大量殺戮計画だった。攻撃対象は非軍事施設宣戦布告なしこんな話が1991年、アメリカの人気テレビ番組で放映されていた。


先ずはこんなものをご覧ください。
これはアメリカABCテレビの人気番組「20/20」で1991年に報道されていたもの。それに日本語字幕が付いているが、NHK‐BS1で放送されたもので、日本での放送は2007年頃のようだ。

一寸これを取り上げた理由について。
このTV番組で重要なことは、現在殆ど過去の人となっているフランクリン・ルーズベルト大統領の周辺にいたソ連のスパイのうちの重要人物ロクリン・カリーが登場して、その作戦について語っていることである。
2017-9-820/20画面2 
以下其の人物について
出典:
http://melma.com/backnumber_115_1126408/
3.日本爆撃計画推進者はソ連のスパイ
  さらに、この空爆計画の推進者だったロークリン・カリー大統領補佐官(当時)は、実はソ連と極秘情報のやりとりをしていたことが、当時の米暗号解読機関によって確認されていた。
   この文書はVENONA資料と呼ばれ、1940年代後半、ニューヨークとワシントンにあるソ連代表部とモスクワ間の交信記録を 米特殊機関(戦後の国家安全保障局=NSA)が暗号解読したものだ。
    カリー補佐官はカナダ生まれの経済学者で、39年から45年まで大統領補佐官(経済担当)をつとめた。41年初頭には対日戦略を調整するため米国の中国支援担当特使に任命され、ルーズベルト大統領と中国国民党の蒋介石主席(当時)の橋渡し役をしていた。
  
   48年にソ連スパイだったことを告白した政府職員、エリザベス・ベントレーによる「カリー氏もスパイだ」という訴えをきっかけに、カリーは米下院・非アメリカ委員会の追及を受けた。しかし最後まで容疑を否定し、50年に米国市民権を放棄し、南米コロンビアに移住、93年に死亡している。
<引用ここまで>

このTV番組の凄いところ、ソ連崩壊(ベルリンの壁崩壊89年11月、ソ連崩壊91年12月)を目の当りにした中での報道という事で、「まあ今ならいいだろう」とソ連のスパイが思った時期、そしてそのカリーは93年に死去している。その後の1995年ソ連とのスパイの通信記録VENONA文書が公開され、このロクリン・カリーもスパイであったことが明確になった、そんな時期でのTV報道である。まさに千載一遇と言ってよいチャンスだった。
更にこのカリーはアルジャー・ヒスとともにヤルタ会談にも同行している。戦後体制の裏をすべて知り尽くした人物なのだ。


一寸前置きが長くなりました。ではそのテレビ録画を見てください。

これは前半分


これは後半分


これはフルバージョン



実はこの話、宮崎正弘さんのメルマガの「読者の声」に出ていたので、疑問に思って調べてみた。凄い事実が報道されていた。

最初にその宮崎正弘さんの該当メルマガ

(読者の声1)
 宮崎さんと渡辺さんの共著『激動の日本近現代史 1852-1941』(ビジネス社)読ませていただいています。・・・中略・・・
 まず年表を見させていただきました。そこで非常に重大な三つの事件が載っていないことに気付きました。

 昭和16年7月23日米国統合参謀本部がルーズベルト大統領に提出した、日本爆撃計画に大統領が署名・承認した。昭和16年7月25日対日石油禁輸をおこなえば日本の方から開戦するという進言に大統領が賛成し、日本爆撃計画を中止とした。昭和16年8月1日米国政府が対日石油禁輸を発表した。
日本爆撃計画はそれまで中国で中国人に擬装した退役米国軍人をシェーンノート中将が指揮して行っていました。いわゆるフライイングタイガーです。
それを拡大して、日本の三都市の工業地帯を爆撃して軍事能力を削ごうというのが計画でした。東京、大阪、長崎です。
・・・以下略、詳細は上掲リンク先参照ください・・・
<引用此処まで>


このTV報道を日本でも新聞が取り上げている。古いニュースだが、益荒男さんの所にその内容が記録されていた。

<以下引用>
「真珠湾攻撃」の5か月前 米が日本爆撃計画 「大統領も承認」/ABCテレビ
1991/11/24, 読売新聞

◆米・ABCテレビが「米の責任」論評
 【ニューヨーク二十二日=藤本直道】米ABCテレビは二十二日夜の報道番組「20/20」で、日本軍の真珠湾攻撃の五か月も前にフランクリン・ルーズベルト米大統領は、中国本土から日本への長距離爆撃計画を承認していたと伝え、同大統領は日本を意図的に開戦へ追い込んだと論評した。真珠湾五十周年を前に日本の奇襲を改めて強調する報道が多い中で、米国の開戦責任を米国側からまじめに論じたものとして異色の番組。
 この爆撃計画そのものは一九七〇年に公開された公文書の中にあったが、その後歴史家に検証されることなくやみに埋もれていたという。同テレビは当時のパイロットや大統領補佐官などの生々しい証言を伝え、米政府が日本への石油禁輸を決めた時期と対日爆撃計画承認がほぼ同時期であり大統領補佐官の証言からも、ルーズベルト大統領が日本を開戦に追い込む意図であったと論評している。
 この計画はJB355と名付けられ、一九四一年七月二十三日に大統領だけでなく当時の戦争長官、海軍長官なども署名。ビルマから中国への物資補給路を援護するため中国に雇われた米人パイロット・グループ、フライング・タイガースを率いるクレア・シェンノート氏がこのJB355計画にもからんでいた。
 米政府は日本の弾薬工場や重要な産業施設を爆撃するため、長距離爆撃機六十六機を供与するほか、数百万ドルにのぼる経費や兵員も負担することを承認していたが、これは当時の米国の中立法に反するという。
 シェンノート氏は、この爆撃により「日本の紙とマッチの軸で出来たような建物を灰に出来る」と報告していたが、作戦実施に手間取っているうちに真珠湾攻撃が始まった。

<引用終り>

もう一つ、このフライング・タイガースがアメリカの正規軍だったことも同じく紹介されている。

大戦中の義勇軍「フライングタイガーズ」 正規の空軍部隊だった 米紙が報道
1991/07/08, 読売新聞
・・・以下略、詳細は上掲リンク先参照ください。

大戦中の義勇軍「フライングタイガーズ」 正規の空軍部隊だった 米紙が報道
1991/07/08, 読売新聞

 【ロサンゼルス七日=桝井成夫】第二次大戦で蒋介石総統の中国国民党軍に協力、中国南部とビルマ戦線で日本軍機を大量撃墜したことで知られる「フライングタイガーズ」は、日米開戦半年前の一九四一年春、米国防総省の承認のもとに空軍基地から集められた戦闘機パイロット二百五十九人による正規の“エリート空軍部隊”だった、と六日付のロサンゼルス・タイムズ紙が報じた。同部隊はこれまで、民間義勇軍とされ、国防総省自体、陸軍省や大統領とのつながりをいっさい否定してきたが、約百人の生存者が国防総省に史実を認めるよう請願、このほど退役軍人として認められたという。
 同紙によると、「フライングタイガーズ」のパイロットは、蒋介石の軍事顧問クレア・シェンノート氏によって、当時の新米パイロットの五倍相当に当たる月給六百ドルと日本軍機一機撃墜ごとに五百ドルという破格の報酬で、全米各基地から集められた。全員は農民や伝道師、エンジニアなどを装ってビルマに集結。蒋介石政権が米国に借金する形で資金を負担、弱体の中国航空部隊を裏で支えた。
 現地で飛行訓練を積んだ後、十二月の真珠湾攻撃直後から国民党軍のマークが入ったP40戦闘機に搭乗、中国南部とラングーン周辺で日本軍機と交戦し、日本陸軍航空隊の戦闘機など日本軍機二百九十六機を撃墜したとされている。
 同紙は「フライングタイガーズ」研究家デービッド・フォード氏の証言として、当時のモーゲンソー米財務長官が取り決めた国民党への一億ドルの融資が役に立ち、ルーズベルト米大統領経済顧問のロークリン・カーリン氏が計画全体の調整役を務めたとの見方を示している。
 さらに同紙は、「フライングタイガーズは大統領と米軍中枢の承認を受けている」との米陸軍航空隊ヘンリー・アーノルド将軍のメモ(一九四二年)も見つかったとしている。真珠湾奇襲の半年前に米側が軍事行動をスタートさせていたことを示すものとして議論を呼びそうだ。 

<引用終り>

2017-9-820/20画面2 

この人物、ロクリン・カリーについて、福井義高先生の近著「日本人の知らない最先端の世界史」にこんな記述がある。
<以下p156~p158より引用>
 さらに、政府上層部に食い込んだソ連のエージェントとして、ロクリン・カリーの名を忘れるわけにはいかない。カナダ生まれのガリーは1934年に米国籍を取得後、ホワイトとともに財務省に入り、1939年にはルーズベルト大統領の補佐官として、ホワイトハウス人りを果たす。ルーズベルト側近となったカリーがソ連にもたらした情報のなかでも、とくに重要なものが、ポーランド政策に関するものであった。
 戦後のポーランドの地位に関して、戦時中の米国公式外交方針は、ロンドンにあった反共のポーランド亡命政権支持であり、1944年の人統領選挙を控え、ルーズベルトは一大勢力であるポーランド系移民の支持を得るため、この方針の堅持を唱えていた。しかし、ルーズベルトは、ソ連が独ソ不可侵条約により獲得した東部ポーランドの永続支配を認めるつもりであり、カリーはそのことをソ連に伝えていた、スターリンは、ポーランド問題に関しては、亡命政権が求めていた東部ポーランド返還など、妥協の必要がないことを知ったうえで、米国との交渉に臨むことができたのである。
 カリーはさらに、戦時中、暗号解読が成功する前の段階で、極秘プロジェクトであるヴェノナの存在を察知し、ソ連に通報していた。おそらくカリーの差し金で、1944年にホワイトハウスからソ連暗号電信の解読を中止するよう圧力がかかる。しかし、ヴェノナの責任者であるカーター・クラーク大佐が無視したことで事なきを得た。なお、カリーは戦後、FBIの追及をかわし、1950年に南米コロンビアに移住後、米国籍を放棄した。
 ルーズベルト政権中枢への大がかりなソ連エージェントの浸透が成功した背景には、政権の意図的というしかない不作為があった
 1938年にスパイ活動を離れ、目立たないよう慎重に行動していたチェンバーズは、独ソ不可侵条約締結による国際情勢急変に危機感を覚え、ドイツのポーランド侵攻開始直後の1939年9月2日、アドルフ・バーリ国務次官補に直接面会し、ホワイト、ヒス、カリーをはじめとする政府内ソ連エージェントを、実名を挙げて告発する。
 しかし、このチェンバーズの告発は、1945年にベントレーがFBIに告白するまで、政府内で真剣に取り上げられることはなかった。スターリン以上の悪と捉えていたヒトラーを倒すうえで、ルーズベルトが、ソ連のスパイが活動表面化することは、政治的に受け入れがたいと判断したとも言われる(リチャード・パワーズ『名誉なきにあらず』)けれども、真相は闇のままである。いかなる理由にせよ、チェンバーズの告発を戦争終結まで無視したことは、米国の安全保障を危険にさらし、戦後世界秩序に大きなダメージを与えることにつながった
<引用終り>

こんな人物が日本爆撃を計画していた、実に驚くべきことである。

その爆撃目標はこんなもの

2017-9-820/20画面3 

そしてカリーはこんな事を言っている(2nd half 3:10頃から)

インタビュアー(以下イ) あなたは爆撃機の調達を担当したのか?
カリー(以下カ) その通り
イ パイロットも?
カ そうだ
イ 1941年9月22日 あなたはシュノルト氏に秘密電報を送った 
  ”今日 大統領が66機の爆撃機を中国に送るよう指示した”
イ ”うち 24機はすぐに送る”という文面だ
イ 爆撃機を調達した理由は?
カ 爆撃機の目的は爆弾を落とすことだ
カ とぼけても しかたないこと
イ ”米国人パイロットが搭乗する”と計画書に記されているが?
カ 金を出したのも 作戦を練ったのも 米国だった
イ 米政府も強力に後押ししたのか?
カ そのとおり


そしてこのインタビュアーはこう言っている

2017-9-820/20画面7 

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ここでこの奇妙なジェスチャーの説明。
このジェスチャーは「エアークォーツ」と言われるしぐさで、二重引用符(“ ”ダブルクォーテーションマーク)を意味する。主にこの「話した言葉には裏の意味があるよ」という意味だ。
 
つまりこのTVの場合、話した言葉は「戦争は不可避と見たはず」だが裏の意味は別。
本当は「日本と戦争を始めると決めたぞ」、こう言っているが公には言えないので、こんなジェスチャーをした。
この頃(昭和16年7月頃)、日本は必死に戦争回避の交渉をしていた。アメリカには大幅譲歩もやむを得ないとしてそんな提案をしていたのだが・・・
そして11月のハルノートへ・・・

こんな話、もっと広く拡散したいです。特にその後のVENONA文書公表などで、今まで分からなかったことが明るみに出てきました。これからですね。


参考ブログ
https://blogs.yahoo.co.jp/tatsuya11147/48844016.html

http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/5562/column/column088.html

http://www2s.biglobe.ne.jp/~t_tajima/nenpyo-5/ad1945e.htm


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